五十嵐 「彼は任務失敗の責任を問われて降格となりました、もともと権力欲が非常に強い男でしたがこの時点から完全に出世コースから外れて閑職に追いやられていったわけで、何とか起死回生のチャンスを狙っていたようです」
大塚 「なるほど、動機はよくわかりましたが、それにしても・・」
五十嵐 「はい、あまりにも事を急ぎ過ぎました、それにもまあ事情というものがありましてね、イワノフは降格されたとはいえ海軍情報部という中枢に近いポストにいたのですが近く極東のはずれの補給基地へ転属になるという話が持ち上がりました、完全なる左遷です、そうなったらもうチャンスの目は失われてしまうでしょう」
君塚 「なるほど、そやからイチかバチかの大博打に出たっちゅうわけでんな?」
大塚 「苦し紛れに・・と言った方が正確ですかな?」
五十嵐 「そうですな」
金田 「それで首謀者たちは国外に逃亡したということですか?」
五十嵐 「はい、その事についてS国の若い技術将校が日本大使館に情報を持ち込んできたのです、その情報によるとイワノフたちはキューバに亡命をするつもりらしいのです」
大塚 「ほう」
五十嵐 「ただその手段が問題なのです、イワノフたちは恐竜ロボットに乗り込んで海中を航行しております」
金田 「恐竜ロボットですってえ?」
大塚 「しかし・・恐竜ロボットは確か・・」
五十嵐 「そうです、アメリカとの軍縮条約で恐竜ロボットは全て廃棄されたことになっていました」
島田 「それやのにこっそり持っとったというわけやね?」
五十嵐 「S国としては軍を出動させてこれを追撃したいところですが大っぴらにそれをやればその動きはアメリカに察知されてしまいます、そうなれば重大な条約違反が発覚してしまう恐れがある」
大塚 「う~ん、なるほどなあ」
金田 「でもそんな重大な情報をなぜ日本大使館に?」
五十嵐 「その技術将校は恐竜ロボットが日本近海に差しかかった時、鉄人で秘密裏に迎撃してほしいと依頼してきました」
君塚 「自分たちの尻拭いをこっちにさせようという訳でっか?えらいムシのええ話でんな?」
五十嵐 「確かにそうです、しかし近年S国とアメリカとの和平軍縮ムードがこの件によって大きく後退するかも知れない、そうなれば日本を含めた極東もまた緊張状態に置かれることになります、官邸で協議した結果、今回はS国の依頼を引き受けて外交上の貸しを作った方が得策だという結論になりました」
大塚 「外交上の貸し・・ですか」
五十嵐 「この貸しが北方領土返還交渉に有利に働くと思いますよ」
島田 「へえ、外交いうんはやっぱり複雑なもんなんやなあ」
五十嵐 「記録によれば恐竜ロボットというのはかなりの難敵です、鉄人といえども一筋縄ではいかない、ですが我々には雷人という新たな力が加わりました、この2台が力を合わせれば恐竜ロボット撃滅は十分可能だと思います」
島田 「そらあそうや、雷人が加わったら鬼に金棒やで」
金田 「それって・・雷人が金棒ってこと?」
島田 「そんなもん、どっちでもええがな」
五十嵐 「それにもうひとつ我々にとっての朗報は恐竜ロボットのシステムは完全に整備させておらず出力は70%程度だという証言もその技術将校から得ております」
大塚 「ほう、70%ですか」
五十嵐 「それでも決して侮ることのできない相手ではありますが」
君塚 「いつ頃、どこを通るという情報も得とるんですか?」
五十嵐 「はい、明日の午後、佐渡島の北方80キロの地点を通過することがわかっています、その時に鉄人と雷人で一致協力して恐竜ロボットを撃滅してもらいたいのです」
島田 「あのう・・さっき局長さんは秘密裏にって言わはりましたな?」
五十嵐 「ええ」
島田 「ということは何でっか?雷人の活躍は世間には伝わらんゆうことでっか?」
五十嵐 「はあ、事の性質上、どうしてもそういうことに・・」
島田 「せやけど、それやと・・なあ署長はん」
君塚 「せっかく雷人を世間にアピールするええチャンスやと思てたんやけどなあ」
五十嵐 「申し訳ありません、その代わり雷人の維持管理にかかる費用の一部を国が負担させて頂く方向で考えておりますので今回はどうかひとつ・・」
君塚 「う~ん・・正ちゃん、まあ今回はしゃあないか?」
島田 「せやなあ・・ほんならまあよろしおま、今回はそういうことで」
五十嵐 「ありがとうございます」 (つづく)
