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正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア  アーカイブ

2006年11月26日

正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア1

正太郎の声 「大塚署長の中学校時代のクラスメイトでありドリーム玩具の社長を勤める太田氏の発案で僕と大塚署長と敷島博士の「鉄人フィギアセット」が発売され好調なセールスを記録した、聞けばその年のフイギア業界の売れ行きベスト3に入ったというから驚きだ、当人たちにすればいささか気恥ずかしいが購入してくれた方々がたいへん喜んでくれていることと収益の一部がいくつかの環境保護団体に寄付されて結果的にとても有意義なことだったと自負している、第一弾のフィギアセットが発売されてからおよそ半年後、再び太田氏が大塚署長を伴って敷島研究所にやって来た、なんと僕たちのフイギアの第二弾を発売しようと言うのである」

敷島研究所
  太田  「いやあ、正太郎君、敷島博士、ご無沙汰をしておりました」
 正太郎  「お久しぶりです」
  敷島  「太田さん、第二弾のフィギアを出されるんですって?」
  太田  「はい、全国のファンから要望がよせられましてな」
  敷島  「そんなに・・私たちなんかの人形に人気があるんでしょうかね?」
  太田  「ええ、そりゃもうたいへんなもんです、鉄人に対する大衆の支持がいかに熱いかということを物語っておりますよ」
  敷島  「まあ、喜んで頂けるなら私たちとしてはやぶさかではないのですが・・・」
 正太郎  「でもどんなフィギアなのかやっぱり気になりますね、前回みたいにアレですか?そうとうデフォルメされちゃってるのかな?」
  太田  「はい、今回はですね、デフォルメの方向性をガラッと変えてみました」
 正太郎  「・・方向性を変えた?」
  太田  「第一弾はメルヘンチックというかマンガチックというか、そんな感じでしたよね?それに比べたら今回のデフォルメはぐっとリアルになっとります、正太郎君の場合は中学3年生くらいの設定で逞しい「青年」の雰囲気をもたせてあります、同じく敷島博士の場合も逞しさとダンディさを併せ持つというイメージで作ってみました」
 正太郎  「逞しい青年・・・ですか?」
  敷島  「逞しさとダンディさ・・・ですか?」
  大塚  「それじゃあ太田よ、ワシのフィギアも前回みたいなズングリムックリじゃのうてグッとひきしまった体形に?」
  太田  「ああ・・うん、それがなあ大塚、ちょっと言いにくいだが、」
  大塚  「なんじゃ?」
  太田  「今回お前のフイギアを発売する予定はないんだよ」
  大塚  「なんじゃとう!」
  太田  「お前さんの場合はみんな第一弾のフィギアで満足しとるみたいでな、別なバージョンを作って欲しいという要望は来とらんのだ」
  大塚  「なんじゃそれは!失礼な話じゃな!」
  太田  「そう言うなよ、ウチも商売だからさ、売れない商品を作るわけにはいかんのだ」
  大塚  「ふん、ああそうかい、もうええわい」
  太田  「怒らんでくれよ大塚」
  大塚  「誰も怒っとりゃせん!」
  太田  「どう見たって怒ってるだろ?」
  大塚  「ワシのことはいいからとっとと話を進めんかい!」
  太田  「わかった・・・ええと、それでですね、今回もお二人のフィギアの試作品をお持ちしましたのでご覧頂いて承諾を
       頂ければと・・まずこれが・・・正太郎君のフィギアです」
 正太郎  「へえ、」
  敷島  「ほう」
  太田  「どうです?ほとんど高校生という雰囲気でしょ?」
 正太郎  「ズボンがスラックスになってますね」
  太田  「ええ、半ズボンはちょっとどうかと思ったもので・・」
  敷島  「顔つきも精悍じゃないか、本当に青年の雰囲気というものがあるね」
 正太郎  「フフ、やっぱり気恥ずかしいけど、でもこれならほとんど抵抗ないや」
  太田  「そう言って頂けると思ってましたよ、そしてこれが・・・敷島さんのフィギアになります」
  大塚  「ほう、こりゃあ・・」
  太田  「がっしりとしとるでしょう?」
  敷島  「これもまたオーバーだなあ、私はこんなに逞しくありませんよ」
  太田  「前回はあまりにもスマートにし過ぎましたからね、今回はその逆を行きました、こうすることで買い求める対象年齢がぐっと広がりますよ、若い女性はもちろんご婦人方にも人気が出ると思いますよ」
  大塚  「なかなか彫りの深いいい顔になっとるじゃないか」
  太田  「ねっ?ダンディズムを感じるでしょ?」
  敷島  「こういうのがダンディズムなんですかね?」
  太田  「フィギアというのは顔が命と言っても過言ではありませんからな、この表情を作るのにそうとう苦労しました」
 正太郎  「博士、カッコいいじゃないですか」
  敷島  「そうかね?まあ確かに最初のフィギアと比べたら抵抗ははるかに少ないがね」
  太田  「如何でしょう?これでOKを頂けますかな?」
  敷島  「はあ・・まあこれならば何とか」
 正太郎  「僕も異存はありません」
  太田  「いや、ありがとうございます、今回はかなり自信がありましたからな、そう言って頂けると思っておりました」
  大塚  「今回も収益の一部をどこぞの施設に寄付するんじゃろうな?」
  太田  「うん、親のいない子供たちの施設に役立ててもらおうと思ってな」
  大塚  「おう、そうか、そりゃいいことじゃ」
 正太郎  「たくさん売れるといいですね」
  太田  「そこでですね、今回は宣伝としてテレビコマーシャルに力を入れたいと思っておるんです」
  敷島  「ほう、このフイギアをテレビのコマーシャルに?」
  太田  「そのためにですね、正太郎君と敷島博士に無理を承知で何とかご協力を頂けないものかと・・・」
 正太郎  「何をするんですか?」
  太田  「はい、そのコマーシャルに出演して頂けないでしょうか?」
 正太郎  「はあ?」
  敷島  「私たちが・・コマーシャルに?いや、それはいくらなんでも・・」
  太田  「だめでしょうか?」
  敷島  「役者じゃないんですから・・芝居なんかできませんよ」
  太田  「いえ、演技などしていただく必要はないんです、ただカメラの前でフィギアを手に持って笑顔で新しいフィギアをよろしくと
       ひと言サラッとコメントして頂ければそれでいいんです」
  敷島  「それにしたって・・ねえ正太郎君?」
 正太郎  「自分のフィギアを本人が宣伝するなんて・・すごく照れくさいですよ」
  太田  「しかし宣伝としてのインパクトは十分です、売れ行きにも大きく影響しますし・・」
 正太郎  「う~~ん」
  敷島  「すみませんが、勘弁してもらえませんかねえ?」
  大塚  「しかし・・・お前はホントに厚かましい奴じゃなあ」
  太田  「仕事熱心と言ってくれよ、もうスタジオだって押さえてあるんだ」
  大塚  「こら、本人たちの承諾も得とらんのに勝手なことをするな!」
  太田  「いやいや、ちょうどその日にわが社提供の歌番組「歌謡ゴールデンショー」の収録があるんでついでやってしまおうと思ってな」
  大塚  「歌謡ゴールデンショー?・・ああ、あの番組はお前んとこがスポンサーじゃったか」
  太田  「ああ、視聴率もいいんだぜ、敷島さん、ちょうどその日は演歌の女王美空はるみが出演することになっとるんです」
  敷島  「えっ!美空はるみが?」 ( 敷島の目がキラリと輝いた )
  太田  「聞くところによると彼女の大ファンだそうですな?」
  敷島  「ええもう、デビュー当時からのファンでして」
  太田  「先日もはるみちゃんとスタジオで話をしてましてね、このCMの話をしたら是非一度敷島博士とお会いしたいわ~なんてことを言ってましてね」
  敷島  「えっ!ほ・・本当ですか!」
  太田  「本当ですとも、でもお二人にあまり無理を押しつけるわけにもいきませんなあ、どうしてもお嫌なら何か他の方法を考えましょう、でもはるみちゃん・・がっかりするだろうな~、でもしょうがないかなあ~」
  敷島  「え、え~と・・」( そわそわ )
  太田  「そうですかあ~~ダメですかあ~~、はるみちゃんに何て言おうかなあ~~」
  敷島  「あの・・ねえ正太郎君」
 正太郎  「はい?」
  敷島  「我々としては気恥ずかしい限りだがどうだろう?ここはこの際乗りかかった船という奴で、協力してあげてもいいんじゃないかな?」
 正太郎  「いいんですか博士?」
  敷島  「私たちを支持してくれる大勢の方々のために少々の恥ずかしさは我慢をしようじゃないか」
 正太郎  「そうですか・・博士がそれでいいんでしたら僕も・・」
  太田  「お引き受け頂けますか!」
  敷島  「はあ、私たちでお役に立てるのなら・・」
  太田  「ありがとうございます!とびきりいいCMを作らせて頂きますよ、収録は今週の土曜日の午後3時からを予定しておりますので
       ご多忙でしょうがスケジュールの調整をよろしくお願いします」
  敷島  「わかりました、どうかお手柔らかに」
  大塚  「(太田の耳元に小声でつぶやく) ふん、芸能人をエサに使うとは考えよったのう、この悪党めが」
  太田  「人聞きの悪いこと言うな」  (つづく) 

2006年11月27日

正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア2

正太郎の声 「その週末の土曜日、僕たちは赤坂にある関東テレビに赴いた、用もないのに大塚の親父さんも野次馬根性丸出しでついて来た、僕としてはどうにでもなれという気持ちだったが敷島さんは美空はるみに会えるというので大きな花束を抱えてかなり舞い上がっていた」

テレビ局の人間に案内されて一行は「歌のゴールデンショー」の収録が行われる℃スタジオ前までやって来た、一行を待ち受ける太田社長、

  太田  「やあ、どうもどうも、お待ちしておりました、アレ?なんだ大塚、お前も来たのか?」
  大塚  「いいじゃないか来たって、そう邪険にするな」
  太田  「まあいいけどさ、ちょうど今歌番組のリハーサルが終わりましてね、20分ほど小休止といったところです、中は雑然としとりますが、まあどうぞお入りください」
(太田に促されスタジオに入る三人)
  大塚  「ほう、テレビのスタジオというのはこういう風になっとるんかい」
 正太郎  「天井が高いんですねえ、すごい数のライトだなあ」
  敷島  「ステージのセットが何とも派手だねえ」
  太田  「フフ、でも裏側から見るとひどいもんです」
  敷島  「あっ!あそこにいるのは歌手の森ひろしと五木進一じゃないですか!」
  太田  「ええ今回のゲストはあの二人と、そしてトリとして女王美空はるみが歌うわけです」
  敷島  「あ、あの・・はるみさんは?」(キョロキョロ)
  太田  「ええ、最初に音合わせをしましてね、それが終わって控え室で一服しておりますが、もうそろそろ顔を出すんじゃないかと・・・・あっ、噂をすればです、来ましたよ」

演歌の女王美空はるみがきらびやかな衣装を身にまとい何人もの付き人を従えてスタジオに入ってきた、
  大塚  「おおっ、美空はるみじゃあ!」
 正太郎  「へえ~貫禄あるなあ」
  敷島  「こ、こんな近くで見られるなんて」( 心拍数がハネ上がる )
  太田  「やあ、はるみちゃん、こっちこっち」(手招く)
  美空  「あら、社長、おはようございます」 (この世界ではたとえ夜でも『おはよう』なのだ)
  敷島  「わっ来る!美空はるみが来る!歩いて来るよ、歩いて!」
  大塚  「そりゃ歩きもしますよ」
  太田  「はるみちゃん、紹介しよう、こちらが今日のCM撮影に出演してくださる金田正太郎君と敷島博士だ」
  美空  「初めまして、お噂はかねがね伺っております、美空はるみでございます」
 正太郎  「初めまして、金田です」
  敷島  「し・・し・・敷島です、あの、これ・・」( 大きな花束を差し出す)
  美空  「まあキレイ、どうもありがとうございます」
  太田  「そして彼が呼んでないけどついて来た俺の友人の大塚だ」
  大塚  「よけいなこと言うな」
  美空  「大塚さんはCM撮影をされませんの?」
  太田  「ああうん、こいつのフィギアはね、第一弾があまりにも素晴らしいということでそれ以上のリクエストがないんだよ」
  美空  「へえ、そういうもんなのかしら?」
  大塚  「はあ、なんか知らんけどそういうもんらしいです」
  太田  「それよりはるみちゃん、よかったねえ、念願かなってようやく敷島博士に会うことができて」
  美空  「ええ、あんなすごいロボットをお作りになった敷島さんてどんな方なんだろうって前々から思ってましたの、今日お姿を拝見してよくわかりましたわ、こんな素敵な方の人形ならそりゃ売れて当然ですもの」
  敷島  「い・・いや・・どうも・・参りましたな」
  美空  「今日は敷島さんのために精一杯歌います、ゆっくりと楽しんでいってくださいね」
  敷島  「あ・・ありがとうございます」
すっかりメロメロの敷島であったが実はこれには「裏」があった、時間を一週間ほど前に戻そう、
場所は同じくこの関東テレビのCスタジオである、本番を終えた美空はるみに太田が話しかけている、

  太田  『・・そういうわけでね、来週の収録の時にこのスタジオでCMの撮影もついでにやってしまいたいんだよ』
  美空  『でも二人ともシロートさんなんでしょ?引き受けてくれるんですか?』
  太田  『そこなんだよねえ、いきなりCMに出てくれなんて言ったってねえ、普通は断わられちゃうよねえ~そこでさ、はるみちゃんに協力してほしいんだけどさ、聞くところによると敷島さんという人ははるみちゃんの大ファンなんだってさ、だからはるみちゃんが前々から敷島さんに会いたがってるって話をしてやったら食いつくんじゃないかと思うんだ』

  美空  『アタシが?・・でも別に会いたくないし』
  太田  『上辺だけでもいいからさ、会ったら一応嬉しそうに振舞ってあげてよ』
  美空  『いいんですか?そんな騙すようなことして』
  太田  『嘘も方便って言うじゃない、きっとはるみちゃんを目の前にしたら思いっきり舞い上がっちゃうだろうからわかりゃしないって』

まあ真実なんてこんなもんである、知らぬが仏、確かに敷島は幸福感で舞い上がっていた、そして華々しく本番が始まったのだ、
      「みなさんコンバンワ!歌のゴールデンショーの時間がやって参りました、今日も豪華なゲストを迎えて素晴らしい歌をお届けします」

オープニングのあと森ひろしと五木進一が熱唱をくり広げたあとトリを飾るのは演歌の女王、美空はるみである、最前列でかぶりつくように見上げる敷島、
  美空  「♪ミカンの~花びらが~~♪風~に散ったよなあ~♪」
  敷島  「う~ん、いいねえ『ミカン追分』」
  美空  「♪ひ~と~り酒場でえ~♪飲む酒は~~とてもとても苦い酒え~♪」
  敷島  「く~~しみるねえ、『苦い酒』」
  美空  「♪勝~つと思えば~♪必ず~勝てる~♪」
  敷島  「いよっ、はるみちゃん!」
  美空  「♪ワッショイワッショイ~~♪そ~れ、それそれ宴会だあ~♪」
  敷島  「いよう!『宴会マンボ』!」
美空はるみは素晴らしい歌唱力で見事にヒットメドレーを歌いきった、「いやあ!よかったあ~!」感動のスタンディングオーベエションを送る敷島であった
   ( つづく ) 

2006年11月29日

正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア3

司会者 「それではこの辺でお別れいたします、来週のゲストは大御所、三波夏雄、森田英雄のお二人です、どうぞお楽しみに」
出演者一同カメラに手を振ってエンディングが終了しテレビ収録は終わった、
        「はーーい、OKです、お疲れ様でした!」とスタジオにプロデューサーの声が流れる、
        「お疲れ様!」  「お疲れえ!」  「お疲れさ~~ん!」
スタッフ、出演者が声をかけ合い三々五々スタジオを後にしていく、美空はるみが敷島の前を通り過ぎる、

  敷島  「いやあ、素晴らしかったですよ、はるみさん!」
  美空  「どうも」 ( 軽く一礼しただけでサッサと出て行ってしまった )
  敷島  「えっ・・?」
自分に会いたかったと言ったわりにはえらくあっさりと通り過ぎてしまった美空はるみの態度にちょっと肩すかしを食らった感のある敷島、
  太田  「いやあ、彼女このあとのスケジュールがかなり押してましてね、時間があれば敷島さんとゆっくり話したかったんでしょうが、残念ですな」
  敷島  「はあ・・そうですねえ、大スターですもん、そりゃそうですね」 ( と都合よく納得する敷島であった )

歌のゴールデンショーの出演者およびスタッフ全員がスタジオを出て行き、後に残ったのはCM撮影班と敷島たちだけである、
スタジオの片隅に2種類の簡単な背景が用意されている、若者風の部屋、そして書斎風のセットである、

  監督  「それじゃあまず衣装合わせとメイクをやりましょう、衣装さんメイクさんよろしく!」
正太郎と敷島にスタイリストが選んだ服が着せられる、正太郎には青いポロシャツ、敷島にはワインレッドのカッターシャツにダークグレーのジャケット、衣装合わせが終わるとヘアメイクで髪型を整える、さらに薄いファンデーションが顔全体に塗られ準備はOKとなった、

  監督  「じゃあまず正太郎君からいきましょう」
 正太郎  「はい、お願いします」 ( 若者風の部屋のセットのイスに腰かける )
  監督  「(メモを見せ) セリフはたったこれだけです、特に演技とかしなくていいですよ、フィギアを手に持って笑顔でセリフをさらっと言ってもらうだけでけっこうですから」
 正太郎  「ええと・・はい、わかりました」
  監督  「とりあえずカメラを回します、リハーサルのつもりでやりますけど、もし問題なければ即OKってことにしちゃいますから」
 正太郎  「はい、」
  監督  「それじゃあいきます、ライト当てて!用意!3・・2・・1・・カチン!」
 正太郎  「こんにちは、金田正太郎です、ドリーム玩具から僕の新しいフィギアが発売になりました、ぜひ君の部屋に飾ってやってください」
  監督  「・・はい、OK!」
 正太郎  「今のでよかったですか?」
  監督  「ええもうバッチリ!さすが正太郎君だ、一発OKですよ」
 正太郎  「ありがとうございました」
  監督  「さあ次は敷島さんです、この調子でやっちゃいましょう、敷島さんのセリフはこれですので (メモを渡す)」
  敷島  「あ・・はい」
    ( メモをじっくりと見てぶつぶつとつぶやきながら書斎風のセットのイスに腰かける )
  監督  「じゃあいきますよ、用意!3・・2・・1・・カチン!」
  敷島  「ごきげん・・いかがですか・・しき、しままま・・あっ、ごめんなさい!」
  監督  「はいカット!大丈夫ですよ敷島さん、リラックスしていきましょう」
  敷島  「はい・・スーーハーー( 呼吸を整えている )」
  監督  「もう一度いきます、用意!3・・2・・1・・カチン!」
  敷島  「ご機嫌いかがですか、敷島です、私の新しいフィギアをぜひあなたの元へお届けしたい、どうぞよろしく」
  監督  「はいカット!」
  敷島  「・・どうでしたでしょうかねえ?」
  監督  「ちょっとねえ、笑顔がひきつってるんですよ、右の頬がヒクヒクッと動いちゃって・・」
  敷島  「ひきつってましたか?」
  監督  「気を取り直していきましょう、用意!3・・2・・1・・カチン!」
  敷島  「ご機嫌いかがですか、敷島です、私の新しいフィギアを・・」
  監督  「あっ!カット!・・・今度は鼻がヒクヒク動いてますよ」
  敷島  「えっ、鼻が?( つい手で鼻を押さえる )」
  太田  「監督、敷島さんの場合はダンディさが売りにもなっとるわけだから別ににこやかな笑顔である必要はないんじゃないかな?」
  監督  「そうですねえ・・じゃあほんの少しはにかむような感じでいきましょうか?」
  太田  「うん、それがいいと思うな」
  監督  「じゃあ敷島さん、少し気恥ずかしそうな笑みでお願いします」
  敷島  「はい・・実際かなり気恥ずかしいですしね」
  監督  「じゃあほとんど今の素の状態でいけちゃいますね、よしここで決めちゃいましょう、用意!3・・2・・1・・カチン!」
  敷島  「ご機嫌いかがですか、敷島です、私の新しいフィギアをぜひあなたの元へお届けしたい、どうぞよろしく」
  監督  「はいOK!いやあそのはにかんだ笑顔、なかなかシブかったですよう、バッチリです!」
  敷島  「そうですか、ありがとうございます」
  監督  「社長、これでよろしいですか?」
  太田  「うん、OKだ、正太郎君、敷島博士、どうもお疲れ様でした、お二人ともギャラなどお受け取りになる方ではないことぐらい承知しておりますが、このあとせめて食事くらいはおごらせてください、よろしいでしょう?」
 正太郎  「あ・・はい」
  敷島  「はあ、ならばお言葉に甘えまして」
  太田  「大塚、お前も付き合えよ」
  大塚  「ほう、野次馬のワシにもおごってくれるんかい?」
  太田  「ああ、その代わりこれから局の人間とちょっと打ち合わせがあるんでな、悪いが30分ほどここでお二人の相手をしててあげてくれんか」
  大塚  「( おどけて )へへ~~社長様!」  (つづく)

2006年11月30日

正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア4

スタジオではCM撮影班が手馴れた手つきでてきぱきとセットを片付けている、

  大塚  「どうじゃね二人とも?撮影を終えた気分は?」
  敷島  「どうと言われてもねえ、なんかよくわからないうちに終わってしまいましたね」
 正太郎  「ホント、そんな感じです」
  大塚  「さっきの映像が全国に流れるわけですからな、いやワシのフィギアが出なくてよかったですよ、もし出ていたらワシまでCMに引っぱり出されるところだった」
 正太郎  「太田さんって・・人を丸め込めるのが上手な人ですねえ」
  大塚  「そうじゃね、『鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス』というタイプの奴じゃよ、今回は美空はるみをエサに敷島さんを陥落させよった」
  敷島  「はは・・見事にやられてしまいました」
  大塚  「しかし敷島さん、美空はるみともうちょっとゆっくり話ができるかと思っとりましたが残念でしたなあ」
  敷島  「フフ、ひょっとしたら一緒に食事でもできるかなと期待とかしてたんですけどね、まあしかたないでしょう、それはまた次の機会に・・」
  大塚  「そうですな・・また次の機会にでも」
    ( その次の機会は永遠に訪れることはない )

ふと大塚は撮影用のカメラに興味を示し近づいて行った、物珍しそうに右から左からなめ回すように見ている、
  大塚  「ふ~ん、ゴツイもんじゃなあ」
 正太郎  「署長さんも趣味で8ミリをよく撮ってますよね」
  大塚  「うん、まあこれに比べりゃオモチャみたいなもんじゃが・・」
  監督  「カメラがお好きなんですか?」
  大塚  「ああ、どうも・・つい珍しくてね、この中にビデオテープが納まっとるんじゃね?」
  監督  「ええ、今アメリカの放送局でも使ってる最新のカメラです」
  大塚  「さぞ高いんじゃろうねえ」
  監督  「そうですねえ、200万は下りません」
  大塚  「ヒュ~(口笛)」
  監督  「技術の進歩で映像はどんどん鮮明になっていますよ」
  大塚  「いいなあ、こういうカメラで撮ってみたいなあ」
  監督  「よかったら撮ってみますか?」
  大塚  「・・いいのかね?」
  監督  「ええ、順調に撮影が終了したんでまだカセットには10分以上テープが残ってるんです、よろしかったらどうぞ」
  大塚  「それじゃあ・・ちょっとやらせてもらおうかな」
  監督  「ファインダーはここです、わかりますね?こうやって肩に担ぐようにして・・撮影のON,OFFはこのボタンです、ズームインとアウトはここを回せばできますから、撮った映像はこの再生ボタンを押せばファインダーから見ることができます」
  大塚  「ふむふむ、こうやって・・ここを回すとズームか、おう!こりゃあ敏感に反応するなあ」
    ( 大塚はまずカメラを正太郎に向ける )
  大塚  「(ファインダーを覗きながら) お~い、正太郎君」
 正太郎  「ハハハ、」( カメラに向って手を振る )
  大塚  「なんか普通に撮ってもおもしろくないのう、おっ!」
ファインダーから眼を離して肉眼でスタジオの片隅を見る、間仕切りで細かく仕切られた一角に衣装や小物が雑然と置いてあるスペースを見つけた、

  大塚  「おう、そこにいろいろ置いてあるじゃないか」
 正太郎  「そこって・・どこ?」
  大塚  「ほら、そこの間仕切りで仕切られたいちばん右じゃよ」
    ( 三人が近づいて覗きこむ )
 正太郎  「へえ、いろいろ小物とか衣装があるなあ、フフ・・つけヒゲにカツラもいっぱいだ」
  大塚  「監督さん、ここに置いてある物じゃが・・さわっちゃいかんのかな?」
  監督  「いえ、もう古い物ばかりですし、近々廃棄する予定ですからどうぞご自由に」
  大塚  「フフフ、じゃあ正太郎君、どれか衣装をつけてみなさい」
 正太郎  「ええ~、僕がつけるのう?でも大人用ばっかりだからサイズがなあ・・」
  大塚  「そこに小さいのがあるじゃないか」
 正太郎  「これ何だろう?カツラとセットになってるけど・・カツラのてっぺんに何で日の丸の旗が?ああ、そうかわかった!これ、「おそ松くん」に出てくるハタ坊だあ!」
  大塚  「ハタ坊って・・あの「ハタ坊だジョーっ」て言う奴だな?」
 正太郎  「あれ、署長さん知ってるの?」
  大塚  「はは、ワシだってこう見えてもけっこうマンガを読んどるんじゃよ、こりゃあいい、正太郎君、そのハタ坊の衣装とカツラをつけてみなさい、ほれほれ、早く!」
 正太郎  「フフ、もうしょうがないなあ」
   ( ハタ坊のよれよれの服と日の丸の旗が一本突き立っているカツラをかぶる )
 正太郎  「どう、これで?」
  大塚  「わははは、なかなか似合うね、でもイマイチハタ坊らしくないなあ」
 正太郎  「(鏡を見て) え~と、そうか、両方のほっぺたを赤くして、それと鼻水もつけないとな」
  敷島  「正太郎君、ここに頬紅があるよ、これ使ったら?」
 正太郎  「目ざとく見つけますねえ・・ようし、こうなったらどうにでもなれだ!」
   ( 両方の頬に紅を塗って赤くする )
  大塚  「うははは、だいぶそれらしくなったじゃないか、あと・・鼻水になるような物はないかな?」
 正太郎  「ええと・・そうだ、このメンソレータムなら青っ鼻に見えるでしょ?」
  大塚  「うん、そりゃ名案だ」
    頬紅とメンソレータムをつけてハタ坊が完成した、目をトロ~ンとさせて・・・
 正太郎  「僕~ハタ坊だジョ~」
  大塚  「わははは!うまいうまい!」 ( 悦に入ってビデオカメラを回している )
  監督  「あはははは!」
  敷島  「ははは、そのトロ~ンとした目と喋り方がいいよねえ」
  大塚  「正太郎君、さっきのCM,そのハタ坊でやったらどうなるね?」
 正太郎  「僕~、正太郎だジョ~、みんな~僕のフィギアを買ってくんないと僕泣いちゃうジョ~~」
  大塚  「わははは!こりゃ傑作じゃ!」
  敷島  「ははは、なかなか芸達者だねえ」
 正太郎  「敷島さんも何かやってくださいよ」
  敷島  「えっ私?いや、私はいいよ」
 正太郎  「ダメダメ!僕ばっかりズルいですよう」
  敷島  「何をやれっていうんだね?」
 正太郎  「そうだ!僕がハタ坊やったから「おそ松くん」つながりでイヤミやってくださいよ」
  敷島  「イヤミって・・あのシェーッっていう?」
 正太郎  「そうそう、イヤミだったらそのスーツのままでイケるし・・あとはつけヒゲとカツラだな」
     ( そう言ってそれっぽいヒゲとカツラを探し始める )
  敷島  「おいおい・・」
 正太郎  「あっ!このヒゲなんかそれっぽい、ちょっとつけてみて・・・ダメ!ほらほらじっとして・・」
  大塚  「うははは!イヤミのヒゲじゃあ、博士、メガネは取らんといかんですよ」
  敷島  「やれやれ・・」 ( メガネを外しケースに収める )
 正太郎  「カツラはええと・・うん、これだな、博士これつけて」
  敷島  「ええと・・こうかね?」
 正太郎  「あはははは!」 ( 指さして笑う )
  大塚  「う~ん、これに出っ歯をつければ完璧なんじゃが・・」
  敷島  「勘弁してくださいよ、それにそんな物ありませんよ」
  監督  「出っ歯のつけ歯ならありますよ」
 正太郎  「えっ、あるんですか?」
  監督  「そこの下から二番目の引き出しを開けてみてください、その中の黒っぽいケースの中に・・」
 正太郎  「(言われた引き出しをあける) このケースですね?・・あっ!これこれ!これピッタリ」
  敷島  「ちぇっ、そんな物まであるなんて・・」
 正太郎  「ほらほら博士 ( 強引に口に持っていく )」
  敷島  「ちょ、ちょっと待ちなさい!一度よく洗ってから」
 正太郎  「大丈夫ですって、後で口をゆすげばいいじゃないですか、ほらほら、」
  敷島  「ええい、もう」 ( カパッと出っ歯の入れ歯を装着する )
 正太郎  「あははは!イヤミだイヤミだ!」
  大塚  「わははは!不思議と違和感ありませんな」 (カメラを回している)
  敷島  「ええいもう、どうにでもなれ!」  (つづく)

2006年12月02日

正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア5

大塚  「(カメラを回しながら) ほれほれ敷島さん、イヤミの決めポーズじゃ」
  敷島  「もう、わかりましたよ、シエーーッ!」
 正太郎  「ダメダメ!ぜ~んぜんダメ!動きにキレがないですよ、もっとこういう風にシャープな動きで・・シエーーッと」
  敷島  「こうかね?シエーーッ」
 正太郎  「もっとグッとアゴひいて!」
  敷島  「いちいちうるさいねえ、シエーーッ!」
 正太郎  「あはは、いい感じになった」
  大塚  「じゃあ敷島さん、さっきのCMをイヤミ風にやってごらんなさいよ」
  敷島  「イヤミって・・ざんすとか言うんだよね?」
 正太郎  「そう、それでウヒョヒョヒョヒョって笑うんです」
  敷島  「じゃあ・・シエーーッ!私は敷島ざんす」
 正太郎  「私じゃなくてミーって言ってくださいよミーって」
  敷島  「シエーーッ!ミーは敷島ざんす!みんなミーの新しいフィギアを買うざんすよう、ウヒョヒョヒョヒョ」
 正太郎  「あははは、最高!」
  敷島  「・・・ミーはもう情けないざんす」
  大塚  「いやあ、おもしろい映像が撮れたな、正太郎君、今の映像見てみるかね?」
 正太郎  「あっ見せて見せて!」
  大塚  「じゃあこのファインダーを覗いてごらん・・いいかな?「再生」を押すよ」
 正太郎  「(ファインダーを覗きながら) あははは、これが僕?バカ丸出しだあ」
こうして待ち時間に楽しいひと時を過ごした三人であったが後日このふざけた映像がとんでもない悲劇を、いや喜劇を生むことになるのだ、

翌日 ドリーム玩具本社 社長室
  太田  「じゃあ、一応見せてくれ」
  監督  「はい」 ( カメラをテレビにつなぎ再生ボタンを押す )
 テレビ  『こんにちは金田正太郎です、ドリーム玩具から僕の新しいフィギアが・・・・・ 』
  太田  「うん・・正太郎君のは特に問題ないな、このまま使おう」
 テレビ  『ご機嫌いかがですか、敷島です、私の新しいフィギアを・・・・・・ 』
  太田  「そうだなあ、敷島さんの映像はもう少し明るさを抑えてみてくれ・・・あとは特にない」
  監督  「わかりました、2~3日中にBGMと字幕スーパーも仕上げておきますので」
  太田  「ああ、よろしく」
  監督  「では、そういうことで」 ( 映像を止める )
  太田  「あれっ?ちょっと待て、何だ今映ったのは?」
  監督  「えっ?」
  太田  「止める直前に変な映像が映ってたぞ・・なんか正太郎君みたいに見えたが・・」
  監督  「ああ・・これは待ち時間の間にみなさんがお遊びで撮ったやつでして」
  太田  「ちょっと見せてくれ」
  監督  「えっ?いやホントにふざけた映像なんですよ」
  太田  「いいから見せろ」
  監督  「あ・・はあ」 ( 再生ボタンを押す )
      『僕正太郎だジョ~、みんな僕のフィギアを買ってくんないと・・』
      『シエーーッ!ミーは敷島ざんす、みんなミーの新しいフィギアを・・・・』
  太田  「わはははは!こりゃあ傑作だ!」
  監督  「はあ、人間コスチュームを変えるとけっこうバカやっちゃいますね」
  太田  「うん、これだ!これだよ!・・こりゃあイケる!」
  監督  「はあ?」
  太田  「最初の映像なんておもしろくも何ともない、これならインパクトはバッチリだ!」
  監督  「こ・・この映像を使うっていうんですか?」
  太田  「CMはな、1にも2にもインパクトだ、いいか、この映像に合うコミカルなBGMつけろ、それと映像のバックにアニメーションでいろいろオカズをつけるんだ、フフフ、こりゃあウケるぞう」
  監督  「い、いいのかなあ?」
それからさらに二週間が経過した、初めてCMが放送されるというその日、敷島夫妻はテレビの前に陣取り歌謡ゴールデンショーが始まるのを待っている、やがて時報が午後8時を示すと、『みなさんこんばんわ、歌謡ゴールデンショーの時間です!今日も素晴らしい歌の数々をお送りします』

  春江  「始まったわ!このオープニングのあとのCMがそれでしょ?フフフ、どんな風になってるのかしら」
  敷島  「どんなって・・何度も言ってるだろ、ただ人形を手に持ってひと言サラッと喋るだけだって」
  春江  「そりゃ聞いてるけど、あなたのテレビ映りがどんなかなあって」
  敷島  「メイクとライトの当て具合でちょっぴりよそ行きの顔になってる程度さ」
オープニングが終わり「この番組は夢をお届けするドリーム玩具の提供でお送りいたします」という声が流れたあと・・

  CM  『僕、正太郎だジョ~、みんな僕のフィギアを買ってくんないと僕泣いちゃうジョ~』
  春江  「えっ?・・こういうCMなの?」
  敷島  「そ、そんな!・・ま、まさかあ!」( と敷島が叫んだ直後 )
  CM  『シエーーッ!ミーは敷島ざんすう、みんなミーの新しいフィギアを買うざんすよ~ウヒョヒョヒョヒョ』
  春江  「な・・なんなのコレ?」
  敷島  「あわ!・・あわわわ!」
その強烈なインパクトのCMは茶の間で大ウケしフィギア第二弾はまたも大ヒットとなったが
このCMが流れてからしばらくの間、敷島夫婦は一歩も表に出られなかったという
  
       正太郎日誌 「続」Oh!フィギア (完)    

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