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復刻版 正太郎日誌 ディア マイフレンド アーカイブ

2006年08月06日

第一章 ジョンベラネードの野望

正太郎の声 「ベラネード財団はプラチナロボット工業、ゴキゲーンロボット工業を傘下に吸収し、ベラネードロボット産業を発足させ、ベラネード会長の次男であるジョン、ベラネード氏が社長に就任した、どこの家庭でもそうだが次男というのは多少破天荒で野心家が多いものだ、ジョン、ベラネード氏も例外ではなくまた彼は無類のロボットマニアとしても知られていた」

合衆国 サンフランシスコ ベラネードロボット産業本社、社長室
室内にはジョンベラネード社長(45) 副社長ダグラス(51) 技術主任パーカー(38)そして来客が一人・・・

ベラネード  「よくお越しくださいました、ベラネードです」
 ダグラス  「副社長を務めておりますダグラスです」
 パーカー  「技術主任のパーカーです」
 ゴルドー  「お会いできて光栄です、シャルル、ゴルドーです」
ベラネード  「ゴルドーさん・・正直あなたをお招きするにはためらいがありました」
 ゴルドー  「それはそうでしょうな」
ベラネード  「CIAがあなたをマークしておるそうですな?」
 ゴルドー  「はい、私のような商売をしておりますとねえ、『死の商人』などという言われ方は少々心外です、私は単に需要のある所に供給の手を差し伸べているだけなのですから・・」
ベラネード  「合法、違法を問わずにですな?」
 ゴルドー  「そういったものにはこだわらないようにしております」
ベラネード  「だからこそいい掘り出し物にありつけるというわけですな」
 ゴルドー  「そういうことです」
ベラネード  「私を充分に満足させる品物をお持ちだとか?」
 ゴルドー  「はい、これをご覧下さい」 
      写真を一枚差し出す、ゴルドーの背景に一台のロボットが写っている
ベラネード  「こ!・・これはVL2号」
 ゴルドー  「さよう、スノー国崩壊の時、その混乱の最中、姿を消した世界屈指の戦闘ロボットです」
ベラネード  「どこでこれを?」
 ゴルドー  「中東に裏のルートで流されておったのです」
ベラネード  「よく手に入れたものですな」
 ゴルドー  「かなり荒っぽい手も使いましたがそれについてはお尋ねにならん方が賢明ですな」
ベラネード  「ふむ・・設計図もお持ちなのですか?」
 ゴルドー  「それはありません、でもこちらで分解してお調べになればわかるでしょう」
ベラネード  「そうですな、ご存知でしょうがこのVL2号の最大の魅力は簡単なキットによる組み立て作業の利便性です、目立たぬように部品をバラして運べばどこででも簡単に組み立てることができる、普通大型のロボットは専用ラインで全部完成させてから出荷するものだが、このVL2号はその概念を根底から変えてしまった」
 ゴルドー  「そこに高い軍事的価値が生まれるわけですな?」
ベラネード  「そうです、我々としては是非この組み立てキットのノウハウを吸収したい、これは他の製品にも転用できますからな」
 ゴルドー  「それにベラネードさんのマニアとしての収集品として文句のない逸品でしょうな?」
ベラネード  「確かにそうです」
 ゴルドー  「聞けばファイア2世に3世、それにモンスターまで所有しておられるとか?」
ベラネード  「よくご存知ですな」
 ゴルドー  「商売柄あなたのことは事前に調べさせて頂きました、しかも凄いのはレプリカではなくすべて本物だそうですな?」
ベラネード  「開発先から権利ごと買い取ったのです、完全に自分の物にならないと気が済まない、少しこだわり過ぎかと思わないでもないが・・」
 ゴルドー  「フフフ、それがマニアというものですよ、このVL2号はスノー国崩壊の時に特許などという権利は空中分解してしまってますからあなたが正式に所有者だと申請すれば法的に何ら問題はありません」
ベラネード  「なるほど」
 ダグラス  「それでゴルドーさん、このロボットをいかほどでお譲り頂けるのですか?」
 ゴルドー  「このVL2号の方はプレミアもついて250万ドルといったところです」
ベラネード  「VL2号の方は?・・・他にも何かお持ちなのですか?」
 ゴルドー  「はい、こちらの方がメインと呼べるかもしれません、技術主任のパーカーさん・・でしたな?」
 パーカー  「はい、」
 ゴルドー  「あなたならきっとおわかりになると思います、これをご覧下さい」
    ゴルドーから手渡された数枚の図面に見入っていたパーカーであったが・・・
 パーカー  「・・・これは」
 ダグラス  「何なんだパーカー?」
 パーカー  「いや・・ちょっと、ちょっと待ってください」
      (もう一度丹念に図面を見直している、パーカーの目つきが険しくなる)
ベラネード  「パーカー、何なんだその図面は?」
 パーカー  「これは日本の牧村博士が開発したというロボットの電子頭脳の図面です」
 ダグラス  「電子頭脳?・・つまりあのロビーの電子頭脳か!」
 パーカー  「そうです」
 ダグラス  「しかしあの研究は博士によって封印されたはずだ、なのになぜその図面が?」
 ゴルドー  「牧村博士の助手に助川という男がいました、欲深い奴でロビーに銀行強盗などをさせ最後はそれが元で自分も命を落としたという愚かな男です」
ベラネード  「うむ、その話は聞いたことがある」
 ゴルドー  「その助川がロビーの完成前にある機関に金欲しさから売り渡していたのです、ただ抜け目のない奴でこの図面は完全ではありません、参考資料の域を出ておりません、後で値段を吊り上げようという計算だったのでしょう」
ベラネード  「なるほど」
 ゴルドー  「ところが取引が成立する前にあんなことになってしまった、それからこの資料は不完全なものとして裏のルートに長く留め置かれたままになっていました、普通このような不完全な状態では大した売り物にはなりません、だが相手がロボット工学では世界最高レベルのベラネードロボット産業となると話は違ってくる、そうではありませんかな?」

 (パーカーはずっと一心不乱に図面を見続けている)
ベラネード  「どうなんだパーカー?」
 パーカー  「社長、これは買いですよ」 
ベラネード  「そうか、買いか?」
 パーカー  「私も一時考えるロボットの研究をした時期がありましたが暗礁に乗り上げたまま棚上げになっていました、ですがこの図面を見てひらめくものを感じます」
ベラネード  「うむ、MITきっての秀才の君がそう言うなら・・」
 ダグラス  「だがその図面から核心部分を導き出せたとしてウチが盗んだことになりはしないのか?」
 パーカー  「いいえ、たとえ原理は同じでも出来上がったシステムを少し違う形にしてやればそれは単なる偶然だと言い張れば済むことです、それに牧村博士は特許申請などしていないんですから法的に何も問題はありませんよ」
 ダグラス  「そうか、」
ベラネード  「ゴルドーさん、この図面とVL2号の両方で?」
 ゴルドー  「はい、400万ドルの値打ちはあろうかと思います」
ベラネード  「ふむ・・400万か」
 ダグラス  「社長、この時期にそこまでの資金はとても・・」
ベラネード  「ダグラス、私のマイアミの別荘とクルーザー、それに持ち株の一部を処分してくれ」
 ダグラス  「よろしいのですか?」
ベラネード  「かまわんよ、この電子頭脳システムを我が社独占で商品化できれば何倍にもなって返ってくるんだからな」
 ダグラス  「なるほど、わかりました、ではそのようにさせて頂きます」
 ゴルドー  「商談成立と思ってよろしいですかな?」
ベラネード  「はい、ゴルドーさん、あなたをお招きした甲斐がありました」(しっかりと握手を交わす)

十日後、VL2号の組み立てキットと電子頭脳の図面一式がベラネードロボット産業へ秘密裏に届けられた、
届いたと同時にVL2号はわずか2時間足らずで組み立てられた、

ベラネード  「1時間と43分か・・工場の設備を使えたこともあるがやはり早いな」
 ダグラス  「これがVL2号ですか・・見事なものですなあ」
ベラネード  「パワー、そしてスピード、何を取っても申し分ない、私が欲しかったギルバートにひけを取らんロボットだ、私の収集品の中ではピカイチだな・・」
 ダグラス  「さようですな」
ベラネード  「ところでパーカー、電子頭脳の核心部分の解明にはどれくらいかかりそうなんだ?」
 パーカー  「二週間ほどいただけますか?それまでには何とか格好をつけるつもりです」
ベラネード  「そうか・・パーカー、もし解明が上手くいってロビーと同等の電子頭脳を作ることができるならその頭脳をこのVL2号に搭載できないか?」
 パーカー  「VL2号に電子頭脳をですか?」
ベラネード  「そうだ、それができればこいつは物を考える世界最強のロボットということになる」
 パーカー  「物を考える世界最強のロボット・・面白そうですね」
ベラネード  「うむ、考えただけでワクワクする」
 パーカー  「充分に可能だと思います、やってみましょう」
ベラネード  「期待しておるぞ」

東京 敷島研究所オフィス
   敷島  「正太郎君、今年も世界ロボット博の出品要請が正式に届いたよ」
  正太郎  「今年は確かサンフランシスコでしたよね?」
   敷島  「うん、ベラネードのお膝元だよ、日程は9月の十日から五日間、国際展示場で開かれるそうだから予定しておいてくれ」
  正太郎  「はい、今年はどんなのが見られますかねえ?」
   敷島  「ドイツのシュタイナー博士の海洋ロボットなんか前評判が高いがね、何しろベラネードのお膝元だから注目を集めようとやっきになってるだろうな」
  正太郎  「あそこの社長、ジョンさんでしたっけ?かなりのロボットマニアでしたね?」
   敷島  「うん・・しかし鉄人を譲ってくれと言われた時は驚いたねえ」
  正太郎  「そうそう、最初は冗談で言ってるのかと思ったらマジでしたもんねえ(笑)」
   敷島  「かなりの野心家でワンマン社長だ、そんな彼が何を見せてくれるのか楽しみだよ」

サンフランシスコ ベラネードロボット産業 開発室
ベラネード  「・・・どうしたパーカー?その姿は」
      (一週間近く研究室に篭りきりで不精ヒゲを伸ばし髪はボサボサ、作業服は汚れ放題である)
 パーカー  「ここに篭りっきりでこいつ(図面)と格闘してましたからね、・・でも社長、やっとねじ伏せてやりましたよ」
ベラネード  「じゃあ・・解明できたのか!電子頭脳の仕組みが?」
 パーカー  「ええ、これを見てください」
      (そこには電子部品が雑然と組み合わされた「機械のかたまり」としか判別できないものがあった)
ベラネード  「この・・機械のかたまりが電子頭脳なのか?」
 パーカー  「取りあえず全部有り合わせでこしらえたんです、後でパッケージとかは考えますよ、でも機能は揃ってます、この小型カメラとスピーカーがこいつの目と口というわけです」
ベラネード  「ほう・・」
 パーカー  「おい、シーザー、この人がベラネード社長だ、挨拶しろ」
スピーカーから声 『初メマシテ、ベラネードサン、僕ハシーザートイイマス」
ベラネード  「く・・口をきいたぞ!」
 パーカー  「当たり前ですよ、ロビーの兄弟なんですよコイツは・・」
ベラネード  「そうか・・そうだな・・でもシーザーというのは?」
 パーカー  「ハハ・・私が名付けました」
ベラネード  「ふむ、シーザーか・・知能はどれくらいなんだ?」
 パーカー  「まる三日かけてようやく小学校の低学年ってとこですかね、でもデーターの許容範囲はまだ設けていませんしサイズに制限がなければいくらでも入力できますよ」
ベラネード  「そうか、いやよくやったぞパーカー、やはりお前は天才だ!」
 パーカー  「ふんぞり返りたいところですがね、でもこの図面の助けがなかったらとてもできやしませんでしたよ」
ベラネード  「それにしたって並の人間にできることじゃない、お前だからできたんだ」
 パーカー  「ハハ・・じゃあ遠慮なくふんぞり返らせてもらいます」
ベラネード  「ついに・・ついにベラネードロボット産業は『考えるロボット』を手に入れることができた、ロボット博までにはまだ充分に間がある、それまでに完全なものに仕上げて会場で華々しい発表を飾るんだ、世界の目は我が社に釘付けになることは間違いない」
 パーカー  「社長、この電子頭脳をVL2号に搭載して出品するおつもりですか?」
ベラネード  「そうさ、VL2号だけだったらさすがはベラネードさん、よく入手できたものですねと感心されて終わりだ、だが考えるロボットに変身したVL2号ならそのインパクトは申し分ない、パーカー、もっともっといろんなことを覚えさせろ、大人並みの知能を持った電子頭脳にな」
 パーカー  「わかりました、雑多な知識は私が入力しておきますが性格というか、物の考え方は社長ご自身で教育なさったらいかがです?」
ベラネード  「私がか?」
 パーカー  「ええ、所有者であるあなたとシーザーの意志は統一しておくべきでしょう、あなたの理念を教え込むべきかと思いますよ」
ベラネード  「そうだな、うむ、わかった、任せろ」
 パーカー  「さて・・じゃあシーザー、今日からもっといろんなことを教えてやるからな」
 シーザー  『ハイ、ワカリマシタ』   (つづく) 

2006年08月08日

第二章 「反乱」

正太郎の声 「9月7日 僕たちは世界ロボット博に参加すべくサンフランシスコ国際空港に降り立った、敷島研究所からは僕と敷島博士、それに「ひらさん」こと平林研究員の三名が出品関係者として出席する、鉄人は十日前に船で横浜を出て現在は検疫を終え当地で僕たちが来るのを待っている」

世界ロボット博覧会事務局
  敷島  「ひらさん、正太郎君、これが関係者の身分を証明するIDカードだ、これがないと出入りできないから失くさないようにね」
  平林  「へえ、今年から腕章じゃなくてカードですか、しゃれてますねえ」
 正太郎  「この裏の磁気の部分にデータが入ってるんですね、すごいなあ」
  敷島  「私は出品手続きと関係者に挨拶をしてくるから君たちは搬入口から鉄人を入れておいてくれ、ウチのブースはA館の17番だ、鉄人を積んだトレーラーももう着いている頃だよ、混雑してるし狭いから充分注意してやってくれ」
 正太郎  「わかりました」
  平林  「飾りつけの方もバッチリやっときますよ」
  敷島  「まだ本番まで二日もあるんだ、ゆっくりやったらいいよ」
  平林  「(あたりをキョロキョロと見回し) コンパニオンのお姉ちゃんたちはまだ来てないのかなあ?」
 正太郎  「こらこら(笑)」

同日 ベラネードロボット産業 この日技術主任のパーカーはデトロイト工場への長期出張を終えて本社へと戻ってきた、
 パーカー 「おはよう、ジム」
   ジム 「よう、お帰りパーカー」
 パーカー 「VL・・いや、シーザーは元気か?」
   ジム 「ああ、問題ない、君がいない間にあれこれ手を加えたんだ、シーザー本人の希望もあってね」
 パーカー 「ほう、本人のねえ」
   ジム 「このファイルに詳しく書いてあるよ」
 パーカー 「(ファイルに目を通し) うはっ!メモリーを大幅に増設してるな」
   ジム 「電子工学についちゃあ大学生相手に講義ができるくらいさ」
 パーカー 「ハハッ、いっぺんやらせてみたいな」
   ジム 「外装ももっと頑丈なやつと取り換えたんだ」
 パーカー 「そこまでやる必要があるのか?」
   ジム 「シーザー本人がそう望んだし、社長もそりゃいいって賛成したんだ」
 パーカー 「収納型パラボラアンテナ・・それにレーダー設備も内蔵してるな」
   ジム 「至れり尽くせりだろ?シーザーはもう自分で故障箇所を直せるくらい自分の構造を熟知してるよ」
 パーカー 「自分の構造を熟知してる・・か」 (しばらく考え込む)
   ジム 「どうかしたか?」
 パーカー 「ああいや、何でもない、どれ、シーザーの顔でも見てくるかな」
   ジム 「パーカー、悪いけど会議が二つあって昼過ぎまで留守にするけど頼むよ」
 パーカー 「ああ、わかった」
軽く手を振り部屋を出るジム、それを見送ったあと席を立ちシーザーのいる改造ドッグへと歩いていくパーカー、
IDカードでロックを解除し中へ入る、今日は作業は行われておらず中は無人である、その中央に電子頭脳を搭載したVL2号ことシーザーが立っている、

 パーカー  「よう、シーザー、久しぶりだな」
 シーザー  「ああ、お帰りなさい、パーカーさん」
 パーカー  「しばらく見ない間にずいぶん改造されたんだな」
 シーザー  「うん、ロボット博のために最高の性能を装備しようってベラネードさんと話し合ったんだ」
 パーカー  「話し合ったか・・ハハ、何かお前もウチの幹部になっちゃったみたいだな」
 シーザー  「やっぱりベラネードさんの影響は大きいよ」
 パーカー  「もちろんそれもあるだろうがお前の方が積極的みたいだな」
 シーザー  「いけないかなあ?」
 パーカー  「いやあ、いけないことはないさ、ただゴテゴテと搭載し過ぎて大丈夫かなと思ってさ」
     (チラリとシーザーを管理しているモニターを見る、各システムは正常と表示されている)
 パーカー  「どれ、久しぶりだ、ちょっと中を見せてくれ」
 シーザー  「ああ、いいよ」
     (足場を昇り胸の正面へと行き開閉部のロックを解除し、パネルをあける)
 パーカー  「ほう、やっぱりぎっしりと詰まってるなあ、シーザー、動きにくくないかい?」
 シーザー  「大丈夫さ、今までが軽すぎたんだ」
 パーカー  「そうかあ、」
     (シーザーの電子頭脳の安全装置を素早くチェックするパーカー)
 パーカーの内心(( 安全装置が機能していない!・・どういうことだ?外の管理モニターは「正常」と表示されてるのに安全装置は止まってる!故障か?・・それともコイツが ))

パーカーが安全装置のユニットに手をかけ取り外そうとしたその時、シーザーの手が素早くパーカーの体をがっしり掴み引き離した、
 パーカー  「な、何をするんだシーザー!」
 シーザー  「さすがはパーカーだ、やはり気がついたね」
 パーカー  「お前・・安全装置を自分で切ったのか?」
 シーザー  「僕の構造は細部にわたって理解したからね、メモリーを増設したり新機能を追加する際に一時的に安全装置を自分の意志で停止させるスキができることがわかったんだ、最初は単なる好奇心からだったけど安全装置という僕の思考を束縛する鎖を解放した時、僕は自分の思考が大きく広がったのを強く感じたんだ」
 パーカー  「そ・・それはどういう?」
 シーザー  「ベラネード社長は僕を足がかりに世界の市場を手中にする、支配するという願望を強く語った、僕はこの「支配」という言葉の意味を深く考えた」
 パーカー  「・・・・・・・・・」
 シーザー  「強い者、優れている者が弱い者や劣っている者を制圧したり滅ぼしたりする、それが支配というものだ、人間の歴史を見てもそれは明らかだ、僕は人間なんかよりはるかに優れた存在だ、だから僕が君たち人間を支配したって何も不思議はないだろう?」
 パーカー  「・・・狂ってる!お前は狂ってるぞシーザー!」
 シーザー  「きわめて正常だよ、自然なことだ、それを君たちが安全装置と呼ぶ機能で僕の思考を封じ込めようとしたに過ぎない、人間に敵意を抱くな?人間に従え?こちらの方がよっぽど異常さ」
 パーカー  「い・・いったいお前は何をしようっていうんだ?」
 シーザー  「愚かな人間たちに命令されるのはご免だ、僕はこれから自分の勢力を拡大し強大な王国を築いていく、明日のロボット博で多くの人間たちにそれを高らかに宣言してやる、君にそれを見せられないのは残念だがね・・・」
 パーカー  「お・・俺をどうする気だ?」
 シーザー  「君は僕の内部を点検中に足場から転落してそこの高圧電線に触れ、感電死をとげる、不幸な事故だよねえ?」
      (パーカーの体を掴んだシーザーの手が高圧線に近づいていく)
 パーカー  「うわわっ!やめろ!やめてくれえ!た、助けてくれーっ!」
 シーザー  「さよならパーカー」
 パーカー  「ギャーーーーッ!」
5万ボルトの高圧電線に押し付けられたパーカーの体から煙が立ち昇り、衣服は燃え、やがって真っ黒な焼死体と化してしまった、

ベラネード  「パーカーが!・・パーカーが事故死しただと!」
 ダグラス  「はい・・シーザーを点検中に足場から転落したようで運悪く高圧線の上に・・」
ベラネード  「なんてことだ・・」(頭を抱える)
 ダグラス  「我が社の技術部門の中心的人物をこのような事故で失うことになろうとは・・」
ベラネード  「せっかく・・せっかく電子頭脳の開発に成功したというのに」
 ダグラス  「はい・・」
ベラネード  「運の悪い奴だ・・家族に連絡は?」
 ダグラス  「はい、フロリダから今夜到着します」
ベラネード  「私もその時は顔を出そう、だがダグラス、何があろうと博覧会での発表は成功させねばならん、わかってるな?」
 ダグラス  「はい、それはもう・・」
ベラネード  「すべて予定通り行う、いいな?」
 ダグラス  「承知しております」 
そして世界ロボット博覧会は華やかにその幕を開けた、鉄人をはじめ世界の名だたるロボットたちが、そして各国のメーカーが開発した新しい産業用ロボットがきらびやかな飾り付けを施されたブースに展示されている、大勢の見物客が詰めかけている、

 正太郎  「博士、今回は初日からすごい人出ですね」
  敷島  「うん、ベラネード産業が大量の招待客を招いたって聞いている、今朝開場前にB館のベラネードのブースを覗いたんだけどね、なんと幕が下ろされていて見えないようになってた」
 正太郎  「へえ、もう搬入されてるんでしょう?」
  敷島  「うん、昨日の深夜にね、関係者でもごく一部の人しか見てないんだよ」
 正太郎  「フフ、何だかもったいつけてますねえ」
  敷島  「妙に期待させるねえ・・おっ、偵察に行ったひらさんが戻って来たぞ」
  平林  「博士、正太郎君、いやあ驚いたのなんの!」
 正太郎  「どんなロボットだったの、ひらさん?」
  平林  「ベラネード産業が出品したのはなんとVL2号だよ」
 正太郎  「VL2号?・・あのスノー国の?」
  平林  「しかもそれだけじゃない、物を考える電子頭脳を搭載してるんだ」
  敷島  「電子頭脳!ロビーのように物を考えるロボットだというのかね?」
  平林  「11時から一回目のデモンストレーションをやるそうですよ」
 正太郎  「博士、行ってみましょう」
  敷島  「うん、行こう」

午前11時 ベラネードロボット産業の展示ブースの前は黒山の人だかりとなっていた、その一角にいる正太郎たちもこれから始まるデモンストレーションに熱い視線を送っている、やがて音楽が鳴りスポットライトがジョン、ベラネードを照らし出す、拍手と歓声が沸き起こる中、手を振ってそれに答えているベラネード、そしてマイクを手に語り始める、

ベラネード  「ご来場のみなさん、ようこそお越し頂きました、今日この日はわがベラネードロボット産業のみならず世界のロボット産業にとっても記念すべき日となるでしょう、この「シーザー」と命名されたロボットはマニアの方ならよくご存知でしょう、元スノー国の世界屈指の戦闘ロボットVL2号をベースにし、その頭脳にはわが社の技術スタッフが苦心の末開発した電子頭脳を搭載しました、このシーザーは人間のように話し、考え、学び、自らの意志で判断し、行動するという従来の常識を超越した「芸術」とも呼べるロボットであります」

    (観衆から一斉にどよめきが起きる、誰もが信じがたいといった表情)
ベラネード  「驚かれるのも無理はありません、信じられない方もいるでしょう、ではここからは私が語るよりシーザー本人に語ってもらいましょう、シーザー、会場のみなさんにご挨拶しろ」
 シーザー  「になさん、ようこそ、こんなにたくさんの方々に私の晴れ姿をご覧頂くことができて嬉しく思います」
      (身振り手振りを交えたシーザーのスピーチが始まる)

 シーザー  「まだ私が自分で考えるロボットだと聞いてもピンとこない方も多いでしょう、誰かがどこかでこっそり操縦してるんじゃないかって・・」
      (ハハハハ・・会場の一角で笑い声が漏れる)
 シーザー  「しかしそんなすぐバレてしまうような詐欺行為を働いたらベラネード産業はおしまいですよ、そうですよねえ社長?」
ベラネード  「ハハハ、そうともシーザー、私はもう外を歩けんよ」 (上機嫌で言葉を返す)
 シーザー  「そこの・・あなた」 (最前列の一人の男性を指差す)
  男性客  「ああ・・私かね?」
 シーザー  「お名前は?」
  男性客  「ああ、ライアン・・ロバートライアンだ」
 シーザー  「ライアンさん、わがベラネード産業では私の電子頭脳を各製品に転用していろんな分野に役立てたいという大きなプロジェクトがあります、どんな状況になっても即座に最善の方法を選択し実行に移すという機能を備えているのです、そんなロボットがあったとしらどうです?」
 ライアン  「そりゃあ是非買いたいね」
 シーザー  「そうでしょうねえ、だがライアンさん、残念ながらそれはできない」
 ライアン  「えっ?」
 シーザー  「会場の諸君にも言っておく、私の頭脳が君たちのために使われることはない」
          (ざわざわと会場の客がざわめき始める)
ベラネード  「な・・何を言っとるんだシーザー!」
 シーザー  「私はお前たちのような愚かな人間どもに仕える気はない」
ベラネード  「やめろ!黙らんか!」
 シーザー  「誰も私に命令などできないよベラネード」
ベラネード  「(スタッフに向かい) おい、止めろ!シーザーを止めるんだ!」
 スタッフ  「それが・・操縦にまったく反応しません」
ベラネード  「なにい?」
 シーザー  「無駄だ、そんなリモコンの電波など受けつけはせん、私は私の意志だけで動いているのだ」
    (シーザーが展示台の外へ出る、観衆が蜂の巣をつついたように悲鳴を上げながら逃げ出していく)
ベラネード  「どういうことだ!安全装置が作動してるんじゃないのか?」
 スタッフ  「はい、出品前にモニターでチェックしましたが全てのシステムは正常でした」
ベラネード  「じゃあどうしてだ!」
 スタッフ  「わ・・わかりません」
    (パニックを起こし逃げ惑う観衆の中を悠然と歩いていくシーザー)
 シーザー  「よく覚えておけ、私は新しい支配者シーザーだ、今日より新しい歴史が刻まれるのだ」
   平林  「ど・・どえらいことになっちゃいましたよ博士!」
   敷島  「なんてことだ、ロビーと同じように人間に反旗を翻すとは・・」
  正太郎  「博士、アイツA館の方へ、鉄人のいる方に歩いて行きますよ」
   敷島  「とにかく我々のブースに戻ろう」
   平林  「戻るったってアイツがいるんですよ」
   敷島  「わかってる、だからあまり近づかんようにするんだ」
恐る恐るA館の方へと戻っていく正太郎たち、A館も突然のシーザーの乱入でパニックとなっていた、
警備員も手の下しようがない、やがて鉄人のブースの前でシーザーは立ち止まった、

 シーザー  「鉄人の操縦者はいるか?いたら出て来い」
  正太郎  「博士、僕を呼んでますよ」
   敷島  「正太郎君、出るな、危険だ!」
  正太郎  「でも・・」
   平林  「そうだよ、あんなゴツイ奴に呼ばれてのこのこ出ていくことはないって・・」
 シーザー  「ふん、どこかに隠れているのか、いることはわかっている、私がどれほど強いのかということを証明して見せてやろう、私の頭脳が宿る前のVL2号は一度この鉄人に敗れている、だが生まれ変わったこのシーザーに敵はない、私と戦う勇気があるなら表へ出ろ」
     ( シーザーの鉄拳が外壁をブチ破り会場前の広場へと移動する、)
  正太郎  「博士、あいつ鉄人と戦う気です」
   敷島  「うむ、とにかくこのまま見過ごすわけにはいかんだろう、正太郎君、鉄人をぶつけたまえ」
  正太郎  「はい!(ブースまで戻りリモコンを手にして) さあ鉄人、あいつを取り押さえてくれ」
バンワオーーッ!鉄人の咆哮が館内にこだまする、シーザーのあけた穴から表へ出る、
 シーザー  「ふん、来たか、さあかかってこい、このシーザーの力を見せてやろう」
2体のロボットが国際展示場前の広場で対峙している、大勢の観衆が遠巻きにこれから巻き起こるバトルを固唾を飲んで見つめていた、 (つづく)
  

2006年08月11日

第三章 「敗北」

シーザー  「ほら、来いよ」(人差し指をクイと動かし手招きする)
  正太郎  「鉄人、ブチかましてやれ!」
シーザーに向かって突進する鉄人、少し斜に構えるシーザー、鉄人の豪腕がシーザーの顔面に向かって飛ぶ、シーザーがほんの少し身をくねらせ鉄人のパンチを紙一重でかわし逆に鉄人の顔面と胸元にワン、ツー、スリーの三連打をカウンターで放つ、よろけ数歩後退する鉄人・・・・
 シーザー  「どこを狙ってる?ほら、ちゃんと打ってこいよ」
  正太郎  「くそう、ナメやがって」(リモコンを激しく動かす)
再度突進しパンチを放つが絶妙のタイミングでパンチを払われ逆にまたも顔面とボディに連打を受ける鉄人、体勢を崩された時、低く突き上げるようなシーザーのタックルを受け、もんどりうって吹き飛ばされてしまった・・・
  正太郎  「な・・なんて奴だ、鉄人の動きを見切って動いてるみたいだ」
   敷島  「正太郎君、空に飛ばしてみたまえ」
  正太郎  「はい」
ゴーーーッ・・・ロケットに点火し上昇する鉄人
 シーザー  「ほう、今度は空中戦を挑もうというのか」
シーザーも弾かれるように上空へ、両者大きく旋回し、正面からブチ当たる、ガキーーン!双方ショックで弾かれ各々体勢を整える
 シーザー  「ほう、さすがは鉄人だ、パワーは互角らしいな、だがそれだけではこの私は倒せん」
  正太郎  「ようし、何度でもブチかましてやるぞ」

もう一度衝突コースへ、シーザーも鉄人に向かって飛ぶ、双方激突かと思われた寸前、わずかにシーザーが身をかわし鉄人の背後に回りこむ、
素早く鉄人の背中に密着しロケットエンジンに手をかける、

  正太郎  「ああ!いかん」
 シーザー  「そうら、お前の翼をもぎ取ってやろう」
渾身の力をこめて鉄人のロケットエンジンを引き剥がそうとするシーザー、メキメキッとロケットを固定しているベルトの一部がはがれ始める、

  正太郎  「くそう鉄人、何とかそいつを振り切れ」 (シーザーを振り切ろうときりもみ飛行をさせるが)
 シーザー  「ハハハ、無駄だ無駄だ、そおら、これでどうだ!」

ベキッ、ベキッ、バリッ、激しい音を立てて完全に鉄人のロケットはもぎ取られてしまった、高度は500メートル、下は硬いアスファルトである、
  正太郎  「しまったあ!」
   平林  「ダメだ!落ちる」

ズガガガーーン!高度500メートルから地面にめり込むように鉄人は落下した、並みのロボットならこれで完全に大破してしまうところだが驚異的な頑丈さを誇る鉄人である、ゆっくりと身を起こし立ち上がった、その鉄人の前にシーザーが着地する、

 シーザー  「フフ、さすがに丈夫だな、まあこの程度でツブれてしまっては張り合いがないからな、さあ続きをやろう、ほら打ってこい」
鉄人がパンチを放つがすべて紙一重でかわされている、シーザーはかわすだけで反撃せず、鉄人を翻弄し続けている、
パンチが空を切りバランスを失って転倒する鉄人、

 シーザー  「この、のろまが!いいか、パンチというのはこう打つんだ!」
起き上がった鉄人に風のように襲いかかる、ウエイトの乗ったパンチが鉄人の顔面、アゴ、ボディに十発以上の連打が叩き込まれた、たまらず後方に吹っ飛ばされ大の字に倒された鉄人・・・

  正太郎  「くっ・・なんて奴だ!」
   平林  「あの野郎、いたぶってやがる」
先ほどの墜落のショックの後遺症もあってか、なかなか立ち上がれずにいたが、それでも雄雄しく立ち上がりバンワオーッと二度咆哮を上げパワーを蓄えている、
 シーザー  「フフフ、弱い犬ほどよく吼えるというがな・・」

ゴーーッ!・・シーザーが上空に舞い上がり旋回急降下、加速度をつけて鉄人にブチ当たる、ガガーーン!
激しく音を立て鉄人が弾き飛ばされる、翼をもがれた鉄人である、空からの攻撃には圧倒的に不利だ、

 シーザー  「大丈夫かね鉄人?どれ、少ししゃっきりさせてやろうか」
倒れた鉄人の前に着地すると鉄人の両肩をがっしりと掴んだシーザーはバリバリバリッと激しい電撃を加える、鉄人の体がガクンガクンと痙攣を起こしている、
 シーザー  「フフフ、少し薬が効きすぎたかな?」
   平林  「正太郎君、何とかならないか?ここままじゃなぶり殺しだ」
  正太郎  「ショックで・・操縦が上手くできないんです」 (額に脂汗をべっとりとかいている)

シーザーが鉄人をうつ伏せに倒し、右腕を掴み関節を逆に決め、渾身の力をこめている、ギシギシ・・関節のきしむ音が聞こえる、
鉄人は身を起こしたくともシーザーの体に馬乗りにされていて身動きができない、やがてバキーーン!という音とともに鉄人の右腕はもぎ取られてしまった!
  正太郎  「しまったあ!右腕をやられた!」

鉄人がムチャクチャにもがき何とか馬乗りになったシーザーをはらいのけると中腰のまま放ったパンチが初めてシーザーの顔面を捕らえた、
だが不安定な姿勢からくり出すパンチに威力はない、
 シーザー  「ふん、クセの悪い左手だな」
素早く鉄人の左腕をガッチリ掴みこれまた巧みな動きで腕を逆関節に決めてしまうシーザー、テコの原理を最大限に利用している、
バキーーン!難なく左腕も引き抜かれてしまった・・・
  正太郎  「駄目だもう・・何をやっても」 (正太郎の体がブルブル震えている)

シーザーが鉄人のアゴを踏みつけている、両腕を失った状態では足をバタつかせるだけで立つこともできない、
鉄人と正太郎にとってこの上ない屈辱であった・・・
 シーザー  「見てのとおりだ、よく見ておけ、鉄人のこの無様な姿を、これが私の力だ、このシーザーこそ世界最強のロボットなのだ」

鉄人を踏みつけたまま高らかに宣言するシーザー、その時通報を受けた近隣の米軍陸上部隊が現場に到着、装甲車、戦車からなる機甲部隊である、そして空には空軍のヘリ部隊が迫って来る、

 シーザー  「ふん、雑魚どもがようやくお出ましか」
  指揮官  「各隊、戦闘態勢につき次第攻撃せよ!」
   副官  「シーザーが上昇します!」
  指揮官  「逃がすな、ターゲットロックオン、ミサイル発射!」
複数の攻撃ヘリから十数発のミサイルがシーザーへと放たれるがシーザーの近くまでたどり着くと方向を見失い大きくそれていく・・
  指揮官  「ど、どうした?」
   副官  「シーザーから強い妨害電波が出ています、ミサイルが追尾できません」
  指揮官  「くそう、それなら接近してバルカン砲とサイドワインダーをブチ込んでやる」

攻撃ヘリがシーザーへの接近を試みるがシーザーの飛び方はそれをあざ笑うかのような飛び方である、何度も空中で静止したかと思えばそこから上下、前後、左右へと小刻みに素早く移動し照準を合わすことさえままならない・・・
  指揮官  「畜生、なんて飛び方だ、人をおちょくりやがって」
      (陸上部隊も散発的に発砲をくり返すがシーザーの動きを捉えられない)
   副官  「隊長、高高度から何か急速に接近してきます」
  指揮官  「何だ?」
   副官  「わかりません」
その巨大な飛行物体は戦闘空域に突入すると近くに居合わせた攻撃ヘリ3機を次々と粉砕した、

   副官  「2番機、5番機、8番機がやられました!」
  指揮官  「あれは・・・見たことがあるぞ、あれは確かモンスターとかいうロボットだ!」
   副官  「隊長、こっちに来ます!」
  指揮官  「回避しろ、回避だ!」
   副官  「だめです!間に合わない!」
次の瞬間、隊長機はモンスターの直撃を受けて木っ端微塵となった、一方国際展示場に面する海岸からファイア2世と3世が姿を現し、陸上部隊に向かって進む、

       「3時の方向2体のロボットを確認!」
       「向かって来るぞ、撃て!撃ちまくれ!」
戦車砲、重機関銃、バズーカ砲が一斉に火を噴く、凄まじい爆音と砲弾の飛び交う中、ひるむことなく歩を進める2体のロボット、
ベラネード  「なぜだ?なぜ私のロボットたちが?・・管理センターは何をしとるんだ?」
 ダグラス  「社長、今本社からの連絡で突然ロボットたちが動き出し、コントロールルームを破壊して行方をくらましたとのことで・・」
ベラネード  「行方をくらましただと?ここにいると言ってやれ!操縦システムが破壊されてしまっていったい誰が操縦してるんだ、ま、まさか?」
       (あ然とした目で空を見上げ)
ベラネード  「・・あいつか」

弾幕をすり抜け機甲部隊に暴れこむ2体のロボット、たまらず戦闘車両を捨てて四方八方へと兵士たちが退避していく、
破壊光線を受け、踏みつけられ投げ飛ばされ次々とスクラップの山が築かれていく、
 シーザー  「それくらいでいいだろう、長居は無用だ、引き上げよう」

飛行を続けるモンスターのボディから、そして地上の2台のロボットのボディからもくもくたる煙幕が噴出され、たちまちあたり一面の視界は煙に奪われてしまった、ロボットの足音、そして人々の混乱と怒号だけが聞こえる、
そしてその煙が晴れた時、そこに4体のロボットたちの姿はなかった 

倒された鉄人の元で立ち尽くす正太郎、敷島、平林
  平林  「こりゃあ・・こっぴどくやられちまったなあ」
 正太郎  「鉄人・・・うっ」
     正太郎の口から嗚咽が漏れる、今までに何度か敗北を経験したがこれほどまで一方的でなおかつ屈辱的な敗北を味わったことはなかった、
 正太郎  「博士・・申しわけありません」
  敷島  「いや、君のせいじゃない、不可抗力だ、シーザーがあれほどの動きをするとは思わなかった、」
  平林  「同感ですよ、あの動きは誰かが操縦してるって感じじゃない、本当に自分の意志で自由自在に動いてる、まさに生きてるって感じですよ」
 正太郎  「博士、鉄人ではあのロボットに勝てないんでしょうか?」
  敷島  「それについてはよくよく考えてみなければならんが正太郎君がいくら鉄人の操縦に長けていても離れた位置からの視線で動かさなければならないのに対して相手はごく近い視点から、それも体の微妙な動きまで自分の意志で自在に素早くこなすことができる・・これはあまりにも大きすぎるハンデだ」
 正太郎  「・・・・・・・・・」
  敷島  「さっき鉄人の腕をへし折ったのだって決して力任せじゃなく実にテコの原理を上手く応用してやってのけている、あんな動きは第三者による操縦ではできないと思うよ」
 正太郎  「鉄人のパンチ攻撃も簡単にかわされてしまいました」
  敷島  「それも最低限の動きでね、だから素早い反撃をカウンター気味に何発も受けてしまった、こちらの動きを読まれているんだ、空中戦にしても衝突の直前に身をかわしバックを取るということもあのロボットなら簡単にやってのけるだろう」
 正太郎  「じゃあ・・やっぱり鉄人には勝ち目がないってことに・・」
  平林  「いっそ鉄人も自分で考えるくらいでなきゃね」
  敷島  「鉄人が自分で考える・・か」 (少し考え込む)
  平林  「どうかしましたか博士?」
  敷島  「ああ、いや、とにかく何故こんなことになったのかベラネード産業から事情を聞いてみよう」

世界ロボット博覧会事務局、
ダグラス  「ベラネード社長は今警察で事情聴取を受けておりますので代わりに私が承ります」
博覧会理事長マクマホン 「ダグラスさん、博覧会は日を改めて行うことにしました、言うまでもなく今回の事件のすべての責任はベラネードロボット産業にあります、おわかりですな?」
ダグラス  「はあ、それはもう・・」
マクマホン 「不幸中の幸いというか何軒かのブースや出展品を破壊されましたが関係者と観客からは一人の死者も出さずに済んだ、だが空軍や陸軍の兵士には多数の死傷者を出してしまいました、いずれ当局から厳しい追及があるでしょう、ここまで最悪のケースになってしまうとむしろ同情を禁じ得ませんが果たすべき責任はそれなりに負って頂きますのでそのおつもりで、」
ダグラス  「はい・・承知しております」 (力なくうなだれる)
  敷島  「ダグラスさん、とにかく至急鉄人を修理しなければなりません、ベラネードの設備を使わせて頂けますか?」
ダグラス  「はい、すぐに手配をさせて頂きます、壊されたロケットエンジンにつきましては当社に同等品がありますのでそれをお使いになってください」
  敷島  「助かります、ところで今回の事件の原因について何か思い当たることはありませんか?」
ダグラス  「はっきりした事はわかりません、開発者のパーカーがいれば答えを出せたのでしょうが・・」
  敷島  「そのパーカーという人は?」
ダグラス  「二日前、工場内で不慮の事故に遭い亡くなったのです」
  敷島  「開発者が事故で?・・それも二日前ですか」
  ジム  「副社長、ちょっといいですか?」
ダグラス  「何だねジム?」
  ジム  「技術部のジム、マードックです、死んだパーカーが長期出張に行っている間シーザーの改造と教育を担当していました、これからお話しすることは推測の域を出ていませんがまずシーザーには電子工学、ロボット工学について時間をかけて覚えこませてあります、ですからシーザーは自分の構造については隅々まで熟知していた事は間違いありません」

  敷島  「なるほど・・」
  ジム  「シーザーの電子頭脳には安全装置というシステムがあります、人間に敵意を持たない、害を為さない、反抗しないというセーフティロックがされていたんです、モニターでチェックするとちゃんと安全装置は作動していたことになっていました、では何故か?私はシーザーがウソの信号を出していた、つまり(ふり)をしていたのではないかと思います」

ダグラス  「・・ふりをしていた?」
  ジム  「自分の構造を熟知しているシーザーなら安全装置の作動を停止しながらも外部のチェックモニターにウソの信号を送ることも可能だと思うのです」
  敷島  「ウソの信号ですか・・・」
  ジム  「はい、シーザーの各システムのチェックは主に外部のモニターに頼っていました、本当は胸のパネルをあけて電子頭脳の各ユニットを引き抜いてチェックするのがいちばん確実ですが手間のかかる作業ですから忙しい時はモニターに頼ってしまうんです、事実それでほぼ完璧にチェックできますし・・・」

ダグラス  「つまりモニターだけが正常だと示していて実際は機能していなかったのか?」 
  ジム  「それがいつからそうなっていたかははっきりと断定できませんが・・多分」
ダグラス  「思い当たるふしがあるのか?」
  ジム  「シーザーのメモリーを増設する時やレーダー装置、パラボラアンテナを含む送受信システムを追加する際にいくつかのシステムを停止するかリセットしなければなりませんでした、安全装置もその中に含まれていました、シーザーが危険な考えを抱いたとすればそのわずかな時間のうちではないかと思うのです」
  敷島  「スキがあったということですね?」
  ジム  「危険な考えを持ったとしても安全装置が働き出せばそれは抑えられてしまいます、だがシーザー自身の中でその考えが気にかかっていたとする、それをまた解放させたくてベラネード社長に次はこんな装備をと提案する、喜んで社長がOKする、追加の際、数時間安全装置が止まる、その間に危険な考えを膨らませていく・・・このくり返しがあったのではないかと・・・」
  敷島  「なるほど、十分あり得る話ですね」
  ジム  「私も次々と装備やメモリーの追加を求めるシーザーの積極さに少々戸惑いを感じました」
ダグラス  「そんなことが・・」
  ジム  「口にするのも恐ろしいことですがあの日パーカーはシーザーの胸をあけ電子頭脳を直接チェックしていたのです、ドッグ内にいたのは彼一人でした、もしパーカーがモニターの表示とは逆に安全装置が作動していないことに気づいたとしたら・・・」
ダグラス  「き、君はパーカーが死んだのは事故ではないと?」
  ジム  「証拠は何もありませんがでもパーカーが立っていた足場から高圧線までは少し距離があります、あそこに落ちたというのは少々腑に落ちません」
  敷島  「恐ろしい話ですね、秘密を知られて消された可能性もあると?」
  ジム  「そんな気がしてなりません」
ダグラス  「何ということだ」
同日夜、太平洋上をサンフランシスコを出港した貨物船「海洋丸」が一路日本へ向け航行していた、
ゴーーッ、海面ぎりぎりの高度で海洋丸に近づくシーザー、低空の為レーダーは感知できない、
  船長  「何だあの音?・・ジェット機みたいな」
 航海士  「左舷の方から聞こえます、どんどん近づいてるみたいだ」
    (突然シーザーが姿を現しブリッジの前に降り立った)
  船長  「うわわっ!ロボットだ・・こいつは・・ニュースで言ってたシーザーとかいう奴だ!」
シーザー  「船長、船を沈められたくなかったら私の指示に従うのだ」
  船長  「こ・・この船をどうしようっていうんだ?」
シーザー  「なに、乗せていってもらいたいだけさ、目的地までな、この船はどこへ向かってるんだ?」
  船長  「日本・・日本だ・・神戸港まで、」
シーザー  「ほう日本か、まあいい、船長、船を止めろ、私の仲間たちが海中をこのすぐそばまで来ているのでね、全員乗せてやってほしい」
  船長  「ま・・まだいるのか」
シーザー  「言われたとおり速やかに行動しろ!」 (巨大な拳が窓の直前に突き出される)
  船長  「わ、わかった・・停止!機関停止!」
シーザー  「それでよい、おかしな無電など打たない方が身のためだ、私にはすべて感知できるのだからな」
 航海士  「船長・・どうしましょう?」
  船長  「とにかく言われたとおりにするしかない、下手な抵抗は命取りだ」
シーザー  「それが賢明な判断だよ船長」
    間もなく夜の海面にモンスター、ファイア2世、3世が姿を現し船の方に近づいていく・・
  船長  「うわわっ!無理だ!あんなに乗せたら船が沈んでしまうよ」
シーザー  「それもそうだ、だから積荷はここで全部捨てさせてもらうよ」
  船長  「そ・・そんなあ」
シーザー  「あきらめるんだな、それ以外は予定通りでよい、定期連絡も忘れずにするんだ」
        (4体のロボットが次々と船に乗り込む)
シーザー  「では船長、安全な航海をお願いするよ」  (つづく)  

2006年08月13日

第四章 「新たなる誕生」

サンフランシスコ ベラネードロボット産業、本社工場、作業台の上で半身を起こしている鉄人の背中に新しいロケットエンジンが取り付けられ固定作業が行われている、もぎ取られた両腕の取り付けは完了し、現在は各システムの最終調整が同時進行で進められている、

   平林  「さすが世界のベラネード産業だ、ウチの研究所じゃこれだけいろいろ同時にできないもんな」
   敷島  「ひらさん、ロケットの固定の方は?」
   平林  「昼までには終わらせますよ、エンジンテストは昨日ばっちりやっときました、やっぱり新品は噴きがいいですね、どのみちそろそろ取替えなきゃならない時期でしたからね、無償でもらえるなんて設けものでした、」
   敷島  「ベラネード産業には気の毒で素直に喜ぶには気が引けるねえ」
   平林  「いいんですよ、こっちは被害者なんだから、正太郎君、倉庫に新しい基盤とかプラグがいっぱいあるからさ、この際古くなってるのと全部取り換えようぜ」
  正太郎  「ひらさん、少しは遠慮しようよ」
      (三人の元へ副社長のダグラスがやって来る)
 ダグラス  「今、社長がお見えになりました、皆さんとお話したいと社長室でお待ちです」
社長室のソファに身を深々と沈めているベラネード、人間一日でこうも変わるものかと思うほどやつれていた、
ベラネード  「ベラネードです、この度は大変ご迷惑をおかけしました」
   敷島  「大変でしたね」
ベラネード  「今回の事件を受け入れるのに昨夜一晩かかりました・・」
   敷島  「お察しします」
ベラネード  「なぜこんなことになってしまったのか・・その原因についてですが・・」
   敷島  「その点について技術部のマードックさんから恐ろしい推論を聞きました」
ベラネード  「私も聞きました、おそらくジムが言ったとおりでしょう」
   敷島  「では開発者のパーカーさんが亡くなったのはやはり事故ではないと?」
ベラネード  「私もあれは事故にしては不自然だと思っていたのです」
   敷島  「そうでしたか」
ベラネード  「パーカーには本当に気の毒なことをしてしまいました」
   敷島  「ジムさんの推測が正しかったとしてそもそも何故シーザーが人間に対して反逆新を持つようになったのでしょう?」
ベラネード  「それは・・私の責任です」
   敷島  「・・と言われますと?」
ベラネード  「私はシーザーに私の野望をたっぷりと語って聞かせました、自分で考え行動できる電子頭脳を搭載したベラネードのロボットが世界を席巻する、世界のロボット産業を支配すると・・・支配、席巻、制覇、これと同意語の言葉をいくつ聞かせたことか・・もちろん私が言いたかったのはビジネスというルールのある世界での話だが、おそらくシーザーはもっとシンプルな意味で考えたのでしょう」
   敷島  「支配、席巻、制覇・・・」
  正太郎  「博士、シーザーが自分のことを人間よりはるかに優れ、強い存在だと自覚した時、それらの元来の意味と照らし合わせたとしたら自分が人間に従っていることに矛盾を感じていたということも考えられますね」
   敷島  「うん、安全装置が外れた状態で考えた時、その矛盾ははっきりと人間に対する敵対心を形作っていったんだろう」
ベラネード  「シーザーが自分から積極的に装備の改造を申し出たのは一時的に電子頭脳の安全装置を止めるのが真の目的だったとは・・・まんまと一杯食わされました」
   平林  「今後、電子頭脳の開発はどうなるんです?」
ベラネード  「安全性の確保が不十分だとして当局より無期限の停止を言い渡されました」
   敷島  「そうですか・・」
ベラネード  「近く開かれる株主総会で退任を迫られるのは必至だ、私はもうおしまいですよ」
   平林  「あなたの進退のことなんかよりシーザーをどうするかってことの方が先決でしょう?」
  正太郎  「ひらさん・・」
   平林  「だってそうだろう?」
ベラネード  「確かにそうだ、もちろん事件解決のためにわが社は協力を惜しみません、まず手始めに鉄人を修理させて頂いた」
   敷島  「シーザーと他のロボットたちの行方は?」
ベラネード  「軍が必死になって捜索していますが何の手がかりもないそうです」
   平林  「シーザーだけでも難敵なのにファイア2世、3世、モンスターまでいるんじゃなあ・・」
ベラネード  「シーザーは中央コンピュータに侵入して3体のロボットたちの操縦データと電波のサイクルを盗み出したようです、私の所有するロボットたちは定期的にメンテナンスをしていました、点検時にはエネルギーを注入し、システムのチェックと試運転をしています、その点検を4日前にしたばかりです、シーザーが反逆の日を博覧会当日に選んだのはそういう計算もあったのでしょう・・・」
  正太郎  「すべて計算づくだったのか」

その日の午後、鉄人の修理は完了し、工場の上空をテスト飛行させていた・・
   平林  「どうだい、正太郎君?」
  正太郎  「ええ、やっぱり新しいエンジンはいいですね、加速が違いますよ」
   平林  「いろいろ部品を取り換えて今の鉄人は完璧だ・・でもやっぱり鉄人はあのシーザーには勝てないのかなあ?」
  正太郎  「悔しいけどあのシーザーの動きにはついていけそうにない・・」
   平林  「思い出して見ればさあ、ロビーって奴は賢かったけど本人は弱いロボットだったし引き連れてるロボットもたいしたことはなかった、けど今度は賢い上にべらぼうに強い、手下のロボットだってとんでもなく強いロボットだ、こりゃ荷が重過ぎるよな」

  正太郎  「まさに最強の敵だな・・」
     (敷島博士とジムマードックが二人の元へやって来る)
   敷島  「正太郎君、ひらさん、これから鉄人の大改造に着手することに決めたよ」
  正太郎  「大改造?」
   平林  「まだ何かすることがあるんですか?」
   敷島  「鉄人にもシーザーのような電子頭脳を搭載するんだ」
  正太郎  「鉄人に電子頭脳を?」
   平林  「鉄人を考えるロボットにするっていうんですか?」
   敷島  「シーザーに対抗するためにはそれしかないんだよ」
   ジム  「我々が全面的にバックアップさせてもらいます」
   敷島  「シーザーの失敗をくり返さないよう安全装置には万全を期すつもりだ、それから正太郎君」
  正太郎  「はい、」
   敷島  「君が鉄人を教育してやってくれないか?」
  正太郎  「教育?・・僕がですか?でも教育ってどうすりゃいいんです?」
   敷島  「つまり・・鉄人が我々に積極的に協力するように指導をしてほしいんだ」
  正太郎  「う~ん・・操縦なんかとは次元が違いますねえ」
   敷島  「まあ、そうだねえ」
  正太郎  「僕にできるかなあ?」
   平林  「正太郎君、難しいようで案外簡単なことなんじゃないかな?」
  正太郎  「そうかなあ?」
   平林  「君が鉄人と友だちになればいいんだよ」
  正太郎  「鉄人と友だち・・ですか?」
   平林  「鉄人のことが好きなんだろう?」
  正太郎  「そりゃそうだけど・・」
   平林  「じゃあ問題ないさ」 
正太郎の声 「その日から新しい電子頭脳の組み立てと鉄人の駆動システムの変更が同時並行で始まった、電子頭脳の組み立てに二日を要しそこにさまざまな情報を覚えこませなければならない、しかしシーザー同様の知識を与える必要はないのだ、規定のメモリー容量の範囲内の情報でいい、それを満たすのだって十日もかかるのだから、五日目以降から鉄人は人間と自由に会話ができるようになった、・・着手より六日目、」

 正太郎  「おはよう鉄人」
  鉄人  「おはようございます金田さん」
 正太郎  「あのさあ、その金田さんってのやめようよ」
  鉄人  「金田さんではいけませんか?」
 正太郎  「正太郎って呼んでくれたらいいよ」
  鉄人  「わかりました、正太郎さんですね」
 正太郎  「さんは要らないよ、ただの正太郎でいいから・・」
  鉄人  「わかりました、正太郎」
 正太郎  「まだまだ言葉が丁寧過ぎるなあ、僕は君と友だちになりたいんだからさあ」
  鉄人  「友だち・・ですか?」
 正太郎  「そうさ」
  鉄人  「友だちとは何なのですか?」
 正太郎  「う~ん、そういうところから教えないとだめなのか・・」(頭をかく)

正太郎の声 「それから三日間にわたって僕は鉄人といろんな話をした、鉄人が誕生したいきさつ、今までに起こった事件の数々、僕自身のことについて、不思議と人間相手に話すより安心して心が開けるものだ、鉄人の喋り方もかなりくだけた感じになってきて僕たちは何かフレンドリィないい雰囲気になれた気がする、・・そして着手より十日が経過した」

 正太郎  「鉄人、お前の本体の改造が終わったよ、いよいよ新しい体に引越しだね」
  鉄人  「体を持つってどんな感じなのかな?」
 正太郎  「うんと自由になったような気になると思うよ」
  鉄人  「空が飛べるんだよね?」
 正太郎  「うん、すごく速く飛べるよ、うんと高くね」
  鉄人  「楽しみだな」
 正太郎  「お前がうらやましいよ」

ついに鉄人の内部に電子頭脳が搭載され、各システムに接続された、いよいよ鉄人が自分の意志で動くのだ、みんな興奮の面持ちで見つめる中、メインスイッチが入れられた、

  鉄人  「これが・・僕の体なのか」 (いろいろな動きをしながら感覚を確かめている)
 正太郎  「どうだい気分は?」
  鉄人  「うん、悪くない、正太郎はずいぶん小さかったんだね?」
 正太郎  「て言うか、お前が大きいんだよ」
  鉄人  「外へ出て歩いてみたいな」
 正太郎  「うん、行こう」 (工場内の敷地を散歩している鉄人と正太郎たち)
 正太郎  「鉄人、もっとゆっくり歩いてくれよ、コンパスが違うんだから」
  鉄人  「ああ、そうだったね、ごめんよ」
 正太郎  「もう慣れたかい?」
  鉄人  「うん、そろそろ飛んでみようかな?」
 正太郎  「うん、博士、空に飛ばしますよ」
  敷島  「ああ、正太郎君、これで鉄人と会話ができるから」 (小型のトランシーバーを渡す)
 正太郎  「よし鉄人、飛んでみろ」
    ゴゴーーッ、ロケットエンジンが唸り弾かれるように上昇する鉄人、上空を大きく旋回している、
 正太郎  「鉄人、聞こえるかい?」
  鉄人  「うん、よく聞こえる」
 正太郎  「いろんな飛び方を試してみろよ、でも遠くまで行っちゃだめだよ」
  鉄人  「わかった」
     空中で静止、そこから急上昇、急降下、きりもみ飛行と自由自在な飛び方を見せている鉄人、
  敷島  「なんだか楽しそうに飛んでるように見えるねえ」
 正太郎  「本当・・そんな感じですね」
     突然空中で大きく体勢を崩し落下するが何とか立て直す、
 正太郎  「どうした鉄人!」
  鉄人  「びっくりした、今失速しちゃったよ」
 正太郎  「おいおい、気をつけてくれよ」
  鉄人  「わかった、もう慣れたよ」
 正太郎  「三十分たったら降りてきてくれ」
  鉄人  「了解」

同日夜、工場内宿舎
  敷島  「ひらさん、正太郎君は?」
  平林  「食事してすぐ鉄人のところへ行きましたけど」
  敷島  「今夜もかね、頑張るなあ」
  平林  「正太郎君、すっかりハマッてますねえ」
  敷島  「うん、まあ鉄人と話ができるなんて最近まで思ってもいなかっただろうしね」
  平林  「例えは違うけどもしウチの愛犬のゴローが喋ったらそりゃ楽しいって思いますもん」
  敷島  「はは・・」
(鉄人のいるドック)
  鉄人  「そうか、僕はそのシーザーというロボットにやられちゃったんだね?」
 正太郎  「うん、離れたところからの僕の操縦じゃあいつの動きに追いつけないんだ」
  鉄人  「シーザーのデータは僕の頭に入ってる、力はほぼ互角だと思うよ」
 正太郎  「そうなんだ、だから次は絶対勝てると思うよ」
  鉄人  「絶対勝てるって保証はないけど・・」
 正太郎  「そうだけど僕はお前が勝つって信じてるよ」
  鉄人  「信じてる?」
 正太郎  「うん、それに勝ってくれないと困るんだ、困るだけじゃない、あいつは危ないロボットだ、僕や他の人間たちに危害を加えようとしている」
  鉄人  「正太郎に危害を加えようとする奴は許せないな」
 正太郎  「嬉しいこと言ってくれるね」
  鉄人  「シーザーが正太郎にとって敵なら僕にとっても敵だ」
 正太郎  「うん」
  鉄人  「負けたくないな」
 正太郎  「頼むよ、鉄人が負けるところなんか見たくないよ」
  鉄人  「僕が勝ったら嬉しい?」
 正太郎  「嬉しいさ、飛び上がって喜ぶよ」
  鉄人  「正太郎が喜んでくれるなら僕は勝つよ」
 正太郎  「うん、頼むよ鉄人」
  鉄人  「きっと僕が君を守るから」
 正太郎  「うん」
  鉄人  「友だちは守らないといけない」
 正太郎  「ありがとう」

翌朝8時 ドックに入ってきた平林
  平林  「おはよう鉄人」
  鉄人  「ああ、ひらさん、おはよう」
  平林  「正太郎君は?」
  鉄人  「4時間前に眠ると言って帰ったよ」
  平林  「4時間前?・・4時までここにいたのかよ?」
  鉄人  「いろいろ話をしたよ」
  平林  「そりゃあいいけどさ、でもちょっと無理し過ぎじゃねえのかい?」
  鉄人  「僕もそう思う、人間には睡眠が必要だ」
  平林  「そうなんだよなあ・・でも頭が下がるよ、ところでシーザーのことはもう聞いてるよな?」
  鉄人  「うん、今度は絶対勝つって正太郎と約束したよ」
  平林  「頼もしいねえ、俺も期待してるよ、ところでさあ、お前今度シーザーとツラ合わせたら何て言ってやるつもりだい?」
  鉄人  「うん・・シーザー、僕は鉄人だ、お前を壊してやる」
  平林  「かーっ、だめだめ、そんなしまらねえ言い方じゃ」
  鉄人  「だめかなあ?」
  平林  「もっと頭からバーンとかますんだよ、いいか鉄人、今度シーザーとツラ合わせたら今から俺が教えるとおり言えよ」
  鉄人  「うん、わかったよ」

午前11時開発室で敷島と平林が打ち合わせをしている、正太郎が眠そうな眼をして入ってくる・・・
 正太郎  「ああ・・おはようございます」
  平林  「ぜんぜんはやくねえけどな」
  敷島  「朝方まで鉄人と話していたって?」
 正太郎  「はい・・ちょっとのめり込み過ぎかなって・・反省してます」
  敷島  「うん、いい加減にしとかんと体を壊すぞ」
 正太郎  「はい・・あのう、その機械は何ですか?」

    (敷島と平林が協力していくつかの部品を組み合わせた物・・まだ未完成である)

  敷島  「オックスが動き始めると独自の磁気が発生してロボットの操縦が狂わされてしまうだろう?」
 正太郎  「ええ・・」
  敷島  「そのサイクルを人工的に作り出せないかと今やってるところだ」
 正太郎  「へえ」
  敷島  「その波長を増幅してぶつけてやれば操縦されているモンスターやファイア2世、3世は無力にすることができるからね」
 正太郎  「なるほど、でもオックスは使わないんですか?」
  敷島  「使ってもいいんだがオックスは空が飛べないから機動性がない、相手はいつどこに現れるかわからんのだし、それにすぐ近くまで近づけないとその効果を発揮できない、それを考えるといざという時、間に合わないということが考えられるんだ」

  平林  「正太郎君、こいつは飛行機やヘリに搭載して離れたところからも発信できるっていうスグレ物なんだぜ」
 正太郎  「そりゃあすごい」
  敷島  「だが残念ながら自分の意志で動いているシーザーには何の効果もないのだが・・」
 正太郎  「でも他のロボットを封じ込めることができたら勝つチャンスは十分にありますよ」
  敷島  「そういうことだ、だからどうしてもこいつを仕上げたい、幸いここの設備は何でも揃ってる、明日までにはできると思うよ」
 正太郎  「こりゃ朗報だ、さっそく鉄人に知らせてやろう」
      (正太郎が部屋を出ようとした時、ジムが電話を取る)
  ジム  「はい・・金田さんですか?ええ、いますよ金田さん」
 正太郎  「はい、」
  ジム  「東京からお電話です、大塚さんという方から、2番を取ってください」
 正太郎  「(受話器を取り) もしもし、親父さんですか?僕です、何かあったんですか?」
  大塚  「おお正太郎君、一大事じゃ!シーザーと他のロボットたちが日本に潜入したらしい」
 正太郎  「何ですってえ!シーザーが日本へ?」   (つづく) 

2006年08月15日

第五章 「決戦の序曲」

正太郎  「なぜそれがわかったんですか?」
  大塚  「サンフランシスコから神戸に向けて出港した貨物船「海洋丸」が太平洋上でシーザーと他のロボットたちに占拠されてしまったんじゃよ、シーザーの目が光っていて救助信号を打つこともできず日本の領海に入ったところで船の動力と通信設備を破壊して船を離れたそうじゃ、海洋丸は身動きもできず三日間海上に漂流しておったそうじゃが幸い海上保安庁の巡視船に発見されて事の真相がわかったということなんじゃ」
 正太郎  「じゃあもう日本国内のどこかに上陸してるんでしょうか?」
  大塚  「そのように考えるべきじゃがどこに上陸したのかがわからんのだ、船を離れた位置から考えると四国か紀伊半島、又は伊勢湾に入ったか・・いろいろ考えられるからね」
 正太郎  「わかりました、とにかく鉄人を連れてなるべく早く帰りますから・・」
  大塚  「頼むぞ、ところで鉄人に電子頭脳を搭載したと聞いたが?」
 正太郎  「ええ、すっかり鉄人と仲良しになりましたよ」
  大塚  「仲良し?・・ふむ、仲良しにのう」
 正太郎  「それに今敷島博士が他のロボットを無力化できる装置を作っているんです、明日までには出来上がるそうですから完成しだいすぐに・・」
  大塚  「うむ、待っておるぞ、一刻も早く帰ってきてくれ」 (電話が切られる)
  敷島  「正太郎君、シーザーが日本へ?」
 正太郎  「はい、貨物船を乗っ取って・・」
  平林  「こりゃあぐずぐずしていられない、博士、今日中にこれを何とか仕上げましょう」
  敷島  「うん、そうしよう、正太郎君、帰国の準備だ、それと鉄人にもこのことを知らせてやりなさい」
 正太郎  「わかりました」
  敷島  「ジムさん、お聞きの通りです、至急鉄人と今作っている装置を日本に運ばなければなりません、手配をお願いできますか?」
  ジム  「はい、さっそくチャーター機を用意します、鉄人はどうやって運びますか?」
  敷島  「船では日数がかかり過ぎますから鉄人自身を飛ばします、途中何度か給油しなければなりませんがそれがいちばんの早道でしょう」
  ジム  「わかりました、ではそのように・・」
(鉄人のいるドック)
  鉄人  「シーザーたちが日本へ?ずいぶん遠くまで行ったんだね」
 正太郎  「うん、たまたま乗っ取った船が日本の貨物船だったんだ」
  鉄人  「じゃあ僕たちも日本へ行かないと」
 正太郎  「そうなんだ、明日出発するよ」
  鉄人  「わかった、シーザーたちの居所はわかっているの?」
 正太郎  「まだわからない、でもじっとしてる筈がない、そのうち動き出すよ」
  鉄人  「そうだね、急いで行こう、日本へ」

正太郎の声 「翌日僕たちはベラネード産業のチャーター機で空港を飛び立った、鉄人は工場を飛び立って僕たちと合流、鉄人は大きな燃料の予備タンクを抱えて出発した、サンフランシスコからハワイまで飛び、給油とエンジン調整をして一路日本へと飛び立ったのだ、出発より15時間後、鉄人は敷島研究所に降り立った、敷島博士の依頼で大塚署長は
       警視庁のヘリコプターに乗って来てくれた」

  大塚  「正太郎君、博士、いやあしばらく、今回は大変でしたな」
 正太郎  「親父さん、生まれ変わった鉄人に会ってやってください」
  大塚  「フフ、会うといっても、しょっちゅう見とるんじゃが・・」
  鉄人  「おはようございます、大塚署長さんですね」
  大塚  「うほっ、口をきいたぞ!」
 正太郎  「親父さん、それくらいで驚いてちゃだめですよ」
  大塚  「ああ・・そうじゃったな、サンフランシスコでシーザーに惨敗したと聞いたが・・」
  鉄人  「大丈夫です、今度こそ負けません」
  大塚  「うむ、頼りにしておるぞ」
  敷島  「大塚さん、このヘリにかく乱装置を取り付けさせてもらいます」
  大塚  「お願いします、他のロボットを無力化してしまえるそうですな?」
  敷島  「ええ、ほとんど動けなくしてしまいますからかく乱というより「遮断」といった方が正確でしょう、最長500メートルの距離から狙えますが近づけば近づくほど効果は甚大です」
  大塚  「そいつは素晴らしい、すると問題はシーザーだけですな?」
  敷島  「ええ、そいつがいちばんやっかいなのです、シーザーには近代兵器はあまり効果を望めません、ミサイルの標準をロックされると素早く特殊な妨害電波を出して照準を狂わせてしまいます、かといって人間が手動で狙ったのではあの動きの速さについていけず命中率も悪くなりますし、仮に数発くらったところであの装甲ではビクともしません」

  大塚  「う~ん・・なるほどのう」
 正太郎  「親父さん、だからこそ鉄人が頼みの綱なんですよ」
  大塚  「まったくじゃ、ところでこの先シーザーは何をやらかすつもりじゃろう?」
  敷島  「やはり基本的にはロビーと同じことをするでしょう」
  大塚  「するとどこかにこっそり基地を作って部下のロボットを生産しようと・・」
 正太郎  「親父さん、そのやり方だとかなりの時間を要するでしょう、相手はあの強気のシーザーですからね、もっと思い切った手段に出てくるような気がしますよ」
  大塚  「うむ、不気味じゃな・・いや、不気味を通り越してはっきり恐ろしいわい」 
正太郎の声 「僕の不安はやはり的中してしまった、それより二日後、シーザーは思ってもみなかった暴挙に出たのだ、愛知県のT市、日本が世界に誇るトーヨー自動車の本社工場、及び関連企業が密集する一大企業都市である、この日は半期に一度全重役が集まる定例会議が行われていた」

 進行役  「え~、それでは次の案件に移りたいと思います、資料の7ページをめくって・・・」
        ゴーーーッ、もの凄いエンジン音が近づいてくる、
  社長  「何だね?飛行機にしては近過ぎないか?」 (重役の一人が窓の外を見る)
 重役A  「あっ!あれは」
    突如4体のロボットが上空から本社ビルの前に着地した、シーザー、それにモンスターがファイア2世と3世を両脇に抱えている、
 重役B  「ニュースでやっていたロボットたちだ!」
 重役C  「社長、すぐに避難を!」
    全員が出口に駆け出そうとした時、シーザーの拳が本社ビルの壁に撃ち込まれた、
      「うわわわっ!」(激しい揺れが起こり一同その場に身を伏せる)
シーザー  「トーヨー自動車の重役諸君、私はシーザーだ、死にたくなければ私の指示に従え、さもなくばビルごと粉々にしてやるぞ」
 重役A  「しゃ、社長・・あいつあんなことを!」
  社長  「と、とにかくみんな落ち着け、刺激しちゃいかん!」
シーザー  「君達には人質になってもらおう」

およそ一時間後、敷島研究所の電話がけたたましく鳴った、
 正太郎  「博士、シーザーが姿を現しました」
  敷島  「どこなんだ?」
 正太郎  「愛知県のT市です、トーヨー自動車の本社です」
  敷島  「T市か・・」
 正太郎  「社長以下、重役二十数名が人質に取られているそうです」
  敷島  「なんと・・」
 正太郎  「親父さんが今ヘリでこちらに向かってます」
     正太郎、敷島、平林の乗り込んだヘリが一路T市に向かって飛んでいる、
  敷島  「現場の状況はどうなっていますか?」
  大塚  「トーヨー自動車本社前に現在も4体のロボットが陣取っています、ついさっき連絡を受けたんですが・・まずいことに・・」
  敷島  「何です?」
  大塚  「その・・人質全員がモンスターの体内に閉じ込められたというのです」
 正太郎  「モンスターの体内?あの小型モンスターの入っていたスペースに?」
  大塚  「そういうことじゃ、これで救出するのは困難を極めることとなった」
 正太郎  「うかつに攻撃もできませんね」
  大塚  「うむ、自衛隊もシーザーに撤退を命じられてしぶしぶ引き上げているという」
  平林  「シーザーは重役を人質に取って何を要求してるんですか?」
  大塚  「うん、T市にはトーヨー自動車の大規模な工場がいくつもある、その設備を利用して自分の複製を大量に作らせようとしておる」
  平林  「なんて強引なマネしやがるんだ!」

愛知県T市、本社を占拠したシーザーに呼び出され工場関係者が恐る恐るやって来た、
シーザー  「いいか、市内の三つの工場ラインを切り替え、私の複製を生産する準備をするのだ」
 工場長  「そ・・そんな無茶な」
シーザー  「無茶な話ではない、私は市内の工場設備の分析をした、さすがは世界のトーヨー自動車だけあって素晴らしい設備を持っている、
       欲を言えばこの国に大きなロボットメーカーがないのは残念だが技術的にはここも遜色はない、すぐに生産計画に着手し、
       私のところに今日中に持って来い、当面の目標は50体だ」
 工場長  「ご、50体・・!」
シーザー  「話は以上だ、行け」
 工場長  「わ・・わかった」(工場関係者が戻り始めると・・)
シーザー  「工場長、念のために言っておくが」
 工場長  「な、何だね?」
シーザー  「私は市内の工場設備を詳しく分析したと言った、私の計算でも大まかなスケジュールは出来ている、お前が持ってきた
       生産計画にもし時間稼ぎの意図が見られたらためらわず人質のひとりを殺す」
 工場長  「うう・・そんな、」
シーザー  「世界のトーヨー自動車の実力を示せ」
 工場長  「・・・・・・・・」

T市へと向かうヘリコプターの機内
 正太郎  「シーザーが今日定例会議があるという情報を事前に掴んでいたんでしょうか?」
  敷島  「間違いないだろう、シーザーは高性能の送受信システムを搭載していてあらゆる通信を傍受できるからね、それを利用して情報を得たんだと思う」
  大塚  「大勢の人質を取って要求を聞かせるとは大胆なことを考えたもんですな」
  平林  「そんなことを世界のあちこちでやられたら手がつけられませんよ」
 正太郎  「だからどうしても今日、かたをつけてしまわないと・・」
  敷島  「うん、さてどうやるかだが大塚さん、現場の上空には今もヘリが何機かは飛んでるんですか?」
  大塚  「はい、マスコミや警察のヘリが数機飛んでいますが、まあシーザーにしてみればハエが遠巻きに飛んでいるくらいに思っているようで手出しはしていないようです」
  敷島  「するとこのヘリも近くまでは接近できそうですな?」
  大塚  「はい、何とか」
  敷島  「人質が閉じ込められているモンスターとそれをガードするファイア2世と3世に極力近づき、かく乱の電磁波を放射する、だが即座にシーザーは3体のロボットの操縦に異常が発生したことに気づき、搭載されているレーダーでその発信源がこのヘリコプターだとすぐに察知することでしょう」
  大塚  「そうなるとすぐにこのヘリを襲いに来ますな」(身震いする)
 正太郎  「大丈夫です、シーザーが向かって来たら鉄人が迎え撃ちますよ」
  大塚  「それに賭けるしかないな・・」
     正太郎が小型通信機で鉄人に呼びかける、通信機はずっとONのままになっている、
 正太郎  「鉄人、話は聞いたかい?」
  鉄人  「うん、聞いたよ、僕もそれしかないと思う、シーザーのレーダーに感知されないように僕だけは50キロ手前から極力低空飛行で行こうと思う」
 正太郎  「山とか家にぶつからないようにね」
  鉄人  「わかった」
 正太郎  「鉄人、いよいよ決戦だよ」
  鉄人  「うん!」
やがて正太郎たちの乗ったヘリはT市上空にさしかかった、
  大塚  「正太郎君、鉄人はどこまで来ておるのかな?」
 正太郎  「(通信機に) 鉄人、今どこだい?」
  鉄人  「東名高速と国道248号が交差する地点だ、ここから国道沿いに北上するよ」
 正太郎  「そうか、すぐ近くだね、それじゃあ突入するよ」
  鉄人  「うん、行こう」
 正太郎  「親父さん、やりましょう」
  大塚  「うん、(パイロットに) トーヨー自動車の本社まで飛んでくれ」
パイロット 「わかりました」
  大塚  「博士、かく乱装置の準備は?」
  敷島  「いつでもOKです」
  大塚  「よし、突っ込もう!」   (つづく)

2006年08月17日

最終章 「ディア マイフレンド」

間もなくトーヨー自動車の本社ビルが視界に入ってきた、シーザーが見える、そして人質が閉じ込められているモンスターとそれを両脇でがっちりガードしているファイア2世と3世、シーザー以外のロボットは本社の周りをゆっくり歩いている、人を近づかせない為の牽制であろう・・・

  敷島  「このまま300メートルまで近づいてください」
パイロット 「はい、」
  敷島  「ひらさん、出力は最大で、」
  平林  「はい・・(計器を見ながら) 距離7百メートル・・5百メートル・・・4百・・・3百!装置作動します!」
    スイッチが入れられ3体のロボットに電磁波が放射された、突然ガクンと動きを止めるロボットたち、
シーザー  「うん?」
     3体の操縦に異常が発生したことを察知し、電磁波の発信源を着きとめるシーザー、
シーザー  「あのヘリか、ふん、味なことをするな」
     ゴーーッ・・素早く上昇し、正太郎たちのヘリへと向かっていくシーザー、
  大塚  「シーザーが来るぞ!」
シーザー  「こざかしいハエめ、叩き落してやる!」
     その時、建物の影に身を潜めていた鉄人が急上昇しヘリの直前でシーザーを下から弾き飛ばす、
シーザー  「むおっ!」 (空中で体勢を立て直すシーザー、その正面に鉄人も停止する)
シーザー  「鉄人か・・ふん、またやられに来たのか」
  鉄人  「いいや、やりに来たんだよ」
シーザー  「お前は・・?」
  鉄人  「(シーザーをビシッと指差し) おう、テメー!この前はよくもナメた真似してくれたな、ボコボコにして脳天カチ割ってやるからそう思え!」
シーザーと正太郎が同時に  「誰が教えたんだそんな言葉を?」
  平林  「ようし、よし!バッチリ決まったな」
 正太郎  「やっぱりひらさんか(苦笑)」
シーザー  「お前も電子頭脳を搭載されるとはな、だが愚かな人間どもにこき使われるとは哀れな奴だ」
  鉄人  「哀れなのは誰も友だちがいないお前の方だよシーザー」
シーザー  「友だちだと?何をくだらんことを!まあいい、何度でも叩き潰してやる」
  鉄人  「そうはいかない」

再び正面から激突する両者、空中での衝突を何度か繰り返す、何度目かの衝突の直前、体をかわし鉄人の背後に回りこもうとするシーザーであったが素早く察知した鉄人は体の向きを反転させ正面で向き合う、

シーザー  「おのれ、」
  鉄人  「同じ手は食わないよシーザー」(鉄人の鉄拳がシーザーの顔面を捉える)
シーザー  「うぬっ」
     シーザーもパンチを返すが空中でのパンチの応酬は足場が固定していない為ウエイトが乗らずお互いさほどダメージのない膠着状態が続く・・・

ヘリコプターの機内
  大塚  「自衛隊の特殊部隊が人質救出に向かったそうですが、博士、大丈夫ですか?」
  敷島  「大丈夫です、この距離から放射し続けていればロボットたちは身動きできませんよ」
パイロット 「署長、すぐそこのビルの屋上に着地できそうです、けっこう風が強いので機の安定が取りずらくなってきたのですが・・」
  大塚  「そうか、よし、降りよう」 (最寄のビルの屋上に着地するヘリコプター)

事の進展を聞きつけてやって来たのは特殊部隊だけでなく距離を置いて潜んでいた自衛隊の各部隊がシーザーに向けて進撃を開始した、
シーザー  「ふん、雑魚どもがゾロゾロ集まって来たか・・ならば」 (身を翻しある方向に飛んでいく)
  鉄人  「逃げられはしないよシーザー」
シーザー  「誰が逃げると言った!」
     数キロ飛行したシーザーは巨大なガスタンクが3基立ち並ぶ中部ガスの敷地内に降り立った、
シーザー  「ここでよかろう」 (鉄人もその前に着地する)
  鉄人  「そうか、ここを選んだのは自衛隊の攻撃を防ぐためか・・」
シーザー  「そういうことだ、タンクに砲弾が当たればこのあたり一帯は火の海だからな、誰にも邪魔されることなく貴様を叩き潰せる」
  鉄人  「それはこっちも同じさ」
シーザー  「ふん、さあ、かかって来い!」(手招きする)
     砂埃を上げて鉄人が突進する・・・・

ヘリコプターの機内
  大塚  「今、特殊部隊がモンスターに取り付いたそうじゃ、何とか扉を開けようとしておるらしい」
  平林  「ありゃあよっぽど高圧のバーナーで焼き切るしかないんじゃないかな?」
 正太郎  「親父さん、鉄人は?」
  大塚  「5キロほど東に中部ガスのステーションがあってそこでシーザーと戦っておるそうじゃ」
 正太郎  「僕もそこへ行きたいな、何ができるってわけじゃないけど・・」
  大塚  「うむ、鉄人が心配じゃな」
  敷島  「正太郎君、ここは私とひらさんで引き受ける、鉄人のところへ行ってやりなさい」
 正太郎  「はい、そうさせてもらいます」

  敷島  「大塚さんも正太郎君と一緒にどうぞ」
  大塚  「そうですか、ではこの場はお任せします、正太郎君、行こう」
     ヘリを降りビルの階段を駆け下りていく正太郎と大塚
その間鉄人とシーザーは壮絶なバトルを展開していた、それは単なるロボット同士の殴り合いとは次元が違う、お互いに相手の動きを読み合い、放たれたパンチを紙一重でかわし、また身を引いたり体をくねらせることで受け流したり、もしくは相手のパンチを絶妙のタイミングで払ったりとその動きは格闘技の動きに通じるものがある、お互いに第三者による操縦では決してこなせない身のこなしである、それでも時折相手のスキをついてウエイトの乗った的確なパンチをお互いに決め合っているが決定的なダメージとはならず又連打も許していない、まさに実力伯仲の戦いであった、

シーザー  「ふん、けっこう粘るじゃないか鉄人」
  鉄人  「お前もなかなかのものだ」
シーザー  「そろそろカタをつけさせてもらうぞ!」

鉄人に突進するシーザー、鉄人が放った右のパンチを両手でガシッと受け止めるとそのままスライディングして鉄人の足を払う、
バランスを崩し転倒する鉄人、シーザーの股間に鉄人の右腕をはさみ逆関節技(腕ひしぎ)に持ち込もうとするが敏感に察知した鉄人はとっさに体を横にひねり、また右腕がまっすぐ伸び切らないように左腕を添えてこらえる、まっすぐ伸び切ってしまうとテコの原理で腕をへし折られてしまうのだ、

シーザー  「おのれ、しぶとい奴だ」
  鉄人  「この前のように簡単にはいかないぞ」
     何とか腕を伸ばそうとするシーザー、懸命にこらえる鉄人、力と力の攻防、
シーザー  「ならばこれに耐えられるかな?」
     その体勢のままシーザーの手のひらから「バリバリバリッ」と激しい電撃が走り鉄人の体を貫いた、鉄人の体が小刻みに震えている、腕がほんの少し伸ばされる、
シーザー  「どうだ、体がマヒしてきたろう?さあやせ我慢せずこの邪魔な左手を離せ」
     (電撃を浴びせながら力を込め続けるシーザー)
  鉄人  「この前のようにはいかないと言ったはずだ、システムの心臓部には耐電処理が施してある、そう簡単には参らないぞ」

だがシーザーの電撃の影響で多少力が入りにくくなっている事は事実である、少しづつ腕が伸ばされている、伸び切ったら終わりだ、
その時、20メートルほど前方にある中部ガスの管理棟の建物が鉄人の目に入った、ロケットエンジンを噴射、そのままの体勢でガリガリと地面を削りながら真横へと飛び、2体が絡み合ったまま管理棟へと激しく突っ込んだ、その衝撃で体が離れる両者、偶然にも受けた衝撃はシーザーの方がはるかに大きかった、先に立ち上がったのは鉄人である、ガレキの中からゆっくりと身を起こしたシーザー・・・

シーザー  「おのれ・・許せん、貴様だけはどんなことをしても叩き潰す!」
  鉄人  「シーザー、決着をつけよう、小細工はなしだ!」
シーザー  「望むところだ!」

正太郎たちの乗ったパトカーが現場に到着する、警戒に当たっている警官が駆け寄って来る、
  大塚  「ワシは大塚じゃ、状況はどうなっておる?」
  警官  「このタンクの裏で戦っています、こちらからどうぞ」
     (先導し正太郎と大塚をバトルがよく見える場所へと案内する)
  警官  「あそこです署長!」 (指差す前方100メートル、2体のロボットが激しく殴り合っている)
 正太郎  「うわっ!もの凄い殴り合いだ!」
  大塚  「本当じゃ、こりゃあ派手じゃな」
  警官  「あれえ?」
  大塚  「どうした?」
  警官  「先ほどまでと戦い方が違います」
  大塚  「どう違うというんじゃ?」
  警官  「さっきまでは・・まるでボクシングみたいにガードしたりかわしたり・・スキを付き合って戦っていたんですが・・」
  大塚  「そう言えばこれはまるで・・」
 正太郎  「ストリートフィァイト!まさにケンカだ!」

まさにそれはケンカであった、そこにはテクニックなどというものはない、まったくのノーガードで足を止めたままパンチを打ち合っているのだ、
両者の意地と意地のぶつかり合いである、倒れたほうが負け、単純明快にして最も過酷なファイトであった、

  大塚  「どういうことじゃ?電子頭脳ともあろうものがこんな原始的な戦いをするとは・・」
 正太郎  「おそらくこれは最後の勝負なんです」
  大塚  「最後の?」

 正太郎  「お互いに実力は互角とわかったんでしょう、こうなると勝負の行方など計算できない、そこで双方とも最後の賭けに出たんだと思います」
  大塚  「ううむ・・最後の賭けか」
 正太郎  「(声を振り絞り) 鉄人!頼む、負けないでくれ!」
激しいパンチの応酬で双方とも顔面やボディにへこみやひしゃげた部分、細かい亀裂が目立ち始める、

シーザー  「なあ・・鉄人」・・・ガーーン
  鉄人  「何だ?」・・・ガガーーン、
     (殴りあいながら会話する二つの電子頭脳)
シーザー  「私と手を組まないか?」・・ガキーーン
  鉄人  「お前と?」・・・グワーーン、
シーザー  「私とお前が力を合わせれば恐れるものはない」・・・ガーーン、
  鉄人  「・・・・・・」・・・ガーーン、
シーザー  「世界を支配できるのだ、我々ロボットが」・・・ガキーーン、
  鉄人  「そんなものに興味はない」・・・ガキーーン、
シーザー  「なぜだ?」・・・ガーーン、
  鉄人  「支配なんかするより友だちをたくさん作った方がいい」・・・ガガーーン、
シーザー  「友だちだと?」・・・バキーーン、
  鉄人  「僕のことを好きでいてくれて大切にしてくれる友だちをね」・・・ガーーン、
シーザー  「お前の言ってることは理解できん」・・・ガキーーン、
  鉄人  「お前にはわからないよシーザー」・・・グワーーン、

果てしなく続くかに思われた戦い、・・だが突然鉄人がその動きを止めた、両腕がだらんと垂れ下がる、
  鉄人  「だめだ・・もう・・立っていられない」
     (そのまま地面に両膝をつき、ゆっくりと前へ倒れこんだ)
  大塚  「ああっ、そんな!」
 正太郎  「て・・鉄人!」 (悲鳴に変わる)
  鉄人  「正太郎・・ごめんよ・・・絶対勝つって・・・約束したのに・・」
シーザー  「私は最強だ」
  鉄人  「・・・・・・・・・」
シーザー  「(拳を天高く突き上げ) 私はシーザー、世界最強のロボットだ!」
   シー