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第四章 「新たなる誕生」

サンフランシスコ ベラネードロボット産業、本社工場、作業台の上で半身を起こしている鉄人の背中に新しいロケットエンジンが取り付けられ固定作業が行われている、もぎ取られた両腕の取り付けは完了し、現在は各システムの最終調整が同時進行で進められている、

   平林  「さすが世界のベラネード産業だ、ウチの研究所じゃこれだけいろいろ同時にできないもんな」
   敷島  「ひらさん、ロケットの固定の方は?」
   平林  「昼までには終わらせますよ、エンジンテストは昨日ばっちりやっときました、やっぱり新品は噴きがいいですね、どのみちそろそろ取替えなきゃならない時期でしたからね、無償でもらえるなんて設けものでした、」
   敷島  「ベラネード産業には気の毒で素直に喜ぶには気が引けるねえ」
   平林  「いいんですよ、こっちは被害者なんだから、正太郎君、倉庫に新しい基盤とかプラグがいっぱいあるからさ、この際古くなってるのと全部取り換えようぜ」
  正太郎  「ひらさん、少しは遠慮しようよ」
      (三人の元へ副社長のダグラスがやって来る)
 ダグラス  「今、社長がお見えになりました、皆さんとお話したいと社長室でお待ちです」
社長室のソファに身を深々と沈めているベラネード、人間一日でこうも変わるものかと思うほどやつれていた、
ベラネード  「ベラネードです、この度は大変ご迷惑をおかけしました」
   敷島  「大変でしたね」
ベラネード  「今回の事件を受け入れるのに昨夜一晩かかりました・・」
   敷島  「お察しします」
ベラネード  「なぜこんなことになってしまったのか・・その原因についてですが・・」
   敷島  「その点について技術部のマードックさんから恐ろしい推論を聞きました」
ベラネード  「私も聞きました、おそらくジムが言ったとおりでしょう」
   敷島  「では開発者のパーカーさんが亡くなったのはやはり事故ではないと?」
ベラネード  「私もあれは事故にしては不自然だと思っていたのです」
   敷島  「そうでしたか」
ベラネード  「パーカーには本当に気の毒なことをしてしまいました」
   敷島  「ジムさんの推測が正しかったとしてそもそも何故シーザーが人間に対して反逆新を持つようになったのでしょう?」
ベラネード  「それは・・私の責任です」
   敷島  「・・と言われますと?」
ベラネード  「私はシーザーに私の野望をたっぷりと語って聞かせました、自分で考え行動できる電子頭脳を搭載したベラネードのロボットが世界を席巻する、世界のロボット産業を支配すると・・・支配、席巻、制覇、これと同意語の言葉をいくつ聞かせたことか・・もちろん私が言いたかったのはビジネスというルールのある世界での話だが、おそらくシーザーはもっとシンプルな意味で考えたのでしょう」
   敷島  「支配、席巻、制覇・・・」
  正太郎  「博士、シーザーが自分のことを人間よりはるかに優れ、強い存在だと自覚した時、それらの元来の意味と照らし合わせたとしたら自分が人間に従っていることに矛盾を感じていたということも考えられますね」
   敷島  「うん、安全装置が外れた状態で考えた時、その矛盾ははっきりと人間に対する敵対心を形作っていったんだろう」
ベラネード  「シーザーが自分から積極的に装備の改造を申し出たのは一時的に電子頭脳の安全装置を止めるのが真の目的だったとは・・・まんまと一杯食わされました」
   平林  「今後、電子頭脳の開発はどうなるんです?」
ベラネード  「安全性の確保が不十分だとして当局より無期限の停止を言い渡されました」
   敷島  「そうですか・・」
ベラネード  「近く開かれる株主総会で退任を迫られるのは必至だ、私はもうおしまいですよ」
   平林  「あなたの進退のことなんかよりシーザーをどうするかってことの方が先決でしょう?」
  正太郎  「ひらさん・・」
   平林  「だってそうだろう?」
ベラネード  「確かにそうだ、もちろん事件解決のためにわが社は協力を惜しみません、まず手始めに鉄人を修理させて頂いた」
   敷島  「シーザーと他のロボットたちの行方は?」
ベラネード  「軍が必死になって捜索していますが何の手がかりもないそうです」
   平林  「シーザーだけでも難敵なのにファイア2世、3世、モンスターまでいるんじゃなあ・・」
ベラネード  「シーザーは中央コンピュータに侵入して3体のロボットたちの操縦データと電波のサイクルを盗み出したようです、私の所有するロボットたちは定期的にメンテナンスをしていました、点検時にはエネルギーを注入し、システムのチェックと試運転をしています、その点検を4日前にしたばかりです、シーザーが反逆の日を博覧会当日に選んだのはそういう計算もあったのでしょう・・・」
  正太郎  「すべて計算づくだったのか」

その日の午後、鉄人の修理は完了し、工場の上空をテスト飛行させていた・・
   平林  「どうだい、正太郎君?」
  正太郎  「ええ、やっぱり新しいエンジンはいいですね、加速が違いますよ」
   平林  「いろいろ部品を取り換えて今の鉄人は完璧だ・・でもやっぱり鉄人はあのシーザーには勝てないのかなあ?」
  正太郎  「悔しいけどあのシーザーの動きにはついていけそうにない・・」
   平林  「思い出して見ればさあ、ロビーって奴は賢かったけど本人は弱いロボットだったし引き連れてるロボットもたいしたことはなかった、けど今度は賢い上にべらぼうに強い、手下のロボットだってとんでもなく強いロボットだ、こりゃ荷が重過ぎるよな」

  正太郎  「まさに最強の敵だな・・」
     (敷島博士とジムマードックが二人の元へやって来る)
   敷島  「正太郎君、ひらさん、これから鉄人の大改造に着手することに決めたよ」
  正太郎  「大改造?」
   平林  「まだ何かすることがあるんですか?」
   敷島  「鉄人にもシーザーのような電子頭脳を搭載するんだ」
  正太郎  「鉄人に電子頭脳を?」
   平林  「鉄人を考えるロボットにするっていうんですか?」
   敷島  「シーザーに対抗するためにはそれしかないんだよ」
   ジム  「我々が全面的にバックアップさせてもらいます」
   敷島  「シーザーの失敗をくり返さないよう安全装置には万全を期すつもりだ、それから正太郎君」
  正太郎  「はい、」
   敷島  「君が鉄人を教育してやってくれないか?」
  正太郎  「教育?・・僕がですか?でも教育ってどうすりゃいいんです?」
   敷島  「つまり・・鉄人が我々に積極的に協力するように指導をしてほしいんだ」
  正太郎  「う~ん・・操縦なんかとは次元が違いますねえ」
   敷島  「まあ、そうだねえ」
  正太郎  「僕にできるかなあ?」
   平林  「正太郎君、難しいようで案外簡単なことなんじゃないかな?」
  正太郎  「そうかなあ?」
   平林  「君が鉄人と友だちになればいいんだよ」
  正太郎  「鉄人と友だち・・ですか?」
   平林  「鉄人のことが好きなんだろう?」
  正太郎  「そりゃそうだけど・・」
   平林  「じゃあ問題ないさ」 
正太郎の声 「その日から新しい電子頭脳の組み立てと鉄人の駆動システムの変更が同時並行で始まった、電子頭脳の組み立てに二日を要しそこにさまざまな情報を覚えこませなければならない、しかしシーザー同様の知識を与える必要はないのだ、規定のメモリー容量の範囲内の情報でいい、それを満たすのだって十日もかかるのだから、五日目以降から鉄人は人間と自由に会話ができるようになった、・・着手より六日目、」

 正太郎  「おはよう鉄人」
  鉄人  「おはようございます金田さん」
 正太郎  「あのさあ、その金田さんってのやめようよ」
  鉄人  「金田さんではいけませんか?」
 正太郎  「正太郎って呼んでくれたらいいよ」
  鉄人  「わかりました、正太郎さんですね」
 正太郎  「さんは要らないよ、ただの正太郎でいいから・・」
  鉄人  「わかりました、正太郎」
 正太郎  「まだまだ言葉が丁寧過ぎるなあ、僕は君と友だちになりたいんだからさあ」
  鉄人  「友だち・・ですか?」
 正太郎  「そうさ」
  鉄人  「友だちとは何なのですか?」
 正太郎  「う~ん、そういうところから教えないとだめなのか・・」(頭をかく)

正太郎の声 「それから三日間にわたって僕は鉄人といろんな話をした、鉄人が誕生したいきさつ、今までに起こった事件の数々、僕自身のことについて、不思議と人間相手に話すより安心して心が開けるものだ、鉄人の喋り方もかなりくだけた感じになってきて僕たちは何かフレンドリィないい雰囲気になれた気がする、・・そして着手より十日が経過した」

 正太郎  「鉄人、お前の本体の改造が終わったよ、いよいよ新しい体に引越しだね」
  鉄人  「体を持つってどんな感じなのかな?」
 正太郎  「うんと自由になったような気になると思うよ」
  鉄人  「空が飛べるんだよね?」
 正太郎  「うん、すごく速く飛べるよ、うんと高くね」
  鉄人  「楽しみだな」
 正太郎  「お前がうらやましいよ」

ついに鉄人の内部に電子頭脳が搭載され、各システムに接続された、いよいよ鉄人が自分の意志で動くのだ、みんな興奮の面持ちで見つめる中、メインスイッチが入れられた、

  鉄人  「これが・・僕の体なのか」 (いろいろな動きをしながら感覚を確かめている)
 正太郎  「どうだい気分は?」
  鉄人  「うん、悪くない、正太郎はずいぶん小さかったんだね?」
 正太郎  「て言うか、お前が大きいんだよ」
  鉄人  「外へ出て歩いてみたいな」
 正太郎  「うん、行こう」 (工場内の敷地を散歩している鉄人と正太郎たち)
 正太郎  「鉄人、もっとゆっくり歩いてくれよ、コンパスが違うんだから」
  鉄人  「ああ、そうだったね、ごめんよ」
 正太郎  「もう慣れたかい?」
  鉄人  「うん、そろそろ飛んでみようかな?」
 正太郎  「うん、博士、空に飛ばしますよ」
  敷島  「ああ、正太郎君、これで鉄人と会話ができるから」 (小型のトランシーバーを渡す)
 正太郎  「よし鉄人、飛んでみろ」
    ゴゴーーッ、ロケットエンジンが唸り弾かれるように上昇する鉄人、上空を大きく旋回している、
 正太郎  「鉄人、聞こえるかい?」
  鉄人  「うん、よく聞こえる」
 正太郎  「いろんな飛び方を試してみろよ、でも遠くまで行っちゃだめだよ」
  鉄人  「わかった」
     空中で静止、そこから急上昇、急降下、きりもみ飛行と自由自在な飛び方を見せている鉄人、
  敷島  「なんだか楽しそうに飛んでるように見えるねえ」
 正太郎  「本当・・そんな感じですね」
     突然空中で大きく体勢を崩し落下するが何とか立て直す、
 正太郎  「どうした鉄人!」
  鉄人  「びっくりした、今失速しちゃったよ」
 正太郎  「おいおい、気をつけてくれよ」
  鉄人  「わかった、もう慣れたよ」
 正太郎  「三十分たったら降りてきてくれ」
  鉄人  「了解」

同日夜、工場内宿舎
  敷島  「ひらさん、正太郎君は?」
  平林  「食事してすぐ鉄人のところへ行きましたけど」
  敷島  「今夜もかね、頑張るなあ」
  平林  「正太郎君、すっかりハマッてますねえ」
  敷島  「うん、まあ鉄人と話ができるなんて最近まで思ってもいなかっただろうしね」
  平林  「例えは違うけどもしウチの愛犬のゴローが喋ったらそりゃ楽しいって思いますもん」
  敷島  「はは・・」
(鉄人のいるドック)
  鉄人  「そうか、僕はそのシーザーというロボットにやられちゃったんだね?」
 正太郎  「うん、離れたところからの僕の操縦じゃあいつの動きに追いつけないんだ」
  鉄人  「シーザーのデータは僕の頭に入ってる、力はほぼ互角だと思うよ」
 正太郎  「そうなんだ、だから次は絶対勝てると思うよ」
  鉄人  「絶対勝てるって保証はないけど・・」
 正太郎  「そうだけど僕はお前が勝つって信じてるよ」
  鉄人  「信じてる?」
 正太郎  「うん、それに勝ってくれないと困るんだ、困るだけじゃない、あいつは危ないロボットだ、僕や他の人間たちに危害を加えようとしている」
  鉄人  「正太郎に危害を加えようとする奴は許せないな」
 正太郎  「嬉しいこと言ってくれるね」
  鉄人  「シーザーが正太郎にとって敵なら僕にとっても敵だ」
 正太郎  「うん」
  鉄人  「負けたくないな」
 正太郎  「頼むよ、鉄人が負けるところなんか見たくないよ」
  鉄人  「僕が勝ったら嬉しい?」
 正太郎  「嬉しいさ、飛び上がって喜ぶよ」
  鉄人  「正太郎が喜んでくれるなら僕は勝つよ」
 正太郎  「うん、頼むよ鉄人」
  鉄人  「きっと僕が君を守るから」
 正太郎  「うん」
  鉄人  「友だちは守らないといけない」
 正太郎  「ありがとう」

翌朝8時 ドックに入ってきた平林
  平林  「おはよう鉄人」
  鉄人  「ああ、ひらさん、おはよう」
  平林  「正太郎君は?」
  鉄人  「4時間前に眠ると言って帰ったよ」
  平林  「4時間前?・・4時までここにいたのかよ?」
  鉄人  「いろいろ話をしたよ」
  平林  「そりゃあいいけどさ、でもちょっと無理し過ぎじゃねえのかい?」
  鉄人  「僕もそう思う、人間には睡眠が必要だ」
  平林  「そうなんだよなあ・・でも頭が下がるよ、ところでシーザーのことはもう聞いてるよな?」
  鉄人  「うん、今度は絶対勝つって正太郎と約束したよ」
  平林  「頼もしいねえ、俺も期待してるよ、ところでさあ、お前今度シーザーとツラ合わせたら何て言ってやるつもりだい?」
  鉄人  「うん・・シーザー、僕は鉄人だ、お前を壊してやる」
  平林  「かーっ、だめだめ、そんなしまらねえ言い方じゃ」
  鉄人  「だめかなあ?」
  平林  「もっと頭からバーンとかますんだよ、いいか鉄人、今度シーザーとツラ合わせたら今から俺が教えるとおり言えよ」
  鉄人  「うん、わかったよ」

午前11時開発室で敷島と平林が打ち合わせをしている、正太郎が眠そうな眼をして入ってくる・・・
 正太郎  「ああ・・おはようございます」
  平林  「ぜんぜんはやくねえけどな」
  敷島  「朝方まで鉄人と話していたって?」
 正太郎  「はい・・ちょっとのめり込み過ぎかなって・・反省してます」
  敷島  「うん、いい加減にしとかんと体を壊すぞ」
 正太郎  「はい・・あのう、その機械は何ですか?」

    (敷島と平林が協力していくつかの部品を組み合わせた物・・まだ未完成である)

  敷島  「オックスが動き始めると独自の磁気が発生してロボットの操縦が狂わされてしまうだろう?」
 正太郎  「ええ・・」
  敷島  「そのサイクルを人工的に作り出せないかと今やってるところだ」
 正太郎  「へえ」
  敷島  「その波長を増幅してぶつけてやれば操縦されているモンスターやファイア2世、3世は無力にすることができるからね」
 正太郎  「なるほど、でもオックスは使わないんですか?」
  敷島  「使ってもいいんだがオックスは空が飛べないから機動性がない、相手はいつどこに現れるかわからんのだし、それにすぐ近くまで近づけないとその効果を発揮できない、それを考えるといざという時、間に合わないということが考えられるんだ」

  平林  「正太郎君、こいつは飛行機やヘリに搭載して離れたところからも発信できるっていうスグレ物なんだぜ」
 正太郎  「そりゃあすごい」
  敷島  「だが残念ながら自分の意志で動いているシーザーには何の効果もないのだが・・」
 正太郎  「でも他のロボットを封じ込めることができたら勝つチャンスは十分にありますよ」
  敷島  「そういうことだ、だからどうしてもこいつを仕上げたい、幸いここの設備は何でも揃ってる、明日までにはできると思うよ」
 正太郎  「こりゃ朗報だ、さっそく鉄人に知らせてやろう」
      (正太郎が部屋を出ようとした時、ジムが電話を取る)
  ジム  「はい・・金田さんですか?ええ、いますよ金田さん」
 正太郎  「はい、」
  ジム  「東京からお電話です、大塚さんという方から、2番を取ってください」
 正太郎  「(受話器を取り) もしもし、親父さんですか?僕です、何かあったんですか?」
  大塚  「おお正太郎君、一大事じゃ!シーザーと他のロボットたちが日本に潜入したらしい」
 正太郎  「何ですってえ!シーザーが日本へ?」   (つづく) 

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2006年08月13日 18:48に投稿されたエントリーのページです。

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