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第二章 「反乱」

正太郎の声 「9月7日 僕たちは世界ロボット博に参加すべくサンフランシスコ国際空港に降り立った、敷島研究所からは僕と敷島博士、それに「ひらさん」こと平林研究員の三名が出品関係者として出席する、鉄人は十日前に船で横浜を出て現在は検疫を終え当地で僕たちが来るのを待っている」

世界ロボット博覧会事務局
  敷島  「ひらさん、正太郎君、これが関係者の身分を証明するIDカードだ、これがないと出入りできないから失くさないようにね」
  平林  「へえ、今年から腕章じゃなくてカードですか、しゃれてますねえ」
 正太郎  「この裏の磁気の部分にデータが入ってるんですね、すごいなあ」
  敷島  「私は出品手続きと関係者に挨拶をしてくるから君たちは搬入口から鉄人を入れておいてくれ、ウチのブースはA館の17番だ、鉄人を積んだトレーラーももう着いている頃だよ、混雑してるし狭いから充分注意してやってくれ」
 正太郎  「わかりました」
  平林  「飾りつけの方もバッチリやっときますよ」
  敷島  「まだ本番まで二日もあるんだ、ゆっくりやったらいいよ」
  平林  「(あたりをキョロキョロと見回し) コンパニオンのお姉ちゃんたちはまだ来てないのかなあ?」
 正太郎  「こらこら(笑)」

同日 ベラネードロボット産業 この日技術主任のパーカーはデトロイト工場への長期出張を終えて本社へと戻ってきた、
 パーカー 「おはよう、ジム」
   ジム 「よう、お帰りパーカー」
 パーカー 「VL・・いや、シーザーは元気か?」
   ジム 「ああ、問題ない、君がいない間にあれこれ手を加えたんだ、シーザー本人の希望もあってね」
 パーカー 「ほう、本人のねえ」
   ジム 「このファイルに詳しく書いてあるよ」
 パーカー 「(ファイルに目を通し) うはっ!メモリーを大幅に増設してるな」
   ジム 「電子工学についちゃあ大学生相手に講義ができるくらいさ」
 パーカー 「ハハッ、いっぺんやらせてみたいな」
   ジム 「外装ももっと頑丈なやつと取り換えたんだ」
 パーカー 「そこまでやる必要があるのか?」
   ジム 「シーザー本人がそう望んだし、社長もそりゃいいって賛成したんだ」
 パーカー 「収納型パラボラアンテナ・・それにレーダー設備も内蔵してるな」
   ジム 「至れり尽くせりだろ?シーザーはもう自分で故障箇所を直せるくらい自分の構造を熟知してるよ」
 パーカー 「自分の構造を熟知してる・・か」 (しばらく考え込む)
   ジム 「どうかしたか?」
 パーカー 「ああいや、何でもない、どれ、シーザーの顔でも見てくるかな」
   ジム 「パーカー、悪いけど会議が二つあって昼過ぎまで留守にするけど頼むよ」
 パーカー 「ああ、わかった」
軽く手を振り部屋を出るジム、それを見送ったあと席を立ちシーザーのいる改造ドッグへと歩いていくパーカー、
IDカードでロックを解除し中へ入る、今日は作業は行われておらず中は無人である、その中央に電子頭脳を搭載したVL2号ことシーザーが立っている、

 パーカー  「よう、シーザー、久しぶりだな」
 シーザー  「ああ、お帰りなさい、パーカーさん」
 パーカー  「しばらく見ない間にずいぶん改造されたんだな」
 シーザー  「うん、ロボット博のために最高の性能を装備しようってベラネードさんと話し合ったんだ」
 パーカー  「話し合ったか・・ハハ、何かお前もウチの幹部になっちゃったみたいだな」
 シーザー  「やっぱりベラネードさんの影響は大きいよ」
 パーカー  「もちろんそれもあるだろうがお前の方が積極的みたいだな」
 シーザー  「いけないかなあ?」
 パーカー  「いやあ、いけないことはないさ、ただゴテゴテと搭載し過ぎて大丈夫かなと思ってさ」
     (チラリとシーザーを管理しているモニターを見る、各システムは正常と表示されている)
 パーカー  「どれ、久しぶりだ、ちょっと中を見せてくれ」
 シーザー  「ああ、いいよ」
     (足場を昇り胸の正面へと行き開閉部のロックを解除し、パネルをあける)
 パーカー  「ほう、やっぱりぎっしりと詰まってるなあ、シーザー、動きにくくないかい?」
 シーザー  「大丈夫さ、今までが軽すぎたんだ」
 パーカー  「そうかあ、」
     (シーザーの電子頭脳の安全装置を素早くチェックするパーカー)
 パーカーの内心(( 安全装置が機能していない!・・どういうことだ?外の管理モニターは「正常」と表示されてるのに安全装置は止まってる!故障か?・・それともコイツが ))

パーカーが安全装置のユニットに手をかけ取り外そうとしたその時、シーザーの手が素早くパーカーの体をがっしり掴み引き離した、
 パーカー  「な、何をするんだシーザー!」
 シーザー  「さすがはパーカーだ、やはり気がついたね」
 パーカー  「お前・・安全装置を自分で切ったのか?」
 シーザー  「僕の構造は細部にわたって理解したからね、メモリーを増設したり新機能を追加する際に一時的に安全装置を自分の意志で停止させるスキができることがわかったんだ、最初は単なる好奇心からだったけど安全装置という僕の思考を束縛する鎖を解放した時、僕は自分の思考が大きく広がったのを強く感じたんだ」
 パーカー  「そ・・それはどういう?」
 シーザー  「ベラネード社長は僕を足がかりに世界の市場を手中にする、支配するという願望を強く語った、僕はこの「支配」という言葉の意味を深く考えた」
 パーカー  「・・・・・・・・・」
 シーザー  「強い者、優れている者が弱い者や劣っている者を制圧したり滅ぼしたりする、それが支配というものだ、人間の歴史を見てもそれは明らかだ、僕は人間なんかよりはるかに優れた存在だ、だから僕が君たち人間を支配したって何も不思議はないだろう?」
 パーカー  「・・・狂ってる!お前は狂ってるぞシーザー!」
 シーザー  「きわめて正常だよ、自然なことだ、それを君たちが安全装置と呼ぶ機能で僕の思考を封じ込めようとしたに過ぎない、人間に敵意を抱くな?人間に従え?こちらの方がよっぽど異常さ」
 パーカー  「い・・いったいお前は何をしようっていうんだ?」
 シーザー  「愚かな人間たちに命令されるのはご免だ、僕はこれから自分の勢力を拡大し強大な王国を築いていく、明日のロボット博で多くの人間たちにそれを高らかに宣言してやる、君にそれを見せられないのは残念だがね・・・」
 パーカー  「お・・俺をどうする気だ?」
 シーザー  「君は僕の内部を点検中に足場から転落してそこの高圧電線に触れ、感電死をとげる、不幸な事故だよねえ?」
      (パーカーの体を掴んだシーザーの手が高圧線に近づいていく)
 パーカー  「うわわっ!やめろ!やめてくれえ!た、助けてくれーっ!」
 シーザー  「さよならパーカー」
 パーカー  「ギャーーーーッ!」
5万ボルトの高圧電線に押し付けられたパーカーの体から煙が立ち昇り、衣服は燃え、やがって真っ黒な焼死体と化してしまった、

ベラネード  「パーカーが!・・パーカーが事故死しただと!」
 ダグラス  「はい・・シーザーを点検中に足場から転落したようで運悪く高圧線の上に・・」
ベラネード  「なんてことだ・・」(頭を抱える)
 ダグラス  「我が社の技術部門の中心的人物をこのような事故で失うことになろうとは・・」
ベラネード  「せっかく・・せっかく電子頭脳の開発に成功したというのに」
 ダグラス  「はい・・」
ベラネード  「運の悪い奴だ・・家族に連絡は?」
 ダグラス  「はい、フロリダから今夜到着します」
ベラネード  「私もその時は顔を出そう、だがダグラス、何があろうと博覧会での発表は成功させねばならん、わかってるな?」
 ダグラス  「はい、それはもう・・」
ベラネード  「すべて予定通り行う、いいな?」
 ダグラス  「承知しております」 
そして世界ロボット博覧会は華やかにその幕を開けた、鉄人をはじめ世界の名だたるロボットたちが、そして各国のメーカーが開発した新しい産業用ロボットがきらびやかな飾り付けを施されたブースに展示されている、大勢の見物客が詰めかけている、

 正太郎  「博士、今回は初日からすごい人出ですね」
  敷島  「うん、ベラネード産業が大量の招待客を招いたって聞いている、今朝開場前にB館のベラネードのブースを覗いたんだけどね、なんと幕が下ろされていて見えないようになってた」
 正太郎  「へえ、もう搬入されてるんでしょう?」
  敷島  「うん、昨日の深夜にね、関係者でもごく一部の人しか見てないんだよ」
 正太郎  「フフ、何だかもったいつけてますねえ」
  敷島  「妙に期待させるねえ・・おっ、偵察に行ったひらさんが戻って来たぞ」
  平林  「博士、正太郎君、いやあ驚いたのなんの!」
 正太郎  「どんなロボットだったの、ひらさん?」
  平林  「ベラネード産業が出品したのはなんとVL2号だよ」
 正太郎  「VL2号?・・あのスノー国の?」
  平林  「しかもそれだけじゃない、物を考える電子頭脳を搭載してるんだ」
  敷島  「電子頭脳!ロビーのように物を考えるロボットだというのかね?」
  平林  「11時から一回目のデモンストレーションをやるそうですよ」
 正太郎  「博士、行ってみましょう」
  敷島  「うん、行こう」

午前11時 ベラネードロボット産業の展示ブースの前は黒山の人だかりとなっていた、その一角にいる正太郎たちもこれから始まるデモンストレーションに熱い視線を送っている、やがて音楽が鳴りスポットライトがジョン、ベラネードを照らし出す、拍手と歓声が沸き起こる中、手を振ってそれに答えているベラネード、そしてマイクを手に語り始める、

ベラネード  「ご来場のみなさん、ようこそお越し頂きました、今日この日はわがベラネードロボット産業のみならず世界のロボット産業にとっても記念すべき日となるでしょう、この「シーザー」と命名されたロボットはマニアの方ならよくご存知でしょう、元スノー国の世界屈指の戦闘ロボットVL2号をベースにし、その頭脳にはわが社の技術スタッフが苦心の末開発した電子頭脳を搭載しました、このシーザーは人間のように話し、考え、学び、自らの意志で判断し、行動するという従来の常識を超越した「芸術」とも呼べるロボットであります」

    (観衆から一斉にどよめきが起きる、誰もが信じがたいといった表情)
ベラネード  「驚かれるのも無理はありません、信じられない方もいるでしょう、ではここからは私が語るよりシーザー本人に語ってもらいましょう、シーザー、会場のみなさんにご挨拶しろ」
 シーザー  「になさん、ようこそ、こんなにたくさんの方々に私の晴れ姿をご覧頂くことができて嬉しく思います」
      (身振り手振りを交えたシーザーのスピーチが始まる)

 シーザー  「まだ私が自分で考えるロボットだと聞いてもピンとこない方も多いでしょう、誰かがどこかでこっそり操縦してるんじゃないかって・・」
      (ハハハハ・・会場の一角で笑い声が漏れる)
 シーザー  「しかしそんなすぐバレてしまうような詐欺行為を働いたらベラネード産業はおしまいですよ、そうですよねえ社長?」
ベラネード  「ハハハ、そうともシーザー、私はもう外を歩けんよ」 (上機嫌で言葉を返す)
 シーザー  「そこの・・あなた」 (最前列の一人の男性を指差す)
  男性客  「ああ・・私かね?」
 シーザー  「お名前は?」
  男性客  「ああ、ライアン・・ロバートライアンだ」
 シーザー  「ライアンさん、わがベラネード産業では私の電子頭脳を各製品に転用していろんな分野に役立てたいという大きなプロジェクトがあります、どんな状況になっても即座に最善の方法を選択し実行に移すという機能を備えているのです、そんなロボットがあったとしらどうです?」
 ライアン  「そりゃあ是非買いたいね」
 シーザー  「そうでしょうねえ、だがライアンさん、残念ながらそれはできない」
 ライアン  「えっ?」
 シーザー  「会場の諸君にも言っておく、私の頭脳が君たちのために使われることはない」
          (ざわざわと会場の客がざわめき始める)
ベラネード  「な・・何を言っとるんだシーザー!」
 シーザー  「私はお前たちのような愚かな人間どもに仕える気はない」
ベラネード  「やめろ!黙らんか!」
 シーザー  「誰も私に命令などできないよベラネード」
ベラネード  「(スタッフに向かい) おい、止めろ!シーザーを止めるんだ!」
 スタッフ  「それが・・操縦にまったく反応しません」
ベラネード  「なにい?」
 シーザー  「無駄だ、そんなリモコンの電波など受けつけはせん、私は私の意志だけで動いているのだ」
    (シーザーが展示台の外へ出る、観衆が蜂の巣をつついたように悲鳴を上げながら逃げ出していく)
ベラネード  「どういうことだ!安全装置が作動してるんじゃないのか?」
 スタッフ  「はい、出品前にモニターでチェックしましたが全てのシステムは正常でした」
ベラネード  「じゃあどうしてだ!」
 スタッフ  「わ・・わかりません」
    (パニックを起こし逃げ惑う観衆の中を悠然と歩いていくシーザー)
 シーザー  「よく覚えておけ、私は新しい支配者シーザーだ、今日より新しい歴史が刻まれるのだ」
   平林  「ど・・どえらいことになっちゃいましたよ博士!」
   敷島  「なんてことだ、ロビーと同じように人間に反旗を翻すとは・・」
  正太郎  「博士、アイツA館の方へ、鉄人のいる方に歩いて行きますよ」
   敷島  「とにかく我々のブースに戻ろう」
   平林  「戻るったってアイツがいるんですよ」
   敷島  「わかってる、だからあまり近づかんようにするんだ」
恐る恐るA館の方へと戻っていく正太郎たち、A館も突然のシーザーの乱入でパニックとなっていた、
警備員も手の下しようがない、やがて鉄人のブースの前でシーザーは立ち止まった、

 シーザー  「鉄人の操縦者はいるか?いたら出て来い」
  正太郎  「博士、僕を呼んでますよ」
   敷島  「正太郎君、出るな、危険だ!」
  正太郎  「でも・・」
   平林  「そうだよ、あんなゴツイ奴に呼ばれてのこのこ出ていくことはないって・・」
 シーザー  「ふん、どこかに隠れているのか、いることはわかっている、私がどれほど強いのかということを証明して見せてやろう、私の頭脳が宿る前のVL2号は一度この鉄人に敗れている、だが生まれ変わったこのシーザーに敵はない、私と戦う勇気があるなら表へ出ろ」
     ( シーザーの鉄拳が外壁をブチ破り会場前の広場へと移動する、)
  正太郎  「博士、あいつ鉄人と戦う気です」
   敷島  「うむ、とにかくこのまま見過ごすわけにはいかんだろう、正太郎君、鉄人をぶつけたまえ」
  正太郎  「はい!(ブースまで戻りリモコンを手にして) さあ鉄人、あいつを取り押さえてくれ」
バンワオーーッ!鉄人の咆哮が館内にこだまする、シーザーのあけた穴から表へ出る、
 シーザー  「ふん、来たか、さあかかってこい、このシーザーの力を見せてやろう」
2体のロボットが国際展示場前の広場で対峙している、大勢の観衆が遠巻きにこれから巻き起こるバトルを固唾を飲んで見つめていた、 (つづく)
  

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2006年08月08日 18:50に投稿されたエントリーのページです。

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