第2話 中島裕美
 それは、月がきれいな夜。
 街外れの、畑が並んでいる中の一本道。
 奇妙な格好をした老人が現れた。どこからという事も無く、突然そこに居たのだ。
 黒装束の男は、一本道を歩いていた。
 その時、老人が男に背を向けた状態で、男から50センチと離れていない目の前にいきなり立っていたのだ。
 男はパッと後ろに飛びのいた。そして背中にしょった刀に手をかけながら、目の前にある老人の背中を、じっと見つめていた。
 月の光を浴びながら、老人はしばらくの間動かなかった。
 が、その右足を前に踏み出そうとした瞬間、バランスを崩し、老人はグラッと後ろに倒れかけた。
「お、おいっ!」
 黒装束の男はあわてて老人の体を支えた。
 よく見ると、その老人は頭の毛がほとんど無かった。
 そして、着ている物は、男が今までに見た事もないような形であった。上下共に布地は黒一色で、金色に光る小さな半球が、老人の上着の首の下から腹にかけて並んでいた。
 老人は男の腕の中でぐったりとしていた。気を失っている。
 男は老人を背負うと、近くの百姓の家の戸をたたき、一晩泊めてもらえるよう頼んだ。

「よく眠っている…この老人、だいぶ疲れているみたいだな。」
「百合、お前はもうお休み。」
「うん、おやすみなさい。」
 家は父親と幼い娘の二人ぐらしであった。意識が戻らない老人をふとんに寝かせ、男と百姓の家の父親は、起きて様子を見ることにした。
「うむ?」
「お武家さま、どうしましたか?」
「なんだかおかしいと思わないか?この老人、さっきより頭の毛が増えてきているような気がするのだ。」
「ええ?そ、そういえば…なんだか、顔のシワも少なくなってきたような…」
「まさか、若返っているのではあるまいな?」
「そ、そんなバカな!」
 明らかに老人は若返っていた。男たちが気づいてから間もなく、老人の頭の毛はフサフサと生えそろい、顔のシワも消え、みずみずしさとハリとツヤがあふれた。
 すでにそれは老人ではなく、少年の姿だ。
「こ、こんな事がっ!?う〜ん」
 百姓の男は驚き、気絶した。

 明け方、奇妙な格好の、老人だった少年=バビル2世は目を覚ました。
「むーん…はっ、ここは?」
「気がついたかい。それでは行こう。」
「えっ、君は誰だい?それと、今まで僕がどうしていたのかを、教えてくれないか。」
「道で倒れていたお前を、おれはこの家まで運んだ。この家の親子が、お前を一晩休ませてくれたのだ。」
「そうだったのか…ありがとう。ここの親子にも礼を言わなくてはならないな。」
「その必要はない。親子が起き出さないうちに出ていくぞ。」
「何故そんな事を!」
「このままここにいたら、騒ぎになるんだ!いいから来い。」
 バビル2世は黒装束の男に無理やり外へひっぱり出された。

「おとう、おとうったら。」
「むーん…百合。」
「夕べのおじいさんとお武家さまはどうしたの?二人ともいないよ。」
「!!!あのじいさんは、バケモノだ…」
 ガタガタふるえだす父親。
「どういう事?」
「ああおそろしや、ナムアミダブツ、ナムアミダブツ…」
 父親はその日、一日中寝込んだ。

次はTaroさん、お願いします。