| 第1話 由比敬介 |
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眼を開けた浩一は、そこが今までいた東京ではなく、道路も舗装されていない過去の東京、つまり江戸の地であることを確信した。 生まれて初めて試みたタイムワープの大技は、心身共に浩一を疲労の極地に追いやっていた。目の前が霞むくらいにぼんやりしている。 ここにいるのだろうか? 思えば、昨日のことだった。国家保安局長の五十嵐から「書籍バベルの塔手に入れました」の呼び出しがかかり、国家保安局で見知らぬ少年に会った。 少年は淳と名乗っていた。未来から来たという。五十嵐は浩一と出会って以来、不可思議なことに対する免疫ができたようで、比較的素直に受け取ることができたと言っていた。 淳は自分には1週間しか時間がないと言っていた。それを過ぎると、未来に呼び戻されてしまうのだそうだ。 淳は、バビル2世を探していた。そのために五十嵐の元を訪ねたという。彼はこう言った。 ヨミという人物が、バビル2世に助けを求めている。ヨミは強力な外部の力によって目覚め、今の時代から引き剥がされた。 「ヨミがぼくに助けを求めているだって?」 とうてい信じられないと頭を振った浩一だったが、淳の思考を読み、それが嘘でないことをすぐに知った。 「ぼくはヨミと江戸の街で出会いました。彼は元気に見えましたが、何かをすごく恐れているようでした。彼は自分の力が何物かによって弱められ、今の状況から抜け出すことができないということでした」 淳は、それが将来の地球の運命に関わることと知って、バビル2世に伝えに来たのであった。 ヨミは、自分が限りなく古代に向かって引きつけられていると思っており、その目的地はメソポタミアだとも言っていた。ヨミがそこへたどり着いたとき、地球には、その全ての時代を超越して想像を超えた災厄が降りかかると信じていた。 ヨミはかつて世界を征服したいという野心を持っていたが、地球を破壊したいと思ったことはなかった。ヨミがそこへたどり着くまでに、確保しなくてはいけないのだ。それができるのはバビル2世しかいない。ヨミはそうも信じていた。 浩一は何らかの形でそれが、自分たちの先祖と関わりがあるような直感を覚えていた。 ヨミがいつまで江戸の街にとどまっているか解らないし、必ずしも過去へ過去へと進んでいるとも限らない。彼は時間と空間を蛇行するように、恐怖に捉えられながら見えない力によって動いているのだ。 バビル2世こと山の浩一は、最近になって身につけたタイムワープの超能力を、こんな形で使うことになるとは思っていなかった。 タイムワープは、エネルギー衝撃波を何回も使ったようにエネルギーを消耗する。コンピュータは今でも答えてくれないが、何らかの形でこれが自分の命に関わるかも知れないことを考えなくてはいけない。 しもべ達を一緒に連れていくこともかなわない。かつて101と呼ばれたときと同様、孤立無援だ。 自らの目的を達してほっとしたような顔の淳がすっとその場からいなくなったのを見て、浩一は決心した。 「また私は応援することしかできないみたいだな」と苦笑する五十嵐と握手を交わした浩一は、その場で精神を統一した。 浩一が着いたのは、1653年の江戸であった。これが淳がヨミを最後に見た時代だ。 と同時に、浩一が時を移動した瞬間、様々な力が時空の中で動き始めた。 そしてその一つは、無から忽然と現れた異形の男に驚きながらも、決して冷静さを失わない一つの影であった。 黒装束に身を包むその男は、浩一の背後にあって、その背中をじっと見つめていた・・・・・ |
| いかが?次回は中島さんに託します!! |