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復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎 アーカイブ

2006年09月02日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎1

正太郎の声 「年に一度、東京ロボットショーが代々木総合公園で開催される、世界ロボット博に比べたらスケールは小さいが国内のロボットと海外のロボットメーカーを数社招きその性能を披露するイベントなのだが今回は日本の、それも大阪から思ってもみなかったライバルが出現したのだ」

東京ロボットショー特設会場 一台のロボットの前に立ち見上げている正太郎と敷島、

  敷島  「・・・これが雷人(らいじん)というロボットか」
 正太郎  「顔の造りは違うけど何となく鉄人を彷彿させますね」
そのロボットは鉄人と同じく西洋の甲冑を着た騎士を思わせる、顔の造りは鉄人よりかなりいかめしく強いて例えればマジンガーZに近い、

 正太郎  「協賛がすごいですよ、関西電力、神戸重工、阪神製鉄、松上電器、関西の大手企業ばかりです」
  敷島  「関西の企業が共同でロボットを出品するという話は耳にしていたがまさかこういうタイプだとはねえ」
     (その時敷島の背後から声が) 「敷島さんと違いますか?」
  敷島  「(その声にふりむく)・・・・・?」
   男  「私のこと覚えてはりますか?」
  敷島  「君は・・・島田君か!」
  島田  「はい、島田です、えらいご無沙汰しまして」
  敷島  「いや、本当に久しぶりだ、あれからどうしていたのかね?」
  島田  「へえ、まあいろいろありまして、今は神戸重工さんにお世話になっとるんですわ」
  敷島  「神戸重工?・・じゃあ君はこの雷人というロボットの関係者なのか?」
  島田  「へえ、実はこれ、私が設計しましてん」
  敷島  「なんと!君が製作者だったのか?」
 正太郎  「・・・博士?」
  敷島  「ああ、紹介しよう、島田君といってね、昔乗鞍岳で鉄人製作のスタッフの一人だったんだよ」
 正太郎  「そうだったんですか」
  島田  「正太郎君やね?島田幸治です、どうぞよろしゅう」
 正太郎  「こちらこそ」
  島田  「確かに昔、鉄人製作のスタッフをしとったんやけど製造に着手し始めた頃に病気で体を壊してしもてね、早々にリタイヤしたんや」
 正太郎  「そうでしたか」
  島田  「胸の病やったんやけど治療と養生で一年近く病院暮らしで退院した頃はもう僕の出る幕はなくなってたわ」
  敷島  「退院して大阪へ帰ったとだけ聞いたんだよ」
  島田  「へえ、やっぱり未練みたいなもんを引きずってましたけど、まあしゃあないとあきらめてしばらく他の仕事をしとったわけですけど二年前に神戸重工はんから声がかかりまして鉄人に匹敵するロボットを作ってみいへんかと言われたんですわ」
  敷島  「ほう」
  島田  「まあ関東に対する対抗意識もあったんでしょう、関西の大手企業が協賛してひとつ作ってみよやないかと・・」
  敷島  「そうか・・しかし君一人で設計をしたのかね?」
  島田  「さあそこですわ、なんぼ私が鉄人のスタッフの一員やったというても敷島さんみたいに構造のすべてを把握してたわけやおまへん駆動システムの一部を担当しとっただけやから、あとの部分はうろ覚えで詳細となるとわからしまへん、自分の記憶を頼りにいろんなメーカーの技術の人と相談しながらコツコツ図面を書き上げてようやっと仕上がったというわけで・・」
  敷島  「なるほど、いや苦労したんだね」
  島田  「はあ、確かに苦労はしましたけど鉄人作りに参加できなんだ心残りを雷人で果たせたような、なんやそんな気分ですわ」
  敷島  「それで・・この雷人の基本性能はどれほどの・・」
(後ろから会話を遮るように)
   声  「お父ちゃん!」
  島田  「おう、正太郎、どないした?」
 正太郎  「正太郎?」
    ふりむくとそこには正太郎と同年代と見られる少年が立っている、
  少年  「神戸重工の専務さんが呼んでるで、関西電力の偉いさんが来たいうて・・」
  島田  「そうか、わかった、ああ紹介しますわ、息子の正太郎です、正太郎、こちらが鉄人を作りはった敷島博士と金田正太郎君や」
  少年  「島田正太郎です、どうぞよろしゅうに」
  敷島  「君も・・正太郎君というのかね?」
  少年  「へえ、偶然でんな」
  敷島  「そう、今日はお父さんと一緒に見学に来たんだね?」
  少年  「て言うか・・僕一応関係者なんです、雷人の操縦者として」
  敷島  「君がこのロボットを動かすのか?」   (つづく) 

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎2

 島田(父)「まあ親の口から言うのも何ですけど、昔からラジコン飛ばして遊ぶのは得意な子やったんです、操縦教えたらムチャクチャ覚えがいいんです、こいつの右に出るもんがおらしまへん」
  敷島  「へえ」
 島田(父)「正太郎、お父ちゃんちょっと顔出してくるさかい、雷人のこと説明したりい、ほな敷島さん、後で鉄人のブースに顔出さしてもらいます」
  敷島  「ああ、うんあとで・・」
      (一礼してその場を去る島田幸治)
  島田  「あのう・・どこまで聞かはったんですか?」
  敷島  「いや、まだ何も」
  島田  「そうですか、まあ見ての通り全体のイメージはやっぱり鉄人を意識して作られとりますわ」
  金田  「空も飛べるんだよね?」
  島田  「そらあ当然や、水の中だって進めるでえ、外装もムチャクチャ頑丈にできとる、頑丈さでは鉄人にひけは取らんつもりや」
  敷島  「手と足の補助動力についてはどうかね?」
  島田  「そこんとこは本家の鉄人の専売特許やさかいありまへん、その代わり関節部分はえらいゴツイ造りになっててめったなことでは外れんようにできてるんです」
  金田  「でも、それでももし腕とか取れちゃったらどうするの?」
  島田  「その時は安全装置が作動して腕に通じる回路の送電をストップするようになってるんや、少し動きは鈍くなるけどまだまだ戦えるでえ」
  金田  「へえ、まだ実戦とかは経験してないんだよねえ?」
  島田  「うん、近頃世の中平和やからねえ、雷人の腕の見せ場があらへんねん」
  敷島  「武器とかは装備してるのかね?」
  島田  「そらあできまへんわ、法律に引っかかりますよって、せやけどそこは抜け道がちゃんとおまっせ」
  金田  「抜け道って?」
  島田  「はは、そりゃちょっと今んとこは企業秘密いうやっちゃ」
  敷島  「ふむ・・企業秘密ねえ」
しばらく雷人の基本性能を二人に語って聞かせていた島田正太郎であったがふと一人の来場者に目がいく、

  島田  「署長はん、ここやここや」(手を振る)
 来場者  「おお正ちゃん、少し遅れてしもて堪忍やで」
     (警察官の制服を着た50代の男性が三人の元に歩み寄る)
  島田  「署長はん、ご存知やと思うけどこちら敷島博士と金田正太郎君ですわ」
 来場者  「おお、これはこれは、お初にお目にかかります、私、大阪城西署の署長をやっとります君塚いいます、どうぞよろしゅうに」
  敷島  「はじめまして敷島です」
  金田  「金田です」
  君塚  「どないですか?この関西のパワーを結集した雷人は?」
  敷島  「いや驚きました、設計したのがかつての鉄人のスタッフだった島田君だったということも・・」
  君塚  「そうでんなあ、ほんま島田先生はよう努力されましたわ、鉄人にひけを取らんようなロボットを作ってみい言うたかて普通のもんやったら尻込みするところやけど、あきらめんと完成させはったんですから・・」

  敷島  「ところで君塚署長さんは雷人とはどういう?」
  君塚  「はあ、雷人には関西の大手企業はもちろん大阪府警も全面的に肩入れさせてもろとるんですわ、それでまあ、私が担当・・言うたらちょっと大袈裟ですけどな・・」
  敷島  「そうですか」
  島田  「島田正太郎と君塚署長のゴールデンコンビが誕生したというわけや、金田正太郎と大塚署長に負けてられへんでえ」
  君塚  「はは・・まあそういうこってすわ」
  敷島  「はあ」
  金田  「・・・・・・・・・」

正太郎の声 「鉄人と雷人、島田正太郎と君塚署長?偶然だとしてもまぎらわしいったらありゃしない、
関西の対抗心というのもこうまで露骨にされるとうざったいばかりだ」  (つづく)

2006年09月03日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎3

会場内、敷島研究所の展示ブース、この日のために磨き上げられた鉄人が照明を浴びて輝いている、
島田幸治が敷島の元を訪れ雑談に興じている、少し離れたところで所在なげにしている正太郎、

      「金田君」 (正太郎の元へやって来た島田正太郎)
  金田  「やあ、」
  島田  「だいぶ人が少のうなったね」
  金田  「もう閉館時間が近くなったしね」
  島田  「来てくれはったお客さん全部に説明してたら疲れてもうたよ」
  金田  「それだけ注目されてるってことだよ」
  島田  「うん、まあ嬉しいこっちゃけど何か喉が渇いてしもたわ、ジュースでも飲みにいかへんか?」
  金田  「(敷島に)博士、ちょっといいですか?」
  敷島  「ああ、ゆっくりしてきたまえ」
  金田  「じゃあ行こう」
      会場内の休憩所で飲み物を飲む二人、

  島田  「金田君、君一人暮らしやて?」
  金田  「寂しゅうはないんか?」
  金田  「そりゃやっぱり寂しいよ、だから大塚署長や敷島博士のところにしょっちゅう入り浸ってる」
  島田  「お父さんの金田博士が亡くなりはったんは知ってるけど、お母さんはどないしてん?」
  金田  「うん・・それがちょっとね」
  島田  「なんや複雑な事情がやったら別にええけど・・」
  金田  「うん、ちょっと複雑でさ」
  島田  「ほうか・・」 (その理由については前作「母、美弥子」を参照)
  金田  「島田君、君、家族は?」
  島田  「うん、両親と高校生の姉貴がおるよ」
  金田  「雷人の操縦者になることを反対されなかった?」
  島田  「まあな、金田君が何度か危ない目に遭うとるという話を聞くとうちのお母んもやっぱり心配そうやったけどな」
  金田  「うん、操縦者ってのはどうしても敵から狙われるからね」
  島田  「君かて恐いやろ?」
  金田  「そりゃあ恐いよ、でも鉄人は父が心血を注いで作り上げた偉大な発明だからそれを受け継ぐのは子供としての勤めだと思ってる」
  島田  「僕も似たようなもんや、お父ちゃんが苦労して作った雷人が何とか日の目を見るようにしてやりたいんや」
  金田  「そう・・」
  島田  「結局・・心配ではあるけど同じ歳の金田君があんだけ活躍してるのやさかい、あんたも気張ってみいということになってな」
  金田  「そう、それで島田君はどれくらい雷人を動かしてるの?」
  島田  「完成してからほとんど毎日訓練漬けや、延べで言うたらかれこれ700時間くらい動かしとる」
  金田  「へえ、すごいねえ」
  島田  「おもろいでえ、毎日やっててぜんぜん飽きいへんのや、ラジコンなんかとは醍醐味が違うがな、あんなごっついロボットが
       自分の思うように動くんやもん、金田君かて鉄人を動かすいうんはごっつい快感やろ?」
  金田  「うん、自分が鉄人と一体になったような感じで、自分が強くなって戦ってるような気になるよ」
  島田  「うん、その感じ、ようわかるわ」
  金田  「経験した者じゃないとわからないよね?」
  島田  「ほんまになあ」
  金田  「さっき大阪府警が肩入れするって聞いたけど」
  島田  「うん」
  金田  「予算の面倒も見てくれるの?」
  島田  「それがあかんのや、国からの補助はもう鉄人が受けてるさかい雷人までは面倒見られんちゅうことや、年間に一億近く維持にかかるよってなあ、それを全部民間で負担せんといかんのや」
  金田  「そりゃあキツイねえ」
  島田  「そやから関西のいろんなメーカーに協賛のお願いをしてるのや、そや、ええもん見せたるわ」 (ポケットからキャラメルを取り出す)
  金田  「それは?」
  島田  「雷人キャラメルや、ほれ箱に雷人の絵が印刷されてるやろ?まだ試作品なんやけどな、大阪の江崎グリコいうお菓子のメーカーが雷人のスポンサーについてくれることになったんや、他に雷人チョコも発売される予定や」
  金田  「へえ、お菓子のメーカーまで」
  島田  「何もかんも自前でやらなあかんさかいな、ホンマ苦労するでえ、それに君塚署長はんが僕に射撃の訓練もせえ言うて」
  金田  「どうして?」
  島田  「そらあ、金田君が射撃の名手やから僕にもあれくらい上手くならんとあかんて言うんや」
  金田  「名手ってことはないけど・・」
  島田  「名手やがな、相手の持ってる銃だけ弾き飛ばすなんて芸当僕にはできへん、僕やったら手首ごと吹き飛ばしてまうわ」
  金田  「はは・・」
  島田  「ちょっとは練習してるけど、こればっかりは向き不向きがあるよってな」
  金田  「まあね」
  島田  「まあ、こないして苦労しながら何とか今日デビューを飾ったわけやね、今後も関西だけやのうて広く西日本にも雷人をアピールして一社でも多くスポンサーを募らんとあかんけどな」
  金田  「う~ん、大変だなあ、僕らは幸いそういう苦労だけはしないで済んでるもんなあ・・」
  島田  「なんもそこまでせんかてええように思うけど関西人いうのは東京に対して根強い対抗心を持ってるさかいねえ、金田君にしてみたら突然ライバル顔されたらそら、うっとおしいやろうけどまあ堪忍したって、そんでも僕らが何もいがみ合うことはあらへん、仲良うしよな?」
  金田  「うん、そうだね」
  島田  「今度、君ん家に遊びに行ってもええか?」
  金田  「いいよ、おいでよ」
  島田  「どっさりお土産持ってくさかいな」
  金田  「気にしないでいいって」

正太郎の声 「浪速の正太郎こと島田正太郎君は話してみると気さくで朗らかな少年だった、何よりも父親が苦労して作り上げた雷人を何とか世に認めさせようと願う彼の親思いの姿勢は好感が持てた、鉄人といい形で競い合っていければと思った矢先、大事件が発生したのだ」   (つづく)

2006年09月04日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎4

東京ロボットショーが閉幕したその三日後、一大ニュースが新聞各紙の一面を飾った、『 S国軍事クーデター勃発 』

S国海軍イワノフ少佐を中心とする将校グループが率いる反乱軍が首相官邸、人民会議場、ならびに国営放送局を占拠し、首都には戒厳令が敷かれた、イワノフ少佐を筆頭とする軍事政権が樹立されるやに思われたが、決起早々離反者が相次ぎ翌日には反乱軍は政府軍の手によって鎮圧された、首謀者であったイワノフ少佐と他の将校は首都を脱出し国外へ逃亡したと見られる、

それより二日後、正太郎と大塚署長は秘密裏に要請を受け日本国家保安局に赴いた、保安局の廊下を副局長の先導で歩く正太郎と大塚、

 副局長  「今日こちらへ来るということは誰にも?」
  大塚  「はい、警察庁長官より他言を禁じられております」
 副局長  「お願いします、局長から詳しく説明させて頂きますが非常にデリケートな問題が発生しまして・・」
  大塚  「デリケートな問題ですか?・・とにかく鉄人の力を借りたいとだけしか聞かされておりませんでな」
 副局長  「ええ、鉄人にも是非協力をお願いしたいのです」
 正太郎  「鉄人にも?」
 副局長  「すでにもう一組、先に局長室でお待ちです」
  大塚  「もう一組?」
 副局長  「(局長室のドアをあけ) どうぞお入りください」
 正太郎  「あ・・」 (中に入るなり驚きの声を上げる)
 島田正太郎「よう、金田君、また会うたな」
      (ソファには島田正太郎と君塚署長が座っていた)
  金田  「君たちも呼ばれたんだ?」
  島田  「うん、なんや大事らしいで」
 五十嵐  「よくおいで下さいました、局長の五十嵐です」
  大塚  「大塚です」
  金田  「金田です」
 五十嵐  「今日は鉄人と雷人の担当者の方にお集まり頂きましたが・・もうお互いにご存知ですかな?」
  大塚  「はあ、君塚署長とは仕事で何度かお会いしておりますが、島田君とは初めてだったね?」
  島田  「島田正太郎です!どうぞよろしゅうに」
  大塚  「ああ、こちらこそ、突然の呼び出しでビックリしただろうね?」
  島田  「はい、驚きました、せやけどこれが雷人の初仕事やと思うたらなんや胸がときめきますわ」
  大塚  「フフ、頑張っとるねえ、こっちもうかうかしておれんわい」
 五十嵐  「どうぞおかけください」
    (一同がテーブルにつく)
 五十嵐  「みなさんはすでにS国の軍事クーデターについては報道でご存知かと思いますが」
  君塚  「はあ、なんや一日でポシャッてしもたそうですな」
 五十嵐  「はい、首謀者であるイワノフ少佐のグループがまだ部下たちの人心を十分に掌握できてない状態で強引に行動を起こしてしまったんですな、ですから実際に決起に参加した部隊はイワノフが目論んだ半分にも満たなかったのです」

  大塚  「ほう、そうでしたか」
 五十嵐  「参加した部隊の中からも早々に離反者が相次いでそのために政府軍の反撃を容易く許すことになりました」
  大塚  「ふむ、そのような無謀とも思える行動を起こすとは、イワノフとはどんな人物なんです?たかだか海軍の少佐でしょう?」
 五十嵐  「イワノフは三年前まで大佐だった男です」
  君塚  「えらい格下げになったもんでんな、なんでまた?」
 五十嵐  「名前だけ聞いてもおわかりにならんでしょうが、かつて「まだら岩の怪人の首領だった男」と聞けばわかるでしょう?」
  金田  「あの時の首領がイワノフだったんですか?」  (つづく)

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎5

 五十嵐  「彼は任務失敗の責任を問われて降格となりました、もともと権力欲が非常に強い男でしたがこの時点から完全に出世コースから外れて閑職に追いやられていったわけで、何とか起死回生のチャンスを狙っていたようです」
  大塚  「なるほど、動機はよくわかりましたが、それにしても・・」
 五十嵐  「はい、あまりにも事を急ぎ過ぎました、それにもまあ事情というものがありましてね、イワノフは降格されたとはいえ海軍情報部という中枢に近いポストにいたのですが近く極東のはずれの補給基地へ転属になるという話が持ち上がりました、完全なる左遷です、そうなったらもうチャンスの目は失われてしまうでしょう」
  君塚  「なるほど、そやからイチかバチかの大博打に出たっちゅうわけでんな?」
  大塚  「苦し紛れに・・と言った方が正確ですかな?」
 五十嵐  「そうですな」
  金田  「それで首謀者たちは国外に逃亡したということですか?」
 五十嵐  「はい、その事についてS国の若い技術将校が日本大使館に情報を持ち込んできたのです、その情報によるとイワノフたちはキューバに亡命をするつもりらしいのです」
  大塚  「ほう」
 五十嵐  「ただその手段が問題なのです、イワノフたちは恐竜ロボットに乗り込んで海中を航行しております」
  金田  「恐竜ロボットですってえ?」
  大塚  「しかし・・恐竜ロボットは確か・・」
 五十嵐  「そうです、アメリカとの軍縮条約で恐竜ロボットは全て廃棄されたことになっていました」
  島田  「それやのにこっそり持っとったというわけやね?」
 五十嵐  「S国としては軍を出動させてこれを追撃したいところですが大っぴらにそれをやればその動きはアメリカに察知されてしまいます、そうなれば重大な条約違反が発覚してしまう恐れがある」
  大塚  「う~ん、なるほどなあ」
  金田  「でもそんな重大な情報をなぜ日本大使館に?」
 五十嵐  「その技術将校は恐竜ロボットが日本近海に差しかかった時、鉄人で秘密裏に迎撃してほしいと依頼してきました」
  君塚  「自分たちの尻拭いをこっちにさせようという訳でっか?えらいムシのええ話でんな?」
 五十嵐  「確かにそうです、しかし近年S国とアメリカとの和平軍縮ムードがこの件によって大きく後退するかも知れない、そうなれば日本を含めた極東もまた緊張状態に置かれることになります、官邸で協議した結果、今回はS国の依頼を引き受けて外交上の貸しを作った方が得策だという結論になりました」
  大塚  「外交上の貸し・・ですか」
 五十嵐  「この貸しが北方領土返還交渉に有利に働くと思いますよ」
  島田  「へえ、外交いうんはやっぱり複雑なもんなんやなあ」
 五十嵐  「記録によれば恐竜ロボットというのはかなりの難敵です、鉄人といえども一筋縄ではいかない、ですが我々には雷人という新たな力が加わりました、この2台が力を合わせれば恐竜ロボット撃滅は十分可能だと思います」
  島田  「そらあそうや、雷人が加わったら鬼に金棒やで」
  金田  「それって・・雷人が金棒ってこと?」
  島田  「そんなもん、どっちでもええがな」
 五十嵐  「それにもうひとつ我々にとっての朗報は恐竜ロボットのシステムは完全に整備させておらず出力は70%程度だという証言もその技術将校から得ております」
  大塚  「ほう、70%ですか」
 五十嵐  「それでも決して侮ることのできない相手ではありますが」
  君塚  「いつ頃、どこを通るという情報も得とるんですか?」
 五十嵐  「はい、明日の午後、佐渡島の北方80キロの地点を通過することがわかっています、その時に鉄人と雷人で一致協力して恐竜ロボットを撃滅してもらいたいのです」
  島田  「あのう・・さっき局長さんは秘密裏にって言わはりましたな?」
 五十嵐  「ええ」
  島田  「ということは何でっか?雷人の活躍は世間には伝わらんゆうことでっか?」
 五十嵐  「はあ、事の性質上、どうしてもそういうことに・・」
  島田  「せやけど、それやと・・なあ署長はん」
  君塚  「せっかく雷人を世間にアピールするええチャンスやと思てたんやけどなあ」
 五十嵐  「申し訳ありません、その代わり雷人の維持管理にかかる費用の一部を国が負担させて頂く方向で考えておりますので今回はどうかひとつ・・」
  君塚  「う~ん・・正ちゃん、まあ今回はしゃあないか?」
  島田  「せやなあ・・ほんならまあよろしおま、今回はそういうことで」
 五十嵐  「ありがとうございます」   (つづく)

2006年09月05日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎6

正太郎の声 「翌日の早朝、僕たちは佐渡島の北方20キロ程の小さな無人島に集結した、鉄人、そして雷人、それに雷人の横にはコンテナにロケットエンジンを搭載した無人の運搬用ユニットが置かれていた」
  金田  「島田君、このコンテナのような物はいったい?」
  島田  「これかいな、雷人の武器を搭載したキャディロボットや」
  金田  「キャディロボット?」
  島田  「このキャディもリモコンで動かすんや、雷人の行くところに何処にでもお供する、侍でいうたら太刀持ちみたいなもんやな、今日は雷人キャノンと大型レーザービーム砲を用意したでえ」
  金田  「じゃあ雷人に武装を施したのかい?」
  島田  「武装やあらへんがな、キャディに積んどる武器を雷人が必要に応じて使うだけや、雷人の本体に取り付けたわけやないんや、せやから武装にはならへん、パチンコ屋の景品交換所が店の外にあるんと理屈は一緒や」
  金田  「そういうもんかなあ?」
  島田  「そういうもんやがな」
  金田  「それがこの前言ってた『抜け道』ってやつ?」
  島田  「そういうこっちゃ」
  大塚  「君塚さん、こんな大きな兵器をどうやって入手したんですか?」
  君塚  「そらあやっぱり自衛隊ですわ、船に搭載するんも車両に取り付けるにもデカ過ぎて使いにくい旧式の武器も雷人が手に持って使うとちょうどええんです、そやからそれを下取りして改造したというわけで・・」
  大塚  「なるほど」
     五十嵐局長が4人の元へやって来る、
 五十嵐  「海自の対潜哨戒機が恐竜ロボットと思われるエンジン音をキャッチしました、やはりほぼ予定のコースを進んでいます、では皆さん、潜航艇に乗船してください、迎撃ポイントまでおよそ40分で到着します」
  島田  「さあ、いよいよやでえ」
  金田  「うん、行こう」
     五十嵐局長を含め5人が特殊潜航艇に乗り込む、
 五十嵐  「では艇長、出発してくれ」
  艇長  「わかりました、微速前進」
 操舵手  「微速前進」
潜航艇が島の入り江から離れる、金田正太郎、島田正太郎ともにリモコンの操作を開始する、バンワオーーッ!鉄人の咆哮、そしてグワーーッ!と雷人の雄叫び、2体のロボットが地響きのようなエンジン音を響かせ上昇、次いでキャディロボットも上昇を開始した、

恐竜ロボット内 操縦室
 ポトフ  「イワノフ少佐、ダメです、いろいろやってみましたがどうしてもシステムを完全には復旧できません」
イワノフ  「どうしてもだめなのか?」
 ポトフ  「やはりスミルノフでなければ無理です」
アンドレ  「くそう、ポトフ、お前が奴から目を離したりするからだぞ」
 ポトフ  「そう言うな、まさかあんなに複雑で細い換気口を伝って外に脱出するなんて誰が想像する?」
アンドレ  「セルゲイの奴、最初はいかにも協力的なそぶりを見せていたくせにまんまと一杯食わされたぞ」

このセルゲイスミルノフこそかつてまだら岩で不乱拳博士の助手を勤め、後年ブラックオックスの改造を完成させたS国科学アカデミーを代表する科学者となる人物である、 (前作、ブラックオックス新たなる旅立ち 参照)
また日本大使館に情報を持ち込んだのも他ならぬセルゲイであった、

イワノフ  「するとキューバまではどうしても一ヶ月もかかるのか?」
 ポトフ  「はい、ディーゼルエンジンの加熱が思うように抑えられないので時々は機関を停止して冷却しなければなりませんそれをくり返しながら航行するとなると順調に行ってもそれくらいは・・・」
イワノフ  「速度はこれ以上速くはならんのか?」
 ポトフ  「速くしても意味はありません、それだけこまめに冷却時間を取らねばならないのですから、結局今の速度がいちばん効率的なのです」
イワノフ  「水と食料はどうだ?」
 ポトフ  「ひいき目に言ってぎりぎりです」
アンドレ  「少佐、途中で海賊でもやらかしますか?」
イワノフ  「くだらん冗談を言うな」
アンドレ  「冗談で言ってるわけじゃありませんよ、こんなところで干からびるわけにはいかんでしょう?」
イワノフ  「アンドレ、我々は軍人だぞ」
アンドレ  「今はもうただの反逆者ですよ」

海上自衛隊 特殊潜航艇内
  艇長  「機関停止」
 操舵手  「機関停止」
  艇長  「迎撃ポントに到着しました」
  大塚  「相手にはまだ気づかれておらんのですか?」
 五十嵐  「情報によれば恐竜ロボットの索敵範囲は通常の潜水艦よりかなり狭いそうです、相手より先にこちらのソナーが補足するはずです」
  君塚  「どっちの方角から来るんでっか?」
 五十嵐  「この正面からです、ではフォーメーションを決めましょう、この潜航艇を中心に鉄人は右に、雷人は左に位置を取ってください、双方から同時に奇襲をかけましょう」
   (鉄人と雷人が左右に分かれそれぞれ岩陰に身を潜める、15分程経過した頃

 操舵手  「ソナーに感あり!」
  艇長  「目標に間違いないか?」
 操舵手  「エンジン音を確認しました、恐竜型ロボットです」
  艇長  「到着時間は?」
 操舵手  「現行速度で約9分」
 五十嵐  「みなさん、いよいよです!」   (つづく) 

2006年09月06日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎7

無言のままリモコンを手にじっと身構えている金田正太郎、一方島田正太郎は初陣の緊張のせいかしきりに手のひらの脂汗を服にこすりつけている、

  島田  「なんやえらい緊張してきたわ、こないにドキドキするやなんて思わなんだな、金田君、君平気なんか?」
  金田  「そりゃあ僕だって緊張してるさ、でも毎度のことだから」
  島田  「ふうん、やっぱりベテランは違うもんやな」
  金田  「それもあるけど、信じることだよ」
  島田  「信じる?」
  金田  「父が作った鉄人をね、そして島田君は雷人を」
  島田  「うん、せやな」
  艇長  「目標到達まで2分!」

恐竜ロボット 操縦室
イワノフ  「ほう、タヒチか?」
 ポトフ  「むこうに着いて大金を手にしたら島をひとつ買って優雅に暮らすつもりです、私の故郷は厳寒の土地でしたからね、暖かい場所に住むのが私の夢だったんですよ」
アンドレ  「俺は元手を手にしたらアメリカへ渡って何か商売でも始めようと思ってます」
イワノフ  「ほう、お前に商売気があるとは知らなかったな」
アンドレ  「国にいちゃあチャンスは掴めませんよ、ところで少佐はあくまでも政権にこだわるつもりなんですか?」
イワノフ  「当然だ、ぬくぬくと暮らすなど私の性に合わんさ、必ずカストロ政権下でのしあがって見せる」
 ポトフ  「このロボットと例の「手土産」がその約束手形というわけですね」
イワノフ  「そういうことだ」
アンドレ  「国じゃあもう誰かが気づいた頃ですかね?」
イワノフ  「巧妙にすり替えたからな、注意して調べなければ未だに気づいておらんかも知れんぞ」
 ポトフ  「しかしいくら何でもそろそろ気づくでしょう、もっとももう手遅れですがね」
ソナー手  「少佐!ソナーに反応!左右両舷の至近距離から何か急速に近づいてきます!衝突コースです!」
イワノフ  「何だと!魚雷か?」
ソナー手  「もっと大きな物です、衝突まで10秒」
イワノフ  「回避行動を取れ!」
ソナー手  「間に合いません、来ます!」
     ガガガガーーン!恐竜ロボットの側面に鉄人と雷人がほぼ同時に体当たりを敢行した、
      「うわわわっ!」
     激しい衝撃が内部に走る、再度体当たりを敢行すべく旋回する鉄人と雷人、
 ポトフ  「モニターに映像が出ました」
イワノフ  「あれは・・鉄人!なぜ鉄人がここに?・・もう一台は初めて見る奴だ」
アンドレ  「なぜ衝突直前までソナーに補足できなかったんだ?」
イワノフ  「俺たちを待ち伏せていたに違いない」
 ポトフ  「また来ます!」
イワノフ  「全員、衝撃に備えろ!」
      ガガガーーン!再度鉄人と雷人の体当たりを受け、大きくバランスを崩す恐竜ロボット、
イワノフ  「装甲は大丈夫か?」
 ポトフ  「まだ持ちこたえています」
イワノフ  「操舵手、ジグザグに大きく回避しろ!」
 操舵手  「わかりました!」

  島田  「だいぶパニクッとるようやな」
  金田  「このままたたみかけよう」
  島田  「よっしゃあ!」
鉄人と雷人が交互に体当たりをくり返す、だが恐竜ロボットの装甲も頑丈である、正確に言うならば恐竜ロボットの外装は受けた衝撃を全身に伝えて受け流すという特殊な柔軟さを備えているのである、

アンドレ  「アトミック魚雷装填完了、ターゲットロックオン!」
イワノフ  「全弾発射!」
     バシューーッ!恐竜ロボットの胴体から4本の大型魚雷が発射され2本は鉄人に、2本は雷人へと向かっている、
  島田  「おっ、撃ってきよったでえ、ふん、そないなもん当たるかいな」
     大きく回避行動を取る鉄人と雷人だがそれぞれの魚雷はぴったりと追尾してくる、
  島田  「なんや?追いかけてきよるで!」
  金田  「熱探知魚雷だ、熱源のエンジンを追ってるんだ」
  島田  「くそったれえ!」
     しばらく魚雷の追跡を振り切るため、回避行動を続ける2体であったが・・・
  島田  「金田君、あの魚雷、あいつに返したろやないか?」
  金田  「そうか、よしやろう!」
     お互い目を見つめ合いこれから何をするかを悟り合った二人、回避を続けていた鉄人と雷人が
     恐竜ロボットに向かって突進を開始した、それぞれ2本の魚雷も追ってくる・・・
ソナー手  「2体ともこちらに向かってきます!」
イワノフ  「左舷に切れ!」
ソナー手  「近づきます、衝突まで5秒!」
     鉄人と雷人は恐竜ロボットに衝突する寸前、紙一重で素早くすり抜けて反転した、だが魚雷は今度は恐竜ロボットの熱源に引かれ4発全弾が命中、ドドドドーーーン!凄まじい爆発音があたりに響き渡る、
      「うわわっ」    「ぐおっ!」    「むおっ!」
     グラリと恐竜ロボットの巨体が横倒しになる、
  金田  「やった!」
  島田  「見事や!」

イワノフ  「各部、被害状況を報告しろ!」
スピーカー 『こちら機関室、2名が負傷しましたが動力に支障はありません』
      『Bデッキに浸水!デッキを閉鎖します』
 ポトフ  「外装のダメージレベルはまだ許容範囲です、こいつもあきれるくらい頑丈ですよ」
アンドレ  「まだまだ戦えますよ」
イワノフ  「体勢を戻せ、接近戦に切り替えるぞ!」  (つづく) 

2006年09月07日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎8

  島田  「起き上がってきよったで」
  金田  「やっぱりあれくらいじゃ参らなかったようだな」
  島田  「向かってきよるで!」
  金田  「望むところさ」
恐竜ロボットの突進を鉄人と雷人の2体ががっしりと正面から受け止めた、その瞬間恐竜ロボットの首が大きくしなり鉄人が横へ弾き飛ばされた、

  金田  「ああっ!」
恐竜ロボットはその巨体を利して雷人の上にのしかかる、その全体重を受け雷人の体の半分は海底の砂の中にめり込んでしまった、さらに両足による踏みつけ攻撃を受けている、

  島田  「くそう、何ちゅう重たい奴や!金田君、何とかしてえな」
  金田  「待ってろ、今行く」
雷人を救うべく鉄人が正面からブチ当たるが恐竜ロボットはひるまず、素早く鉄人の右腕にがっぷりと噛み付いた、

  金田  「ああ!しまった!」
かつてこの状況から片腕と片足をもぎ取られてしまった苦い思い出が悪夢のように蘇ってくる、懸命に振りほどこうとするが離れない、
その隙にようやく体をすり抜けられた雷人が恐竜ロボットの喉元に豪腕を叩き込んだ、そのショックで口が開き鉄人が脱出に成功、
だが今度は離れ際の雷人に恐竜ロボットの首が素早く伸びて雷人の足の付け根のあたりに噛み付いた、

  島田  「くっ、こいつう、見かけと違うてなんちゅう素早い奴っちゃ」
もがく雷人をくわえたまま恐竜ロボットが移動する、同時に胴体から真っ黒な黒煙が吹き出てきてあたり一帯の視界を塞いでしまった、

  金田  「ど、どこだ?何も見えない!」
 五十嵐  「金田君、ソナーによると2時の方向、距離は300メートルほどだ、艇長、艦を近づけてくれ!」
  艇長  「わかりました、左舷15度、第二船速!」

鉄人と潜航艇が黒煙の中に入っていく・・・一方、黒煙の中に身を隠した恐竜ロボットは雷人の胴体を海底に押さえつけ足の付け根に噛み付いたままグリグリとひねり回している、ギシ、ギシと雷人の足のジョイントが悲鳴を上げ、そのダメージは島田正太郎のリモコンにデジタル表示される、

  島田  「あ、あかん、これ以上連結部がもたへん!」
ギシギシ・・バキーン!かん高い音とともに雷人の左足は根元から引き抜かれてしまった、片足を失ったがそのお陰で脱出に成功し、雷人が黒煙の雲海を突っ切るように上昇、その姿を現した、

  金田  「雷人が見えた!ああっ、足を引きちぎられてる!」
     恐竜ロボットも雷人を追って上昇、黒煙の中から姿を現した、
 五十嵐  「もう間もなく海面に出るぞ」
  島田  「金田君、あいつ都合のいいことに追ってきよる、海上に誘い出したら雷人キャノンをブチ込んだるわ、鉄人で何とかあいつを逃がさんようにしてくれへんか」
  金田  「わかった、やってみる!」
恐竜ロボットが雷人に迫るが間一髪雷人が海上から空へ、ワンテンポ遅れて恐竜ロボットも海面に出た、
イワノフ  「ちっ、空に逃げよったか、くたばり損ないが!」
アンドレ  「少佐、下から鉄人が来ます!」
イワノフ  「叩き潰してやれ!」
恐竜ロボットは急速潜行、鉄人へと向かう、鉄人は衝突寸前スルリとコースを変え恐竜ロボットの背後に回ろうとする、
鉄人に後ろを取られまいとターンしようとするが武器となる首や足の敏しょうさに反し、方向転換はその巨体ゆえどうしてもスローモーになる、
鉄人の動きの速さが勝りついに背後から恐竜ロボットの長い首にがっちりと組み付いた、

 ポトフ  「鉄人が首にしがみついています」
イワノフ  「振り払え!振り払うんだ!」
恐竜ロボットの首がしなり鉄人を振り払おうとするがガッチリと組み付いた両腕は離れない、そしてロケットをフルパワーで噴射、恐竜ロボットを海面へと持ち上げている、
  金田  「いいぞ鉄人、そのまま海上に引き出せ!」
  島田  「キャディ、雷人キャノンや!」

空中で静止している雷人の元へキャディロボットが飛来、コンテナのハッチが開けられ巨大な砲身が姿を現す、大型戦艦の主砲を思わせるが、それを雷人が肩に担ぐと大型のバズーカ砲という感じである、

  金田  「あれが雷人キャノンなのかい?」
  島田  「そうや、砲身は18インチ、戦艦大和の主砲と一緒や!こいつを至近距離であいつにブチ込んだる!」
  金田  「もうすぐだ、あと10メートル!」  (つづく)

2006年09月08日

復刻版 正太郎日誌 浪速の正太郎9

ついに鉄人は恐竜ロボットの巨体を海面に引っ張り上げた、空高く持ち上げるにはウエイトがあり過ぎるため鉄人をもってしても無理であったが中途半端な形で持ち上げられ、前足のみをバタつかせている、
  金田  「島田君、今だ!」
  島田  「ようも足をちぎってくれたのう、これを喰らえ、照準よし、撃てーっ!」
雷人の指がキャノンの引き金を引く、ドゴゴゴーーン!凄まじい音と反動、雷人の体が大きく後方に吹っ飛ぶ、ズガガガーーン!
雷人キャノンの18インチ砲が恐竜ロボットの首の付け根に命中
      「うわわわーーっ!」
耳をつんざくような衝撃音が乗員を襲う、恐竜ロボットの首の付け根がグニャリと変形してしまった、至近距離で大口径の砲弾を受けても大破しないというのも驚異だが、しかしその外装は限界にきていた、鉄人の腕はまだしっかりと首に巻きつき恐竜ロボットの動きを封じている、

  島田  「ようし、もう一丁や!」
雷人がコンテナから砲弾を取り出し装填する、照準を合わせ再び引き金を引く、ズガガガーーン!今度は恐竜ロボットの首の付け根は完全に大破し、大穴があいた、

  島田  「金田君、今や!あの首引きちぎったれ」
  金田  「よしっ」
鉄人が引っ張る力にグイとひねりを加える、メキメキ・・バキバキーン!装甲が悲鳴を上げついに恐竜ロボットの首は根元から引き抜かれてしまった、首を失った大穴の部分から内部が見てとれる、乗員が慌てふためく様も垣間見えた、

  島田  「ええぞう、金田君、よっしゃとどめや、あの穴にレーザービーム砲をブチ込んだるわい」
雷人がキャディに雷人キャノンを収め、次いでこれまた大型のレーザーガンを取り出した、肩に担いで身構える、
  海上自衛隊 潜航艇
  艇長  「五十嵐さん、本部から連絡です、至急だそうですが・・」
 五十嵐  「私だ・・どうした?うん・・うん・・何い!その報告は確かか?・・うむ、わかった、島田君待ってくれ!攻撃は中止だ」
  島田  「な・・何でですの?」
 五十嵐  「今入った報告によるとイワノフはS国の核施設からプルトニウムを盗み出していたそうだ」
  島田  「プ、プルトニウムいうたら水爆の材料やないですか?」
 五十嵐  「水爆5個分がそっくり消えたそうだよ」
  金田  「それじゃあ恐竜ロボットの中にプルトニウムが?」
 五十嵐  「プルトニウムの容器が破損でもしたらこの海域は千年以上死の海になってしまう」
  島田  「あ~こわ、もうちょっとでプルトニウムごと吹っ飛ばしてしまうとこや」
  金田  「とどめを刺す必要はないんじゃないかな?胴体にあんな大穴があいたらもう潜行はできないし、ろくな武器もないんじゃ?」
  島田  「それもそやな」

恐竜ロボット 操縦室
イワノフ  「か・・各部、被害状況を報告しろ!」
スピーカー 『こちら動力室、今の衝撃で回線に異常、出力50%減」
      『CデッキとDデッキに浸水!』
 操舵手  「少佐、首を失ったので艦の重量バランスが取れません」
      『居住区に火災発生!消化装置が作動しません!』
 ポトフ  「少佐・・もうこれまでです」
イワノフ  「馬鹿なことを言うな!まだ戦えるぞ、対空砲火を浴びせろ、砲門を開け!」
アンドレ  「無駄です、あんな小さな火力で鉄人に対抗できるわけがないでしょう?」
イワノフ  「弱音を吐くな!さっさと持ち場につけ、攻撃するんだ!」
 ポトフ  「無駄です・・降伏しましょう少佐」
イワノフ  「こ・・降伏だと?」
      ホルスターから銃を抜きポトフに突きつけるイワノフの目はすでに常軌を逸して狂気に満ちている、
 ポトフ  「少佐・・」
イワノフ  「命令に背くというならこの場で射殺するぞ、さあ命令に従うか、それとも頭をブチ抜かれたいか、どっちだ?」
       ズキューーン!・・・イワノフの背後から一発の銃声、
イワノフ  「あ・・うっ・・」
     床に両膝をつき、ゆっくりとふり返るイワノフ、
イワノフ  「アンドレ・・・貴様・・」
アンドレ  「少佐、ゲームはもう終わったんだ」
イワノフ  「う・・・」
     うつろな目をしたまま床に転がるイワノフ、権力にとりつかれた男の哀れな末路であった、
アンドレ  「シーツを持って来い、それを白旗代わりにしよう」

恐竜ロボットは首をもがれたまま海上で動きを停止している、その両脇を鉄人と雷人ががっちりと固めている、
  金田  「動きがありませんね」
  島田  「万策尽きたってことやないか?・・・あっ!」
恐竜ロボットの胴体のハッチが開き、二人の将校が白旗代わりのシーツを大きく振っている、

 五十嵐  「白旗だ、降伏したんだ!」
  島田  「やっぱりお手上げやったんや」
  金田  「やったね島田君」
  島田  「うん」
 五十嵐  「艇長、司令部に現在位置を連絡してくれ」
  艇長  「はっ」
 五十嵐  「金田君、島田君、いやありがとう、本当にご苦労様でした」
  島田  「へへ、どうでっか局長はん、雷人の力は?」
 五十嵐  「うん、たいしたものだ、しかしあの強力過ぎる武器は法的にちょっと問題があるんじゃ?」
  島田  「ま、まあ・・そういうことはこの際置いといてもろてやね(苦笑)」
  大塚  「君塚さん・・何かワシら、ただ座っとっただけで・・」
  君塚  「ほんま、影が薄うおまんなあ(苦笑)」

正太郎の声 「死亡したイワノフを除いて他の乗員は全員海上保安庁の巡視船に収容され、盗まれたプルトニウムとともに密かに本国に送還された、今回の件に日本政府は一切関知していない、鉄人と雷人の活躍も闇に葬られたわけだが、雷人には約束どおり年間の維持費の30%を国が負担していくこととなった、雷人は一時国内で鉄人と人気を二分する程メジャーな存在となった、しかし高度経済成長が終焉を迎え、その後訪れた深刻な不況の波に関西の協賛メーカーは次々と離れていき、維持が不可能となった雷人は誕生から5年を待たずして博物館行きとなってしまった、また雷人の操縦者として一躍有名人となった島田正太郎君は持ち前の明るさとギャグのセンスを買われ、なんとあの吉本興業にスカウトされた、彼は今、若手お笑い芸人として関西を中心に活躍している」

          浪速の正太郎  (完) 

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