シーザー 「ほら、来いよ」(人差し指をクイと動かし手招きする)
正太郎 「鉄人、ブチかましてやれ!」
シーザーに向かって突進する鉄人、少し斜に構えるシーザー、鉄人の豪腕がシーザーの顔面に向かって飛ぶ、シーザーがほんの少し身をくねらせ鉄人のパンチを紙一重でかわし逆に鉄人の顔面と胸元にワン、ツー、スリーの三連打をカウンターで放つ、よろけ数歩後退する鉄人・・・・
シーザー 「どこを狙ってる?ほら、ちゃんと打ってこいよ」
正太郎 「くそう、ナメやがって」(リモコンを激しく動かす)
再度突進しパンチを放つが絶妙のタイミングでパンチを払われ逆にまたも顔面とボディに連打を受ける鉄人、体勢を崩された時、低く突き上げるようなシーザーのタックルを受け、もんどりうって吹き飛ばされてしまった・・・
正太郎 「な・・なんて奴だ、鉄人の動きを見切って動いてるみたいだ」
敷島 「正太郎君、空に飛ばしてみたまえ」
正太郎 「はい」
ゴーーーッ・・・ロケットに点火し上昇する鉄人
シーザー 「ほう、今度は空中戦を挑もうというのか」
シーザーも弾かれるように上空へ、両者大きく旋回し、正面からブチ当たる、ガキーーン!双方ショックで弾かれ各々体勢を整える
シーザー 「ほう、さすがは鉄人だ、パワーは互角らしいな、だがそれだけではこの私は倒せん」
正太郎 「ようし、何度でもブチかましてやるぞ」
もう一度衝突コースへ、シーザーも鉄人に向かって飛ぶ、双方激突かと思われた寸前、わずかにシーザーが身をかわし鉄人の背後に回りこむ、
素早く鉄人の背中に密着しロケットエンジンに手をかける、
正太郎 「ああ!いかん」
シーザー 「そうら、お前の翼をもぎ取ってやろう」
渾身の力をこめて鉄人のロケットエンジンを引き剥がそうとするシーザー、メキメキッとロケットを固定しているベルトの一部がはがれ始める、
正太郎 「くそう鉄人、何とかそいつを振り切れ」 (シーザーを振り切ろうときりもみ飛行をさせるが)
シーザー 「ハハハ、無駄だ無駄だ、そおら、これでどうだ!」
ベキッ、ベキッ、バリッ、激しい音を立てて完全に鉄人のロケットはもぎ取られてしまった、高度は500メートル、下は硬いアスファルトである、
正太郎 「しまったあ!」
平林 「ダメだ!落ちる」
ズガガガーーン!高度500メートルから地面にめり込むように鉄人は落下した、並みのロボットならこれで完全に大破してしまうところだが驚異的な頑丈さを誇る鉄人である、ゆっくりと身を起こし立ち上がった、その鉄人の前にシーザーが着地する、
シーザー 「フフ、さすがに丈夫だな、まあこの程度でツブれてしまっては張り合いがないからな、さあ続きをやろう、ほら打ってこい」
鉄人がパンチを放つがすべて紙一重でかわされている、シーザーはかわすだけで反撃せず、鉄人を翻弄し続けている、
パンチが空を切りバランスを失って転倒する鉄人、
シーザー 「この、のろまが!いいか、パンチというのはこう打つんだ!」
起き上がった鉄人に風のように襲いかかる、ウエイトの乗ったパンチが鉄人の顔面、アゴ、ボディに十発以上の連打が叩き込まれた、たまらず後方に吹っ飛ばされ大の字に倒された鉄人・・・
正太郎 「くっ・・なんて奴だ!」
平林 「あの野郎、いたぶってやがる」
先ほどの墜落のショックの後遺症もあってか、なかなか立ち上がれずにいたが、それでも雄雄しく立ち上がりバンワオーッと二度咆哮を上げパワーを蓄えている、
シーザー 「フフフ、弱い犬ほどよく吼えるというがな・・」
ゴーーッ!・・シーザーが上空に舞い上がり旋回急降下、加速度をつけて鉄人にブチ当たる、ガガーーン!
激しく音を立て鉄人が弾き飛ばされる、翼をもがれた鉄人である、空からの攻撃には圧倒的に不利だ、
シーザー 「大丈夫かね鉄人?どれ、少ししゃっきりさせてやろうか」
倒れた鉄人の前に着地すると鉄人の両肩をがっしりと掴んだシーザーはバリバリバリッと激しい電撃を加える、鉄人の体がガクンガクンと痙攣を起こしている、
シーザー 「フフフ、少し薬が効きすぎたかな?」
平林 「正太郎君、何とかならないか?ここままじゃなぶり殺しだ」
正太郎 「ショックで・・操縦が上手くできないんです」 (額に脂汗をべっとりとかいている)
シーザーが鉄人をうつ伏せに倒し、右腕を掴み関節を逆に決め、渾身の力をこめている、ギシギシ・・関節のきしむ音が聞こえる、
鉄人は身を起こしたくともシーザーの体に馬乗りにされていて身動きができない、やがてバキーーン!という音とともに鉄人の右腕はもぎ取られてしまった!
正太郎 「しまったあ!右腕をやられた!」
鉄人がムチャクチャにもがき何とか馬乗りになったシーザーをはらいのけると中腰のまま放ったパンチが初めてシーザーの顔面を捕らえた、
だが不安定な姿勢からくり出すパンチに威力はない、
シーザー 「ふん、クセの悪い左手だな」
素早く鉄人の左腕をガッチリ掴みこれまた巧みな動きで腕を逆関節に決めてしまうシーザー、テコの原理を最大限に利用している、
バキーーン!難なく左腕も引き抜かれてしまった・・・
正太郎 「駄目だもう・・何をやっても」 (正太郎の体がブルブル震えている)
シーザーが鉄人のアゴを踏みつけている、両腕を失った状態では足をバタつかせるだけで立つこともできない、
鉄人と正太郎にとってこの上ない屈辱であった・・・
シーザー 「見てのとおりだ、よく見ておけ、鉄人のこの無様な姿を、これが私の力だ、このシーザーこそ世界最強のロボットなのだ」
鉄人を踏みつけたまま高らかに宣言するシーザー、その時通報を受けた近隣の米軍陸上部隊が現場に到着、装甲車、戦車からなる機甲部隊である、そして空には空軍のヘリ部隊が迫って来る、
シーザー 「ふん、雑魚どもがようやくお出ましか」
指揮官 「各隊、戦闘態勢につき次第攻撃せよ!」
副官 「シーザーが上昇します!」
指揮官 「逃がすな、ターゲットロックオン、ミサイル発射!」
複数の攻撃ヘリから十数発のミサイルがシーザーへと放たれるがシーザーの近くまでたどり着くと方向を見失い大きくそれていく・・
指揮官 「ど、どうした?」
副官 「シーザーから強い妨害電波が出ています、ミサイルが追尾できません」
指揮官 「くそう、それなら接近してバルカン砲とサイドワインダーをブチ込んでやる」
攻撃ヘリがシーザーへの接近を試みるがシーザーの飛び方はそれをあざ笑うかのような飛び方である、何度も空中で静止したかと思えばそこから上下、前後、左右へと小刻みに素早く移動し照準を合わすことさえままならない・・・
指揮官 「畜生、なんて飛び方だ、人をおちょくりやがって」
(陸上部隊も散発的に発砲をくり返すがシーザーの動きを捉えられない)
副官 「隊長、高高度から何か急速に接近してきます」
指揮官 「何だ?」
副官 「わかりません」
その巨大な飛行物体は戦闘空域に突入すると近くに居合わせた攻撃ヘリ3機を次々と粉砕した、
副官 「2番機、5番機、8番機がやられました!」
指揮官 「あれは・・・見たことがあるぞ、あれは確かモンスターとかいうロボットだ!」
副官 「隊長、こっちに来ます!」
指揮官 「回避しろ、回避だ!」
副官 「だめです!間に合わない!」
次の瞬間、隊長機はモンスターの直撃を受けて木っ端微塵となった、一方国際展示場に面する海岸からファイア2世と3世が姿を現し、陸上部隊に向かって進む、
「3時の方向2体のロボットを確認!」
「向かって来るぞ、撃て!撃ちまくれ!」
戦車砲、重機関銃、バズーカ砲が一斉に火を噴く、凄まじい爆音と砲弾の飛び交う中、ひるむことなく歩を進める2体のロボット、
ベラネード 「なぜだ?なぜ私のロボットたちが?・・管理センターは何をしとるんだ?」
ダグラス 「社長、今本社からの連絡で突然ロボットたちが動き出し、コントロールルームを破壊して行方をくらましたとのことで・・」
ベラネード 「行方をくらましただと?ここにいると言ってやれ!操縦システムが破壊されてしまっていったい誰が操縦してるんだ、ま、まさか?」
(あ然とした目で空を見上げ)
ベラネード 「・・あいつか」
弾幕をすり抜け機甲部隊に暴れこむ2体のロボット、たまらず戦闘車両を捨てて四方八方へと兵士たちが退避していく、
破壊光線を受け、踏みつけられ投げ飛ばされ次々とスクラップの山が築かれていく、
シーザー 「それくらいでいいだろう、長居は無用だ、引き上げよう」
飛行を続けるモンスターのボディから、そして地上の2台のロボットのボディからもくもくたる煙幕が噴出され、たちまちあたり一面の視界は煙に奪われてしまった、ロボットの足音、そして人々の混乱と怒号だけが聞こえる、
そしてその煙が晴れた時、そこに4体のロボットたちの姿はなかった
倒された鉄人の元で立ち尽くす正太郎、敷島、平林
平林 「こりゃあ・・こっぴどくやられちまったなあ」
正太郎 「鉄人・・・うっ」
正太郎の口から嗚咽が漏れる、今までに何度か敗北を経験したがこれほどまで一方的でなおかつ屈辱的な敗北を味わったことはなかった、
正太郎 「博士・・申しわけありません」
敷島 「いや、君のせいじゃない、不可抗力だ、シーザーがあれほどの動きをするとは思わなかった、」
平林 「同感ですよ、あの動きは誰かが操縦してるって感じじゃない、本当に自分の意志で自由自在に動いてる、まさに生きてるって感じですよ」
正太郎 「博士、鉄人ではあのロボットに勝てないんでしょうか?」
敷島 「それについてはよくよく考えてみなければならんが正太郎君がいくら鉄人の操縦に長けていても離れた位置からの視線で動かさなければならないのに対して相手はごく近い視点から、それも体の微妙な動きまで自分の意志で自在に素早くこなすことができる・・これはあまりにも大きすぎるハンデだ」
正太郎 「・・・・・・・・・」
敷島 「さっき鉄人の腕をへし折ったのだって決して力任せじゃなく実にテコの原理を上手く応用してやってのけている、あんな動きは第三者による操縦ではできないと思うよ」
正太郎 「鉄人のパンチ攻撃も簡単にかわされてしまいました」
敷島 「それも最低限の動きでね、だから素早い反撃をカウンター気味に何発も受けてしまった、こちらの動きを読まれているんだ、空中戦にしても衝突の直前に身をかわしバックを取るということもあのロボットなら簡単にやってのけるだろう」
正太郎 「じゃあ・・やっぱり鉄人には勝ち目がないってことに・・」
平林 「いっそ鉄人も自分で考えるくらいでなきゃね」
敷島 「鉄人が自分で考える・・か」 (少し考え込む)
平林 「どうかしましたか博士?」
敷島 「ああ、いや、とにかく何故こんなことになったのかベラネード産業から事情を聞いてみよう」
世界ロボット博覧会事務局、
ダグラス 「ベラネード社長は今警察で事情聴取を受けておりますので代わりに私が承ります」
博覧会理事長マクマホン 「ダグラスさん、博覧会は日を改めて行うことにしました、言うまでもなく今回の事件のすべての責任はベラネードロボット産業にあります、おわかりですな?」
ダグラス 「はあ、それはもう・・」
マクマホン 「不幸中の幸いというか何軒かのブースや出展品を破壊されましたが関係者と観客からは一人の死者も出さずに済んだ、だが空軍や陸軍の兵士には多数の死傷者を出してしまいました、いずれ当局から厳しい追及があるでしょう、ここまで最悪のケースになってしまうとむしろ同情を禁じ得ませんが果たすべき責任はそれなりに負って頂きますのでそのおつもりで、」
ダグラス 「はい・・承知しております」 (力なくうなだれる)
敷島 「ダグラスさん、とにかく至急鉄人を修理しなければなりません、ベラネードの設備を使わせて頂けますか?」
ダグラス 「はい、すぐに手配をさせて頂きます、壊されたロケットエンジンにつきましては当社に同等品がありますのでそれをお使いになってください」
敷島 「助かります、ところで今回の事件の原因について何か思い当たることはありませんか?」
ダグラス 「はっきりした事はわかりません、開発者のパーカーがいれば答えを出せたのでしょうが・・」
敷島 「そのパーカーという人は?」
ダグラス 「二日前、工場内で不慮の事故に遭い亡くなったのです」
敷島 「開発者が事故で?・・それも二日前ですか」
ジム 「副社長、ちょっといいですか?」
ダグラス 「何だねジム?」
ジム 「技術部のジム、マードックです、死んだパーカーが長期出張に行っている間シーザーの改造と教育を担当していました、これからお話しすることは推測の域を出ていませんがまずシーザーには電子工学、ロボット工学について時間をかけて覚えこませてあります、ですからシーザーは自分の構造については隅々まで熟知していた事は間違いありません」
敷島 「なるほど・・」
ジム 「シーザーの電子頭脳には安全装置というシステムがあります、人間に敵意を持たない、害を為さない、反抗しないというセーフティロックがされていたんです、モニターでチェックするとちゃんと安全装置は作動していたことになっていました、では何故か?私はシーザーがウソの信号を出していた、つまり(ふり)をしていたのではないかと思います」
ダグラス 「・・ふりをしていた?」
ジム 「自分の構造を熟知しているシーザーなら安全装置の作動を停止しながらも外部のチェックモニターにウソの信号を送ることも可能だと思うのです」
敷島 「ウソの信号ですか・・・」
ジム 「はい、シーザーの各システムのチェックは主に外部のモニターに頼っていました、本当は胸のパネルをあけて電子頭脳の各ユニットを引き抜いてチェックするのがいちばん確実ですが手間のかかる作業ですから忙しい時はモニターに頼ってしまうんです、事実それでほぼ完璧にチェックできますし・・・」
ダグラス 「つまりモニターだけが正常だと示していて実際は機能していなかったのか?」
ジム 「それがいつからそうなっていたかははっきりと断定できませんが・・多分」
ダグラス 「思い当たるふしがあるのか?」
ジム 「シーザーのメモリーを増設する時やレーダー装置、パラボラアンテナを含む送受信システムを追加する際にいくつかのシステムを停止するかリセットしなければなりませんでした、安全装置もその中に含まれていました、シーザーが危険な考えを抱いたとすればそのわずかな時間のうちではないかと思うのです」
敷島 「スキがあったということですね?」
ジム 「危険な考えを持ったとしても安全装置が働き出せばそれは抑えられてしまいます、だがシーザー自身の中でその考えが気にかかっていたとする、それをまた解放させたくてベラネード社長に次はこんな装備をと提案する、喜んで社長がOKする、追加の際、数時間安全装置が止まる、その間に危険な考えを膨らませていく・・・このくり返しがあったのではないかと・・・」
敷島 「なるほど、十分あり得る話ですね」
ジム 「私も次々と装備やメモリーの追加を求めるシーザーの積極さに少々戸惑いを感じました」
ダグラス 「そんなことが・・」
ジム 「口にするのも恐ろしいことですがあの日パーカーはシーザーの胸をあけ電子頭脳を直接チェックしていたのです、ドッグ内にいたのは彼一人でした、もしパーカーがモニターの表示とは逆に安全装置が作動していないことに気づいたとしたら・・・」
ダグラス 「き、君はパーカーが死んだのは事故ではないと?」
ジム 「証拠は何もありませんがでもパーカーが立っていた足場から高圧線までは少し距離があります、あそこに落ちたというのは少々腑に落ちません」
敷島 「恐ろしい話ですね、秘密を知られて消された可能性もあると?」
ジム 「そんな気がしてなりません」
ダグラス 「何ということだ」
同日夜、太平洋上をサンフランシスコを出港した貨物船「海洋丸」が一路日本へ向け航行していた、
ゴーーッ、海面ぎりぎりの高度で海洋丸に近づくシーザー、低空の為レーダーは感知できない、
船長 「何だあの音?・・ジェット機みたいな」
航海士 「左舷の方から聞こえます、どんどん近づいてるみたいだ」
(突然シーザーが姿を現しブリッジの前に降り立った)
船長 「うわわっ!ロボットだ・・こいつは・・ニュースで言ってたシーザーとかいう奴だ!」
シーザー 「船長、船を沈められたくなかったら私の指示に従うのだ」
船長 「こ・・この船をどうしようっていうんだ?」
シーザー 「なに、乗せていってもらいたいだけさ、目的地までな、この船はどこへ向かってるんだ?」
船長 「日本・・日本だ・・神戸港まで、」
シーザー 「ほう日本か、まあいい、船長、船を止めろ、私の仲間たちが海中をこのすぐそばまで来ているのでね、全員乗せてやってほしい」
船長 「ま・・まだいるのか」
シーザー 「言われたとおり速やかに行動しろ!」 (巨大な拳が窓の直前に突き出される)
船長 「わ、わかった・・停止!機関停止!」
シーザー 「それでよい、おかしな無電など打たない方が身のためだ、私にはすべて感知できるのだからな」
航海士 「船長・・どうしましょう?」
船長 「とにかく言われたとおりにするしかない、下手な抵抗は命取りだ」
シーザー 「それが賢明な判断だよ船長」
間もなく夜の海面にモンスター、ファイア2世、3世が姿を現し船の方に近づいていく・・
船長 「うわわっ!無理だ!あんなに乗せたら船が沈んでしまうよ」
シーザー 「それもそうだ、だから積荷はここで全部捨てさせてもらうよ」
船長 「そ・・そんなあ」
シーザー 「あきらめるんだな、それ以外は予定通りでよい、定期連絡も忘れずにするんだ」
(4体のロボットが次々と船に乗り込む)
シーザー 「では船長、安全な航海をお願いするよ」 (つづく)
