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2006年12月 アーカイブ

2006年12月02日

正太郎日誌 「続」 Oh!フィギア5

大塚  「(カメラを回しながら) ほれほれ敷島さん、イヤミの決めポーズじゃ」
  敷島  「もう、わかりましたよ、シエーーッ!」
 正太郎  「ダメダメ!ぜ~んぜんダメ!動きにキレがないですよ、もっとこういう風にシャープな動きで・・シエーーッと」
  敷島  「こうかね?シエーーッ」
 正太郎  「もっとグッとアゴひいて!」
  敷島  「いちいちうるさいねえ、シエーーッ!」
 正太郎  「あはは、いい感じになった」
  大塚  「じゃあ敷島さん、さっきのCMをイヤミ風にやってごらんなさいよ」
  敷島  「イヤミって・・ざんすとか言うんだよね?」
 正太郎  「そう、それでウヒョヒョヒョヒョって笑うんです」
  敷島  「じゃあ・・シエーーッ!私は敷島ざんす」
 正太郎  「私じゃなくてミーって言ってくださいよミーって」
  敷島  「シエーーッ!ミーは敷島ざんす!みんなミーの新しいフィギアを買うざんすよう、ウヒョヒョヒョヒョ」
 正太郎  「あははは、最高!」
  敷島  「・・・ミーはもう情けないざんす」
  大塚  「いやあ、おもしろい映像が撮れたな、正太郎君、今の映像見てみるかね?」
 正太郎  「あっ見せて見せて!」
  大塚  「じゃあこのファインダーを覗いてごらん・・いいかな?「再生」を押すよ」
 正太郎  「(ファインダーを覗きながら) あははは、これが僕?バカ丸出しだあ」
こうして待ち時間に楽しいひと時を過ごした三人であったが後日このふざけた映像がとんでもない悲劇を、いや喜劇を生むことになるのだ、

翌日 ドリーム玩具本社 社長室
  太田  「じゃあ、一応見せてくれ」
  監督  「はい」 ( カメラをテレビにつなぎ再生ボタンを押す )
 テレビ  『こんにちは金田正太郎です、ドリーム玩具から僕の新しいフィギアが・・・・・ 』
  太田  「うん・・正太郎君のは特に問題ないな、このまま使おう」
 テレビ  『ご機嫌いかがですか、敷島です、私の新しいフィギアを・・・・・・ 』
  太田  「そうだなあ、敷島さんの映像はもう少し明るさを抑えてみてくれ・・・あとは特にない」
  監督  「わかりました、2~3日中にBGMと字幕スーパーも仕上げておきますので」
  太田  「ああ、よろしく」
  監督  「では、そういうことで」 ( 映像を止める )
  太田  「あれっ?ちょっと待て、何だ今映ったのは?」
  監督  「えっ?」
  太田  「止める直前に変な映像が映ってたぞ・・なんか正太郎君みたいに見えたが・・」
  監督  「ああ・・これは待ち時間の間にみなさんがお遊びで撮ったやつでして」
  太田  「ちょっと見せてくれ」
  監督  「えっ?いやホントにふざけた映像なんですよ」
  太田  「いいから見せろ」
  監督  「あ・・はあ」 ( 再生ボタンを押す )
      『僕正太郎だジョ~、みんな僕のフィギアを買ってくんないと・・』
      『シエーーッ!ミーは敷島ざんす、みんなミーの新しいフィギアを・・・・』
  太田  「わはははは!こりゃあ傑作だ!」
  監督  「はあ、人間コスチュームを変えるとけっこうバカやっちゃいますね」
  太田  「うん、これだ!これだよ!・・こりゃあイケる!」
  監督  「はあ?」
  太田  「最初の映像なんておもしろくも何ともない、これならインパクトはバッチリだ!」
  監督  「こ・・この映像を使うっていうんですか?」
  太田  「CMはな、1にも2にもインパクトだ、いいか、この映像に合うコミカルなBGMつけろ、それと映像のバックにアニメーションでいろいろオカズをつけるんだ、フフフ、こりゃあウケるぞう」
  監督  「い、いいのかなあ?」
それからさらに二週間が経過した、初めてCMが放送されるというその日、敷島夫妻はテレビの前に陣取り歌謡ゴールデンショーが始まるのを待っている、やがて時報が午後8時を示すと、『みなさんこんばんわ、歌謡ゴールデンショーの時間です!今日も素晴らしい歌の数々をお送りします』

  春江  「始まったわ!このオープニングのあとのCMがそれでしょ?フフフ、どんな風になってるのかしら」
  敷島  「どんなって・・何度も言ってるだろ、ただ人形を手に持ってひと言サラッと喋るだけだって」
  春江  「そりゃ聞いてるけど、あなたのテレビ映りがどんなかなあって」
  敷島  「メイクとライトの当て具合でちょっぴりよそ行きの顔になってる程度さ」
オープニングが終わり「この番組は夢をお届けするドリーム玩具の提供でお送りいたします」という声が流れたあと・・

  CM  『僕、正太郎だジョ~、みんな僕のフィギアを買ってくんないと僕泣いちゃうジョ~』
  春江  「えっ?・・こういうCMなの?」
  敷島  「そ、そんな!・・ま、まさかあ!」( と敷島が叫んだ直後 )
  CM  『シエーーッ!ミーは敷島ざんすう、みんなミーの新しいフィギアを買うざんすよ~ウヒョヒョヒョヒョ』
  春江  「な・・なんなのコレ?」
  敷島  「あわ!・・あわわわ!」
その強烈なインパクトのCMは茶の間で大ウケしフィギア第二弾はまたも大ヒットとなったが
このCMが流れてからしばらくの間、敷島夫婦は一歩も表に出られなかったという
  
       正太郎日誌 「続」Oh!フィギア (完)    

2006年12月29日

クリスマスキャロル

イルミネーションときらきら輝く飾りに彩られた巨大なツリーが、深まる夕暮れの中にライトアップされた姿を浮かび上がらせていた。
道を歩く人々の口からは真っ白な息の帯が流れる、ここ、ニューヨークは厳しい寒波に包まれていた、だがショーウインドウから流れる暖かそうな黄金色の光に照らされて、人々の足取りにはどことなくうきうきした様子が感じられた。
クリスマスを数日後に控えて、街全体が活気づいているようだった。
 
「パパ、早く!」
手に大きな紙袋を提げた真っ赤なコート姿の少女が元気な声を上げた。
「待ってくれよ、マリア」
両手いっぱいの荷物を抱え直しながら、アレックスは数メートル先を行く娘に声をかける。
(少し買い込み過ぎたかな)
(「甘やかし過ぎです!何度言ったらわかるんですか!」)
マリアの面倒を見てもらっているグラディス夫人にまたお目玉をもらうのは確実だ、しかし仕事の関係でいつも一緒にいることが出来ない、久しぶりに会えた娘につい甘くなってしまったっていいじゃないか。
「早く!早く!」
そう言いながら立ち止まって笑顔で自分を待ってくれている娘の姿を見て、アレックスは身の内に湧き上がる幸せを感じていた。
(よく育ってくれた)
妻のスーザンが交通事故でこの世を去ったとき、マリアはまだ3歳にもなっていなかった。
それから8年、真っ直ぐに素直に、本当に良く育ってくれた・・・
高い報酬、尊敬できる上司にも恵まれ、達成感もある、今の仕事にやりがいを感じるアレックスだが、あちこち忙しくとび回らなければならないために娘と一緒に過ごす時間がなかなか持てない事が不満だった。
今も大きなプロジェクトの進行中であり、結果が出るのは半年以上先の事になる、このプロジェクトが成功すれば、(一山越える。娘とももっと一緒にいられるようになる。がんばるぞ)
 
***
 
ピィッ!ピィッ!ピィッ!
高出力レーザーの攻撃を紙一重で避けてジャンプ、天井にぶち当たる寸前でくるりと体を入れ替え、足から天井に「着地」すると同時に蹴り飛ばすように離れる。
ピィッ!ピィッ!ピィッ!
たった今、体が占めていた空間を数条のレーザーが交差した。
ピッ!ピッ!ピッ!
床に向かって矢のように落下しながらポケットから取り出した鉄球を指で弾く。
ガ!ガン!ガン!
蛇の鎌首の様な形をした可動式レーザー放射器のボディに丸い小さな穴が開き、中枢を破壊された放射器が沈黙する。が、壊れた放射器はすぐに壁に収納され、入れ替わりに現れた新たな放射器が攻撃を再開する。
このレーザー光は目に見えない、しかしバビル2世の目は不可視のレーザー光を捕らえているかのようだった。次々に放たれるレーザー光の全てを紙一重でかわし切り、さらに指で弾いた鉄球で確実に放射器を破壊してゆく。学生服のポケットには工業用のボールベアリングの球がたっぷりと入れてある、パチンコ玉より一回り小ぶりの ただの鋼鉄の球が、バビル2世の指にかかると拳銃弾以上の威力を発揮した。
ガン!ガン!ガン!
すでに数十機のレーザー放射器を破壊していた、だが攻撃は弱まるどころかより一層激しさを増してゆく、
(誤算だったな・・・)

2006年12月30日

クリスマスキャロル2

一週間ほど前、ニューヨーク市街に謎のロボットが現れて暴れ、警察と軍によって鎮圧されるという事件が起こった。はでに暴れたわりには負傷者もほとんど出なかった。
バベルの塔のコンピュータはこの事件を、
1. ロボットはヨミの組織のロボットである。
2. 日本のF市における攻防の決着により、ヨミの組織はほぼ壊滅状態にある。
3. ヨミの組織の残存勢力(極めて少数による)によって起こされた事件である。
4. その意図はバビル2世に向けてのメッセージ・挑戦である。
と分析した。
 
12月の雪のニューヨーク市。クリスマスも近く浮きたつ人々の間に、降る雪の白さとは対照的な黒い学生服の姿があった。
バビル2世の能力は、ほどなく一つの建物を特定する。
街の一角にある古ぼけた外観の目立たないビル、バビル2世はためらう事なく足を踏み入れた。
(ヨミを倒した今、自分にかなう者はいない。罠が仕掛けられていても、そんなものは打ち破ってみせる)
傲慢とも思える強烈な自負心を裏づけに真正面から乗り込んだバビル2世だったが、そこで自動機械による激烈な攻撃を受けることとなる。
  
(5秒、いや3秒でいい・・・)
精神を集中する時間が持てれば、備わった強大な超能力を発動させて、窮地を脱し反撃に転じることも可能だろう。
しかし「敵」は、その時間を一瞬たりとも与えるつもりは無さそうだった。
 
ビルの一室。
さまざまなスイッチ類の並ぶコンソールに囲まれ、専用チェアに腰を下ろした人物が、正面の大スクリーンを凝視していた。
スクリーンにはバビル2世の姿が映し出されている、降り注ぐレーザー光をかわしながら次々にレーザー放射器を破壊している、壊された放射器の数を表すスクリーン端のデジタル数字が3ケタに達していた。
コンソールに向かう人物は、制御パネルに手を伸ばし、カチリとスイッチを入れた。
ブーーン、
ビルの廊下、天井に近い壁の一部に穴が開き、
バサバサバサ、
十数羽の小鳥のようなものが飛び出し、空中で素早く向きを変えると、バビル2世のいる方向に向かって一斉に飛び去った。
 
シュッ!
「う!」
レーザー攻撃にさらされるバビル2世を何かが襲った。
かろうじてかわしたバビル2世、その学生服の脇腹が、すぱりとカミソリで切られたように裂けている。
(これは!)
自分を取り囲んで飛び回るものがあった。レーザー攻撃とは完全にシンクロが取られているらしく、小鳥のようなそれはレーザーを意に介さず自在に周囲を飛び回っている。
(ロボットの、コウモリ?!)
超音波で障害物を避けて飛びながら、設定された「目標」に体当たりを行い、内蔵された高性能爆弾で「目標」を爆砕する、飛び回る爆弾ともいえるコウモリ型ロボットである。
さらにその両翼は鋭利な刃物となっていた。
ピィィ!
「く!」
ザシュッ!
「ぐう!」
レーザー攻撃とロボットコウモリの攻撃、さすがのバビル2世も二種類の攻撃を完全にかわす事は不可能だった。
ザ!
バシュ!
致命傷は避け、ダメージは最小限に留めてはいた、だが着ている学生服はずたずたに裂け、バビル2世の全身は今や血まみれであった。
(いかん!このままでは・・・)
 
コンソールに向かい、バビル2世の姿をスクリーンで見つめる人物。その手が動き、パネルの別なスイッチをカチリと押す。
 
ガガー、
廊下の曲がり角の突き当たりの壁が大きく開いた。
その中から天井を圧するほどの巨体が姿を現す。
「バラン!」
バビル2世の宿敵ともいえる バラン・ロボットの登場であった。

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