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次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~ アーカイブ

2006年09月20日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~1

正太郎の声 「大塚署長の中学校時代のクラスメイトでありドリーム玩具の社長を勤める太田氏の発案で僕と大塚署長と敷島博士の「鉄人フィギアセット」が発売され好調なセールスを記録した、聞けばその年のフイギア業界の売れ行きベスト3に入ったというから驚きだ、当人たちにすればいささか気恥ずかしいが購入してくれた方々がたいへん喜んでくれていることと収益の一部がいくつかの環境保護団体に寄付されて結果的にとても有意義なことだったと自負している、第一弾のフィギアセットが発売されてからおよそ半年後、再び太田氏が大塚署長を伴って敷島研究所にやって来た、なんと僕たちのフイギアの第二弾を発売しようと言うのである」
敷島研究所
  太田  「いやあ、正太郎君、敷島博士、ご無沙汰をしておりました」
 正太郎  「お久しぶりです」
  敷島  「太田さん、第二弾のフィギアを出されるんですって?」
  太田  「はい、全国のファンから要望がよせられましてな」
  敷島  「そんなに・・私たちなんかの人形に人気があるんでしょうかね?」
  太田  「ええ、そりゃもうたいへんなもんです、鉄人に対する大衆の支持がいかに熱いかということを物語っておりますよ」
  敷島  「まあ、喜んで頂けるなら私たちとしてはやぶさかではないのですが・・・」
 正太郎  「でもどんなフィギアなのかやっぱり気になりますね、前回みたいにアレですか?そうとうデフォルメされちゃってるのかな?」
  太田  「はい、今回はですね、デフォルメの方向性をガラッと変えてみました」
 正太郎  「・・方向性を変えた?」
  太田  「第一弾はメルヘンチックというかマンガチックというか、そんな感じでしたよね?それに比べたら今回のデフォルメはぐっとリアルになっとります、正太郎君の場合は中学3年生くらいの設定で逞しい「青年」の雰囲気をもたせてあります、同じく敷島博士の場合も逞しさとダンディさを併せ持つというイメージで作ってみました」
 正太郎  「逞しい青年・・・ですか?」
  敷島  「逞しさとダンディさ・・・ですか?」
  大塚  「それじゃあ太田よ、ワシのフィギアも前回みたいなズングリムックリじゃのうてグッとひきしまった体形に?」
  太田  「ああ・・うん、それがなあ大塚、ちょっと言いにくいだが、」
  大塚  「なんじゃ?」
  太田  「今回お前のフイギアを発売する予定はないんだよ」
  大塚  「なんじゃとう!」
  太田  「お前さんの場合はみんな第一弾のフィギアで満足しとるみたいでな、別なバージョンを作って欲しいという要望は来とらんのだ」
  大塚  「なんじゃそれは!失礼な話じゃな!」
  太田  「そう言うなよ、ウチも商売だからさ、売れない商品を作るわけにはいかんのだ」
  大塚  「ふん、ああそうかい、もうええわい」
  太田  「怒らんでくれよ大塚」
  大塚  「誰も怒っとりゃせん!」
  太田  「どう見たって怒ってるだろ?」
  大塚  「ワシのことはいいからとっとと話を進めんかい!」
  太田  「わかった・・・ええと、それでですね、今回もお二人のフィギアの試作品をお持ちしましたのでご覧頂いて承諾を頂ければと・・まずこれが・・・正太郎君のフィギアです」
 正太郎  「へえ、」
  敷島  「ほう」
  太田  「どうです?ほとんど高校生という雰囲気でしょ?」
 正太郎  「ズボンがスラックスになってますね」
  太田  「ええ、半ズボンはちょっとどうかと思ったもので・・」
  敷島  「顔つきも精悍じゃないか、本当に青年の雰囲気というものがあるね」
 正太郎  「フフ、やっぱり気恥ずかしいけど、でもこれならほとんど抵抗ないや」
  太田  「そう言って頂けると思ってましたよ、そしてこれが・・・敷島さんのフィギアになります」
  大塚  「ほう、こりゃあ・・」
  太田  「がっしりとしとるでしょう?」
  敷島  「これもまたオーバーだなあ、私はこんなに逞しくありませんよ」
  太田  「前回はあまりにもスマートにし過ぎましたからね、今回はその逆を行きました、こうすることで買い求める対象年齢がぐっと広がりますよ、若い女性はもちろんご婦人方にも人気が出ると思いますよ」
  大塚  「なかなか彫りの深いいい顔になっとるじゃないか」
  太田  「ねっ?ダンディズムを感じるでしょ?」
  敷島  「こういうのがダンディズムなんですかね?」
  太田  「フィギアというのは顔が命と言っても過言ではありませんからな、この表情を作るのにそうとう苦労しました」
 正太郎  「博士、カッコいいじゃないですか」
  敷島  「そうかね?まあ確かに最初のフィギアと比べたら抵抗ははるかに少ないがね」
  太田  「如何でしょう?これでOKを頂けますかな?」
  敷島  「はあ・・まあこれならば何とか」
 正太郎  「僕も異存はありません」
  太田  「いや、ありがとうございます、今回はかなり自信がありましたからな、そう言って頂けると思っておりました」
  大塚  「今回も収益の一部をどこぞの施設に寄付するんじゃろうな?」
  太田  「うん、親のいない子供たちの施設に役立ててもらおうと思ってな」
  大塚  「おう、そうか、そりゃいいことじゃ」
 正太郎  「たくさん売れるといいですね」
  太田  「そこでですね、今回は宣伝としてテレビコマーシャルに力を入れたいと思っておるんです」
  敷島  「ほう、このフイギアをテレビのコマーシャルに?」
  太田  「そのためにですね、正太郎君と敷島博士に無理を承知で何とかご協力を頂けないものかと・・・」
 正太郎  「何をするんですか?」
  太田  「はい、そのコマーシャルに出演して頂けないでしょうか?」
 正太郎  「はあ?」
  敷島  「私たちが・・コマーシャルに?いや、それはいくらなんでも・・」
  太田  「だめでしょうか?」
  敷島  「役者じゃないんですから・・芝居なんかできませんよ」
  太田  「いえ、演技などしていただく必要はないんです、ただカメラの前でフィギアを手に持って笑顔で新しいフィギアをよろしくとひと言サラッとコメントして頂ければそれでいいんです」
  敷島  「それにしたって・・ねえ正太郎君?」
 正太郎  「自分のフィギアを本人が宣伝するなんて・・すごく照れくさいですよ」
  太田  「しかし宣伝としてのインパクトは十分です、売れ行きにも大きく影響しますし・・」
 正太郎  「う~~ん」
  敷島  「すみませんが、勘弁してもらえませんかねえ?」
  大塚  「しかし・・・お前はホントに厚かましい奴じゃなあ」
  太田  「仕事熱心と言ってくれよ、もうスタジオだって押さえてあるんだ」
  大塚  「こら、本人たちの承諾も得とらんのに勝手なことをするな!」
  太田  「いやいや、ちょうどその日にわが社提供の歌番組「歌謡ゴールデンショー」の収録があるんでついでやってしまおうと思ってな」
  大塚  「歌謡ゴールデンショー?・・ああ、あの番組はお前んとこがスポンサーじゃったか」
  太田  「ああ、視聴率もいいんだぜ、敷島さん、ちょうどその日は演歌の女王美空はるみが出演することになっとるんです」
  敷島  「えっ!美空はるみが?」 ( 敷島の目がキラリと輝いた )
  太田  「聞くところによると彼女の大ファンだそうですな?」
  敷島  「ええもう、デビュー当時からのファンでして」
  太田  「先日もはるみちゃんとスタジオで話をしてましてね、このCMの話をしたら是非一度敷島博士とお会いしたいわ~なんてことを言ってましてね」
  敷島  「えっ!ほ・・本当ですか!」
  太田  「本当ですとも、でもお二人にあまり無理を押しつけるわけにもいきませんなあ、どうしてもお嫌なら何か他の方法を考えましょう、でもはるみちゃん・・がっかりするだろうな~、でもしょうがないかなあ~」
  敷島  「え、え~と・・」( そわそわ )
  太田  「そうですかあ~~ダメですかあ~~、はるみちゃんに何て言おうかなあ~~」
  敷島  「あの・・ねえ正太郎君」
 正太郎  「はい?」
  敷島  「我々としては気恥ずかしい限りだがどうだろう?ここはこの際乗りかかった船という奴で、協力してあげてもいいんじゃないかな?」
 正太郎  「いいんですか博士?」
  敷島  「私たちを支持してくれる大勢の方々のために少々の恥ずかしさは我慢をしようじゃないか」
 正太郎  「そうですか・・博士がそれでいいんでしたら僕も・・」
  太田  「お引き受け頂けますか!」
  敷島  「はあ、私たちでお役に立てるのなら・・」
  太田  「ありがとうございます!とびきりいいCMを作らせて頂きますよ、収録は今週の土曜日の午後3時からを予定しておりますので ご多忙でしょうがスケジュールの調整をよろしくお願いします」
  敷島  「わかりました、どうかお手柔らかに」
  大塚  「(太田の耳元に小声でつぶやく) ふん、芸能人をエサに使うとは考えよったのう、この悪党めが」
  太田  「人聞きの悪いこと言うな」  (つづく) 

2006年09月22日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~2

 犬犬  ( アンタ他にも趣味があるんだしもう横山世界のことはきれいさっぱり忘れて他の道楽にせっせと励んだらいいじゃない )
 猫猫  「・・そんなこと、アンタの好き勝手にさせるもんですか!」
 犬犬  ( ホホホホ、抵抗したって無駄よ、アンタの世界が消えて無くなればアタシは横山精神世界ではバンワオーさんに次ぐNO,2の座を手に入れることができるのよ、そうなったらバンワオーさんと思い切りコラボしてアタシの精神世界をどんどん膨らませていくわ、ああ、考えただけでもゾクゾクしちゃう! )
 猫猫  「バンワオーさんがアンタなんかと組むもんですか」
 犬犬  ( あ~ら、私の魅力を見くびってもらっちゃ困るわね、バンワオーさんだって男なのよ、やりようによっちゃいくらでも陥落させる手はあるわ )
 猫猫  「このう・・エロ犬!」
 犬犬  ( ホ~ホホホ、何とでもおっしゃい )
 猫猫  「でも手間隙かけて色仕掛けで落とそうなんて強気なアンタにしちゃあ気長な話ね、アンタのことだからバンワオーさんも無理やり引っ張りこんで言うこと聞かせるくらいのことやりそうなもんだけど・・」
 犬犬  ( 実を言うとね、アンタとバンワオーさんを同時に引っ張ったのよ )
 猫猫  「ええっ?」
 犬犬  ( だけど失敗しちゃったわ、やっぱりバンワオーさんはこの世界の大物よね、アタシのパワーじゃイマイチ力不足だったのよ )
 猫猫  「そんなことじゃないかって思ったわ」
 犬犬  ( だけどかえってその方がよかったわ、あんまり無茶なことして嫌われちゃったら何かと厄介だしね、まあ慌てることはないわ、アンタさえ消えてくれたらもう邪魔者はいないんだし、あとはじっくりやらせてもらうわよ )
 猫猫  「言っときますけどねえ、アタシの心はそんなに簡単に消えたりなんかしないわよ、ほっといたら煙のように消えるですって?
      冗談じゃないわ、アタシの隆に対する思いはそんなヤワなもんじゃないのよ」
 犬犬  ( あら、不滅だとでも言いたいの? )
 猫猫  「当たり前じゃない!」
 犬犬  ( ホホホホ!あんた何にもわかってないのねえ )
 猫猫  「な、何よ?」
 犬犬  ( 今のアンタはねえ、アンタの「本体」という「土」から根っ子ごと引き抜いた「花」なのよ、
       養分を吸収できなくなった花はしおれて枯れていくしかないのよ、ホ~ホホホホ )
 猫猫  「うう・・・」
 犬犬  (それでもアンタがそうやって気を張ってりゃアンタの精神世界はそう簡単には消滅しないでしょうねえ、アタシもね、アンタが気力を失うのを気長に待つ気はないわ、アタシがこの手でアンタの世界の崩壊を早めてあげるわ )

 猫猫  「な・・何をしようっていうの?」
 犬犬  ( 敷島! 春江、おいで! )
犬犬王に呼ばれ猫猫宮の前にパッと突然現れた一組の男女、外見は完全に敷島隆と春江であるが顔つきがいかにも下品である、
 猫猫  「・・隆?・・それに・・春江さん?」
 犬犬  ( フフフ、驚いた?私の世界にも一応敷島隆と春江はいるのよ、でもランクとしちゃあ不乱拳ちゃんの手下のそのまた手下くらいだけどね )
 猫猫  「・・ひどいわね」
犬敷島  「ご主人様、誰ですかいこの女は?」
 犬犬  ( 猫猫宮といってねえ、アタシの精神世界進出の邪魔をする目の上のタンコブよ )
犬敷島  「ほう、ふざけた女(アマ)でございやすねえ」
犬春江  「ホント、ブサイクなくせして生意気な女!」
 猫猫  「ちょっとお!ブサイクとは何よブサイクとは!」
犬春江  「ブサイクじゃないの、鏡をよく見てごらんよ」
そう言われて壁にかけてある姿見の鏡に映った自分の顔を見て仰天する猫猫宮・・なんと顔が山田花子になっているではないか!
 猫猫  「な・・なによ?この顔は!」
 犬犬  ( しょうがないじゃない、あたしアンタの顔知らないんだから )
 猫猫  「だからって、これはないじゃない!」
 犬犬  ( うるさいわね、わかったわよ、え~と片桐はいりと光浦泰子のどっちがいい? )
 猫猫  「あ・・アンタねえ」
 犬犬  ( ホーホホホホ、まあ顔なんてついてりゃいいのよ )
 猫猫  「くっ・・」 (このあからさまな虐待に唇をふるわせる)
犬春江  「それでご主人様、あたし達は何をすれば?」
 犬犬  ( 今からアンタ達をアタシの想念パワーで猫猫宮の世界に送り込んであげるわ、アンタ達は本物の敷島夫妻になりすまして向こうの世界をグチャグチャにしておやり! )
 猫猫  「な・・なんですってえ!」
犬敷島  「げ~へへへへへ、そいつは面白い」
犬春江  「なんかワクワクしちゃうわあ、キャハハハハ」
 犬犬  ( ホホホホホ、あんたがいくら気を張ったって内部から崩壊が始まったら一気に消滅に向うわよ )
 猫猫  「・・誰か・・・誰か助けてえ・・」   (つづく)

2006年09月24日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~3

無限に広がる横山精神世界・・・その一角にバンワオーがポツンと立っている、そこはいずれの創造主の領域でもないいわば「中空の世界」である、ほどなく一組の男女がバンワオーの元に姿を現した、バンワオー世界の敷島隆と妻の春江である、

 バンワ  「やあ、ご苦労さん、よく来てくれた」
 バ敷島  「私たちをこんな所へお呼びになるとは・・何かあったのですか?」
 バンワ  「うん、実は猫さんなんだが・・」
 バ敷島  「猫猫宮さん?」
 バ春江  「猫さんがどうかしたんですの?」
敷島と春江がバンワオー世界にいる間は二人とも猫猫宮や彼女の世界と関わった記憶は創造主であるバンワオーの手によって潜在意識の中に
封じ込められているがバンワオー世界からこの中空の世界に出た瞬間にその潜在意識はすべて表面意識へと変わっているため二人とも
猫猫宮のことを完璧に記憶しているのだ、

 バンワ  「どうも猫さんの身に何か起こったようなんだ」
 バ敷島  「猫猫宮さんとは連絡が取れないのですか?」
 バンワ  「うん、彼女のHP「敷島な日々」の掲示板にメッセージを入れているんだがまったく返事がない、それに日々雑記がもう5日も更新されていないんだ、今までこんなことはなかった、やはり何か起こったと見るべきだ」
 バ春江  「バンワオーさんに何か心当たりはございませんの?」
 バンワ  「実はね、やはり5日前の夜のことなんだが、突然激しい引力を感じたんだ、まるで魂をワシ掴みにされて持っていかれるようなね、」
 バ春江  「まあ、」
 バンワ  「幸い僕は何とかふんばってその引力に耐えることができた、ちょうど僕が必死にこらえている最中にね、猫さんの苦しみにあえぐ念をかすかに感じたんだ、気のせいなんかじゃないと思う、やはりアレは猫さんの悲鳴だったと・・僕はそう思うんだ」
 バ敷島  「そうだとすると猫さんは今どこでどうしているんでしょう?」
 バンワ  「猫さんが強引に心を持っていかれたとしたら、彼女の心は必ずこの横山精神世界のどこかにいるはずだ、それに今回のことは何者かが何らかの意図を持って仕掛けてきたことだと思うんだ」
 バ敷島  「何者かによってさらわれたということですね?」
 バンワ  「うん」
 バ春江  「そんなことができるのは・・やはり創造主のうちの誰かでしょうか?」
 バンワ  「そうだろうね」
 バ敷島  「誰か思い当たる人物がいるんですか?」
 バンワ  「こういう強引な手を使う人物に心当たりがないでもないがまだ断定はできない( もちろんバンワオーが疑っているのは犬犬王である )とにかく一刻も早くこの広い横山精神世界の中のどこかにいる猫さんの心を見つけ出して救出しなければならないんだ」
 バ敷島  「なるほど・・しかし彼女を探すにしてもこの無限の精神世界をどうやって探せばよいのか・・」
 バ春江  「雲を掴むような話ですわね」
 バンワ  「もちろん僕一人ではとても無理だよ、だから君たちにここまで来てもらった、君たちキャラクターは創造主に比べたらはるかにピュアな存在だ、あいにく創造主である僕には「雑念」という不要な念が多すぎてどんなに心を研ぎ澄ましても彼女の念をキャッチできる範囲というものが限られてくる、でも君たちのピュアな心を研ぎ澄ませればその想いははるか遠くまで届くはずだ」
 バ敷島  「・・・私たちに探し出せるでしょうか?」
 バンワ  「探し出せると信じることが大切なんだよ、不安や疑いは自己の能力を半減させてしまうんだ」
 バ春江  「そうよあなた、この世界は「想い」こそすべてなの、たとえ無限の世界であったとしてもあたし達の想いだってまた無限なのよ」
 バンワ  「おっ、さすが春江さんだ、いいこと言うねえ」
 バ春江  「ホホホホ・・」
 バ敷島  「うん、そうだ・・そうだよな!」
 バンワ  「ここから三方に別れて捜索を開始しよう、何かわかったらすぐに連絡をしてくれ」
 バ敷島  「わかりました、全力を尽くします」
 バンワ  「相手は創造主だ、君たちのかなう相手じゃない、だから決して無理はしないでくれ、いいね?」
  二人  「はい!」
 バンワ  「では捜索開始だ!」
バンワオー、バ敷島、バ春江の三人は無限の横山精神世界の中を猫猫宮を救うべく三方へと散ったのだ  (つづく) 

2006年09月26日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~4

ここは猫猫宮の世界である、 深夜、猫敷島と猫春江は自宅である大邸宅「敷島御殿」の寝室で静かに寝息を立てていた、敷島邸の防犯態勢は二重、三重のセキュリティが施されている、当人たちの身の安全はもちろんだが敷島重工が扱う分野の中には国家の防衛に関わる部分も少なくない、その関連資料が敷島邸の時限金庫に多数保管されておりそのため警備会社を2社常駐させて完璧な警備態勢を敷いていた、その完璧なセキュリティをもってしても異次元からの瞬間移動を阻止することは不可能である、猫敷島夫妻が眠っているベッドのすぐ前に突然パッと姿を現した一組の男女・・・犬敷島と犬春江である、

 犬敷島  「こいつらか、この世界の俺たちってのは?」
 犬春江  「見てよ、アンタ・・すごい家よねえ」
 犬敷島  「ああ、ちくしょう、いい暮らししてやがって」
 犬春江  「あたし達なんか6帖一間のボロアパートだってのに・・許せないわね」
犬敷島は二人のかけ布団を乱暴にひっぺがすと・・・
 犬敷島  「こらあ!てめえら、起きやがれ!」 ( と大声でどやしつける )
突然眠りを妨げられた猫敷島と春江、何事かと半身を起こし目を開いて見たが・・・目の前の光景が理解できない、自分たちはまだ夢でも見ているのか?・・・厳重なセキュリティをかいくぐって二人組みの賊が寝室に侵入した?
それはまああり得ないことではない・・・しかしその賊というのが自分たちと瓜二つの男女とは・・これをどう理解すればいいのか?

 猫敷島  「き・・君たちは・・いったい何なんだ?」 
さすがに冷静沈着な敷島も動揺を抑えきれず声がうわずっている、春江は驚きのあまり声も上げられない、
 犬敷島  「げへへへ、見ろよ、驚いてやがるぜ」
 犬春江  「キャハハハ、ポカ~ンとした顔しちゃってえ」
 犬敷島  「よう、これからはよ、俺たちが会社の面倒を見てやるからよ」
 猫敷島  「な・・何を言ってるんだ?」
 犬敷島  「片がつくまで眠っててもらうぜ」
そう言って犬敷島はクロロホルム入りのガスのスプレーを猫敷島夫妻に吹きかけた、
 猫敷島  「あ・・うう・・・」
 猫春江  「ああ・・あな・・あなた・・」
強力なガスをかがされ二人は折り重なるようにベッドに身を横たえた、
 犬敷島  「げへへへ、効いた効いた、こりゃあ強力なガスだぜ」
犬春江は猫春江のネグリジェの裾をめくると顔をゆがめて・・・
 犬春江  「ま~ムカつくわ、きれいなパンティはいてからに!アタシなんかいつもバーゲンの見切り品だってのに!」
そう言って猫春江のパンティに手をかけ脱がそうとする、
 犬敷島  「おいおい、ケチ臭えことするんじゃねえよ、この家にゃあ他にも高級な服がわんさかあるんだからよ」
 犬春江  「ああそうか、そうだよねえ」
 犬敷島  「( 下着姿の猫春江を見て )しかし、へへへ、その何だよなあ、オメーもよ、こういう色っぺえ下着つけるとよ、そそるよなあ~」
 犬春江  「な~によ、スケベったらしい顔して、アンタの稼ぎが悪いから安物の下着しか買えないんでしょうが!」
 犬敷島  「おっと、こいつはとんだやぶ蛇だ」
 犬春江  「とにかくほら、こいつら地下室に運んじゃわないと」
 犬敷島  「よしきた!」
犬敷島と犬春江は眠りこけた猫敷島夫妻をロープで縛り上げると二人でせっせと地下室まで運び冷たい床にゴロンと転がせる、
この地下室も金庫並みに頑丈で防音も完璧である、分厚いドアをバタンと閉めればたとえ中から大声で叫ぼうがその声が漏れることはない、
二人を閉じ込めた犬敷島夫妻は大はしゃぎで寝室まで戻ると・・・

 犬敷島  「( ベッドの上を飛び跳ね )ヒャッホーー!たまんねえぜ、このクッション!」
 犬春江  「ウチのせんべえ布団とえらい違いよね」
犬春江は高級ベッドの感触を十分堪能したあと、寝室の洋服タンスを開く、引き出しを次々とあけて見ると春江の高級ランジェリーがぎっしりと詰まっていた、その中からイチバンど派手なワインレッドのブラとスキャンティを手に取る犬春江、それは猫春江の友人からプレゼントされたものであったがあまりの派手さに身に付けるのが恥ずかしくて今まで使わないでいたものだった、

 犬春江  「フフ、ねえアンタ、どうこれ?」
 犬敷島  「ウホホ、いい、いいじゃあねえかそれ!」
 犬春江  「着てほしい?」
 犬敷島  「お、おう、おう、着て見せてくれ」
 犬春江  「じゃあ・・ちょっと待ってて」 ( カーテンの後ろに隠れてゴソゴソと・・)
 犬敷島  「ま、まだかよう春江?」
 犬春江  「あせるんじゃないよ、もうちょっとだから・・(やがて)・・ほううら、どうかしら?」
 犬敷島  「ウヒョホーーッ!・・た、たまんねえぜ!」
 犬春江  「フフフ、」
 犬春江  「・・春江・・こ、来い・・こっち来い」
そしてベッドの上では犬敷島夫妻の濃厚で下品な痴態が始まったのだ  (つづく)  

2006年09月28日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~5

翌朝 犬敷島を乗せた敷島重工の黒いセンチュリーは都内の高級ホテル、ヒルトンプラザへ向っていた、この日ヒルトンプラザでは敷島重工の若手社員の結婚式が執り行われることになっていた、猫敷島は自社の有望な社員の結婚式には都合がつく限り出席するようにしている、その度に新たに人生の船出を迎える新郎新婦に暖かい祝辞を送っているのだ、「企業の財産は人である」がモットーの猫敷島らしい行動である、披露宴が始まり仲人が新郎新婦の紹介をつつがなく終えると・・・

 司会者  「ではご来賓の方々よりご祝辞を頂戴したいと存じます、まず新郎の勤務しております敷島重工株式会社代表取締役社長であられます敷島隆様よりご祝辞を賜りたいと存じます、敷島様、よろしくお願いいたします」

犬敷島はぶっきらぼうに立ち上がるとマイクスタンドのある場所までズカズカと歩いていく、マイクをひっつかむと新郎新婦に邪魔くさそうな視線を送る、
猫敷島ならばおだやかな笑顔とともに慈愛に満ちた眼差しを投げかけるのであるが・・・
 犬敷島  「あ~、おほん!しかし田中君よ、ほんとにそんな女でいいんかい?しかし・・ブッサイクな女やのう~」
        ( そのひと声に場内がし~~んと凍り付いてしまった )
 犬敷島  「お前ようそんなブッサイクな女と結婚しようなんて思ったな・・お前、趣味が悪いんじゃねえのか?げへへへ・・」
 司会者  「あ・・あの、敷島様」
 犬敷島  「なんだ?」
 司会者  「ほ、本日は・・その、おめでたい席でございますので・・そのようなご発言は・・いかがなものかと・・」
 犬敷島  「なんだ!ブサイクをブサイクと言って何が悪い?」
最初にブチ切れたのはやはり新婦側の親族と友人たちだった、
      「いいかげんにしろ!」    「めでたい席でなんてこと言うんだ!」
      「常識を知らないのか!」   「それでも社長か!」 と雪崩を切ったように非難の嵐、
 犬敷島  「なんだあ?文句あんのかテメえら!」
そう言ってつかみかかっていこうとする犬敷島を関秘書があわてて後ろから羽交い絞めにする、
 犬敷島  「こら!離せ、離しやがれ!」
 関秘書  「しゃ、社長いけません!落ち着いてください・・おい君たち、手伝え!」
そばにいたスタッフに声をかけ4人がかりで口汚く罵り続ける犬敷島を控え室まで引っ張っていく・・
 犬敷島  「おい田中!お前はクビだーーーっ!」
そのひと声を最後に犬敷島は外に連れ出された、呆然と立ち尽くす新郎、あまりのことに泣き崩れる新婦、あたふたとうろたえる仲人、
騒然となった披露宴会場、とにかく晴れの結婚式がメチャクチャにされてしまったことは間違いない、

一方こちらは都内の某文化会館、この日恵まれない子ども達を支援する財団法人「黄色い羽根募金」のセレモニーが行われている、
敷島重工はこの黄色い羽根募金に2億円もの寄付を毎年行っているのだ、その贈呈式には毎回敷島春江がプレゼンテーターとして出席していた、

 司会者  「え~皆さま、今年も敷島重工株式会社様より当黄色い羽根募金にたいへん心暖まる、そして高額なご寄付の申し込みを頂戴しました、心よりお礼申し上げます、それでは寄付金の授与を執り行いたいと存じます、プレゼンテーターは敷島重工株式会社代表取締役社長、敷島隆様の奥様でいらっしゃいます敷島春江様です、皆さま暖かい拍手でお迎え下さい」

スポットライトを照らされた犬春江に場内から惜しみない拍手が送られる、例年なら猫春江がおだやかな笑顔でその拍手に答えるように軽く一礼し、セレモニー用の小道具である「2億円」と書かれた大きな小切手を持って舞台の袖から現れステージ中央の祭壇で待つ理事長に手渡すのだが・・・犬春江はぶ然とした表情でズカズカと中央の祭壇に歩み寄る、何も知らない理事長はその小切手を受け取ろうと
笑顔で両手を差し出すのだが・・その直前で犬春江は持っていた小切手をバリッと引き裂いてしまった、

 理事長  「えっ?・・」
あ然とした顔の理事長に目もくれることなくマイクをひっつかむと・・・
 犬春江  「オメーらにくれてやる金はにゃあ!」
     (お笑いコンビ次長課長の河本のギャグ、「オメーに食わせるタンメンはにゃあ」とまったく同じしぐさをして見せる )
 理事長  「はあ?」
 司会者  「あの・・敷島様?・・今のは・・・何かのジョーク・・・ということで?」
 犬春江  「冗談なんかじゃないわよ、何度でも言ったげるわ、オメーらにくれてやる金はにゃあ!」 (またも同じしぐさ)
 理事長  「あのう・・それはどういう?」
 犬春江  「どういうもこういうもないわよ、何で見ず知らずの貧乏ったれのガキに大金出さなきゃなんないのよ!」
 理事長  「ご・・ご寄付頂けないのですか?」
 犬春江  「これからはビタ一文出さないからね、貧乏人のガキがのたれ死にしようがどうしようが
       知ったこっちゃないってのよ、キャハハハハハ・・」
ホール中に犬春江の下品な笑い声が鳴り響くと一瞬水を打ったような静寂がおとずれたあと場内から猛烈なブーイングが犬春江に浴びせられた、

 犬春江  「何よう!何だってのよう!べーーだ!ベーーだ!アッカンベーーだ!アッカンベーーだ!」
最近子供でもあまりやらない幼稚な憎まれを連発する犬春江であった、とにかく敷島重工の評判が地に堕ちたことは間違いない   (つづく) 

2006年09月30日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~6

結婚式をブチ壊しにした犬敷島を乗せた黒いセンチュリーはまるで逃げ出すようにヒルトンプラザをあとにした、

 関秘書  「社長・・本当にどうなさったというのですか?」
 犬敷島  「なにがだ?」
 関秘書  「いくらなんでもアレはひど過ぎます」
 犬敷島  「ふん、思ったことを言ったまでだ」
 関秘書  「・・・本当に・・社長なんですか?」
 犬敷島  「(ギロリとにらみ) どういう意味だ?」
 関秘書  「あ・・つまり、その」
 犬敷島  「俺が敷島隆じゃなかったら誰だっていうんだ?」
 関秘書  「すみません、妙なことを申しました・・でも今日の社長は私が存じ上げている社長じゃありません、何があったのですか?」
 犬敷島  「俺はなあ、生まれ変わったんだよ」
 関秘書  「・・生まれ変わった?」
 犬敷島  「上品ぶった控え目の敷島隆とはおさらばさ、これからはおもしろおかしく生きてやるぜえ、げへへへ・・」
 関秘書  「・・・・・・・・」

そのあと犬敷島は日本ロボット工業会の総会に出席すべく商工会館へと向った、敷島隆はその総会の議長という重責を担っているのだ、
 犬敷島  「ガ~~・・グゴゴゴゴ~、ガガ~」
     (一段高い議長席でよだれを垂らしながら大いびきをかいて眠っている犬敷島 )
 A理事  「え、ええ~と、議長はどうもお疲れのようなので・・私が代わりに進行役を勤めさせて頂きます」
 犬敷島  「グガガガ・・グゴゴゴ」 (犬敷島の大いびきがスピーカーから場内に響き渡る )
 B理事  「ちょっと!議長席のマイクのスイッチを切ってくれ」
 C理事  「(関に向って) 君、敷島さんの秘書の人だったね?」
 関秘書  「あ・・はい」
 C理事  「(ぶ然として) 何だったらもう連れて帰ってもらってもかまわんよ」
 関秘書  「申しわけございません!」
関は会議場から犬敷島を担ぐようにして連れ出し商工会館をあとにした、

 犬敷島  「ふあ~~・・ああ、よく寝た」
 関秘書  「(少々ふてくされ気味に) さぞお疲れなんでございましょうね」
 犬敷島  「なんせよ、ゆうべは(夜のお勤め)がハードでよ」
 関秘書  「夜のおつ・・・」
 犬敷島  「夜のお勤めだよ・・わかるだろうが?」
 関秘書  「はあ、わかります」
 犬敷島  「ゆうべはよう、春江の奴がなあ・・もう・・クククク」 (下品な笑い )
 関秘書  「・・・・・・・・」
 犬敷島  「ようお前、ちゃんとカミさん可愛がってやってるか?」
 関秘書  「まあ・・世間並みには」
 犬敷島  「なあ、お前のカミさん、どんな下着つけてんだ?」
 関秘書  「そんなこと・・どうだっていいじゃないですか」
 犬敷島  「たまにはド派手な下着つけさせてみろ、雰囲気がらっと変わって、そそるぜえ~、春江のタンスの引き出しによ、まだ使ってない派手なパンツがわんさかあんだよ、蝶の刺繍がしてあるキンキラキンのやつなんかかなりエロいぜえ、 どうだ?よかったら何枚かわけてやろうか?」
 関秘書  「(きっぱりと) けっこうです!」

関は思った、違う!この人は絶対に敷島隆ではない、まったくの別人であると、だがさすがに関も本当に別人だということまでは考えが至らなかった、
温和で理知的な敷島が突然精神に異常をきたしてしまったと考えたのだ、それが妥当な判断だといえよう、この後もスケジュールがあるのだがこんな状態では何をやらかすかわからない、関は独断ですべての予定をキャンセルし、敷島を自宅まで送っていくことに決めた、まだ午後2時を少し過ぎたばかりである、それを犬敷島に告げると・・・
 犬敷島  「なんだ?もう仕事しないでいいってか?ラッキー!」
その反応を見て自分の判断に間違いはなかったと関は改めて思った、しかし今日はこれでいいとして明日はどうすればいいのか?
もう自分の判断だけではどうしようもない、他の重役たちの指示を仰ぐしかない、そんなことを考えながら関は敷島邸の玄関に車を停めた、

 関秘書  「お疲れ様でございました」
 犬敷島  「 (車を降りながら) ああ、関君」
 関秘書  「何でしょう?」
 犬敷島  「明日から4~5日出張に出るからよ」
 関秘書  「・・出張って、どちらに?」
 犬敷島  「へへへへ・・そりゃあ企業秘密ってやつよ」
 関秘書  「はあ? (なんで秘書の俺に企業秘密なんだ?)」
 犬敷島  「来週の役員会議には必ず顔を出すからよ、会社の連中にもそう言っとけ」
 関秘書  「あの・・せめて私だけには行く先を」
 犬敷島  「だから秘密なんだって・・ヒ・・ミ・・ツ」
 関秘書  「し・・しかし社長」
 犬敷島  「♪それは秘密、秘密、秘密~~♪秘密のタカシちゃ~ん♪」
アッコちゃんの替え歌を歌いスキップを踏みながら家に入っていく犬敷島であった  (つづく)

2006年10月02日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~7

犬敷島が行く先も告げず姿を消してから6日が経過した、そして今日は敷島重工の本社で定例の役員会議が開かれる日である、
本社ビルの秘書課に専務取締役の井上が入ってくる・・・

  井上  「おう、関君」
   関  「ああ専務、やっとお戻りで」
井上は九州に出張中、敷島夫妻の暴挙を耳にして信じられないという面持ちで東京に戻ってきた、
井上は会社創業時からのメンバーで敷島には絶対の信頼と信服をおいているのである、
  井上  「関君・・あの報告は確かか?」
   関  「はい、残念ながら・・」
  井上  「あの社長が・・まったくの別人格になってしまったというのかね?」
   関  「俺は生まれ変わったんだ・・などということをはばかることなく仰っていました」
  井上  「やはり・・精神に異常をきたしたと思うか?」
   関  「普通に考えればそういうことになりますが・・しかし奥様まで同時にガラッと変わってしまったというのは、いくらなんでも、」
  井上  「まったくだ・・いったい何がどうなっておるんだ?」
   関  「私はオカルトっぽいことは信じない主義でしたが、いささか自信が持てなくなりました」
  井上  「まさか何か邪悪なものがあのご夫婦にとりついたとでも?」
   関  「あの二人を見ていますとどうもそんな気がして・・」
  井上  「バカな、あり得ん話だ!」
   関  「そうですが・・・」
  井上  「それで社長は今日は出社するのかね?役員会には出ると言ってたんだろ?」
   関  「はい、今朝私が直接お宅までお迎えに上がりましたところ、お出になったのは奥様だけでして社長は出先から直接会社に行くと言っておられました」
  井上  「奥様には会ったんだな?」
   関  「はい、」
  井上  「奥様の様子はどうだ?その後何かやらかしたりしてないか?」
   関  「会社の名誉を大きく傷つけるようなことはなさっておりませんが、連日豪遊されているそうでして・・」
  井上  「豪遊?・・あの控え目な春江さんがか?」
   関  「今朝、交際費で落とすようにとこれを渡されまして、」
  井上  「なんだその請求書?( 手に取って仰天 )ご・・520万だと!・・何なんだこの、ゴールデンナイトって?」
   関  「はい・・銀座のホストクラブです」
  井上  「ホ・・ホスト?」
   関  「現場に居合わせた他の客からの情報によりますと10人のホストを黒のビキニパンツ一枚の格好にさせてはべらせ、ご自分はSMの女王のようなコスチュームで朝までドンチャン騒ぎをしていたとか・・・」
  井上  「なんか・・もう目まいがしてきた、」
   関  「専務、経理に回してもよろしいでしょうか?」
  井上  「落とせるわけないだろこんなもん!」
   関  「では、どうしたら?」
  井上  「とにかくこれは俺が預かっておく、それよりまずはやはり社長だ、役員会に出てきたら社長の真意を俺がきっちり質してやる、その上で代表取締役を勤められる状態でないと判断したら、誠に残念だが緊急動議を出して社長を解任することになるだろう、君もそのつもりでいてくれ」

   関  「・・はい」
時刻は午前10時を回った、会議室には敷島を除く19名の役員たちが席についている、およそ半数の役員たちがここ数日の敷島の異常ぶりに不安げな表情でヒソヒソと語り合っているのに対してあとの半分の役員たちは不思議と冷静で、むしろどっしりとした感じで座っているように見える・・・これにはある理由があったのだ、

  井上  「もう会議を始める時間だが・・社長はまだかな?」
  重役  「もしかしたら出社して来ないかもしれ・・(会議室の電話が鳴る)もしもし?・・社長が?・・・そうかわかった、
       (受話器を置き) 受付からだ、今社長が出社された」
  井上  「そうか、」
およそ半数の重役たちに緊張が走る、残りの重役たちは相変わらず平然としたままである、井上はそんな彼らのリアクションに何やら違和感を覚えたが・・やがて廊下から敷島の陽気な歌が聞こえてきた、

 犬敷島  「♪沖のカモメに潮時問えば~わたしゃ立つ鳥~波に聞けチョイ♪」
        (会議室のドアをバーーンと開け放つと)
 犬敷島  「いよう!みんな揃っとるな、ご苦労ご苦労、」
  井上  「社長!」
思わず立ち上がって敷島の顔を見る井上、その顔つきや物腰で自分が知っている敷島隆でないことは一目瞭然であった、
 犬敷島  「さあ~てと、ちゃっちゃと済ませるとするか」
        (そう言って社長のイスにどっかと座りふんぞり返って見せる)
  井上  「社長・・その前にちょっとよろしいですか?」
 犬敷島  「おう・・井上君だったな」
  井上  「いや、だったなって( 創業以来のメンバーにそれはないだろ?)先日社長と奥様がなさったことについての処理ですが、」
 犬敷島  「処理だあ?」
  井上  「結婚式場でのことにつきましては・・まあ社長がかなり酒に酔っておられたということにして、ご両家には当社からの謝罪文とそれ相応の慰謝料を支払うということで何とか収めることができそうですが、問題は奥様が大衆の面前で黄色い羽根募金の寄付を拒んだことです、拒むにしてもあのような無礼な断わり方はないだろうと全国から抗議が殺到しております」

 犬敷島  「ふふん、」
  井上  「社長・・奥様がなさったことは社長のご意志ではございませんよね?」
 犬敷島  「いいや、春江が言ったことは俺が言ったも同然だ」
  井上  「そ・・そんな!」
 犬敷島  「貧乏人のガキに金なんぞくれてやることはない!」
  井上  「しかし、この寄付は役員会で決定したことですよ、社長お一人の一存で覆したりできるものじゃないでしょう?」
 犬敷島  「そいつは違うな、俺の意志こそが敷島重工の意志なんだよ」
  井上  「・・・本気で仰っているんですか?」
 犬敷島  「もちろんだ」
井上は悟った、こんな状態の敷島に社長を任せてはおけないということを、もう井上にためらいはなかった、
  井上  「突然ですが緊急動議を提出したい、敷島社長の即時解任を求めます、賛成の諸君は挙手願いたい!」  (つづく)

2006年10月07日

元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~8

井上とともにおよそ半数の役員たちが一斉に手を上げた、しかし残り半数の役員は不敵な笑みのまま沈黙を守っている、
挙手した役員の数は20名中8名、過半数にわずかに届かない数だった、

  井上  「ええっ!」
驚いたのは井上だけではない、挙手をした誰もがみな圧倒的な多数で敷島の解任が決まると思っていたのだ、それがまさか過半数を割るとは・・
さらに井上を驚かせたことは挙手しない役員たちの中に創業当時から苦労をともにしてきた無二の盟友とも思える気心の知れた仲間が数名いたことである、

  井上  「加藤、吉川・・柴田!お前らまでどうしたっていうんだ?」
  加藤  「井上、そう熱くなることはねえじゃねえか」
  井上  「なんだって!」
  吉川  「社長に任せとけば間違いないですって専務」
  柴田  「そうそう、長い物には巻かれろってね、ハハハ」
  井上  「お、お前ら・・」
 犬敷島  「フフ・・残念だったな井上」
  井上  「うっ・・・」
この意外な現象の種明かしをしよう、すでに犬敷島は11人の役員を自分の忠実なしもべに変身させてしまったのだ、
犬敷島はこの世界に送り込まれるのに先立ち犬犬王から特殊な能力を授けられているのだ、それは接触した相手を10分もかからずに自分の思うがまま操ることができるという「洗脳パワー」である、犬敷島はここ2~3日のうちに密かに敷島重工の役員たちと面談し次々と陥落させていったのである・・・井上は方を落として力なく座り込んだ、

 犬敷島  「さあて、くだらねえ動議が否決されたところでだ、重大な発表をするからようく聞けよ」
  (井上を含む正常な重役たちはいったい何を言い出すのかと不安げに敷島の顔を見つめている)
 犬敷島  「鉄人を北朝鮮に売却することに決めたからよ」
 正常な役員たち  「ええーーーーーっ!!!!」
 犬敷島  「よおく磨いて出荷する準備しとけ、キムイルソンの奴、いい値段出してきやがってよう、大儲けだぜ、げへへへへへ・・」

もはや犬敷島の暴走を止められる者はいなかった、猫猫宮の世界は内部から確実に崩壊している、そしてその影響は犬犬王の世界に捕らわれの身になっている彼女に徐々に現れ始めていた、どうしようもないほどの「虚無感」「虚脱感」が断続的に彼女に襲いかかっている、
気を張っているつもりでもボーッと何も考えられない無意識の状態が数秒・・十数秒・・そして5分前後としだいに長くなっている、

  猫猫  「・・・・・・・・・・・うっ・・・えっ?・・・・キャッ!」
どのくらい意識を失っていたのだろう? ふと気づくと息がかかるくらい近くに不乱拳博士の顔があった、猫猫宮の顔を物珍しげに覗きこんでいる、
 不乱拳  「フフ、気がついたかね?今のはちょっと長かったよ、15分くらいボーーッとしていた」
  猫猫  「うっ・・」
 不乱拳  「ウチの敷島が上手くやってるようだね、こっちの世界じゃこれといって取り得のない男なんだが初めて役に立ったよ」
  猫猫  「・・・・・・・・・・」
威勢のいいタンカを返してやりたいところだが虚脱感が抜けきらず思うように言葉が出てこない、それにいくら抵抗したところでこの状況を抜け出す手段はないのだ、このままどんどん虚脱状態が長くなっていって自分の心も精神世界も消滅してしまうことは最早確実となってきた、

 不乱拳  「もう縛っておく必要もあるまい、ロープをほどいてあげるよ」
不乱拳によってロープがほどかれたが立ち上がる気力も湧いてこない、もう戦う力なんて残ってない・・・・・
私はもうじき・・隆のことを何とも思わなくなってしまうのね・・・「敷島な日々」はきっと即閉鎖ね・・・
もっといろんなふうにして膨らませてみたかったなあ・・・楽しかったなあ・・毎日がとても充実してた・・隆、好きだったよ、・・大好きだったよ・・・でも、もう終わりなのね・・・さみしいなあ・・そんなのすごくさみしいなあ・・・さみしいよ、
そんなの嫌だよ・・・嫌よ・・・・いやっ!
  猫猫  「た、タカシーーーーーーーーーーーーッ!」
     (魂をふり絞るような叫び声が猫猫宮から発せられた)
 不乱拳  「ほう、まだそんな元気が残っていたのか?しかしまあ蝋燭が燃えつきる前の最後のゆらめきってやつだろうね」
  犬犬  ( 断末魔の叫びってやつじゃないの?ホホホホ・・ )
 不乱拳  「ははははは・・」
  猫猫  「タ・・カ・・シ・・」
だがこの魂の叫びは決して無駄ではなかった、無限の横山精神世界を光の何百倍もの速さで飛んでいるバ春江の耳にその声は届いたのだ、
 バ春江  「・・・この声は!」   (つづく) 

2006年10月08日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~9

バ春江は急ブレーキをかけて停止した、今確かに猫猫宮の念を感じた、ふりしぼるように「タカシ」と・・・気のせいではない、
間違いなく猫猫宮の想念であると確信したバ春江は心をより深く研ぎ澄ませて想いが伝わってきた方向を探る、

 バ春江  「・・・こっちよ!・・こっちだわ!」
そこから春江は注意深く移動を開始した、感じる・・どんどんと近づいていると感じる・・・もう少し・・・あともう少し、
そしてバ春江は何もない中空の世界の「ある地点」に立ち止まった、そこは一見見渡す限り何もない無の世界のように見えるが・・

 バ春江  「・・ここだわ!」
目には何も見えないが前に一歩踏み出せばそこに異次元空間があるということを春江は気配で悟った、手を前にそっと差し出してみると指先が次元の境界線に軽く触れた、それは決して強固な壁というものではない、精神世界においてそのような概念は意味を持たないのだ、
それはまるで卵の薄皮のような「空気の膜」であった、

春江は人差し指をペロッとなめると、その境界の空気の膜にそっと指を突き立てた、それはまるで障子紙に指で穴をあけ部屋の中を覗き込む行為と同じである、プスッと音がして空間に小さな「穴」があいた、そしてその穴からバ春江が目にしたものは・・・

 バ春江  「誰かの精神世界だわ!」
何やら怪し気な部屋に初老の男が立っている、その男が不乱拳博士であるということまでは春江にはわからない、しかしその男の発する強烈なオーラのようなものからこの男こそこの世界の中心人物だということがわかる、その初老の男のすぐそばに座ってうつろな目をしている女性、
「猫猫宮さんだ!」と春江は一目見て感じた、しかし前回会った時とはだいぶ顔が違うが・・・・

 バ春江  「・・・なんで顔が山田花子なの?」
少し戸惑ったもののすぐに察した、これは彼女を拉致した人間による無礼な仕打ちであろうことを・・・・
それにしても猫猫宮の表情がかなりうつろになっていることが気にかかる、拉致されたことによって彼女の敷島隆や横山世界への思いがかなり希薄になってしまっていることが伺えた・・さて、どうしたものか?

もちろん自分がこのまま飛び込んで行ってもとうてい勝ち目はない、一刻も早くこのことをバンワオーに知らせて猫猫宮を救出してもらわなければ!しかし春江は思った、何とか自分がこの世界の場所をつきとめたことを猫猫宮に伝えたい、
そして救出されるまでの間気持ちをしっかりと持っていてもらいたい、何とかしてあの初老の男にもこの世界の創造主にも気づかれることなく猫猫宮とコンタクトできないものかと・・・考えに考え抜いて春江はひとつの手段を思いついた、

この精神世界は想いこそがすべてである、今でこそ自分は敷島春江の姿をしているがひょっとして想いひとつで何にでも姿を変えられるのではないか?今自分が指であけたこの小さな穴でも通り抜けられるような小さな「虫」に変身することだって決して不可能ではないのでは?・・・そうだ、やってみる価値はある!春江は目を閉じ精神を集中させ自分自身に暗示をかけ始めた、

 バ春江  「私はハエ・・ハエ・・いや、ハエじゃなんか汚いわね・・じゃあそう・・ミツバチ!・・可愛いミツバチ!・・ミツバチ」
しばらくひとりでブツブツと念じ続けていた春江の体がパッとかき消えたかと思うと次の瞬間春江は見事に小さなミツバチに姿を変えていた、
 バ春江  「やったわ!想いの力ってホントに凄いのね」
精神世界の不思議さにほとほと感心させられた春江は小さな穴から犬犬王の世界に侵入したのだ!不乱拳にもこの世界の創造主にも決して気づかれないようできるだけ心を無心にして用心深く猫猫宮に近づいていく、ようやく猫猫宮の座っているイスの足にたどり着いた、

そこから不乱拳の死角になっているイスの裏側をそろそろと登り、まず猫猫宮の肩に着地した、そこで不乱拳の注意が他に向いていることを確かめた春江は一気に猫猫宮の耳元に飛び移った、

  猫猫  「・・うっ」
耳に何やら違和感を感じた猫猫宮はほんの少し体をくねらせる、猫猫宮の耳にとりついた春江は念でなく肉声で彼女に囁いた、
 バ春江  『猫さん!・・猫猫宮さん!』
  猫猫  「・・・えっ?」
けだるい虚脱感の中にいる猫猫宮はほとんど無意識でかき消えるような小さな声で返事を返す、
 バ春江  『私よ!春江よ!・・バンワオー世界の敷島春江よ!今あなたの耳元で喋ってるのよ!』
  猫猫  「・・・バンワオー世界の?・・春江?・・えっ?・・・春江さん?」
 バ春江  『そうよ、春江よ!』
  猫猫  「・・・幻聴にしては妙に生々しく聞こえるけど・・・ホントに春江さんなの?」
    (声はすれども姿は見えない・・やはり幻聴ではないのか?)
 バ春江  『あたし今想いの力で自分の姿をミツバチに変えたのよ、ほら見て』
     そう言って春江ミツバチは猫猫宮の鼻先にピタッと止まって見せた、
  猫猫  「これ・・・本当に春江さんなの?」  (つづく)

2006年10月12日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~10

 バ春江  「本当にあたしよ、ほら」 (そう言うとミツバチの上半身がパッと春江の顔になる)
  猫猫  「・・本当に春江さんだわ・・でもちょっと気色悪いわね」
 バ春江  「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
  猫猫  「でも・・どうして春江さんが?」
 バ春江  「バンワオーさんがあなたのことを心配して私と主人と手分けしてあなたを探してたのよ、あなたがさっき叫んだ念が私の耳に届いたのよ」
  猫猫  「あ・・ありがとう、助けに来てくれたのね」
 バ春江  「そうよ、あたし今から大急ぎで戻って行ってバンワオーさんに知らせてくるから、もうちょっとの辛抱よ、だから頑張って」
  猫猫  「待って、その前にあたしの世界を何とかしてくれないかしら?」
 バ春江  「猫さんの世界を?」
  猫猫  「そうなの、今たいへんなことになってるのよ、実はね・・」
コソコソと小声で話す猫猫宮たちの話し声が部屋の隅で仕事をしている不乱拳の耳に入ってしまった、不審に思った不乱拳は猫猫宮の方に近づいていく、

  猫猫  「ヤバイわ、春江さん隠れて!」
バ春江はあわてて不乱拳の死角となる猫猫宮の後頭部に回りこむ、
 不乱拳  「さっきから何をごそごそ喋ってるんだね?」
  猫猫  「あ・・あのねえ」
 不乱拳  「何だね?」
  猫猫  「あたしの世界にい、この世界にいる犬敷島と犬春江を送り込んでえ、本物の猫敷島夫婦と入れ替わって・・それであたしの世界をグチャグチャに混乱させてえ・・内部から崩壊を早めようってことで・・それで実際犬敷島夫婦がかなりムチャクチャをやってるみたいでえ・・あたしがいくら気を張っても・・自分の世界の内部崩壊と連動してて、だんだん虚脱状態が長くなってきてえ・・このままじゃいくらもしないうちに・・あたしの心が消えてなくなっちゃいそうでえ・・もう犬敷島夫妻を一刻も早くなんとかしないことにはもうどうしようもないっていう今の状態についてなんだけどね」

 不乱拳  「なんでそんなに細かく言う必要がある?」
    ( もちろんこれはバ春江に状況を説明しているのである )
  猫猫  「それ・・もうやめてもらえないかしら?」
 不乱拳  「フッ・・何を言い出すかと思ったら」
  猫猫  「・・やっぱりダメ?」
 不乱拳  「わかりきったことを聞くなんて・・頭までおかしくなったのかね?」
  猫猫  「・・そうかもね」
 不乱拳  「ははは・・いよいよ最後みたいだねえ」 (そう言って高らかに笑うと自分の仕事に戻る)
  猫猫  「・・・・・・・・・・」
 バ春江  「(猫猫宮の耳元に戻り) 驚いたわ、そんなことになってるなんて、わかったわ、とにかく何でもするからそれまで頑張って、ねっ、猫さん」
  猫猫  「・・・・・・・・・・」
 バ春江  「えっ?・・あのう猫さん?ねえ猫さんてば!」
またもや猫猫宮は長い虚脱状態に陥ってしまった、もう一刻の猶予もならない、そう思い至った春江は侵入した穴から犬犬王の世界を抜けバンワオーにこのことを告げるべく再び光の何百倍のスピードで精神世界を飛んだ、

こちらは猫猫宮の世界、東京の夜景が一望できる高級ホテルのスカイラウンジですご~く高級なディナーをすご~く下品に食べている犬敷島夫妻、
 犬敷島  「ズズズ・・ズーズルズル、う、うめえじゃねえかこのスープ」
 犬春江  「ズズズズ、ジュルジュル・・ほんと、いい味してるわ」 ( マナーもなにもあったものじゃない )
 犬敷島  「ジュルジュル・・今日はよう、2千人もリストラしてやったぜ、敷島重工は全国で大騒ぎだぜ、げへへへ」
 犬春江  「ズズズーー、あたしもさ、敷島隆のカードでこれ買っちゃった」
     ジャランとテーブルの上に宝石やネックレスを無造作に転がせる、
 犬敷島  「ほう、いくらしたんだ、これ?」
 犬春江  「全部で・・だいたい3億円くらいかな?」
 犬敷島  「へへえ、すげえじゃねえか、3億とは」
 犬春江  「さすが敷島のゴールドカードよねえ、無制限だっていうんだから、キャハハハハ」
 犬敷島  「(窓の外を見て) なあ春江、俺たちの働きがだいぶ効いてきたみてえだな」
 犬春江  「そうよね、もう空なんかずっとどんより曇ったまんまだし、街歩いててもぜんぜん活気がないもんね」
 犬敷島  「こりゃあもう2~3日で消えちまうな」
 犬春江  「フフフ、もう少し楽しみたかったわねえ」
 犬敷島  「まったくだな、げへへへへ・・」

そしてこちらは中空の世界、バ春江の知らせを受けてバンワオーとバ敷島がやって来て春江と合流した、
 バンワ  「そうか・・やっぱり犬犬王の仕業だったんだな」
 バ春江  「猫さんの世界が崩壊寸前なんです、早くなんとかしないと!」
 バンワ  「うん、そうだね、君たち二人に来てもらってよかったよ、僕は創造主という立場だから猫さんの世界には入れないんだだから君たちに頼むよ、猫敷島夫婦を救出してそのニセモノの犬敷島夫妻とやらをとっちめてやってくれ」

 バ敷島  「あのう・・僕はその、ケンカはちょっと苦手でして・・」
 バ春江  「なに言ってんのよあなた、男でしょ?根性見せなさいよ」
 バ敷島  「だ・・だってさあ」
 バ春江  「も~う、たらしない!ねえバンワオーさん、何とかしてくださらない?」
 バンワ  「そうだね、もうちょっと戦闘レベル高くしとこうか」( 指をパチンと鳴らすと )
 バ敷島  「よっしゃあ!やったるでえ(ガッツポーズ)」
 バ春江  「・・さすが創造主よねえ」
 バンワ  「では今から君たちを猫さんの世界に送り込むからね、いいかい?心を集中してあっちの世界のことを思い浮かべるんだ」
 バ春江  「はい!」
 バ敷島  「はい!」
 バンワ  「行けーーーーっ!次元を越えてえ!」
     次の瞬間バ敷島夫妻の姿がパッとかき消えた   (つづく)

2006年10月18日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~11

猫猫宮の世界、敷島邸の広~いリビングに光の粒子が渦を巻きながら降りてきてそれが一組の男女のシルエットとなり一瞬まぶしい輝きを放つとバンワオー世界の敷島夫婦がその姿を現した、

 バ敷島  「・・・ここが猫敷島さんの自宅かあ」
 バ春江  「すごいわ~、いかにも上流階級って感じよね」
 バ敷島  「うん、よく洗練させてるね、成金趣味的な雰囲気はまったく見られない」
 バ春江  「きっとこの世界のあたしってバーゲンで目を血走らせて服の取り合いとか絶対しないわよね」
 バ敷島  「そりゃそうさ、君じゃあるまいし」
 バ春江  「なにそれ?なんか引っかかる言い方するじゃない?」
 バ敷島  「あ、いや・・とにかく二人を探さないと」
 バ春江  「そうね、精神を集中して二人の居場所をつきとめましょう、あの二人は私たちの分身みたいなものだからこの世界のどこにいたって「息づかい」を感じるはずよ」
 バ敷島  「そうだな、心を研ぎ澄ませば猫敷島さんたちの念を感じ・・・あれ?」
 バ春江  「・・・あなた?」 (顔を見合わせる二人)
 バ敷島  「・・・春江」

 バ春江  「あなたも感じた?」
 バ敷島  「うん、感じた」
 バ春江  「すぐ近くよね?」
 バ敷島  「うん、すごく近い」
 バ春江  「・・てことは、この家の中?」
 バ敷島  「多分そうだ・・でも二階・・じゃあないみたいだけど」
 バ春江  「下の方から感じない?」
 バ敷島  「うん、そうだ、下だよ下!」
 バ春江  「でもここは一階だから、その下っていうと・・」
 バ敷島  「地下室だ!」
 バ春江  「行ってみましょう」
リビングから廊下に出る二人、広い敷島邸は最近までメイドを雇っていたのだが犬敷島がクビにしてしまったので現在はまったくの無人であった、
いくつかのドアを開けながら地下室へとつながる階段を見つけた、

 バ春江  「ここよ!きっとこの下よ!」
二人が階段を駆け降りると目の前に地下室の頑丈なドアがあった、敷島がドアノブに手をかけたが・・・
 バ敷島  「だめだ、鍵がかかってるよ」
 バ春江  「あなた、ちょっと私にやらせて」
 バ敷島  「どうするんだ?」
 バ春江  「こうやってあけるのよ」
ドアノブの前にしゃがみこみ頭からヘアピンを一本抜き取るとカギ穴に差し込んでガチャガチャやっている、
 バ敷島  「お前・・できるのか?」
 バ春江  「映画なんかでよくこういうシーンあるじゃない?あたしも興味本位でやってみたらねえ、
       けっこう開けられたのよ、ちょっとしたコツがあるんだけどね」
 バ敷島  「ふうん」
真剣な表情で鍵と格闘している春江、敷島はしばらくそれをじっと注目していたがかなり手間取っている様子である、
何気に敷島は周囲を見渡すと「ある物」を見つけた、

   カチャカチャ・・・カチャ・・カチャカチャ・・・・カチャ・・・
 バ春江  「も・・もう少しなんだけど・・こうして・・こうやって・・あっ!手応えがあったわ!もうこれで・・ああん失敗!でも感じが掴めてきたわ・・もう少し・・もう少しよ」
   カチャカチャ・・・カチャカチャ・・・カチャ・・・カチャカチャ・・
 バ敷島  「・・ねえ春江」
 バ春江  「なによう?」
 バ敷島  「もういいよ、そんなことしなくて」
 バ春江  「いいってことないじゃないの、あけなきゃしょうがないでしょ」 カチャカチャ・・・カチャ・・
 バ敷島  「だからそんなことしなくていいって・・」
 バ春江  「何がいいのよ?」
 バ敷島  「ほらコレ」
そう言って春江の目の前にブランとカギをぶら下げて見せる、ホルダーに『地下室』と記してある、
 バ春江  「ど・・どこにあったの?」
 バ敷島  「ほら、あそこ・・キーボックスになってたんだ、その中に入ってた」
 バ春江  「いつ見つけたの?」
 バ敷島  「う~んと・・3分くらい前かな?」
 バ春江  「なんですぐ言わないのよ!」
 バ敷島  「言ってもよかったんだけどね、けっこう君が気に入ってやってるみたいだったから・・」
 バ春江  「もう!そんなつまんないことに気い使わなくていいわよ!」
春江はひったくるようにそのカギを手に取るとカギ穴に差しこみ回す、カチッと音がして鍵があいた、ドアノブを回して手前に引く、
ギギギーーという音とともに扉が開く、見るとひんやりとした地下室の床にロープで幾重にも縛られさるぐつわをかまされて転がされている猫敷島夫妻がいた!

 バ春江  「いたわ!猫敷島夫婦よ」
二人が猫敷島夫妻の元へ歩み寄ると・・
 猫敷島  「ム・・ムグググ・・・ググ、」
 バ春江  「ムムム・・ムウウ・・」
必死にもがいて見せる二人、無理もない、当然ながら猫敷島夫妻は目の前にいる二人を犬敷島だと思っている、
バ敷島が猫敷島のさるぐつわを外すと・・・

 バ敷島  「大丈夫ですか、猫敷島さん!」
 猫敷島  「何が大丈夫ですかだ!人をこんな目に遭わせておいて!」
 バ敷島  「あ、いや・・違うんです猫敷島さん、僕らは犬敷島じゃありません、バンワオー世界の敷島なんです」
 猫敷島  「・・・猫だとか犬だとか何を言ってるんだ!」
 バ春江  「あなた、口で説明してたんじゃらちがあかないわ、念を使いましょう」
 バ敷島  「うん、そうだな」
バ春江は怯えた表情の猫春江の額に手を、そしてバ敷島は猫敷島の額にそっと手を当てる、
 猫敷島  「な、なにをするんだ!」
 バ敷島  「落ち着いてください、僕らは敵じゃありません、感じてください僕らの心を・・」
 猫敷島  「・・・うっ!」

念(テレパシー)とはまことに便利なものである、わずか数秒で猫敷島夫婦はこれまでの事情を正確に把握したのだ、
自分たちが猫猫宮という創造主に造られた存在であり以前バンワオーの世界とコラボしたことなどをすべて思い出していた、

 猫敷島  「・・そうか・・そうだったのか」  (つづく) 

2006年10月23日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~12

 バ敷島  「間に合ってよかった、これから4人で力を合わせてこの世界の崩壊を食い止めましょう」
 猫敷島  「うん、そうだね!」
 バ春江  「大丈夫春江さん?どこもケガしてない?」
 猫春江  「ええ、平気です、おかげで助かりました、本当にありがとうございました」
 バ春江  「まだ礼を言うのは早いわ、とにかく犬敷島をとっつかまえないとね」
 バ敷島  「・・それで犬敷島たちは今どこにいるんだろうな?」
 猫敷島  「夜遅くに帰ってくるんだ、毎日二人で遊び歩いているようだよ」
 バ敷島  「なぜ奴らの行動がわかるんですか?完全防音の地下室にずっと転がされていたっていうのに?」
 猫敷島  「うん、情けないがあんな敷島でも一応「同類」なんだねえ、彼らが見た光景や感じたことが何度もフラッシュのように
       頭に浮かぶんだ、それで彼らの破壊工作というものが大まかではあるがわかっていた」
 猫春江  「そうなんです、たまらない気分でしたわ、特にあの女・・犬春江っていうんですか?もう口にできないほど下品でいやらしいことを・・」
 バ春江  「そうなの?もうホントに春江一族の面汚しよね」
 バ敷島  「何だよ春江一族って?」
 バ春江  「いいじゃないの別に」
 猫敷島  「しかし自分たちがイメージによって作られた存在だとわかってやっと納得できたよ、10日以上も飲まず食わずで転がされていたら普通死んでいたって不思議じゃないのにわりと平気なんだからねえ」
 猫春江  「本当に不思議でしたわ、今だって特にお腹も空いてないし喉だってそんなに渇いてませんし・・」
 バ敷島  「つまり僕たちは全員が不死身だってことですよ」
 猫敷島  「ふむ・・不死身ねえ」
 バ敷島  「特に猫敷島さんなんかこの世界の中心ですからね、生命力の強さは桁違いでしょう」
 猫敷島  「君たちの方はどうなんだね?」
 バ春江  「ええ、本来あたし達の創造主は正太郎君をメインにしてたんですけどね、こちらの猫猫宮さんに刺激されて今じゃあもう順位が逆転しちゃってますわ、おかげであたしもそのおこぼれに預かっちゃって、おほほほほ」

 バ敷島  「でもなんかウチの場合、春江ばっかりパワフルになっちゃってね」
 猫敷島  「それは・・逆に言うと君がどんどんMになっているということじゃ?」
 バ敷島  「・・そういう表現はちょっと抵抗あるけど」
 猫敷島  「いや、こりゃ失敬」
 バ春江  「とにかくまだ8時前だし、犬敷島たちが帰ってくるまでまだだいぶ時間があるみたいだからみんなで食事でもしませんこと?」
 猫敷島  「うん・・まあ腹が減っては戦はできんと言うからね」
 猫春江  「あたしお風呂に入ってさっぱりしたいわ」
 猫敷島  「そうだよな、お互いかなり汗臭いもんな」
 バ春江  「どうぞ、ゆっくり入ってらして、あたしその間に食事の用意をしておきますわ」
 猫敷島  「そう?悪いね」
 バ春江  「いえいえ、どういたしまして、ええと・・簡単にスパゲティでいいかしら?」
 猫敷島  「ええ、別に何でも・・」
 猫春江  「材料と調味料は全部揃ってますから自由に使ってくださいね」
 バ春江  「了解しましたあ!」 (おどけて敬礼して見せる)

敷島邸の浴室 10日以上に及ぶ体の垢を洗い流しバスタブに深々と身を沈めている猫敷島夫婦
 猫春江  「ああ・・体の疲れが全部ほぐれていくみたいだわ」
 猫敷島  「君と一緒にお風呂に入るなんて何年ぶりかな?」
 猫春江  「そうね・・もうそうとう昔じゃないかしらね?」
 猫敷島  「よく流しっこしたもんだがねえ」
    (いつしかバスタブの中で猫敷島の手が春江の体を撫で回している)
 猫春江  「ああん、もう、あなたったら何考えてるのよこんな時に」
 猫敷島  「いや・・なんかいろんな意味で興奮してるもんでね」
 猫春江  「そういうエネルギーはこの後のために取っておかなきゃダメでしょ?」
 猫敷島  「まあ、そりゃわかってるんだが・・」
 猫春江  「この続きはきちんと決着をつけた後でタップリと・・ねっ?」
 猫敷島  「ああ・・うん」

キッチンでテーブルを囲みスパゲティを食べている二組の敷島夫妻、ミートソース、トマトソース、クリームソース、カルボナーラと多彩であるがすべて敷島邸のキッチンにあった高級缶詰であってバ春江の腕前とは無関係である、

 猫敷島  「いやうまい、食べなくても死なないとわかってもやっぱりちゃんと食事しないと力が出ないな」
 バ敷島  「しかし本当に美味しいですねこのソース」
 バ春江  「このソースの缶詰・・外国から取り寄せたものみたいだけど?」
 猫春江  「行きつけのレストランのオーナーシェフが是非にって勧めてくれたの、イタリアの高級ホテルで使ってるソースを缶詰にしたんですって」
 バ春江  「へえ~、いかにも高そうねえ」
 猫敷島  「ええ、ひと缶だいたい・・7千猫円くらいかしら?」
 バ春江  「・・何なの猫円って?」
和気あいあいとした食事が終わり4人はリビングに移動した、時刻は間もなく午後10時になろうとしている、
 猫敷島  「さて、あと1~2時間もすれば犬敷島たちが帰ってくるだろう、私たちはそれを待ち伏せるわけだが、なるべく心を無の状態にして彼らに対する敵意を抑えた方がいい、なぜならさっきも言ったように彼らも私たちと「同類」には違いないからね、私が彼らの行動や感情を感じたように彼らも私たちの心を感じ取れると思った方がいいだろう」
 バ敷島  「そうですね、待ち伏せを悟られてしまっては何にもならない、逃げられてしまっては僕たちだけで見つけて捕まえるのは至難の業だ」
 バ春江  「だいいちそんな時間の余裕はないわ」
 猫春江  「闘志は胸の奥にしまって無心で待ちましょう」
 猫敷島  「・・では精神を統一して無我の境地を心がけよう」
 バ春江  「無我の境地ねえ、言うのは簡単だけどけっこう難しいわね」
 バ敷島  「特に君は煩悩が多いからなあ」
 バ春江  「ふん、悪うございましたわね」
 バ敷島  「無心になるって言っても感覚だけは研ぎ澄ましておかないとダメだ、だから居眠りなんかしちゃだめだよ」
 バ春江  「うるさいわねえ、わかってるわよ」

かくして二組の敷島夫妻は己の存在を極力消して犬敷島たちの帰りを待ったのである (つづく)

2006年10月26日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~13

その日の深夜、間もなく日付が変わろうという時刻である、閑静な高級住宅街にガガーーン!という音がこだました、
酒に酔った犬敷島が運転するBMWのオープンカーがヨロヨロと走ってきて敷島邸の門柱に激突した音である、

 犬春江  「な~にやってんのよう、ヘタクソねえ」
 犬敷島  「おろろろ?・・ちょこっとへっこんじまったかあ?」
 犬春江  「ちょこっとって・・前グシャグシャじゃないのさ、あらら、煙も出てきちゃった」
 犬敷島  「まあいいか、車なんかナンボでもあるんだしよう、げへへへ」
 犬春江  「今のショックで酔いが冷めちゃったわ、キャハハハ」
        ( 隣の住人が物音に驚いて表に出てきた )
  隣人  「だ・・大丈夫ですか敷島さん?」
 犬敷島  「なんだあテメエ!見せ物じゃねえぞ!」
  隣人  「いやそんな・・私はただ大きな音がしたもので何かあったのかと・・」
 犬敷島  「何でもいいからアッチ行け、ほれシッシッ」 ( 犬でも追い払うように )
 犬春江  「シッシッ!」
        ( ぶ然とした顔をして隣の住人は自宅に戻っていく )
 犬敷島  「さあ~てと、とっとと屁こいて寝るべえか」
 犬春江  「寝るべえ寝るべえ」
 犬敷島  「♪三年目~の浮気ぐらい多めに見てよ~ってかあ♪」
 犬春江  「♪両手をつい~て謝ったってえ許してあ・げ・ないっとキャハハハ」
  二人  「♪パーヤパーヤ、パッパヤパヤ、パッパッパヤッパ~♪♪」
腕を組み少し千鳥足でご陽気に歌いながら家に入っていく犬敷島夫妻、玄関からリビングに入ってみると部屋の灯りが消えている、

 犬敷島  「あれえ?春江、お前照明消したか?」
 犬春江  「そんなめんどくさいことするわけないじゃん」
 犬敷島  「俺も消した覚えはねえんだけどなあ・・ええと灯りのスイッチは・・おう、これだ」
犬敷島が照明のスイッチを入れると天井のシャンデリア型の照明器具に明かりが灯る、明るく照らされたリビングで思わず犬敷島たちはギョッとなりその場に固まってしまった、目の前に険しい顔つきで自分たちをにらんでいる「二組」の敷島夫妻がいるではないか!

 犬敷島  「えっ?・・ええっ!」
 犬春江  「な・・なんで敷島夫婦が二組も?」
 猫敷島  「ずいぶんと派手に暴れてくれたな犬敷島!」
 猫春江  「あんた達の悪事もこれまでよ!」
 バ春江  「あたし達が来た以上はもう好き勝手はさせないわよ!」
 バ敷島  「以下同文だ!」
 犬敷島  「お・・お前らは何なんだよ?」
 バ春江  「あたし達はバンワオー世界の敷島ペアよ」
 犬敷島  「バ・・バンワオー?・・そんなもん知らねえぞ」
 バ春江  「知ってようといまいと関係ないわよ、ギタギタにしてとっ捕まえてやるから覚悟おし!」
 バ敷島  「以下同文だあ!」

犬敷島と犬春江はゆっくりとお互いの顔を見つめあうと「逃げろ!」という犬敷島の合図で二人は同時に左右に散った!
そして犬春江はやはり女性の習性なのか?キッチンへと一目散に走っていく、「お待ち!」と叫びながら後を追うバ春江と猫春江、

犬春江はキッチンに駆け込むと勝手口から外に脱出しようとドアに手をかけたがロックされていてピクリとも動かなかった、
敷島邸は厳重な防犯システムがセットされており外に出るにも決まった手順でロックを解除しなければならないのだが犬春江がそれを知る由もない、そうこうしている間にバ春江と猫春江がキッチンに飛び込んできた、犬春江は手近にあったフライパンを手に取ってふりかぶる、

 犬春江  「ち、近づくんじゃないよ、ブッ殺されたいのかい!」
言うことは物騒だがなぜかキッチンに置いてある包丁に手はつけていない、幸い犬春江には包丁などという凶器を振り回すほどの度胸はなかったのだ、

 バ春江  「あ~ら、おもしろいじゃない、やれるもんならやってごらん!」
バ春江はそう言うとすり鉢に入っていた太くて長いスリコギを手に身構える、猫春江は壁に引っ掛けてあった大きな鍋を武器として手に取りバ春江のうしろに控える格好になる、キッチンの通路は狭いため二人同時には攻撃をしかけずらい位置関係であった、

 犬春江  「でえーーい!」
 バ春江  「こんちくしょう!」
二人の春江がフライパンとスリコギを武器に激しく打ち合う、カーン、カーン、カン、カン!猫春江はその位置関係からして攻撃をしかけられずにいた、それに猫春江は精一杯闘志をかきたてているとはいえ元来戦闘的な性格ではないのだ、どうしても今一歩踏み込みをためらってしまう、その点三人の春江の中では最も「どう猛な」バ春江は犬春江の持つフライパンを弾き飛ばすほどの勢いでスリコギを打ち込む、
打ち合いが不利と見た犬春江はフライパンを捨てバ春江の懐に飛び込んで組み付いた、その勢いに押されたバ春江は犬春江ともども床にドサッと転がり激しくもみ合う、二人の春江がゴロゴロと上になったり下になったりをくり返しそれを見ていた猫春江はそのうちどっちがどっちの春江なのかわからなくなった、顔も服装も三人ともまったくの瓜二つなのである、いやこの場合瓜三つか?
そのうちどちらかの春江がどちらかの春江を馬乗りになって押さえつけ、こう言った、

 上になっている春江  「さあ捕まえたわよ、犬春江め、もう観念おし!」
 下になっている春江  「ち、違うわ猫春江さん、あたしはバ春江よ、犬春江はこいつよ!」
 上になっている春江  「ま~なんて図々しい!猫春江さん、こんな奴の言うことなんか信じちゃだめよ!」
       猫春江  「え・・ええ~と」
 下になっている春江  「本当よ猫春江さん、本当にあたしがバ春江なのよ!」
 上になっている春江  「いいかげんにおし!このウソツキ女め!」
 下になっている春江  「それはこっちのセリフよう!」

その体勢のままもみ合いを続ける二人の春江、激しい掴み合いで二人の髪は乱れに乱れブラウスもボタンが飛んでしわくちゃでスカートも大きくベロンとめくれ上がっている、それを見た猫春江はハッとなり、そしてこう叫んだ、
 猫春江  「わかったわ!犬春江はあんたよ!」 ( 上になっている春江を指さす )
 犬春江  「ええっ!・・ど、どうして?」
 猫春江  「あんたが履いてるそのド派手なパンティはあたしの洋服タンスに入ってるやつじゃないのよ!」
 犬春江  「し・・しまったあ!」
 猫春江  「もうごまかされないわ!」 ( 猫春江が襲いかかる )
 犬春江  「キャーーッ!」
二人がかりで押さえ込まれ、あえなく犬春江は御用となった  (つづく)

2006年10月30日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~14

一方リビングでは犬敷島の捕り物劇がくり広げられていた、犬敷島は猫敷島のタックルを身をよじってかわすと階段を駆け上がっていく、
バ敷島がそれを追いかけ階段を昇り切る直前で犬敷島に組み付いた、

 犬敷島  「こ・・この野郎、離しやがれ!」
 バ敷島  「逃がすもんかあ!」
    ( 階段でもみ合う二人、そこに猫敷島も駆けつけバ敷島に加勢する )
 猫敷島  「ジタバタしたって無駄だ、もう観念しろ!」
 犬敷島  「畜生!てめえらーーっ