イルミネーションときらきら輝く飾りに彩られた巨大なツリーが、深まる夕暮れの中にライトアップされた姿を浮かび上がらせていた。
道を歩く人々の口からは真っ白な息の帯が流れる、ここ、ニューヨークは厳しい寒波に包まれていた、だがショーウインドウから流れる暖かそうな黄金色の光に照らされて、人々の足取りにはどことなくうきうきした様子が感じられた。
クリスマスを数日後に控えて、街全体が活気づいているようだった。
「パパ、早く!」
手に大きな紙袋を提げた真っ赤なコート姿の少女が元気な声を上げた。
「待ってくれよ、マリア」
両手いっぱいの荷物を抱え直しながら、アレックスは数メートル先を行く娘に声をかける。
(少し買い込み過ぎたかな)
(「甘やかし過ぎです!何度言ったらわかるんですか!」)
マリアの面倒を見てもらっているグラディス夫人にまたお目玉をもらうのは確実だ、しかし仕事の関係でいつも一緒にいることが出来ない、久しぶりに会えた娘につい甘くなってしまったっていいじゃないか。
「早く!早く!」
そう言いながら立ち止まって笑顔で自分を待ってくれている娘の姿を見て、アレックスは身の内に湧き上がる幸せを感じていた。
(よく育ってくれた)
妻のスーザンが交通事故でこの世を去ったとき、マリアはまだ3歳にもなっていなかった。
それから8年、真っ直ぐに素直に、本当に良く育ってくれた・・・
高い報酬、尊敬できる上司にも恵まれ、達成感もある、今の仕事にやりがいを感じるアレックスだが、あちこち忙しくとび回らなければならないために娘と一緒に過ごす時間がなかなか持てない事が不満だった。
今も大きなプロジェクトの進行中であり、結果が出るのは半年以上先の事になる、このプロジェクトが成功すれば、(一山越える。娘とももっと一緒にいられるようになる。がんばるぞ)
***
ピィッ!ピィッ!ピィッ!
高出力レーザーの攻撃を紙一重で避けてジャンプ、天井にぶち当たる寸前でくるりと体を入れ替え、足から天井に「着地」すると同時に蹴り飛ばすように離れる。
ピィッ!ピィッ!ピィッ!
たった今、体が占めていた空間を数条のレーザーが交差した。
ピッ!ピッ!ピッ!
床に向かって矢のように落下しながらポケットから取り出した鉄球を指で弾く。
ガ!ガン!ガン!
蛇の鎌首の様な形をした可動式レーザー放射器のボディに丸い小さな穴が開き、中枢を破壊された放射器が沈黙する。が、壊れた放射器はすぐに壁に収納され、入れ替わりに現れた新たな放射器が攻撃を再開する。
このレーザー光は目に見えない、しかしバビル2世の目は不可視のレーザー光を捕らえているかのようだった。次々に放たれるレーザー光の全てを紙一重でかわし切り、さらに指で弾いた鉄球で確実に放射器を破壊してゆく。学生服のポケットには工業用のボールベアリングの球がたっぷりと入れてある、パチンコ玉より一回り小ぶりの ただの鋼鉄の球が、バビル2世の指にかかると拳銃弾以上の威力を発揮した。
ガン!ガン!ガン!
すでに数十機のレーザー放射器を破壊していた、だが攻撃は弱まるどころかより一層激しさを増してゆく、
(誤算だったな・・・)
