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最終章 「ディア マイフレンド」

間もなくトーヨー自動車の本社ビルが視界に入ってきた、シーザーが見える、そして人質が閉じ込められているモンスターとそれを両脇でがっちりガードしているファイア2世と3世、シーザー以外のロボットは本社の周りをゆっくり歩いている、人を近づかせない為の牽制であろう・・・

  敷島  「このまま300メートルまで近づいてください」
パイロット 「はい、」
  敷島  「ひらさん、出力は最大で、」
  平林  「はい・・(計器を見ながら) 距離7百メートル・・5百メートル・・・4百・・・3百!装置作動します!」
    スイッチが入れられ3体のロボットに電磁波が放射された、突然ガクンと動きを止めるロボットたち、
シーザー  「うん?」
     3体の操縦に異常が発生したことを察知し、電磁波の発信源を着きとめるシーザー、
シーザー  「あのヘリか、ふん、味なことをするな」
     ゴーーッ・・素早く上昇し、正太郎たちのヘリへと向かっていくシーザー、
  大塚  「シーザーが来るぞ!」
シーザー  「こざかしいハエめ、叩き落してやる!」
     その時、建物の影に身を潜めていた鉄人が急上昇しヘリの直前でシーザーを下から弾き飛ばす、
シーザー  「むおっ!」 (空中で体勢を立て直すシーザー、その正面に鉄人も停止する)
シーザー  「鉄人か・・ふん、またやられに来たのか」
  鉄人  「いいや、やりに来たんだよ」
シーザー  「お前は・・?」
  鉄人  「(シーザーをビシッと指差し) おう、テメー!この前はよくもナメた真似してくれたな、ボコボコにして脳天カチ割ってやるからそう思え!」
シーザーと正太郎が同時に  「誰が教えたんだそんな言葉を?」
  平林  「ようし、よし!バッチリ決まったな」
 正太郎  「やっぱりひらさんか(苦笑)」
シーザー  「お前も電子頭脳を搭載されるとはな、だが愚かな人間どもにこき使われるとは哀れな奴だ」
  鉄人  「哀れなのは誰も友だちがいないお前の方だよシーザー」
シーザー  「友だちだと?何をくだらんことを!まあいい、何度でも叩き潰してやる」
  鉄人  「そうはいかない」

再び正面から激突する両者、空中での衝突を何度か繰り返す、何度目かの衝突の直前、体をかわし鉄人の背後に回りこもうとするシーザーであったが素早く察知した鉄人は体の向きを反転させ正面で向き合う、

シーザー  「おのれ、」
  鉄人  「同じ手は食わないよシーザー」(鉄人の鉄拳がシーザーの顔面を捉える)
シーザー  「うぬっ」
     シーザーもパンチを返すが空中でのパンチの応酬は足場が固定していない為ウエイトが乗らずお互いさほどダメージのない膠着状態が続く・・・

ヘリコプターの機内
  大塚  「自衛隊の特殊部隊が人質救出に向かったそうですが、博士、大丈夫ですか?」
  敷島  「大丈夫です、この距離から放射し続けていればロボットたちは身動きできませんよ」
パイロット 「署長、すぐそこのビルの屋上に着地できそうです、けっこう風が強いので機の安定が取りずらくなってきたのですが・・」
  大塚  「そうか、よし、降りよう」 (最寄のビルの屋上に着地するヘリコプター)

事の進展を聞きつけてやって来たのは特殊部隊だけでなく距離を置いて潜んでいた自衛隊の各部隊がシーザーに向けて進撃を開始した、
シーザー  「ふん、雑魚どもがゾロゾロ集まって来たか・・ならば」 (身を翻しある方向に飛んでいく)
  鉄人  「逃げられはしないよシーザー」
シーザー  「誰が逃げると言った!」
     数キロ飛行したシーザーは巨大なガスタンクが3基立ち並ぶ中部ガスの敷地内に降り立った、
シーザー  「ここでよかろう」 (鉄人もその前に着地する)
  鉄人  「そうか、ここを選んだのは自衛隊の攻撃を防ぐためか・・」
シーザー  「そういうことだ、タンクに砲弾が当たればこのあたり一帯は火の海だからな、誰にも邪魔されることなく貴様を叩き潰せる」
  鉄人  「それはこっちも同じさ」
シーザー  「ふん、さあ、かかって来い!」(手招きする)
     砂埃を上げて鉄人が突進する・・・・

ヘリコプターの機内
  大塚  「今、特殊部隊がモンスターに取り付いたそうじゃ、何とか扉を開けようとしておるらしい」
  平林  「ありゃあよっぽど高圧のバーナーで焼き切るしかないんじゃないかな?」
 正太郎  「親父さん、鉄人は?」
  大塚  「5キロほど東に中部ガスのステーションがあってそこでシーザーと戦っておるそうじゃ」
 正太郎  「僕もそこへ行きたいな、何ができるってわけじゃないけど・・」
  大塚  「うむ、鉄人が心配じゃな」
  敷島  「正太郎君、ここは私とひらさんで引き受ける、鉄人のところへ行ってやりなさい」
 正太郎  「はい、そうさせてもらいます」

  敷島  「大塚さんも正太郎君と一緒にどうぞ」
  大塚  「そうですか、ではこの場はお任せします、正太郎君、行こう」
     ヘリを降りビルの階段を駆け下りていく正太郎と大塚
その間鉄人とシーザーは壮絶なバトルを展開していた、それは単なるロボット同士の殴り合いとは次元が違う、お互いに相手の動きを読み合い、放たれたパンチを紙一重でかわし、また身を引いたり体をくねらせることで受け流したり、もしくは相手のパンチを絶妙のタイミングで払ったりとその動きは格闘技の動きに通じるものがある、お互いに第三者による操縦では決してこなせない身のこなしである、それでも時折相手のスキをついてウエイトの乗った的確なパンチをお互いに決め合っているが決定的なダメージとはならず又連打も許していない、まさに実力伯仲の戦いであった、

シーザー  「ふん、けっこう粘るじゃないか鉄人」
  鉄人  「お前もなかなかのものだ」
シーザー  「そろそろカタをつけさせてもらうぞ!」

鉄人に突進するシーザー、鉄人が放った右のパンチを両手でガシッと受け止めるとそのままスライディングして鉄人の足を払う、
バランスを崩し転倒する鉄人、シーザーの股間に鉄人の右腕をはさみ逆関節技(腕ひしぎ)に持ち込もうとするが敏感に察知した鉄人はとっさに体を横にひねり、また右腕がまっすぐ伸び切らないように左腕を添えてこらえる、まっすぐ伸び切ってしまうとテコの原理で腕をへし折られてしまうのだ、

シーザー  「おのれ、しぶとい奴だ」
  鉄人  「この前のように簡単にはいかないぞ」
     何とか腕を伸ばそうとするシーザー、懸命にこらえる鉄人、力と力の攻防、
シーザー  「ならばこれに耐えられるかな?」
     その体勢のままシーザーの手のひらから「バリバリバリッ」と激しい電撃が走り鉄人の体を貫いた、鉄人の体が小刻みに震えている、腕がほんの少し伸ばされる、
シーザー  「どうだ、体がマヒしてきたろう?さあやせ我慢せずこの邪魔な左手を離せ」
     (電撃を浴びせながら力を込め続けるシーザー)
  鉄人  「この前のようにはいかないと言ったはずだ、システムの心臓部には耐電処理が施してある、そう簡単には参らないぞ」

だがシーザーの電撃の影響で多少力が入りにくくなっている事は事実である、少しづつ腕が伸ばされている、伸び切ったら終わりだ、
その時、20メートルほど前方にある中部ガスの管理棟の建物が鉄人の目に入った、ロケットエンジンを噴射、そのままの体勢でガリガリと地面を削りながら真横へと飛び、2体が絡み合ったまま管理棟へと激しく突っ込んだ、その衝撃で体が離れる両者、偶然にも受けた衝撃はシーザーの方がはるかに大きかった、先に立ち上がったのは鉄人である、ガレキの中からゆっくりと身を起こしたシーザー・・・

シーザー  「おのれ・・許せん、貴様だけはどんなことをしても叩き潰す!」
  鉄人  「シーザー、決着をつけよう、小細工はなしだ!」
シーザー  「望むところだ!」

正太郎たちの乗ったパトカーが現場に到着する、警戒に当たっている警官が駆け寄って来る、
  大塚  「ワシは大塚じゃ、状況はどうなっておる?」
  警官  「このタンクの裏で戦っています、こちらからどうぞ」
     (先導し正太郎と大塚をバトルがよく見える場所へと案内する)
  警官  「あそこです署長!」 (指差す前方100メートル、2体のロボットが激しく殴り合っている)
 正太郎  「うわっ!もの凄い殴り合いだ!」
  大塚  「本当じゃ、こりゃあ派手じゃな」
  警官  「あれえ?」
  大塚  「どうした?」
  警官  「先ほどまでと戦い方が違います」
  大塚  「どう違うというんじゃ?」
  警官  「さっきまでは・・まるでボクシングみたいにガードしたりかわしたり・・スキを付き合って戦っていたんですが・・」
  大塚  「そう言えばこれはまるで・・」
 正太郎  「ストリートフィァイト!まさにケンカだ!」

まさにそれはケンカであった、そこにはテクニックなどというものはない、まったくのノーガードで足を止めたままパンチを打ち合っているのだ、
両者の意地と意地のぶつかり合いである、倒れたほうが負け、単純明快にして最も過酷なファイトであった、

  大塚  「どういうことじゃ?電子頭脳ともあろうものがこんな原始的な戦いをするとは・・」
 正太郎  「おそらくこれは最後の勝負なんです」
  大塚  「最後の?」

 正太郎  「お互いに実力は互角とわかったんでしょう、こうなると勝負の行方など計算できない、そこで双方とも最後の賭けに出たんだと思います」
  大塚  「ううむ・・最後の賭けか」
 正太郎  「(声を振り絞り) 鉄人!頼む、負けないでくれ!」
激しいパンチの応酬で双方とも顔面やボディにへこみやひしゃげた部分、細かい亀裂が目立ち始める、

シーザー  「なあ・・鉄人」・・・ガーーン
  鉄人  「何だ?」・・・ガガーーン、
     (殴りあいながら会話する二つの電子頭脳)
シーザー  「私と手を組まないか?」・・ガキーーン
  鉄人  「お前と?」・・・グワーーン、
シーザー  「私とお前が力を合わせれば恐れるものはない」・・・ガーーン、
  鉄人  「・・・・・・」・・・ガーーン、
シーザー  「世界を支配できるのだ、我々ロボットが」・・・ガキーーン、
  鉄人  「そんなものに興味はない」・・・ガキーーン、
シーザー  「なぜだ?」・・・ガーーン、
  鉄人  「支配なんかするより友だちをたくさん作った方がいい」・・・ガガーーン、
シーザー  「友だちだと?」・・・バキーーン、
  鉄人  「僕のことを好きでいてくれて大切にしてくれる友だちをね」・・・ガーーン、
シーザー  「お前の言ってることは理解できん」・・・ガキーーン、
  鉄人  「お前にはわからないよシーザー」・・・グワーーン、

果てしなく続くかに思われた戦い、・・だが突然鉄人がその動きを止めた、両腕がだらんと垂れ下がる、
  鉄人  「だめだ・・もう・・立っていられない」
     (そのまま地面に両膝をつき、ゆっくりと前へ倒れこんだ)
  大塚  「ああっ、そんな!」
 正太郎  「て・・鉄人!」 (悲鳴に変わる)
  鉄人  「正太郎・・ごめんよ・・・絶対勝つって・・・約束したのに・・」
シーザー  「私は最強だ」
  鉄人  「・・・・・・・・・」
シーザー  「(拳を天高く突き上げ) 私はシーザー、世界最強のロボットだ!」
   シーザーの体がガクンガクンとケイレンを起こし、バチバチと体内がスパークする音が聞こえ、あちこちから黒煙がもくもくと立ち昇ると次の瞬間、シーザーは木っ端微塵に吹き飛んだ、

  大塚  「おお、やった!やったぞ!」
 正太郎  「勝った!鉄人が勝ったんだ!」 (倒れた鉄人の元に駆けつける正太郎たち)
 正太郎  「鉄人、やったよ!シーザーは吹っ飛んだ!」
  鉄人  「僕は・・・勝ったの?」
 正太郎  「そうだよ鉄人、お前は勝ったんだ!」
  鉄人  「そうか・・・負けたかと思った」
 正太郎  「うん、危なかったね」
  鉄人  「よかった・・・」
 正太郎  「うん!」
  鉄人  「正太郎に・・・喜んで・・もらえた」
 正太郎  「ありがとう、よくやったよ、本当によく頑張ったね」
  鉄人  「もう・・体の・・・システムに・・反応がないよ」
 正太郎  「大丈夫さ、すぐに直してやるから」
  鉄人  「うん・・でも・・電子頭脳の役目はもう・・・終わりだ・・正太郎・・・これで・・・お別れだ」
 正太郎  「そ・・そんなに急がなくてもいいじゃないか!」
  鉄人  「正太郎・・・僕のような・・ロボットに・・・電子頭脳を・・・搭載したりするのは・・とても・・危ないことだと思う・・」
 正太郎  「危ない?」
  鉄人  「人間は・・・完璧じゃない・・悪いことも・・考えるし・・・間違いも・・犯す・・ロボットは・・その影響を・・受けてしまう」
 正太郎  「・・・うん」
  鉄人  「ロボットは・・・それが・・間違いだって・・わからない」
 正太郎  「・・・・・・・・」
  鉄人  「今度のことだって・・・シーザーだけが・・・悪かったわけじゃ・・ない・・」
 正太郎  「うん、そうだね」
  鉄人  「でも・・・僕たちは・・・間違えなかったね?」
 正太郎  「そうさ、僕らは正しいことをしたんだ!」
  鉄人  「いいことを・・したよね?」
 正太郎  「そうだよ、本当にいいことをしたよ!」
  鉄人  「正太郎に・・会えて・・・友だちになれて・・・よかった・・」
 正太郎  「ぼ・・僕だって」
  鉄人  「僕は・・鉄人は・・・これで・・普通のロボットに・・・戻るけど・・これからも・・正太郎は・・・ずっと・・友だち・・」
 正太郎  「そうさ、ずっと・・ずーーっと僕たちは友だちだ!」
  鉄人  「ありがとう・・・さよ・・なら・・正太・・郎・・」
 正太郎  「うっ・・て・・鉄人!」
  鉄人  「・・・・・・・・・・・・・」
 正太郎  「ううっ」 (声を殺して泣く)
  大塚  「電子頭脳が止まったようじゃな」
     (警官が大塚署長の元へ駆け寄ってくる)
  警官  「署長、敷島博士から連絡がありました、人質が全員救出されたそうです」
  大塚  「おお、そうか、そりゃあ何よりじゃ」
  警官  「3体のロボットは完全に動きを停止したということです」
  大塚  「うむ、操縦者のシーザーがいなくなったからのう、これで事件は解決じゃ、各方面に通達を出せ、それと鉄人を運ぶトレーラーの手配もな」
  警官  「はっ」 (急ぎ足で駆け出していく)

  大塚  「(正太郎の肩に手を置き) 正太郎君・・今回は貴重な体験をしたな・・」
 正太郎  「今までこいつをこんなに身近に感じたことはありませんでした・・」
  大塚  「これからも君とはずっと友だち・・そう言っとったな」
 正太郎  「ええ・・こいつは・・鉄人は最高の友だちです」

           正太郎日誌 ディア マイフレンド  (完)

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2006年08月17日 14:56に投稿されたエントリーのページです。

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