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2006年10月 アーカイブ

2006年10月02日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~7

犬敷島が行く先も告げず姿を消してから6日が経過した、そして今日は敷島重工の本社で定例の役員会議が開かれる日である、
本社ビルの秘書課に専務取締役の井上が入ってくる・・・

  井上  「おう、関君」
   関  「ああ専務、やっとお戻りで」
井上は九州に出張中、敷島夫妻の暴挙を耳にして信じられないという面持ちで東京に戻ってきた、
井上は会社創業時からのメンバーで敷島には絶対の信頼と信服をおいているのである、
  井上  「関君・・あの報告は確かか?」
   関  「はい、残念ながら・・」
  井上  「あの社長が・・まったくの別人格になってしまったというのかね?」
   関  「俺は生まれ変わったんだ・・などということをはばかることなく仰っていました」
  井上  「やはり・・精神に異常をきたしたと思うか?」
   関  「普通に考えればそういうことになりますが・・しかし奥様まで同時にガラッと変わってしまったというのは、いくらなんでも、」
  井上  「まったくだ・・いったい何がどうなっておるんだ?」
   関  「私はオカルトっぽいことは信じない主義でしたが、いささか自信が持てなくなりました」
  井上  「まさか何か邪悪なものがあのご夫婦にとりついたとでも?」
   関  「あの二人を見ていますとどうもそんな気がして・・」
  井上  「バカな、あり得ん話だ!」
   関  「そうですが・・・」
  井上  「それで社長は今日は出社するのかね?役員会には出ると言ってたんだろ?」
   関  「はい、今朝私が直接お宅までお迎えに上がりましたところ、お出になったのは奥様だけでして社長は出先から直接会社に行くと言っておられました」
  井上  「奥様には会ったんだな?」
   関  「はい、」
  井上  「奥様の様子はどうだ?その後何かやらかしたりしてないか?」
   関  「会社の名誉を大きく傷つけるようなことはなさっておりませんが、連日豪遊されているそうでして・・」
  井上  「豪遊?・・あの控え目な春江さんがか?」
   関  「今朝、交際費で落とすようにとこれを渡されまして、」
  井上  「なんだその請求書?( 手に取って仰天 )ご・・520万だと!・・何なんだこの、ゴールデンナイトって?」
   関  「はい・・銀座のホストクラブです」
  井上  「ホ・・ホスト?」
   関  「現場に居合わせた他の客からの情報によりますと10人のホストを黒のビキニパンツ一枚の格好にさせてはべらせ、ご自分はSMの女王のようなコスチュームで朝までドンチャン騒ぎをしていたとか・・・」
  井上  「なんか・・もう目まいがしてきた、」
   関  「専務、経理に回してもよろしいでしょうか?」
  井上  「落とせるわけないだろこんなもん!」
   関  「では、どうしたら?」
  井上  「とにかくこれは俺が預かっておく、それよりまずはやはり社長だ、役員会に出てきたら社長の真意を俺がきっちり質してやる、その上で代表取締役を勤められる状態でないと判断したら、誠に残念だが緊急動議を出して社長を解任することになるだろう、君もそのつもりでいてくれ」

   関  「・・はい」
時刻は午前10時を回った、会議室には敷島を除く19名の役員たちが席についている、およそ半数の役員たちがここ数日の敷島の異常ぶりに不安げな表情でヒソヒソと語り合っているのに対してあとの半分の役員たちは不思議と冷静で、むしろどっしりとした感じで座っているように見える・・・これにはある理由があったのだ、

  井上  「もう会議を始める時間だが・・社長はまだかな?」
  重役  「もしかしたら出社して来ないかもしれ・・(会議室の電話が鳴る)もしもし?・・社長が?・・・そうかわかった、
       (受話器を置き) 受付からだ、今社長が出社された」
  井上  「そうか、」
およそ半数の重役たちに緊張が走る、残りの重役たちは相変わらず平然としたままである、井上はそんな彼らのリアクションに何やら違和感を覚えたが・・やがて廊下から敷島の陽気な歌が聞こえてきた、

 犬敷島  「♪沖のカモメに潮時問えば~わたしゃ立つ鳥~波に聞けチョイ♪」
        (会議室のドアをバーーンと開け放つと)
 犬敷島  「いよう!みんな揃っとるな、ご苦労ご苦労、」
  井上  「社長!」
思わず立ち上がって敷島の顔を見る井上、その顔つきや物腰で自分が知っている敷島隆でないことは一目瞭然であった、
 犬敷島  「さあ~てと、ちゃっちゃと済ませるとするか」
        (そう言って社長のイスにどっかと座りふんぞり返って見せる)
  井上  「社長・・その前にちょっとよろしいですか?」
 犬敷島  「おう・・井上君だったな」
  井上  「いや、だったなって( 創業以来のメンバーにそれはないだろ?)先日社長と奥様がなさったことについての処理ですが、」
 犬敷島  「処理だあ?」
  井上  「結婚式場でのことにつきましては・・まあ社長がかなり酒に酔っておられたということにして、ご両家には当社からの謝罪文とそれ相応の慰謝料を支払うということで何とか収めることができそうですが、問題は奥様が大衆の面前で黄色い羽根募金の寄付を拒んだことです、拒むにしてもあのような無礼な断わり方はないだろうと全国から抗議が殺到しております」

 犬敷島  「ふふん、」
  井上  「社長・・奥様がなさったことは社長のご意志ではございませんよね?」
 犬敷島  「いいや、春江が言ったことは俺が言ったも同然だ」
  井上  「そ・・そんな!」
 犬敷島  「貧乏人のガキに金なんぞくれてやることはない!」
  井上  「しかし、この寄付は役員会で決定したことですよ、社長お一人の一存で覆したりできるものじゃないでしょう?」
 犬敷島  「そいつは違うな、俺の意志こそが敷島重工の意志なんだよ」
  井上  「・・・本気で仰っているんですか?」
 犬敷島  「もちろんだ」
井上は悟った、こんな状態の敷島に社長を任せてはおけないということを、もう井上にためらいはなかった、
  井上  「突然ですが緊急動議を提出したい、敷島社長の即時解任を求めます、賛成の諸君は挙手願いたい!」  (つづく)

2006年10月07日

元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~8

井上とともにおよそ半数の役員たちが一斉に手を上げた、しかし残り半数の役員は不敵な笑みのまま沈黙を守っている、
挙手した役員の数は20名中8名、過半数にわずかに届かない数だった、

  井上  「ええっ!」
驚いたのは井上だけではない、挙手をした誰もがみな圧倒的な多数で敷島の解任が決まると思っていたのだ、それがまさか過半数を割るとは・・
さらに井上を驚かせたことは挙手しない役員たちの中に創業当時から苦労をともにしてきた無二の盟友とも思える気心の知れた仲間が数名いたことである、

  井上  「加藤、吉川・・柴田!お前らまでどうしたっていうんだ?」
  加藤  「井上、そう熱くなることはねえじゃねえか」
  井上  「なんだって!」
  吉川  「社長に任せとけば間違いないですって専務」
  柴田  「そうそう、長い物には巻かれろってね、ハハハ」
  井上  「お、お前ら・・」
 犬敷島  「フフ・・残念だったな井上」
  井上  「うっ・・・」
この意外な現象の種明かしをしよう、すでに犬敷島は11人の役員を自分の忠実なしもべに変身させてしまったのだ、
犬敷島はこの世界に送り込まれるのに先立ち犬犬王から特殊な能力を授けられているのだ、それは接触した相手を10分もかからずに自分の思うがまま操ることができるという「洗脳パワー」である、犬敷島はここ2~3日のうちに密かに敷島重工の役員たちと面談し次々と陥落させていったのである・・・井上は方を落として力なく座り込んだ、

 犬敷島  「さあて、くだらねえ動議が否決されたところでだ、重大な発表をするからようく聞けよ」
  (井上を含む正常な重役たちはいったい何を言い出すのかと不安げに敷島の顔を見つめている)
 犬敷島  「鉄人を北朝鮮に売却することに決めたからよ」
 正常な役員たち  「ええーーーーーっ!!!!」
 犬敷島  「よおく磨いて出荷する準備しとけ、キムイルソンの奴、いい値段出してきやがってよう、大儲けだぜ、げへへへへへ・・」

もはや犬敷島の暴走を止められる者はいなかった、猫猫宮の世界は内部から確実に崩壊している、そしてその影響は犬犬王の世界に捕らわれの身になっている彼女に徐々に現れ始めていた、どうしようもないほどの「虚無感」「虚脱感」が断続的に彼女に襲いかかっている、
気を張っているつもりでもボーッと何も考えられない無意識の状態が数秒・・十数秒・・そして5分前後としだいに長くなっている、

  猫猫  「・・・・・・・・・・・うっ・・・えっ?・・・・キャッ!」
どのくらい意識を失っていたのだろう? ふと気づくと息がかかるくらい近くに不乱拳博士の顔があった、猫猫宮の顔を物珍しげに覗きこんでいる、
 不乱拳  「フフ、気がついたかね?今のはちょっと長かったよ、15分くらいボーーッとしていた」
  猫猫  「うっ・・」
 不乱拳  「ウチの敷島が上手くやってるようだね、こっちの世界じゃこれといって取り得のない男なんだが初めて役に立ったよ」
  猫猫  「・・・・・・・・・・」
威勢のいいタンカを返してやりたいところだが虚脱感が抜けきらず思うように言葉が出てこない、それにいくら抵抗したところでこの状況を抜け出す手段はないのだ、このままどんどん虚脱状態が長くなっていって自分の心も精神世界も消滅してしまうことは最早確実となってきた、

 不乱拳  「もう縛っておく必要もあるまい、ロープをほどいてあげるよ」
不乱拳によってロープがほどかれたが立ち上がる気力も湧いてこない、もう戦う力なんて残ってない・・・・・
私はもうじき・・隆のことを何とも思わなくなってしまうのね・・・「敷島な日々」はきっと即閉鎖ね・・・
もっといろんなふうにして膨らませてみたかったなあ・・・楽しかったなあ・・毎日がとても充実してた・・隆、好きだったよ、・・大好きだったよ・・・でも、もう終わりなのね・・・さみしいなあ・・そんなのすごくさみしいなあ・・・さみしいよ、
そんなの嫌だよ・・・嫌よ・・・・いやっ!
  猫猫  「た、タカシーーーーーーーーーーーーッ!」
     (魂をふり絞るような叫び声が猫猫宮から発せられた)
 不乱拳  「ほう、まだそんな元気が残っていたのか?しかしまあ蝋燭が燃えつきる前の最後のゆらめきってやつだろうね」
  犬犬  ( 断末魔の叫びってやつじゃないの?ホホホホ・・ )
 不乱拳  「ははははは・・」
  猫猫  「タ・・カ・・シ・・」
だがこの魂の叫びは決して無駄ではなかった、無限の横山精神世界を光の何百倍もの速さで飛んでいるバ春江の耳にその声は届いたのだ、
 バ春江  「・・・この声は!」   (つづく) 

2006年10月08日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~9

バ春江は急ブレーキをかけて停止した、今確かに猫猫宮の念を感じた、ふりしぼるように「タカシ」と・・・気のせいではない、
間違いなく猫猫宮の想念であると確信したバ春江は心をより深く研ぎ澄ませて想いが伝わってきた方向を探る、

 バ春江  「・・・こっちよ!・・こっちだわ!」
そこから春江は注意深く移動を開始した、感じる・・どんどんと近づいていると感じる・・・もう少し・・・あともう少し、
そしてバ春江は何もない中空の世界の「ある地点」に立ち止まった、そこは一見見渡す限り何もない無の世界のように見えるが・・

 バ春江  「・・ここだわ!」
目には何も見えないが前に一歩踏み出せばそこに異次元空間があるということを春江は気配で悟った、手を前にそっと差し出してみると指先が次元の境界線に軽く触れた、それは決して強固な壁というものではない、精神世界においてそのような概念は意味を持たないのだ、
それはまるで卵の薄皮のような「空気の膜」であった、

春江は人差し指をペロッとなめると、その境界の空気の膜にそっと指を突き立てた、それはまるで障子紙に指で穴をあけ部屋の中を覗き込む行為と同じである、プスッと音がして空間に小さな「穴」があいた、そしてその穴からバ春江が目にしたものは・・・

 バ春江  「誰かの精神世界だわ!」
何やら怪し気な部屋に初老の男が立っている、その男が不乱拳博士であるということまでは春江にはわからない、しかしその男の発する強烈なオーラのようなものからこの男こそこの世界の中心人物だということがわかる、その初老の男のすぐそばに座ってうつろな目をしている女性、
「猫猫宮さんだ!」と春江は一目見て感じた、しかし前回会った時とはだいぶ顔が違うが・・・・

 バ春江  「・・・なんで顔が山田花子なの?」
少し戸惑ったもののすぐに察した、これは彼女を拉致した人間による無礼な仕打ちであろうことを・・・・
それにしても猫猫宮の表情がかなりうつろになっていることが気にかかる、拉致されたことによって彼女の敷島隆や横山世界への思いがかなり希薄になってしまっていることが伺えた・・さて、どうしたものか?

もちろん自分がこのまま飛び込んで行ってもとうてい勝ち目はない、一刻も早くこのことをバンワオーに知らせて猫猫宮を救出してもらわなければ!しかし春江は思った、何とか自分がこの世界の場所をつきとめたことを猫猫宮に伝えたい、
そして救出されるまでの間気持ちをしっかりと持っていてもらいたい、何とかしてあの初老の男にもこの世界の創造主にも気づかれることなく猫猫宮とコンタクトできないものかと・・・考えに考え抜いて春江はひとつの手段を思いついた、

この精神世界は想いこそがすべてである、今でこそ自分は敷島春江の姿をしているがひょっとして想いひとつで何にでも姿を変えられるのではないか?今自分が指であけたこの小さな穴でも通り抜けられるような小さな「虫」に変身することだって決して不可能ではないのでは?・・・そうだ、やってみる価値はある!春江は目を閉じ精神を集中させ自分自身に暗示をかけ始めた、

 バ春江  「私はハエ・・ハエ・・いや、ハエじゃなんか汚いわね・・じゃあそう・・ミツバチ!・・可愛いミツバチ!・・ミツバチ」
しばらくひとりでブツブツと念じ続けていた春江の体がパッとかき消えたかと思うと次の瞬間春江は見事に小さなミツバチに姿を変えていた、
 バ春江  「やったわ!想いの力ってホントに凄いのね」
精神世界の不思議さにほとほと感心させられた春江は小さな穴から犬犬王の世界に侵入したのだ!不乱拳にもこの世界の創造主にも決して気づかれないようできるだけ心を無心にして用心深く猫猫宮に近づいていく、ようやく猫猫宮の座っているイスの足にたどり着いた、

そこから不乱拳の死角になっているイスの裏側をそろそろと登り、まず猫猫宮の肩に着地した、そこで不乱拳の注意が他に向いていることを確かめた春江は一気に猫猫宮の耳元に飛び移った、

  猫猫  「・・うっ」
耳に何やら違和感を感じた猫猫宮はほんの少し体をくねらせる、猫猫宮の耳にとりついた春江は念でなく肉声で彼女に囁いた、
 バ春江  『猫さん!・・猫猫宮さん!』
  猫猫  「・・・えっ?」
けだるい虚脱感の中にいる猫猫宮はほとんど無意識でかき消えるような小さな声で返事を返す、
 バ春江  『私よ!春江よ!・・バンワオー世界の敷島春江よ!今あなたの耳元で喋ってるのよ!』
  猫猫  「・・・バンワオー世界の?・・春江?・・えっ?・・・春江さん?」
 バ春江  『そうよ、春江よ!』
  猫猫  「・・・幻聴にしては妙に生々しく聞こえるけど・・・ホントに春江さんなの?」
    (声はすれども姿は見えない・・やはり幻聴ではないのか?)
 バ春江  『あたし今想いの力で自分の姿をミツバチに変えたのよ、ほら見て』
     そう言って春江ミツバチは猫猫宮の鼻先にピタッと止まって見せた、
  猫猫  「これ・・・本当に春江さんなの?」  (つづく)

2006年10月12日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~10

 バ春江  「本当にあたしよ、ほら」 (そう言うとミツバチの上半身がパッと春江の顔になる)
  猫猫  「・・本当に春江さんだわ・・でもちょっと気色悪いわね」
 バ春江  「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
  猫猫  「でも・・どうして春江さんが?」
 バ春江  「バンワオーさんがあなたのことを心配して私と主人と手分けしてあなたを探してたのよ、あなたがさっき叫んだ念が私の耳に届いたのよ」
  猫猫  「あ・・ありがとう、助けに来てくれたのね」
 バ春江  「そうよ、あたし今から大急ぎで戻って行ってバンワオーさんに知らせてくるから、もうちょっとの辛抱よ、だから頑張って」
  猫猫  「待って、その前にあたしの世界を何とかしてくれないかしら?」
 バ春江  「猫さんの世界を?」
  猫猫  「そうなの、今たいへんなことになってるのよ、実はね・・」
コソコソと小声で話す猫猫宮たちの話し声が部屋の隅で仕事をしている不乱拳の耳に入ってしまった、不審に思った不乱拳は猫猫宮の方に近づいていく、

  猫猫  「ヤバイわ、春江さん隠れて!」
バ春江はあわてて不乱拳の死角となる猫猫宮の後頭部に回りこむ、
 不乱拳  「さっきから何をごそごそ喋ってるんだね?」
  猫猫  「あ・・あのねえ」
 不乱拳  「何だね?」
  猫猫  「あたしの世界にい、この世界にいる犬敷島と犬春江を送り込んでえ、本物の猫敷島夫婦と入れ替わって・・それであたしの世界をグチャグチャに混乱させてえ・・内部から崩壊を早めようってことで・・それで実際犬敷島夫婦がかなりムチャクチャをやってるみたいでえ・・あたしがいくら気を張っても・・自分の世界の内部崩壊と連動してて、だんだん虚脱状態が長くなってきてえ・・このままじゃいくらもしないうちに・・あたしの心が消えてなくなっちゃいそうでえ・・もう犬敷島夫妻を一刻も早くなんとかしないことにはもうどうしようもないっていう今の状態についてなんだけどね」

 不乱拳  「なんでそんなに細かく言う必要がある?」
    ( もちろんこれはバ春江に状況を説明しているのである )
  猫猫  「それ・・もうやめてもらえないかしら?」
 不乱拳  「フッ・・何を言い出すかと思ったら」
  猫猫  「・・やっぱりダメ?」
 不乱拳  「わかりきったことを聞くなんて・・頭までおかしくなったのかね?」
  猫猫  「・・そうかもね」
 不乱拳  「ははは・・いよいよ最後みたいだねえ」 (そう言って高らかに笑うと自分の仕事に戻る)
  猫猫  「・・・・・・・・・・」
 バ春江  「(猫猫宮の耳元に戻り) 驚いたわ、そんなことになってるなんて、わかったわ、とにかく何でもするからそれまで頑張って、ねっ、猫さん」
  猫猫  「・・・・・・・・・・」
 バ春江  「えっ?・・あのう猫さん?ねえ猫さんてば!」
またもや猫猫宮は長い虚脱状態に陥ってしまった、もう一刻の猶予もならない、そう思い至った春江は侵入した穴から犬犬王の世界を抜けバンワオーにこのことを告げるべく再び光の何百倍のスピードで精神世界を飛んだ、

こちらは猫猫宮の世界、東京の夜景が一望できる高級ホテルのスカイラウンジですご~く高級なディナーをすご~く下品に食べている犬敷島夫妻、
 犬敷島  「ズズズ・・ズーズルズル、う、うめえじゃねえかこのスープ」
 犬春江  「ズズズズ、ジュルジュル・・ほんと、いい味してるわ」 ( マナーもなにもあったものじゃない )
 犬敷島  「ジュルジュル・・今日はよう、2千人もリストラしてやったぜ、敷島重工は全国で大騒ぎだぜ、げへへへ」
 犬春江  「ズズズーー、あたしもさ、敷島隆のカードでこれ買っちゃった」
     ジャランとテーブルの上に宝石やネックレスを無造作に転がせる、
 犬敷島  「ほう、いくらしたんだ、これ?」
 犬春江  「全部で・・だいたい3億円くらいかな?」
 犬敷島  「へへえ、すげえじゃねえか、3億とは」
 犬春江  「さすが敷島のゴールドカードよねえ、無制限だっていうんだから、キャハハハハ」
 犬敷島  「(窓の外を見て) なあ春江、俺たちの働きがだいぶ効いてきたみてえだな」
 犬春江  「そうよね、もう空なんかずっとどんより曇ったまんまだし、街歩いててもぜんぜん活気がないもんね」
 犬敷島  「こりゃあもう2~3日で消えちまうな」
 犬春江  「フフフ、もう少し楽しみたかったわねえ」
 犬敷島  「まったくだな、げへへへへ・・」

そしてこちらは中空の世界、バ春江の知らせを受けてバンワオーとバ敷島がやって来て春江と合流した、
 バンワ  「そうか・・やっぱり犬犬王の仕業だったんだな」
 バ春江  「猫さんの世界が崩壊寸前なんです、早くなんとかしないと!」
 バンワ  「うん、そうだね、君たち二人に来てもらってよかったよ、僕は創造主という立場だから猫さんの世界には入れないんだだから君たちに頼むよ、猫敷島夫婦を救出してそのニセモノの犬敷島夫妻とやらをとっちめてやってくれ」

 バ敷島  「あのう・・僕はその、ケンカはちょっと苦手でして・・」
 バ春江  「なに言ってんのよあなた、男でしょ?根性見せなさいよ」
 バ敷島  「だ・・だってさあ」
 バ春江  「も~う、たらしない!ねえバンワオーさん、何とかしてくださらない?」
 バンワ  「そうだね、もうちょっと戦闘レベル高くしとこうか」( 指をパチンと鳴らすと )
 バ敷島  「よっしゃあ!やったるでえ(ガッツポーズ)」
 バ春江  「・・さすが創造主よねえ」
 バンワ  「では今から君たちを猫さんの世界に送り込むからね、いいかい?心を集中してあっちの世界のことを思い浮かべるんだ」
 バ春江  「はい!」
 バ敷島  「はい!」
 バンワ  「行けーーーーっ!次元を越えてえ!」
     次の瞬間バ敷島夫妻の姿がパッとかき消えた   (つづく)

2006年10月18日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~11

猫猫宮の世界、敷島邸の広~いリビングに光の粒子が渦を巻きながら降りてきてそれが一組の男女のシルエットとなり一瞬まぶしい輝きを放つとバンワオー世界の敷島夫婦がその姿を現した、

 バ敷島  「・・・ここが猫敷島さんの自宅かあ」
 バ春江  「すごいわ~、いかにも上流階級って感じよね」
 バ敷島  「うん、よく洗練させてるね、成金趣味的な雰囲気はまったく見られない」
 バ春江  「きっとこの世界のあたしってバーゲンで目を血走らせて服の取り合いとか絶対しないわよね」
 バ敷島  「そりゃそうさ、君じゃあるまいし」
 バ春江  「なにそれ?なんか引っかかる言い方するじゃない?」
 バ敷島  「あ、いや・・とにかく二人を探さないと」
 バ春江  「そうね、精神を集中して二人の居場所をつきとめましょう、あの二人は私たちの分身みたいなものだからこの世界のどこにいたって「息づかい」を感じるはずよ」
 バ敷島  「そうだな、心を研ぎ澄ませば猫敷島さんたちの念を感じ・・・あれ?」
 バ春江  「・・・あなた?」 (顔を見合わせる二人)
 バ敷島  「・・・春江」

 バ春江  「あなたも感じた?」
 バ敷島  「うん、感じた」
 バ春江  「すぐ近くよね?」
 バ敷島  「うん、すごく近い」
 バ春江  「・・てことは、この家の中?」
 バ敷島  「多分そうだ・・でも二階・・じゃあないみたいだけど」
 バ春江  「下の方から感じない?」
 バ敷島  「うん、そうだ、下だよ下!」
 バ春江  「でもここは一階だから、その下っていうと・・」
 バ敷島  「地下室だ!」
 バ春江  「行ってみましょう」
リビングから廊下に出る二人、広い敷島邸は最近までメイドを雇っていたのだが犬敷島がクビにしてしまったので現在はまったくの無人であった、
いくつかのドアを開けながら地下室へとつながる階段を見つけた、

 バ春江  「ここよ!きっとこの下よ!」
二人が階段を駆け降りると目の前に地下室の頑丈なドアがあった、敷島がドアノブに手をかけたが・・・
 バ敷島  「だめだ、鍵がかかってるよ」
 バ春江  「あなた、ちょっと私にやらせて」
 バ敷島  「どうするんだ?」
 バ春江  「こうやってあけるのよ」
ドアノブの前にしゃがみこみ頭からヘアピンを一本抜き取るとカギ穴に差し込んでガチャガチャやっている、
 バ敷島  「お前・・できるのか?」
 バ春江  「映画なんかでよくこういうシーンあるじゃない?あたしも興味本位でやってみたらねえ、
       けっこう開けられたのよ、ちょっとしたコツがあるんだけどね」
 バ敷島  「ふうん」
真剣な表情で鍵と格闘している春江、敷島はしばらくそれをじっと注目していたがかなり手間取っている様子である、
何気に敷島は周囲を見渡すと「ある物」を見つけた、

   カチャカチャ・・・カチャ・・カチャカチャ・・・・カチャ・・・
 バ春江  「も・・もう少しなんだけど・・こうして・・こうやって・・あっ!手応えがあったわ!もうこれで・・ああん失敗!でも感じが掴めてきたわ・・もう少し・・もう少しよ」
   カチャカチャ・・・カチャカチャ・・・カチャ・・・カチャカチャ・・
 バ敷島  「・・ねえ春江」
 バ春江  「なによう?」
 バ敷島  「もういいよ、そんなことしなくて」
 バ春江  「いいってことないじゃないの、あけなきゃしょうがないでしょ」 カチャカチャ・・・カチャ・・
 バ敷島  「だからそんなことしなくていいって・・」
 バ春江  「何がいいのよ?」
 バ敷島  「ほらコレ」
そう言って春江の目の前にブランとカギをぶら下げて見せる、ホルダーに『地下室』と記してある、
 バ春江  「ど・・どこにあったの?」
 バ敷島  「ほら、あそこ・・キーボックスになってたんだ、その中に入ってた」
 バ春江  「いつ見つけたの?」
 バ敷島  「う~んと・・3分くらい前かな?」
 バ春江  「なんですぐ言わないのよ!」
 バ敷島  「言ってもよかったんだけどね、けっこう君が気に入ってやってるみたいだったから・・」
 バ春江  「もう!そんなつまんないことに気い使わなくていいわよ!」
春江はひったくるようにそのカギを手に取るとカギ穴に差しこみ回す、カチッと音がして鍵があいた、ドアノブを回して手前に引く、
ギギギーーという音とともに扉が開く、見るとひんやりとした地下室の床にロープで幾重にも縛られさるぐつわをかまされて転がされている猫敷島夫妻がいた!

 バ春江  「いたわ!猫敷島夫婦よ」
二人が猫敷島夫妻の元へ歩み寄ると・・
 猫敷島  「ム・・ムグググ・・・ググ、」
 バ春江  「ムムム・・ムウウ・・」
必死にもがいて見せる二人、無理もない、当然ながら猫敷島夫妻は目の前にいる二人を犬敷島だと思っている、
バ敷島が猫敷島のさるぐつわを外すと・・・

 バ敷島  「大丈夫ですか、猫敷島さん!」
 猫敷島  「何が大丈夫ですかだ!人をこんな目に遭わせておいて!」
 バ敷島  「あ、いや・・違うんです猫敷島さん、僕らは犬敷島じゃありません、バンワオー世界の敷島なんです」
 猫敷島  「・・・猫だとか犬だとか何を言ってるんだ!」
 バ春江  「あなた、口で説明してたんじゃらちがあかないわ、念を使いましょう」
 バ敷島  「うん、そうだな」
バ春江は怯えた表情の猫春江の額に手を、そしてバ敷島は猫敷島の額にそっと手を当てる、
 猫敷島  「な、なにをするんだ!」
 バ敷島  「落ち着いてください、僕らは敵じゃありません、感じてください僕らの心を・・」
 猫敷島  「・・・うっ!」

念(テレパシー)とはまことに便利なものである、わずか数秒で猫敷島夫婦はこれまでの事情を正確に把握したのだ、
自分たちが猫猫宮という創造主に造られた存在であり以前バンワオーの世界とコラボしたことなどをすべて思い出していた、

 猫敷島  「・・そうか・・そうだったのか」  (つづく) 

2006年10月23日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~12

 バ敷島  「間に合ってよかった、これから4人で力を合わせてこの世界の崩壊を食い止めましょう」
 猫敷島  「うん、そうだね!」
 バ春江  「大丈夫春江さん?どこもケガしてない?」
 猫春江  「ええ、平気です、おかげで助かりました、本当にありがとうございました」
 バ春江  「まだ礼を言うのは早いわ、とにかく犬敷島をとっつかまえないとね」
 バ敷島  「・・それで犬敷島たちは今どこにいるんだろうな?」
 猫敷島  「夜遅くに帰ってくるんだ、毎日二人で遊び歩いているようだよ」
 バ敷島  「なぜ奴らの行動がわかるんですか?完全防音の地下室にずっと転がされていたっていうのに?」
 猫敷島  「うん、情けないがあんな敷島でも一応「同類」なんだねえ、彼らが見た光景や感じたことが何度もフラッシュのように
       頭に浮かぶんだ、それで彼らの破壊工作というものが大まかではあるがわかっていた」
 猫春江  「そうなんです、たまらない気分でしたわ、特にあの女・・犬春江っていうんですか?もう口にできないほど下品でいやらしいことを・・」
 バ春江  「そうなの?もうホントに春江一族の面汚しよね」
 バ敷島  「何だよ春江一族って?」
 バ春江  「いいじゃないの別に」
 猫敷島  「しかし自分たちがイメージによって作られた存在だとわかってやっと納得できたよ、10日以上も飲まず食わずで転がされていたら普通死んでいたって不思議じゃないのにわりと平気なんだからねえ」
 猫春江  「本当に不思議でしたわ、今だって特にお腹も空いてないし喉だってそんなに渇いてませんし・・」
 バ敷島  「つまり僕たちは全員が不死身だってことですよ」
 猫敷島  「ふむ・・不死身ねえ」
 バ敷島  「特に猫敷島さんなんかこの世界の中心ですからね、生命力の強さは桁違いでしょう」
 猫敷島  「君たちの方はどうなんだね?」
 バ春江  「ええ、本来あたし達の創造主は正太郎君をメインにしてたんですけどね、こちらの猫猫宮さんに刺激されて今じゃあもう順位が逆転しちゃってますわ、おかげであたしもそのおこぼれに預かっちゃって、おほほほほ」

 バ敷島  「でもなんかウチの場合、春江ばっかりパワフルになっちゃってね」
 猫敷島  「それは・・逆に言うと君がどんどんMになっているということじゃ?」
 バ敷島  「・・そういう表現はちょっと抵抗あるけど」
 猫敷島  「いや、こりゃ失敬」
 バ春江  「とにかくまだ8時前だし、犬敷島たちが帰ってくるまでまだだいぶ時間があるみたいだからみんなで食事でもしませんこと?」
 猫敷島  「うん・・まあ腹が減っては戦はできんと言うからね」
 猫春江  「あたしお風呂に入ってさっぱりしたいわ」
 猫敷島  「そうだよな、お互いかなり汗臭いもんな」
 バ春江  「どうぞ、ゆっくり入ってらして、あたしその間に食事の用意をしておきますわ」
 猫敷島  「そう?悪いね」
 バ春江  「いえいえ、どういたしまして、ええと・・簡単にスパゲティでいいかしら?」
 猫敷島  「ええ、別に何でも・・」
 猫春江  「材料と調味料は全部揃ってますから自由に使ってくださいね」
 バ春江  「了解しましたあ!」 (おどけて敬礼して見せる)

敷島邸の浴室 10日以上に及ぶ体の垢を洗い流しバスタブに深々と身を沈めている猫敷島夫婦
 猫春江  「ああ・・体の疲れが全部ほぐれていくみたいだわ」
 猫敷島  「君と一緒にお風呂に入るなんて何年ぶりかな?」
 猫春江  「そうね・・もうそうとう昔じゃないかしらね?」
 猫敷島  「よく流しっこしたもんだがねえ」
    (いつしかバスタブの中で猫敷島の手が春江の体を撫で回している)
 猫春江  「ああん、もう、あなたったら何考えてるのよこんな時に」
 猫敷島  「いや・・なんかいろんな意味で興奮してるもんでね」
 猫春江  「そういうエネルギーはこの後のために取っておかなきゃダメでしょ?」
 猫敷島  「まあ、そりゃわかってるんだが・・」
 猫春江  「この続きはきちんと決着をつけた後でタップリと・・ねっ?」
 猫敷島  「ああ・・うん」

キッチンでテーブルを囲みスパゲティを食べている二組の敷島夫妻、ミートソース、トマトソース、クリームソース、カルボナーラと多彩であるがすべて敷島邸のキッチンにあった高級缶詰であってバ春江の腕前とは無関係である、

 猫敷島  「いやうまい、食べなくても死なないとわかってもやっぱりちゃんと食事しないと力が出ないな」
 バ敷島  「しかし本当に美味しいですねこのソース」
 バ春江  「このソースの缶詰・・外国から取り寄せたものみたいだけど?」
 猫春江  「行きつけのレストランのオーナーシェフが是非にって勧めてくれたの、イタリアの高級ホテルで使ってるソースを缶詰にしたんですって」
 バ春江  「へえ~、いかにも高そうねえ」
 猫敷島  「ええ、ひと缶だいたい・・7千猫円くらいかしら?」
 バ春江  「・・何なの猫円って?」
和気あいあいとした食事が終わり4人はリビングに移動した、時刻は間もなく午後10時になろうとしている、
 猫敷島  「さて、あと1~2時間もすれば犬敷島たちが帰ってくるだろう、私たちはそれを待ち伏せるわけだが、なるべく心を無の状態にして彼らに対する敵意を抑えた方がいい、なぜならさっきも言ったように彼らも私たちと「同類」には違いないからね、私が彼らの行動や感情を感じたように彼らも私たちの心を感じ取れると思った方がいいだろう」
 バ敷島  「そうですね、待ち伏せを悟られてしまっては何にもならない、逃げられてしまっては僕たちだけで見つけて捕まえるのは至難の業だ」
 バ春江  「だいいちそんな時間の余裕はないわ」
 猫春江  「闘志は胸の奥にしまって無心で待ちましょう」
 猫敷島  「・・では精神を統一して無我の境地を心がけよう」
 バ春江  「無我の境地ねえ、言うのは簡単だけどけっこう難しいわね」
 バ敷島  「特に君は煩悩が多いからなあ」
 バ春江  「ふん、悪うございましたわね」
 バ敷島  「無心になるって言っても感覚だけは研ぎ澄ましておかないとダメだ、だから居眠りなんかしちゃだめだよ」
 バ春江  「うるさいわねえ、わかってるわよ」

かくして二組の敷島夫妻は己の存在を極力消して犬敷島たちの帰りを待ったのである (つづく)

2006年10月26日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~13

その日の深夜、間もなく日付が変わろうという時刻である、閑静な高級住宅街にガガーーン!という音がこだました、
酒に酔った犬敷島が運転するBMWのオープンカーがヨロヨロと走ってきて敷島邸の門柱に激突した音である、

 犬春江  「な~にやってんのよう、ヘタクソねえ」
 犬敷島  「おろろろ?・・ちょこっとへっこんじまったかあ?」
 犬春江  「ちょこっとって・・前グシャグシャじゃないのさ、あらら、煙も出てきちゃった」
 犬敷島  「まあいいか、車なんかナンボでもあるんだしよう、げへへへ」
 犬春江  「今のショックで酔いが冷めちゃったわ、キャハハハ」
        ( 隣の住人が物音に驚いて表に出てきた )
  隣人  「だ・・大丈夫ですか敷島さん?」
 犬敷島  「なんだあテメエ!見せ物じゃねえぞ!」
  隣人  「いやそんな・・私はただ大きな音がしたもので何かあったのかと・・」
 犬敷島  「何でもいいからアッチ行け、ほれシッシッ」 ( 犬でも追い払うように )
 犬春江  「シッシッ!」
        ( ぶ然とした顔をして隣の住人は自宅に戻っていく )
 犬敷島  「さあ~てと、とっとと屁こいて寝るべえか」
 犬春江  「寝るべえ寝るべえ」
 犬敷島  「♪三年目~の浮気ぐらい多めに見てよ~ってかあ♪」
 犬春江  「♪両手をつい~て謝ったってえ許してあ・げ・ないっとキャハハハ」
  二人  「♪パーヤパーヤ、パッパヤパヤ、パッパッパヤッパ~♪♪」
腕を組み少し千鳥足でご陽気に歌いながら家に入っていく犬敷島夫妻、玄関からリビングに入ってみると部屋の灯りが消えている、

 犬敷島  「あれえ?春江、お前照明消したか?」
 犬春江  「そんなめんどくさいことするわけないじゃん」
 犬敷島  「俺も消した覚えはねえんだけどなあ・・ええと灯りのスイッチは・・おう、これだ」
犬敷島が照明のスイッチを入れると天井のシャンデリア型の照明器具に明かりが灯る、明るく照らされたリビングで思わず犬敷島たちはギョッとなりその場に固まってしまった、目の前に険しい顔つきで自分たちをにらんでいる「二組」の敷島夫妻がいるではないか!

 犬敷島  「えっ?・・ええっ!」
 犬春江  「な・・なんで敷島夫婦が二組も?」
 猫敷島  「ずいぶんと派手に暴れてくれたな犬敷島!」
 猫春江  「あんた達の悪事もこれまでよ!」
 バ春江  「あたし達が来た以上はもう好き勝手はさせないわよ!」
 バ敷島  「以下同文だ!」
 犬敷島  「お・・お前らは何なんだよ?」
 バ春江  「あたし達はバンワオー世界の敷島ペアよ」
 犬敷島  「バ・・バンワオー?・・そんなもん知らねえぞ」
 バ春江  「知ってようといまいと関係ないわよ、ギタギタにしてとっ捕まえてやるから覚悟おし!」
 バ敷島  「以下同文だあ!」

犬敷島と犬春江はゆっくりとお互いの顔を見つめあうと「逃げろ!」という犬敷島の合図で二人は同時に左右に散った!
そして犬春江はやはり女性の習性なのか?キッチンへと一目散に走っていく、「お待ち!」と叫びながら後を追うバ春江と猫春江、

犬春江はキッチンに駆け込むと勝手口から外に脱出しようとドアに手をかけたがロックされていてピクリとも動かなかった、
敷島邸は厳重な防犯システムがセットされており外に出るにも決まった手順でロックを解除しなければならないのだが犬春江がそれを知る由もない、そうこうしている間にバ春江と猫春江がキッチンに飛び込んできた、犬春江は手近にあったフライパンを手に取ってふりかぶる、

 犬春江  「ち、近づくんじゃないよ、ブッ殺されたいのかい!」
言うことは物騒だがなぜかキッチンに置いてある包丁に手はつけていない、幸い犬春江には包丁などという凶器を振り回すほどの度胸はなかったのだ、

 バ春江  「あ~ら、おもしろいじゃない、やれるもんならやってごらん!」
バ春江はそう言うとすり鉢に入っていた太くて長いスリコギを手に身構える、猫春江は壁に引っ掛けてあった大きな鍋を武器として手に取りバ春江のうしろに控える格好になる、キッチンの通路は狭いため二人同時には攻撃をしかけずらい位置関係であった、

 犬春江  「でえーーい!」
 バ春江  「こんちくしょう!」
二人の春江がフライパンとスリコギを武器に激しく打ち合う、カーン、カーン、カン、カン!猫春江はその位置関係からして攻撃をしかけられずにいた、それに猫春江は精一杯闘志をかきたてているとはいえ元来戦闘的な性格ではないのだ、どうしても今一歩踏み込みをためらってしまう、その点三人の春江の中では最も「どう猛な」バ春江は犬春江の持つフライパンを弾き飛ばすほどの勢いでスリコギを打ち込む、
打ち合いが不利と見た犬春江はフライパンを捨てバ春江の懐に飛び込んで組み付いた、その勢いに押されたバ春江は犬春江ともども床にドサッと転がり激しくもみ合う、二人の春江がゴロゴロと上になったり下になったりをくり返しそれを見ていた猫春江はそのうちどっちがどっちの春江なのかわからなくなった、顔も服装も三人ともまったくの瓜二つなのである、いやこの場合瓜三つか?
そのうちどちらかの春江がどちらかの春江を馬乗りになって押さえつけ、こう言った、

 上になっている春江  「さあ捕まえたわよ、犬春江め、もう観念おし!」
 下になっている春江  「ち、違うわ猫春江さん、あたしはバ春江よ、犬春江はこいつよ!」
 上になっている春江  「ま~なんて図々しい!猫春江さん、こんな奴の言うことなんか信じちゃだめよ!」
       猫春江  「え・・ええ~と」
 下になっている春江  「本当よ猫春江さん、本当にあたしがバ春江なのよ!」
 上になっている春江  「いいかげんにおし!このウソツキ女め!」
 下になっている春江  「それはこっちのセリフよう!」

その体勢のままもみ合いを続ける二人の春江、激しい掴み合いで二人の髪は乱れに乱れブラウスもボタンが飛んでしわくちゃでスカートも大きくベロンとめくれ上がっている、それを見た猫春江はハッとなり、そしてこう叫んだ、
 猫春江  「わかったわ!犬春江はあんたよ!」 ( 上になっている春江を指さす )
 犬春江  「ええっ!・・ど、どうして?」
 猫春江  「あんたが履いてるそのド派手なパンティはあたしの洋服タンスに入ってるやつじゃないのよ!」
 犬春江  「し・・しまったあ!」
 猫春江  「もうごまかされないわ!」 ( 猫春江が襲いかかる )
 犬春江  「キャーーッ!」
二人がかりで押さえ込まれ、あえなく犬春江は御用となった  (つづく)

2006年10月30日

次元を越えて 猫猫宮救出作戦~犬犬王の逆襲~14

一方リビングでは犬敷島の捕り物劇がくり広げられていた、犬敷島は猫敷島のタックルを身をよじってかわすと階段を駆け上がっていく、
バ敷島がそれを追いかけ階段を昇り切る直前で犬敷島に組み付いた、

 犬敷島  「こ・・この野郎、離しやがれ!」
 バ敷島  「逃がすもんかあ!」
    ( 階段でもみ合う二人、そこに猫敷島も駆けつけバ敷島に加勢する )
 猫敷島  「ジタバタしたって無駄だ、もう観念しろ!」
 犬敷島  「畜生!てめえらーーっ!」
 バ敷島  「こ・・こいつ案外、」
犬敷島は知性と品性が大きく欠如している代わりに体力だけは人一倍あるようで二人がかりでも押さえつけるのはなかなかに困難であった、暴れているうちに犬敷島が階段から足を滑らせ三人が大きくバランスを崩した、
      「うわあ!」  「うわわっ!」  「うおっ!」
三人の敷島がダンゴ状態になって階下まで転がり落ちてしまった、
      「ううう、」  「いてて・・」  「あたた・・」
体のあちこちをぶつけ苦悶の表情で身を起こして見つめ合う三人であったが誰が誰だかわからなくなってしまった、

 猫敷島  「わ・・私は猫敷島だ!」
 敷島A  「私はバ敷島だ!」
 敷島B  「何を言う!バ敷島は私だ!」
 敷島A  「なにい?貴様、いいかげんなことを言うな」
 敷島B  「き、貴様こそ姑息なマネを!」
    ( 猫敷島の前で二人の敷島がつかみ合いを始めた )
 敷島A  「この~、犬敷島めえ、観念しろ!」
 敷島B  「誰が犬敷島だ!この大嘘つきめえ!」
 猫敷島  「やめろ!二人ともそのまま動くな!」
    ( 猫敷島に大声で一括されて二人の敷島はもみ合いになったまま動きを止めキョトンとした目で猫敷島を見る )
 猫敷島  「本物のバ敷島なら私の質問にちゃんと答えられるはずだ、答えてもらおうじゃないか、まずお前だ、
       鉄人の主動力と駆動システムを言ってみろ」
 敷島B  「鉄人の主動力は・・XXエンジンでその制御機能はXXXとXXXとXXXの3系統に分かれている」
 猫敷島  「ようし、次はお前だ、鉄人の補助動力のしくみを言ってみろ」
 敷島A  「そ・・そりゃああの・・電気仕掛けで・・ガチャガチャと、」
 猫敷島  「そんないいかげんな説明があるかあ!」 ( そう言って飛びかかっていく )
 犬敷島  「ち、ちくしょう!」
犬敷島は同じ敷島ではあってもその知識は科学者と呼ぶには程遠いものでシロートに多少毛の生えた程度である、それゆえに犬犬王の世界では最も低い身分であり貧乏暮らしを余儀なくされているのだ、
再び二人がかりで押さえ込まれた犬敷島であったが、とにかくもうメチャクチャに暴れまくりまたもや三人がもみ合いながら床をゴロゴロとダンゴ状態で転がった、そして何かの拍子でまた三人の体が離れた、三人とも傷ありアザありでひどい顔をしている、猫敷島がいち早く、

 猫敷島  「わ・・私は猫敷島だ!」
 犬敷島  「じゃ・・じゃあ俺はバ敷島だ!」
二人の敷島 「じゃあ俺はってことがあるかあ!」
 犬敷島  「し、しまったあ!」
ここでついに猫敷島とバ敷島の必殺技が炸裂した、猫敷島は犬敷島の腕を取り腕ひしぎ逆十字固め!バ敷島は両足をからめて足四の字固め!
 犬敷島  「ぎええええええーーーーーーーーーーっ!」
敷島邸に犬敷島の悲鳴が響きわたりついに犬敷島もここに御用となった、
床に転がって身動きできなくなった犬敷島の傍らでゼエゼエと息を弾ませている猫敷島とバ敷島、

 猫敷島  「しかし・・手間取ったねえ・・」
 バ敷島  「ええ・・本当にこいつ・・馬鹿力で・・あっ、痛ててて」( 顔をゆがめて切れた唇を押さえる )
 バ春江  「ほら、とっととお歩き!」
犬春江がバ春江と猫春江にしょっぴかれてリビングへやって来た、犬春江はロープの代わりに台所にあったサランラップでグルグル巻きにされている、

 猫敷島  「やあご苦労さん、こっちもご覧のとおりだ」
 バ春江  「あらあら、二人ともひどい顔ねえ」
 バ敷島  「ああ、なんせ往生際の悪い奴でね」
 バ春江  「こっちもそうよ、もみ合ってるうちに自分は犬春江じゃないとか言い出してさ」
 猫敷島  「さすが同レベルの二人だ、やることは一緒だな」
 猫春江  「あなた、私頑張ったわ・・でも・・でもとっても怖かった」 ( そう言ってバ敷島に抱きついた )
 バ敷島  「あのう・・猫春江さん」
 猫春江  「はい?」
 バ敷島  「僕、バ敷島ですけど・・」
 猫春江  「あら、ごめんなさい」
 猫敷島  「春江、おいで」
 猫春江  「あなた!」 ( 熱い抱擁を交わす猫敷島夫婦、それを見たバ春江は )
 バ春江  「あなた~、私もとっても怖かったわ~~」
 バ敷島  「いいよ、無理にマネしなくても」
 バ春江  「あっそう」
 犬春江  「( 倒れている犬敷島に駆け寄り )あんた~、大丈夫?」
 犬敷島  「うう~、は、春江え~」
 犬春江  「こんなにされちゃってえ、なんてヒドイ連中なの!」
 バ敷島  「何がヒドイだ!自分たちのしたことを棚に上げてよく言うな」
 猫敷島  「これが同じ敷島かと思うと情けなくなるね」
 猫春江  「それで・・この二人をどうするんですの?」
 バ春江  「あとのことはバンワオーさんがやってくれるわ、( バンワオーさん、見ててくれてました?あたし達やりましたわ!
       猫敷島さん達を無事救出することができました )」
 バンワ(( ありがとう、二人とも本当によくやってくれたね、ご苦労さん、猫敷島さん、バンワオーです、ご無沙汰でした、今回はとんだ災難となってしまいましたが一刻も早くこの世界の安定を取り戻してください ))
 猫敷島  「はい、さっそく着手いたします」
 猫春江  「この世界のことは私たちに任せて頂いて私たちの創造主である猫猫宮さんを一刻も早く救出してあげてください」
 バンワ(( はい、これで安心して犬犬王の世界に乗り込めます ))
 バ敷島  「バンワオーさん、これで僕たちはお役御免ですね?」
 バンワ(( うん、自分の世界に戻ってゆっくりと休んでくれ ))
 バ春江  「あの~バンワオーさん?」
 バンワ(( 何かな? ))
 バ春江  「あたし達・・こんなに頑張ったんだしい~何かごほうびとか頂いちゃってもいいんじゃないかな~~って」
 バンワ(( うん・・そうだねえ ))
 バ春江  「別に要求してるんじゃないんですよ、ただ、ごほうびがあってもいいかな~~って」
 バ敷島  「それ、要求以外のなにものでもないだろ?」
 バ春江  「うるさいわね」
 バンワ(( わかった、じゃあこういう設定はどう?応募してた懸賞に当たってペアでハワイ旅行ってのはどうかな? ))
 バ春江  「わーーっ!いい、それすごくいいです!ありがとうございま~す!」
 バ敷島  「どうもすみません、我がまま言いまして」
 バンワ(( いやいや、いいんだ、それくらいの報酬は当然だよ ))
 バ春江  「やったわあなた!ハワイよハワイよ!カメハメハーーーーッ!」
 バ敷島  「も・・もういいから帰ろう」   (つづく)

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