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復刻版 正太郎日誌 合体  アーカイブ

2006年09月09日

復刻版 正太郎日誌 合体1

正太郎の声 「ある年、地球の近くを通過した小惑星イリスの引力に引っ張られていくつもの隕石群が地球の大気圏に突入し、時ならぬ天体ショーを見ることができた、そのほとんどは大気中で燃え尽きてしまったが燃え残った隕石のひとつが招かれざる訪問客を伴って秩父山中に落下したのだ」

午前8時 正太郎邸の電話のベルが鳴る、
 正太郎  「はい、金田です」
  大塚  「おお、正太郎君、ワシじゃ」
 正太郎  「ああ、親父さん、何かあったんですか?」
  大塚  「昨日、秩父山中の明神岳へ登山に出かけた三人が時間になっても戻らんのでな、地元の警察と消防が明け方から山を捜索していたんじゃが今朝その三人が遺体で発見されたんじゃ」
 正太郎  「三人とも遺体で?・・事故なんでしょうか?」
  大塚  「それなんじゃがね、三人とも体中の血液を吸い取られてまるで干からびたミイラのような状態だったそうじゃ」
 正太郎  「体中の血液を?・・それじゃまるであの時みたいに?」
  大塚  「その二日前に明神岳に隕石が落下したという報告がある」
 正太郎  「また・・あの生物がやってきたんでしょうか?」
  大塚  「状況から察するにその疑いは濃厚じゃ、その一報を受けて全員を山から至急避難させた、今本庁の特殊部隊が明神岳に向かっておる」
 正太郎  「特殊部隊?」
  大塚  「全員がガイガーカウンターと強力なスタンガンを所持しておる、それにフルフェイスの防護服を着用している、地肌をさらすとそこにヒルのように食いつかれるからのう」
 正太郎  「なるほど、でもスタンガン程度の電流で対処できますかね?」
  大塚  「ある程度のダメージは与えることはできるだろうが致命傷とまではいかんじゃろう、そこでさっき敷島博士と相談したんじゃ」
 正太郎  「ええ」
  大塚  「鉄人の手のひらに体内の高圧電流が流れるような改造をしようということになってね」
 正太郎  「そうか、ただ掴んだだけじゃスルッと逃げたりちぎれて分裂したりしますしね」
  大塚  「そうじゃ、だから鉄人が触った瞬間に高圧電流をお見舞いしてやれば・・」
 正太郎  「完全に動きを封じられるか又は殺せますね」
  大塚  「うむ、」
 正太郎  「そりゃあ名案ですよ」
  大塚  「幸いさほど大がかりな改造というわけでもないそうで昼までには終わらせるということじゃ、君は出来次第鉄人とともに明神岳のふもとまで来てくれ、ワシは今から現場に向かう」
 正太郎  「わかりました、なるべく早く行きますから」
  大塚  「うむ、待っておるぞ」(電話が切られる)
敷島研究所 正太郎が着いた時はすでにドッグで鉄人の改造が始まっていた、
 正太郎  「(ドッグの入り口から中へ) 博士、」
  敷島  「やあ正太郎君、もう話は聞いたね?」
 正太郎  「はい、作業はあとどれくらいで終わるんですか?」
  敷島  「うん、あと30分くらいだ、警視庁のヘリがこちらに来るそうだから鉄人と一緒に現地に飛んでくれたまえ」
 正太郎  「わかりました、鉄人の手に電流を流す操作はどうやるんですか?」
  敷島  「AボタンとCボタンを同時に押せば流れるようにしてあるよ」
 正太郎  「AとCを同時ですね?わかりました」

約一時間後 正太郎の乗り込んだヘリコプターは鉄人とともに研究所を飛び立ち明神岳へと向かった、現場では山のふもとを特殊部隊が固め鉄人の到着を待っていた、

谷口警部  「署長、配置を完了しました、指示通り10メートル間隔に一名を横一列に並ばせております」
  大塚  「うむ、ガイガーカウンターに反応は?」
  谷口  「いまのところ報告はありません」
  大塚  「通信網に抜かりはないな?」
  谷口  「はい、全員の無線が本部で傍受できます」
  大塚  「全員に話せるか?」
  谷口  「はい、これでどうぞ」(マイクを渡す)
  大塚  「大塚じゃ、間もなく鉄人が到着する、到着次第各自前進しろ、ガイガーカウンターの反応を見逃すな、くり返し言っておくが生物の位置を特定するだけでいい、捕獲は鉄人に任せて無理はするな、支給したスタンガンは主に護身用として使用するように、防護服も絶対安全とは言いきれんから過信は禁物じゃ、くり返すが無理はするな、なお相手は岩や樹木に姿を変えている可能性もある、外見はあてにならん、ガイガーカウンターの反応だけが頼りだ、十分に注意してくれ、以上だ」
  (ほどなく鉄人の飛行音が聞こえてきた)
  谷口  「署長、鉄人が来ましたよ」
  大塚  「うむ、やっと来てくれたか」    (つづく)

復刻版 正太郎日誌 合体2

正太郎の乗ったヘリコプターと鉄人が本部前に着地した、
  大塚  「おう、正太郎君、待っておったぞ」
 正太郎  「お待たせしました、捜査はこれから?」
  大塚  「うむ、君と鉄人が来るのを待っておったんじゃ、それじゃ始めるとするか、(マイクを手に)大塚じゃ、全員捜索を開始せよ」
      ガイガーカウンターを所持した特殊部隊が前進を開始した、

  大塚  「正太郎君、山岸博士にも来て頂いたよ」
  山岸  「やあ正太郎君、久しぶりじゃね」
 正太郎  「ご苦労様です、博士、やっぱりあの『光る生物』でしょうか?」
  山岸  「うん、ここへ来る前に警察で遺体の解剖に立ち会ってきたんだが、あの死に方は前回の時とまったく同じだ、それに死体には微量ながら放射能の反応があった」
 正太郎  「それじゃあやっぱり・・」
  山岸  「状況証拠は揃ったと言えるね」
  大塚  「あんなもんにたびたびやって来られてはたまらんな」
  山岸  「確率的にそうあることではありませんよ、今回小惑星イリスに弾かれて隕石のコースがたまたま地球に向いてしまったようです」
 正太郎  「親父さん、殺すのではなく捕獲が目的なんですか?」
  大塚  「まあ、できるものならという解釈でいいが山岸博士もできれば今回はじっくりと研究してみたいということでな」
  山岸  「前回は高圧電流を激しく受けていてかなり細胞組織がズタズタになっていましたのでね、詳しい生態を調査することができなかったのです、欲を言えばなるべく無傷で捕らえて頂ければありがたいのですが・・・」
  大塚  「そればかりは何とも言えませんな」
  山岸  「もちろん承知しております」

捜査開始から約一時間後、一人の隊員のカウンターに弱い反応があった、
      「こちらBブロックの18号、弱い反応を確認しました」
  大塚  「Bブロックか、よし各隊はBブロックに集合し、集中的に捜索せよ」
 正太郎  「親父さん、どっちの方角です?」
  大塚  「うむ、あちらの方角じゃ」 (指差す)
 正太郎  「鉄人を向かわせますか?」
  大塚  「いや、発見するまで待て」

森の中を捜索隊が大挙して奥へ奥へと歩を進めている、
      「こっちにも反応がある」
      「こっちにもだ」
      「この辺りをうろついたようだぞ、この反応はあいつが通った跡なんだ」
      「おーい山下、そっちはどうだ?」
      「こっちには何の反応もない」
      「こっちへ来てくれ、どうもここから東へ向かってるようだ」
      「わかった、みんな!隊列を組んで東へ行くぞ!」
  生物の跡をたどりさらに奥へと進む一行、やがてひとりの隊員のカウンターが激しく反応し始めた、
      「す・・すごい反応だ、こりゃあ近いぞ」
    (目の前に一本の樹が立っている)
      「まさか・・・これってことは?」
 そう思った瞬間、何本もの樹の枝が隊員の体に巻きついた、
      「うわっ!」

 そのまま体を軽々と持ち上げられてしまう、樹がドロドロと光を帯びながら溶け出し隊員の全身を包んでしまった、
 とっさの攻撃に手に持っていたスタンガンを落としてしまった、
      「ちくしょう、離せ!離しやがれ!おーーい、ここだ、来てくれーっ!」
 全身を生物に覆われてしまったが防護服のおかげで直接皮膚をさらしていなかったため血液を吸い取られてはいないが、まるでアナコンダのような強烈な締め付けを受けている、

      「うぐぐ・・・た、助けてくれーっ!」
      「おいあそこだ!誰か襲われてるぞ!」
 他の隊員が駆けつけ持っていたスタンガンから1メートルほどのノズルを伸ばし生物に突きつけた、パチパチッと音がする、
 その電流のショックを受けたのか巻きついていた隊員から離れ2~3メートル後ずさる、たちまち四方から隊員が集まり包囲された、
      「着色弾を撃て!」

 信号弾用の銃にペイントのカートリッジを装填し生物に向かって撃ち込む、バシュッ!生物の表面で弾け黄色く染まる、
 二発、三発と着色弾を撃ち込まれ生物の全身は黄色一色となった、これで岩や樹や地面に姿を変えようと一目瞭然である、
 包囲網を突破しようとその生物はある方向へ突進したが4~5人の隊員がスタンガンを同時に突き立てると弾かれるように後退する、

      「やっぱり電流には弱いらしい、一本のスタンガンより3本以上突き立てた方が効果がありそうだ、最低3人以上で固まれ、無理にこっちからつっかけることはないんだ、逃がさなければいいんだ、おい、信号弾を撃って位置を知らせろ」

 バシューーッ・・信号弾ののろしが正太郎たちの目に留まった、
  大塚  「あそこじゃ!」
 正太郎  「親父さん、鉄人を出します!」
  大塚  「頼む」
 正太郎  「鉄人、行こうぜ」
鉄人の手が下ろされ正太郎が乗る、ロケットエンジン点火、20メートルほど上昇し現場へと向う、特殊部隊に包囲され身動きできず一ヶ所に留まっていた生物であったが突然細長く姿を変形させたかと思うとまるでムチのようにしなり猛烈な勢いで前方にいた隊員3人を横からなぎ払った、ビシュン・・バシッ!

      「うわっ」   「ぐおっ!」   「ぐはっ!」
思いもかけない攻撃にスタンガンを突き立てる暇もなく倒されてしまった三人、
      「いかん、危ないぞ、下がれ!その辺の樹や岩を盾にするんだ」

少し距離を取り手近な樹にへばりついて横からの攻撃に備える隊員たちであったが今度は一本の槍のように細く長く、そしてシュッと素早く伸びて正面から隊員のひとりに激しくブチ当たった、
      「ぐわっ!」
まるでビリヤードで突かれた玉のように吹っ飛ばされる隊員
      「ち・・ちくしょう!何てバケモンだ!」   (つづく)  

2006年09月10日

復刻版 正太郎日誌 合体3

ゴーーッ、鉄人の飛行音が聞こえてきた
      「おお!鉄人だ、鉄人が来てくれたぞ!」
    隊員たちの前に鉄人と正太郎が着地する、
 正太郎  「みなさん、あとは鉄人が引き受けます」
  隊員  「正太郎君、あれだ、着色弾で黄色く染まってる」
 正太郎  「わかりました、さあ行け鉄人!」

鉄人がバンワオーーッと雄叫びを上げ黄色く染まった生物に向って一歩一歩前進を開始する、細長く伸びたその生物はまるで鎌首をもたげた蛇のような姿勢で鉄人に対し臨戦態勢を取ったかと思うと猛烈なスポードでジャンプし鉄人の顔面にベッタリと覆いかぶさった、もちろん鉄人にダメージなどあろうはずがない、捕獲する側にとっては相手から飛び込んで来たのだからむしろ好都合である、鉄人の両手が顔に付着した生物をベリベリと引き剥がした、

 正太郎  「ようし、今だ」(リモコンの二つのボタンを同時に押す)
バリバリバリバリ・・・激しい電撃の音が辺りに響き渡る、ビクン、ビクンと生物は鉄人の手の中で激しく痙攣を起こす、苦しみのたうち回っている様子が見て取れる、30秒近く電撃を加えると生物はあまり動かなくなってしまった、

 正太郎  「だいぶ弱ったようだぞ」
  隊員  「正太郎君、殺してしまうのかい?」
 正太郎  「いえ、なるべく生きたまま捕獲して欲しいってことですから、そろそろいいでしょう」
      鉄人の放電が止まった、生物は鉄人の手の中でぐったりして動かない、
 正太郎  「このまま本部まで運びます、連絡してください」
  隊員  「本部、ただいま鉄人が生物を捕獲しました、これより搬送します、準備の方をよろしく」
  大塚  「捕獲できたか、いやご苦労だった、カプセルの用意はできておる、いつでもいいぞ」
  隊員  「わかりました、正太郎君いいそうだ」
 正太郎  「それじゃあ」 (リモコンを操作)
生物を抱えたまま鉄人が上昇、本部に用意されている強化ガラス製のカプセルへと向う、カプセルの位置は前もって鉄人の知能回路にインプットされており正太郎がその場にいなくても鉄人はカプセルの前に正確に着地し生物をその中へ投げ入れた、
  山岸  「よし、天井の蓋を閉めてロックしろ」
     (強化ガラスのカプセルがぴったりと密閉される)
  大塚  「博士、まだ生きておりますか?」
  山岸  「ええ、かなりダメージを受けておるようですが前回ロボット工場で受けたような強い電流ではありませんし、時間も短いので大丈夫だと思います」
  大塚  「危険はありませんか?」
  山岸  「このカプセルの中に入れておけば大丈夫だと思いますが」
  大塚  「万一ということがありますからな、研究所には警備の者をつけさせて頂きますよ」
  山岸  「わかりました、お願いします」
  大塚  「谷口君、捜索隊は全員無事か?」
  谷口  「5名が負傷したという連絡ですがいずれも軽傷とのことです」
  大塚  「そうか、まあ犠牲者が出なくて何よりじゃった、順次撤収させてくれ」
  谷口  「はっ」
      (正太郎が本部に戻ってくる)
 正太郎  「親父さん!」
  大塚  「おお正太郎君、ご苦労じゃったな」
 正太郎  「(カプセルに目をやり) まだ生きてるでしょう?」
  大塚  「うむ、もうもぞもぞ動き出しとるぞ」
 正太郎  「ちょっと気絶したくらいですね」
  大塚  「そんなところじゃな」
  山岸  「おかげで今回はいろいろ調べられそうですよ」
 正太郎  「今夜からでもすぐ始められるんですか?」
  山岸  「これを研究所に持ち帰るだけでも夜になってしまいますが今夜にでも着手するつもりです、フフフ私もいささか興奮しておりましてな、明日まで待てそうもない」
 正太郎  「面白そうですね、僕もお邪魔していいですか?」
  山岸  「ええ、かまいませんよ」
 正太郎  「では今夜伺います、じゃあ親父さん、僕は鉄人と一旦研究所に戻ります」
  大塚  「うむ、敷島さんによろしく言っておいてくれ」
 正太郎  「それじゃ、お先に失礼します」

正太郎の声 「敷島研究所に戻り鉄人の改造した箇所を元に戻す作業を手伝って定刻に研究所を出てから僕は山岸博士の研究所へと向った、あの生物の生態が明らかになるかと興味津々だったのだが事態は思いもよらない展開を迎えることになる」   (つづく) 

復刻版 正太郎日誌 合体4

午後8時 山岸宇宙科学研究所 正太郎の車が到着する、玄関前は4人の警察官が警備している、
 正太郎  「ご苦労様です、金田です」
  警官  「やあ正太郎君、生物を見物に来たのかい?」
 正太郎  「ええ、野次馬根性ですよ、もう分析は始まってるのかな?」
  警官  「ちょっと前からね、研究室はエレベーターで3階に上がって右の突き当たりだよ」
 正太郎  「どうもありがとう」
    軽く会釈して中へ入る、エレベーターで3階へ、研究室の入り口にも3名の警官が防護服に身を包んで警備に当たっていた、
 正太郎  「ご苦労様です、金田です」(挨拶して中へ)

研究室の中は様々な計測機器、何種類もの薬品やフラスコ、ビーカーがところ狭しと並んでいる、
その生物は強化ガラスのカプセルの中でもぞもぞと動き回っている、研究員が2名いたが山岸博士の姿は見えない、

 正太郎  「お邪魔します、金田です」
 研究員  「やあ、いらっしゃい」
 正太郎  「山岸博士は?」
 研究員  「自分の部屋に資料を取りに行かれた、もうすぐ戻られるよ」
 正太郎  「そうですか(カプセルに歩み寄り) けっこう元気よくって言うか・・よく動いてますね」
 研究員  「うん、前回と違って活きがいい(笑)」
 正太郎  「この生物について何かわかったんですか?」
 研究員  「うん、とにかく地球上の生物学の常識はまるで通用しないからね、わからないことだらけなんだが粘膜を採取して調べたら細胞組織は強いて言うとアメーバに近いものがあるね」
 正太郎  「へえ、知的生物ってことはないんでしょうか?」
 研究員  「とてもそうは見えんがねえ」
 正太郎  「前回地球にやって来たのと同じ種類なんでしょうか?」
 研究員  「正確に言うと前回のとは少し違うようだよ、表面の形状に違いがある、体液の成分にしてもそうだ、でも大きく言えば同族と言っていいと思うね」
 正太郎  「それだけ宇宙は広いってことですね」
 研究員  「そういうことだね」
     (研究室に山岸博士が戻って来た)
 正太郎  「ああ博士、お邪魔してます」
  山岸  「うん・・」
気のない返事を返しカプセルの生物をじっと見つめている、どことなく妙な印象を受ける正太郎、
 研究員  「博士、次の分析の準備はできてます、始めますか?」
  山岸  「今日は・・もうやめよう」
 研究員  「やめるって・・どうしてです?」
  山岸  「傷つけたりすることはない・・そっとしといてやろう」
 研究員  「はあ?」
 正太郎  「・・・・?」
 研究員  「しかし博士、この生物の生態を調べないことには・・」
  山岸  「急ぐことはない、もう少し様子を見てからでも遅くない」
 研究員  「本当に・・それでいいんですか?」
  山岸  「いいさ、」
 研究員  「はあ・・まあ博士がそうおっしゃるなら・・」
その時、研究室の入り口が開き一人の男が入ってくる、正太郎と山岸、その意外な人物に驚きの色を隠せない、
  人物  「久しぶりですね、金田さん」
 正太郎  「バビル!・・バビルじゃないか!どうしてお前がここに?」
 バビル  「僕のしもべを追ってきたんです」
 正太郎  「しもべだって?」    (つづく)  

2006年09月11日

復刻版 正太郎日誌 合体5

 バビル  「(視線を正太郎から山岸博士に移し) ロデム、ここで何をしているんだ?」
 正太郎  「ロデムだって?」(山岸を見る)
  山岸  「・・バビル様」
 バビル  「ロデム、いったいどうしたというんだ?」
 正太郎  「バビル、この男は山岸博士じゃないのか?」
 バビル  「本物の山岸博士は部屋で眠らされていますよ」
 正太郎  「眠らされて?」
 バビル  「ご心配なく、命に別状ありません、1時間くらいで目が覚めるはずです」
 正太郎  「するとやっぱりこいつは君のしもべのロデムなのか?」
        (山岸の体がグニャリと変形しみるみる黒ヒョウの姿になった)
 正太郎  「あああっ!」
 バビル  「二日前、突然無断で搭から姿を消したんです、僕がどんなにテレパシーで呼びかけても返答しませんでした」
 正太郎  「でも君には絶対に服従するんじゃなかったのか?」
 バビル  「ええ、こんなことは初めてなんです、誰かに命令されたわけでもないようですし・・」
 正太郎  「するとロデムは自分の意志だけで主人である君の呼びかけを無視してここへ来たわけか?」
 バビル  「そういうことです、ロデム、僕の呼びかけに応答しなかったのになぜ僕がお前の居場所をつきとめられたのかわかるかい?」
 ロデム  「いえ・・なぜここがわかったのですか?」
 バビル  「確かにお前は僕のテレパシーには答えなかった、だがテレパシーを受ける度にお前の心は大きく揺れた、その念の乱れを追ってきたんだ」
 ロデム  「そうだったのですか」
 バビル  「完全に無視されていたらわからなかったよ」
 ロデム  「・・・・・・・・」
 バビル  「(カプセルを指さし) その生物が原因なのか?」
 ロデム  「はい」
 バビル  「こいつはお前と同じ種族なのか?」
 ロデム  「まったく同じではありませんがほぼ同じと言っていいでしょう」
 バビル  「どうしてこれが地球に来たことがわかったんだ?」
 ロデム  「イリスの叫びを聞いたのです」
 バビル  「イリス?」
 ロデム  「便宜上イリスと名づけました、小惑星の名前を取ったのです、本来念で通じ合う者同士に名前など意味はないのですが私は名前でお呼びする習慣がついておりますから・・」
 バビル  「なるほど、イリスか・・このイリスがお前に呼びかけたというのか?」
 ロデム  「私がいることは知らなかったのです、(誰か助けて!)という振り絞るような叫びが突然聞こえてきたのです」
 正太郎  「すると・・こいつは知的生物なのか?」
 ロデム  「はい」
 バビル  「しかし、だからと言って・・」
 ロデム  「はい、私はバビル様の命には絶対服従するよう作られていますし、命に背くことなど考えたこともありません、ですがこのイリスの呼びかけは私の心のいちばん奥深くに眠っていた何かを目覚めさせました、そうなるともういてもたってもいられず搭を飛び出していたのです」
 バビル  「そんなことがあるとはな・・」
 正太郎  「同じ種族か・・そういえば今はこんな黒ヒョウの姿をしているが本来このロデムは・・」
 バビル  「ええ、このカプセルの生物と同じく不定形生物です」
 正太郎  「ロデムは初めて同じ種族に出くわしたんだな」
 バビル  「バビル1世の記録によればロデムは太陽系以外の星雲に生息していたそうで、それを従順なしもべとして改造したということですが、」
 正太郎  「じゃあこの生物も気の遠くなるほど遠くの宇宙からやって来たということなのかな?」
 バビル  「きっとそうでしょう」
 正太郎  「地球上にロデム一体だけだったら心を乱されることはなかったわけだ」
 バビル  「遠く離れた太陽系ですからね、バビル1世もそこまで計算してなかったんでしょう」
 正太郎  「それで・・このイリスをどうするんだ?」
 バビル  「さあ・・ロデム、お前はどうしたいんだ?」
 ロデム  「はっきりとは決めていません、とにかくイリスに逢いたい、イリスを助けたいと、そればかりを考えて夢中でここまで来たのです」
 バビル  「助けたいか・・金田さん、このイリスは生態を調べた後で最後には殺されてしまうんですか?」
 正太郎  「そうだなあ、三人が犠牲になってるからなあ・・」
 ロデム  「イリスは恐怖にかられて夢中で身を守っただけなのです」
 正太郎  「恐怖にかられてだって?」
 ロデム  「恐ろしい怪物がうようよいると言っていました」
 正太郎  「恐ろしい怪物?そりゃ何か?人間のことを言ってるのか?」
 ロデム  「そのようです」
 正太郎  「こいつに怪物呼ばわりされるとは思わなかったな」
 バビル  「まあイリスから見ればそういう風に見えるかも・・」
 正太郎  「僕の一存で決められることじゃないがこの生物は危険な生物とされているからな・・」
 バビル  「そうですね、助けると言ってもそれは難しいでしょうね」
 正太郎  「うん」
 ロデム  「バビル様、お願いがあります、しならくイリスと二人だけで話をさせて頂けませんか?」
 バビル  「話か・・まあいいだろう」
強化ガラスのカプセルに体を密着させ中のイリスに語り始めたロデム、正太郎はもちろんバビルにも彼らの会話は理解できなかった、
                       (つづく)

復刻版 正太郎日誌 合体6

 正太郎  「バビル、何を話しているのかな?」
 バビル  「残念ながらこの波長は僕にも理解できません」
 正太郎  「この二匹・・いや、二人にしか通じないんだな」
 バビル  「そうみたいです」
 正太郎  「(ふと気づき) ところで表に警官が何人かいた筈だけど・・お前、どうやって入って来たんだ?」
 バビル  「はあ・・あのう、皆さん今お休みになってます(苦笑)」
 正太郎  「お前・・やったな」
 バビル  「すみません、騒がれたくなかったんで・・」
 正太郎  「相変わらず恐ろしい奴だな」
 バビル  「フフ・・」
 研究員  「あ・・あのう」(ようやく呆然としていた研究員が口を開いた)
 正太郎  「ああ、すみません、驚かせてしまって、彼はバビルといって僕のちょっとした知り合いでしてね、突然現れたんでちょっとびっくりしちゃったんですけど・・」
 研究員  「はあ、ちょっとした知り合いねえ・・その黒ヒョウも知り合いで?」
 正太郎  「これはロデムといってバビルの部下なんです、お聞きの通りこの生物とは同族のようです」
 研究員  「度肝を抜かれましたよ、山岸博士が突然黒ヒョウになっちゃうんですからね、何にでも姿を変えられるって話は聞いてましたけど生で見たのは初めてですよ」

しばらくしてようやくロデムはイリスから視線をバビルに移す、
 ロデム  「バビル様」
 バビル  「うん?」
ロデムとバビルは無言で見つめ合っている、テレパシーで交信しているのだ、
 バビル  「・・・そういうことか」
 ロデム  「はい、」
 正太郎  「バビル、何なんだ?」
 バビル  「ええ・・」
 正太郎  「ロデムとイリスは何を話し合ったんだ?」
 バビル  「すみませんが山岸博士を起こしてこちらへ連れてきて頂けませんか?」

およそ30分後、事のいきさつを聞かされた山岸博士の驚きは言うまでもない、それでも何とか一応の事情は把握した、
 バビル  「博士、何とかおわかり頂けましたか?」
  山岸  「にわかには信じ難い話だがね」
 バビル  「無理もありません」
  山岸  「それで・・この2体が話し合った結果というのは?」
 バビル  「このロデムとイリスがひとつになると言うのです」
  山岸  「ひとつになる?」
 バビル  「つまり2体が合体して融合するということです」
          (一同驚きの表情を浮かべる)
  山岸  「そんなことができるのかね?」
 バビル  「ロデムはそう言っています、イリスもそれを望んでいると」  (つづく)

2006年09月12日

復刻版 正太郎日誌 合体7

 正太郎  「合体したらどうなるんだ?ロデムは違う生き物になってしまうのか?」
 バビル  「いえ、ロデムはロデムのままです、イリスがロデムの中に溶け込む形になるそうです」
 正太郎  「すると・・このイリス自身は消滅してしまうわけか?」
 バビル  「形の上ではそうですが合体してイリスがロデムに変化すると考えられるわけですから・・」
 正太郎  「そういうことになるのか」
  山岸  「バビル君、これは彼らにとっては自然なことなんじゃないだろうか?」
 バビル  「そうですね、男女が結ばれるみたいな・・」
  山岸  「うむ、この生物の生態のひとつなのだろうね」
 バビル  「そう思います」
 正太郎  「早い話、つまりロデムはこのイリスに恋をしたってことか?」
 ロデム  「私が恋?・・いや、そんなものとは、」
 バビル  「ロデム、このイリスのことを考えると気持ちがそわそわして落ち着かないんだろう?」
 ロデム  「はあ・・」
 バビル  「そばにいたいと思うだろう?」
 ロデム  「はい・・思います」
 バビル  「触れたいとも思うだろう?」
 ロデム  「はい・・」
 バビル  「だからそれが恋なんだよ」
 ロデム  「恋なんでしょうか?」
 バビル  「恋だよ」
 ロデム  「はあ・・」
 正太郎  「バビル、ロデムはその・・男性なのか?」
 バビル  「さあ、どうでしょう、ロデム、そうなのか?」
 ロデム  「いえ、性を意識したことはありません」
 バビル  「ふむ、ロデムがイリスを包み込むことになるわけだから、イメージとしては男性かなあ?」
 正太郎  「でもカマキリのメスはオスを食べてしまうだろ?」
 バビル  「なにもカマキリを引き合いに出さんでも・・」
 正太郎  「ああ、すまん(苦笑)」
  山岸  「話はわかった、非常に興味をそそられる話だ、だがイリスは身を守るためとはいえ三人の人命を奪ってしまった、これをどうしたもんじゃろうね?」
 バビル  「博士、犠牲になった人達は本当に気の毒だと思います、ですが猛獣が人を襲ったとしてその動物に罪を問うというのは意味のないことだと思いますが・・」
  山岸  「うむ・・確かになあ」
 バビル  「表面上はこの研究所で生態を詳しく調べた後に始末したという形にできないでしょうか?」
  山岸  「しかし合体してしまったら調査しようにも・・」
 バビル  「そうですね、では博士、ちょっとそこのパソコンをお借りしますよ」
  山岸  「ああ、どうぞ」
バビルがパソコンを操作、ほどなくプリンターから何枚ものデータがプリントアウトされて出てきた、
 バビル  「博士、これを」 (データを手渡す)
  山岸  「これは?」
 バビル  「バベルの塔のコンピュータから転送しました、ロデムの生態を詳しくまとめてあります、こちらで調べるよりももっと詳細で多彩なデーターになっています」
  山岸  「ほう、」
 正太郎  「いいのかバビル?それは極秘の情報じゃないのか?」
 バビル  「本当はそうですがまあこの際いいでしょう、それを見たからといって実用化できるものじゃないし、宇宙にはこんな不思議な生物もいるというひとつの資料になるだけでしょうから、」
  山岸  「まあ確かに私の科学者としての好奇心を満たすだけと言ってしまえばそれまでだがね」
 バビル  「その資料が十分お役に立つと思いますよ」
  山岸  「うむ、じっくり見せていただこう、ついでにひとつお願いがあるんだが・・」
 バビル  「何でしょう?」
  山岸  「この2体が合体した後の生態の変化なども後でデータを送ってくれんか?」
 バビル  「わかりました、ではそういうことでこのイリスの身柄は頂いてよろしいでしょうか?」
  山岸  「わかった・・それで今ここで合体するのかね?」
 バビル  「ええ、ご覧になりたいでしょう?」
  山岸  「ああ、もちろんだ」
 バビル  「ロデム、わかってくれたよ」
 ロデム  「ありがとうございます」   (つづく)

2006年09月13日

復刻版 正太郎日誌 合体8

 バビル  「(研究員に) すみません、カプセルを開けてください」
 研究員  「ほ・・本当に大丈夫ですか?危険はありませんか?」
 バビル  「ご心配なく、万一の時は僕がエネルギー衝撃波で眠らせますよ」
  山岸  「そんなことができるのかね?」
 正太郎  「心配いりませんよ、このバビルはそこの生物よりよっぽど恐ろしい奴ですから」
 バビル  「そういう言い方しないでくださいよ」
 正太郎  「ああ、いや(苦笑)とにかくそのくらい大丈夫ってことですよ」
 研究員  「じゃあ・・博士、開けますよ」
  山岸  「うむ、」
クレーンで強化ガラスのカプセルが吊り上げられ2体を遮るものはなくなった、

 ロデム  「ああ・・イリス」
ロデムの体が変形しイリスと同じ不定形生物の姿となった、ロデムがゆっくりとイリスの上に覆いかぶさっていく、イリスはじっとしてロデムに身を任せている、2体の体がパアッと輝き始める、研究室が神秘的な光で満たされた、

  山岸  「おお・・」
 研究員  「ああ・・」
 バビル  「こんな風に光ったのは初めて見たな」
 正太郎  「何かこう・・厳粛な雰囲気だな」
 バビル  「神聖な結婚式って感じですね」
 正太郎  「うん」
やがて2体は完全にひとつに融合し、新生ロデムがここに誕生した、

 バビル  「どうだロデム、気分は?」
 ロデム  「とても満たされた気分です、体の奥から力がみなぎって来るようです」
 バビル  「イリスは消滅してしまったのか?」
 ロデム  「いいえ、私はイリスでもあるのです、イリスの記憶や能力をすべて受け継いだのですから」
 正太郎  「しかしデカくなったなあ」
 バビル  「やはり2体がひとつになったわけですからね」
 正太郎  「動きにくくはないかい?」
 ロデム  「いいえ、多少重くはなりましたが、それを補って余りある程のパワーが備わった感じです」
 正太郎  「そうか、とにかくおめでとうと言わせてもらうよ」
 ロデム  「ありがとうございます」
 バビル  「よかったなロデム」
 ロデム  「はい」
  山岸  「じゃがこのような合体は一度きりのことなんじゃろうか?」
 バビル  「さて、どうなんだロデム?」
 ロデム  「さあ、それは私にもわかりません」
 正太郎  「もしまたお前が心を惹かれるような同族が現れたとしたら?」
 ロデム  「その時は・・そういうこともあるのかも・・ウウッ!」
         (突然床に身を伏せ、苦しみの声を上げるロデム)
 バビル  「ど・・どうしたロデム?」
 ロデム  「む・・胸の奥が急にキリキリと・・」
 正太郎  「(ハッとなり) ロデム、体の中のイリスに言うんだ、決して他の生物と合体などしないと、早く!」
 ロデム  「ほ・・ほかの同族とは合体などしない・・・イリス・・お前だけだ」
         (目を閉じてじっと苦しみをこらえているロデムであったが)
 正太郎  「どうだロデム?」
 ロデム  「お・・治まりました」
 正太郎  「やっぱりな、イリスが怒ったんだよ、もうお前は一生浮気はできないぞ」
 ロデム  「私が?・・浮気?待ってください、私がそんなことをするなんて考えられません、こうして生まれ変わった以上他の同族に心を惹かれたりするなんて考えられません」
  山岸  「じゃあ、これなんかどうかね?」 (ロッカーから一枚の写真を出して見せる)
 ロデム  「・・これは?」
  山岸  「昔地球にやって来た君の同族の写真なんだが」
          (その写真をじっと見つめるロデム)
 ロデム  「とても・・とてもきれいだ・・アッ!ウグググ・・・」 (またも床に伏せ苦しみ出す)
 正太郎  「何なんだこいつは?」
 バビル  「けっこう気の多い奴みたいですねえ (苦笑)」

              正太郎日誌  合体 (完)

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