正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア1
正太郎の声 「大塚署長の中学校時代のクラスメイトでありドリーム玩具の社長を勤める太田氏の発案で僕と大塚署長と敷島博士の「鉄人フィギアセット」が発売され好調なセールスを記録した、聞けばその年のフイギア業界の売れ行きベスト3に入ったというから驚きだ、当人たちにすればいささか気恥ずかしいが購入してくれた方々がたいへん喜んでくれていることと収益の一部がいくつかの環境保護団体に寄付されて結果的にとても有意義なことだったと自負している、第一弾のフィギアセットが発売されてからおよそ半年後、再び太田氏が大塚署長を伴って敷島研究所にやって来た、なんと僕たちのフイギアの第二弾を発売しようと言うのである」
敷島研究所
太田 「いやあ、正太郎君、敷島博士、ご無沙汰をしておりました」
正太郎 「お久しぶりです」
敷島 「太田さん、第二弾のフィギアを出されるんですって?」
太田 「はい、全国のファンから要望がよせられましてな」
敷島 「そんなに・・私たちなんかの人形に人気があるんでしょうかね?」
太田 「ええ、そりゃもうたいへんなもんです、鉄人に対する大衆の支持がいかに熱いかということを物語っておりますよ」
敷島 「まあ、喜んで頂けるなら私たちとしてはやぶさかではないのですが・・・」
正太郎 「でもどんなフィギアなのかやっぱり気になりますね、前回みたいにアレですか?そうとうデフォルメされちゃってるのかな?」
太田 「はい、今回はですね、デフォルメの方向性をガラッと変えてみました」
正太郎 「・・方向性を変えた?」
太田 「第一弾はメルヘンチックというかマンガチックというか、そんな感じでしたよね?それに比べたら今回のデフォルメはぐっとリアルになっとります、正太郎君の場合は中学3年生くらいの設定で逞しい「青年」の雰囲気をもたせてあります、同じく敷島博士の場合も逞しさとダンディさを併せ持つというイメージで作ってみました」
正太郎 「逞しい青年・・・ですか?」
敷島 「逞しさとダンディさ・・・ですか?」
大塚 「それじゃあ太田よ、ワシのフィギアも前回みたいなズングリムックリじゃのうてグッとひきしまった体形に?」
太田 「ああ・・うん、それがなあ大塚、ちょっと言いにくいだが、」
大塚 「なんじゃ?」
太田 「今回お前のフイギアを発売する予定はないんだよ」
大塚 「なんじゃとう!」
太田 「お前さんの場合はみんな第一弾のフィギアで満足しとるみたいでな、別なバージョンを作って欲しいという要望は来とらんのだ」
大塚 「なんじゃそれは!失礼な話じゃな!」
太田 「そう言うなよ、ウチも商売だからさ、売れない商品を作るわけにはいかんのだ」
大塚 「ふん、ああそうかい、もうええわい」
太田 「怒らんでくれよ大塚」
大塚 「誰も怒っとりゃせん!」
太田 「どう見たって怒ってるだろ?」
大塚 「ワシのことはいいからとっとと話を進めんかい!」
太田 「わかった・・・ええと、それでですね、今回もお二人のフィギアの試作品をお持ちしましたのでご覧頂いて承諾を
頂ければと・・まずこれが・・・正太郎君のフィギアです」
正太郎 「へえ、」
敷島 「ほう」
太田 「どうです?ほとんど高校生という雰囲気でしょ?」
正太郎 「ズボンがスラックスになってますね」
太田 「ええ、半ズボンはちょっとどうかと思ったもので・・」
敷島 「顔つきも精悍じゃないか、本当に青年の雰囲気というものがあるね」
正太郎 「フフ、やっぱり気恥ずかしいけど、でもこれならほとんど抵抗ないや」
太田 「そう言って頂けると思ってましたよ、そしてこれが・・・敷島さんのフィギアになります」
大塚 「ほう、こりゃあ・・」
太田 「がっしりとしとるでしょう?」
敷島 「これもまたオーバーだなあ、私はこんなに逞しくありませんよ」
太田 「前回はあまりにもスマートにし過ぎましたからね、今回はその逆を行きました、こうすることで買い求める対象年齢がぐっと広がりますよ、若い女性はもちろんご婦人方にも人気が出ると思いますよ」
大塚 「なかなか彫りの深いいい顔になっとるじゃないか」
太田 「ねっ?ダンディズムを感じるでしょ?」
敷島 「こういうのがダンディズムなんですかね?」
太田 「フィギアというのは顔が命と言っても過言ではありませんからな、この表情を作るのにそうとう苦労しました」
正太郎 「博士、カッコいいじゃないですか」
敷島 「そうかね?まあ確かに最初のフィギアと比べたら抵抗ははるかに少ないがね」
太田 「如何でしょう?これでOKを頂けますかな?」
敷島 「はあ・・まあこれならば何とか」
正太郎 「僕も異存はありません」
太田 「いや、ありがとうございます、今回はかなり自信がありましたからな、そう言って頂けると思っておりました」
大塚 「今回も収益の一部をどこぞの施設に寄付するんじゃろうな?」
太田 「うん、親のいない子供たちの施設に役立ててもらおうと思ってな」
大塚 「おう、そうか、そりゃいいことじゃ」
正太郎 「たくさん売れるといいですね」
太田 「そこでですね、今回は宣伝としてテレビコマーシャルに力を入れたいと思っておるんです」
敷島 「ほう、このフイギアをテレビのコマーシャルに?」
太田 「そのためにですね、正太郎君と敷島博士に無理を承知で何とかご協力を頂けないものかと・・・」
正太郎 「何をするんですか?」
太田 「はい、そのコマーシャルに出演して頂けないでしょうか?」
正太郎 「はあ?」
敷島 「私たちが・・コマーシャルに?いや、それはいくらなんでも・・」
太田 「だめでしょうか?」
敷島 「役者じゃないんですから・・芝居なんかできませんよ」
太田 「いえ、演技などしていただく必要はないんです、ただカメラの前でフィギアを手に持って笑顔で新しいフィギアをよろしくと
ひと言サラッとコメントして頂ければそれでいいんです」
敷島 「それにしたって・・ねえ正太郎君?」
正太郎 「自分のフィギアを本人が宣伝するなんて・・すごく照れくさいですよ」
太田 「しかし宣伝としてのインパクトは十分です、売れ行きにも大きく影響しますし・・」
正太郎 「う~~ん」
敷島 「すみませんが、勘弁してもらえませんかねえ?」
大塚 「しかし・・・お前はホントに厚かましい奴じゃなあ」
太田 「仕事熱心と言ってくれよ、もうスタジオだって押さえてあるんだ」
大塚 「こら、本人たちの承諾も得とらんのに勝手なことをするな!」
太田 「いやいや、ちょうどその日にわが社提供の歌番組「歌謡ゴールデンショー」の収録があるんでついでやってしまおうと思ってな」
大塚 「歌謡ゴールデンショー?・・ああ、あの番組はお前んとこがスポンサーじゃったか」
太田 「ああ、視聴率もいいんだぜ、敷島さん、ちょうどその日は演歌の女王美空はるみが出演することになっとるんです」
敷島 「えっ!美空はるみが?」 ( 敷島の目がキラリと輝いた )
太田 「聞くところによると彼女の大ファンだそうですな?」
敷島 「ええもう、デビュー当時からのファンでして」
太田 「先日もはるみちゃんとスタジオで話をしてましてね、このCMの話をしたら是非一度敷島博士とお会いしたいわ~なんてことを言ってましてね」
敷島 「えっ!ほ・・本当ですか!」
太田 「本当ですとも、でもお二人にあまり無理を押しつけるわけにもいきませんなあ、どうしてもお嫌なら何か他の方法を考えましょう、でもはるみちゃん・・がっかりするだろうな~、でもしょうがないかなあ~」
敷島 「え、え~と・・」( そわそわ )
太田 「そうですかあ~~ダメですかあ~~、はるみちゃんに何て言おうかなあ~~」
敷島 「あの・・ねえ正太郎君」
正太郎 「はい?」
敷島 「我々としては気恥ずかしい限りだがどうだろう?ここはこの際乗りかかった船という奴で、協力してあげてもいいんじゃないかな?」
正太郎 「いいんですか博士?」
敷島 「私たちを支持してくれる大勢の方々のために少々の恥ずかしさは我慢をしようじゃないか」
正太郎 「そうですか・・博士がそれでいいんでしたら僕も・・」
太田 「お引き受け頂けますか!」
敷島 「はあ、私たちでお役に立てるのなら・・」
太田 「ありがとうございます!とびきりいいCMを作らせて頂きますよ、収録は今週の土曜日の午後3時からを予定しておりますので
ご多忙でしょうがスケジュールの調整をよろしくお願いします」
敷島 「わかりました、どうかお手柔らかに」
大塚 「(太田の耳元に小声でつぶやく) ふん、芸能人をエサに使うとは考えよったのう、この悪党めが」
太田 「人聞きの悪いこと言うな」 (つづく)
