結婚式をブチ壊しにした犬敷島を乗せた黒いセンチュリーはまるで逃げ出すようにヒルトンプラザをあとにした、
関秘書 「社長・・本当にどうなさったというのですか?」
犬敷島 「なにがだ?」
関秘書 「いくらなんでもアレはひど過ぎます」
犬敷島 「ふん、思ったことを言ったまでだ」
関秘書 「・・・本当に・・社長なんですか?」
犬敷島 「(ギロリとにらみ) どういう意味だ?」
関秘書 「あ・・つまり、その」
犬敷島 「俺が敷島隆じゃなかったら誰だっていうんだ?」
関秘書 「すみません、妙なことを申しました・・でも今日の社長は私が存じ上げている社長じゃありません、何があったのですか?」
犬敷島 「俺はなあ、生まれ変わったんだよ」
関秘書 「・・生まれ変わった?」
犬敷島 「上品ぶった控え目の敷島隆とはおさらばさ、これからはおもしろおかしく生きてやるぜえ、げへへへ・・」
関秘書 「・・・・・・・・」
そのあと犬敷島は日本ロボット工業会の総会に出席すべく商工会館へと向った、敷島隆はその総会の議長という重責を担っているのだ、
犬敷島 「ガ~~・・グゴゴゴゴ~、ガガ~」
(一段高い議長席でよだれを垂らしながら大いびきをかいて眠っている犬敷島 )
A理事 「え、ええ~と、議長はどうもお疲れのようなので・・私が代わりに進行役を勤めさせて頂きます」
犬敷島 「グガガガ・・グゴゴゴ」 (犬敷島の大いびきがスピーカーから場内に響き渡る )
B理事 「ちょっと!議長席のマイクのスイッチを切ってくれ」
C理事 「(関に向って) 君、敷島さんの秘書の人だったね?」
関秘書 「あ・・はい」
C理事 「(ぶ然として) 何だったらもう連れて帰ってもらってもかまわんよ」
関秘書 「申しわけございません!」
関は会議場から犬敷島を担ぐようにして連れ出し商工会館をあとにした、
犬敷島 「ふあ~~・・ああ、よく寝た」
関秘書 「(少々ふてくされ気味に) さぞお疲れなんでございましょうね」
犬敷島 「なんせよ、ゆうべは(夜のお勤め)がハードでよ」
関秘書 「夜のおつ・・・」
犬敷島 「夜のお勤めだよ・・わかるだろうが?」
関秘書 「はあ、わかります」
犬敷島 「ゆうべはよう、春江の奴がなあ・・もう・・クククク」 (下品な笑い )
関秘書 「・・・・・・・・」
犬敷島 「ようお前、ちゃんとカミさん可愛がってやってるか?」
関秘書 「まあ・・世間並みには」
犬敷島 「なあ、お前のカミさん、どんな下着つけてんだ?」
関秘書 「そんなこと・・どうだっていいじゃないですか」
犬敷島 「たまにはド派手な下着つけさせてみろ、雰囲気がらっと変わって、そそるぜえ~、春江のタンスの引き出しによ、まだ使ってない派手なパンツがわんさかあんだよ、蝶の刺繍がしてあるキンキラキンのやつなんかかなりエロいぜえ、 どうだ?よかったら何枚かわけてやろうか?」
関秘書 「(きっぱりと) けっこうです!」
関は思った、違う!この人は絶対に敷島隆ではない、まったくの別人であると、だがさすがに関も本当に別人だということまでは考えが至らなかった、
温和で理知的な敷島が突然精神に異常をきたしてしまったと考えたのだ、それが妥当な判断だといえよう、この後もスケジュールがあるのだがこんな状態では何をやらかすかわからない、関は独断ですべての予定をキャンセルし、敷島を自宅まで送っていくことに決めた、まだ午後2時を少し過ぎたばかりである、それを犬敷島に告げると・・・
犬敷島 「なんだ?もう仕事しないでいいってか?ラッキー!」
その反応を見て自分の判断に間違いはなかったと関は改めて思った、しかし今日はこれでいいとして明日はどうすればいいのか?
もう自分の判断だけではどうしようもない、他の重役たちの指示を仰ぐしかない、そんなことを考えながら関は敷島邸の玄関に車を停めた、
関秘書 「お疲れ様でございました」
犬敷島 「 (車を降りながら) ああ、関君」
関秘書 「何でしょう?」
犬敷島 「明日から4~5日出張に出るからよ」
関秘書 「・・出張って、どちらに?」
犬敷島 「へへへへ・・そりゃあ企業秘密ってやつよ」
関秘書 「はあ? (なんで秘書の俺に企業秘密なんだ?)」
犬敷島 「来週の役員会議には必ず顔を出すからよ、会社の連中にもそう言っとけ」
関秘書 「あの・・せめて私だけには行く先を」
犬敷島 「だから秘密なんだって・・ヒ・・ミ・・ツ」
関秘書 「し・・しかし社長」
犬敷島 「♪それは秘密、秘密、秘密~~♪秘密のタカシちゃ~ん♪」
アッコちゃんの替え歌を歌いスキップを踏みながら家に入っていく犬敷島であった (つづく)
