由比敬介のブログ
アインシュタイン
アインシュタイン

アインシュタイン

 ニュースで気づいたが、アインシュタインがいくつかの論文を発表した年から、今年はちょうど100年。世界物理年なのだそうだ。
 アインシュタインはウォーホールの絵や、映画にもなったし、20世紀で最も著名な科学者であることは間違いない。量子論とともに20世紀の最大の発見とも言われる相対性理論は、アインシュタインの代名詞となっている。
 相対性理論というのはまことに寂しい理論で、この世の最高速度は光速だと決めてかかるところから入っているので、非常に夢がない。夜空に輝く星々は、昔の人にとっても現代人にとっても、手の届かない遠い世界だが、それに科学的な証明を突きつけてくれたようなものだからだ。
 光は太陽まで8分少々で届く。その距離を1天文単位と言うが、一番近い恒星でも、その光ですら4年以上かかるというのは有名な話だ。銀河系の端から端までは光が10万年かからなければ届かない。10万年前というのは有史以前だ。有名なアンドロメダ星雲までは200万年以上、ここまで来ると人類と猿はそれほど大きく違わない。
 いずれにしても、遠い宇宙を旅することができなくしたのはこの理論だ。
 
 何となくどんどん加速していけばいつかはその速度も超えそうな気がするが、この理論の嫌なところは、速くなればなるほど時間の流れが遅くなる。そして光の速度になったとき、0になる。多くの場合、物理ではこういう非常識な点のところを特異点という。ビッグバンの瞬間とか、ブラックホールの地平線とか、頭で考えても上手く想像できない点のことだ。
 それでも、E=MC2のようによく知られた式などから原爆ができあがったり、超高速の飛行機上では時計が遅れたりするとか、実験的証拠が出てくると、尚更暗くなる。
 後は超空間とか、ワープとか、別次元とか、ワームホールとか、抜け道を想像で探すしかないのだ。
 SFという文学の一分野は、科学がなければ生まれなかったが、同時にその科学によってぐいぐいと、締め付けが厳しくなりながら生きてきた。現実はさらに厳しく、夢とはほど遠い。
 なんていう逆説的な一文で、アインシュタインを称揚するのはいかがなものか。
 科学とは事実を模索し夢を砕くのだろうか?いや、所詮人間には、どんなにがんばっても解らないことがある。論理的に導き出せても証明のできない部分が必ずある。だからこそ科学は逆に夢に満ちていると言わねばならない。

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