会場内、敷島研究所の展示ブース、この日のために磨き上げられた鉄人が照明を浴びて輝いている、
島田幸治が敷島の元を訪れ雑談に興じている、少し離れたところで所在なげにしている正太郎、
「金田君」 (正太郎の元へやって来た島田正太郎)
金田 「やあ、」
島田 「だいぶ人が少のうなったね」
金田 「もう閉館時間が近くなったしね」
島田 「来てくれはったお客さん全部に説明してたら疲れてもうたよ」
金田 「それだけ注目されてるってことだよ」
島田 「うん、まあ嬉しいこっちゃけど何か喉が渇いてしもたわ、ジュースでも飲みにいかへんか?」
金田 「(敷島に)博士、ちょっといいですか?」
敷島 「ああ、ゆっくりしてきたまえ」
金田 「じゃあ行こう」
会場内の休憩所で飲み物を飲む二人、
島田 「金田君、君一人暮らしやて?」
金田 「寂しゅうはないんか?」
金田 「そりゃやっぱり寂しいよ、だから大塚署長や敷島博士のところにしょっちゅう入り浸ってる」
島田 「お父さんの金田博士が亡くなりはったんは知ってるけど、お母さんはどないしてん?」
金田 「うん・・それがちょっとね」
島田 「なんや複雑な事情がやったら別にええけど・・」
金田 「うん、ちょっと複雑でさ」
島田 「ほうか・・」 (その理由については前作「母、美弥子」を参照)
金田 「島田君、君、家族は?」
島田 「うん、両親と高校生の姉貴がおるよ」
金田 「雷人の操縦者になることを反対されなかった?」
島田 「まあな、金田君が何度か危ない目に遭うとるという話を聞くとうちのお母んもやっぱり心配そうやったけどな」
金田 「うん、操縦者ってのはどうしても敵から狙われるからね」
島田 「君かて恐いやろ?」
金田 「そりゃあ恐いよ、でも鉄人は父が心血を注いで作り上げた偉大な発明だからそれを受け継ぐのは子供としての勤めだと思ってる」
島田 「僕も似たようなもんや、お父ちゃんが苦労して作った雷人が何とか日の目を見るようにしてやりたいんや」
金田 「そう・・」
島田 「結局・・心配ではあるけど同じ歳の金田君があんだけ活躍してるのやさかい、あんたも気張ってみいということになってな」
金田 「そう、それで島田君はどれくらい雷人を動かしてるの?」
島田 「完成してからほとんど毎日訓練漬けや、延べで言うたらかれこれ700時間くらい動かしとる」
金田 「へえ、すごいねえ」
島田 「おもろいでえ、毎日やっててぜんぜん飽きいへんのや、ラジコンなんかとは醍醐味が違うがな、あんなごっついロボットが
自分の思うように動くんやもん、金田君かて鉄人を動かすいうんはごっつい快感やろ?」
金田 「うん、自分が鉄人と一体になったような感じで、自分が強くなって戦ってるような気になるよ」
島田 「うん、その感じ、ようわかるわ」
金田 「経験した者じゃないとわからないよね?」
島田 「ほんまになあ」
金田 「さっき大阪府警が肩入れするって聞いたけど」
島田 「うん」
金田 「予算の面倒も見てくれるの?」
島田 「それがあかんのや、国からの補助はもう鉄人が受けてるさかい雷人までは面倒見られんちゅうことや、年間に一億近く維持にかかるよってなあ、それを全部民間で負担せんといかんのや」
金田 「そりゃあキツイねえ」
島田 「そやから関西のいろんなメーカーに協賛のお願いをしてるのや、そや、ええもん見せたるわ」 (ポケットからキャラメルを取り出す)
金田 「それは?」
島田 「雷人キャラメルや、ほれ箱に雷人の絵が印刷されてるやろ?まだ試作品なんやけどな、大阪の江崎グリコいうお菓子のメーカーが雷人のスポンサーについてくれることになったんや、他に雷人チョコも発売される予定や」
金田 「へえ、お菓子のメーカーまで」
島田 「何もかんも自前でやらなあかんさかいな、ホンマ苦労するでえ、それに君塚署長はんが僕に射撃の訓練もせえ言うて」
金田 「どうして?」
島田 「そらあ、金田君が射撃の名手やから僕にもあれくらい上手くならんとあかんて言うんや」
金田 「名手ってことはないけど・・」
島田 「名手やがな、相手の持ってる銃だけ弾き飛ばすなんて芸当僕にはできへん、僕やったら手首ごと吹き飛ばしてまうわ」
金田 「はは・・」
島田 「ちょっとは練習してるけど、こればっかりは向き不向きがあるよってな」
金田 「まあね」
島田 「まあ、こないして苦労しながら何とか今日デビューを飾ったわけやね、今後も関西だけやのうて広く西日本にも雷人をアピールして一社でも多くスポンサーを募らんとあかんけどな」
金田 「う~ん、大変だなあ、僕らは幸いそういう苦労だけはしないで済んでるもんなあ・・」
島田 「なんもそこまでせんかてええように思うけど関西人いうのは東京に対して根強い対抗心を持ってるさかいねえ、金田君にしてみたら突然ライバル顔されたらそら、うっとおしいやろうけどまあ堪忍したって、そんでも僕らが何もいがみ合うことはあらへん、仲良うしよな?」
金田 「うん、そうだね」
島田 「今度、君ん家に遊びに行ってもええか?」
金田 「いいよ、おいでよ」
島田 「どっさりお土産持ってくさかいな」
金田 「気にしないでいいって」
正太郎の声 「浪速の正太郎こと島田正太郎君は話してみると気さくで朗らかな少年だった、何よりも父親が苦労して作り上げた雷人を何とか世に認めさせようと願う彼の親思いの姿勢は好感が持てた、鉄人といい形で競い合っていければと思った矢先、大事件が発生したのだ」 (つづく)
