正太郎の声 「ベラネード財団はプラチナロボット工業、ゴキゲーンロボット工業を傘下に吸収し、ベラネードロボット産業を発足させ、ベラネード会長の次男であるジョン、ベラネード氏が社長に就任した、どこの家庭でもそうだが次男というのは多少破天荒で野心家が多いものだ、ジョン、ベラネード氏も例外ではなくまた彼は無類のロボットマニアとしても知られていた」
合衆国 サンフランシスコ ベラネードロボット産業本社、社長室
室内にはジョンベラネード社長(45) 副社長ダグラス(51) 技術主任パーカー(38)そして来客が一人・・・
ベラネード 「よくお越しくださいました、ベラネードです」
ダグラス 「副社長を務めておりますダグラスです」
パーカー 「技術主任のパーカーです」
ゴルドー 「お会いできて光栄です、シャルル、ゴルドーです」
ベラネード 「ゴルドーさん・・正直あなたをお招きするにはためらいがありました」
ゴルドー 「それはそうでしょうな」
ベラネード 「CIAがあなたをマークしておるそうですな?」
ゴルドー 「はい、私のような商売をしておりますとねえ、『死の商人』などという言われ方は少々心外です、私は単に需要のある所に供給の手を差し伸べているだけなのですから・・」
ベラネード 「合法、違法を問わずにですな?」
ゴルドー 「そういったものにはこだわらないようにしております」
ベラネード 「だからこそいい掘り出し物にありつけるというわけですな」
ゴルドー 「そういうことです」
ベラネード 「私を充分に満足させる品物をお持ちだとか?」
ゴルドー 「はい、これをご覧下さい」
写真を一枚差し出す、ゴルドーの背景に一台のロボットが写っている
ベラネード 「こ!・・これはVL2号」
ゴルドー 「さよう、スノー国崩壊の時、その混乱の最中、姿を消した世界屈指の戦闘ロボットです」
ベラネード 「どこでこれを?」
ゴルドー 「中東に裏のルートで流されておったのです」
ベラネード 「よく手に入れたものですな」
ゴルドー 「かなり荒っぽい手も使いましたがそれについてはお尋ねにならん方が賢明ですな」
ベラネード 「ふむ・・設計図もお持ちなのですか?」
ゴルドー 「それはありません、でもこちらで分解してお調べになればわかるでしょう」
ベラネード 「そうですな、ご存知でしょうがこのVL2号の最大の魅力は簡単なキットによる組み立て作業の利便性です、目立たぬように部品をバラして運べばどこででも簡単に組み立てることができる、普通大型のロボットは専用ラインで全部完成させてから出荷するものだが、このVL2号はその概念を根底から変えてしまった」
ゴルドー 「そこに高い軍事的価値が生まれるわけですな?」
ベラネード 「そうです、我々としては是非この組み立てキットのノウハウを吸収したい、これは他の製品にも転用できますからな」
ゴルドー 「それにベラネードさんのマニアとしての収集品として文句のない逸品でしょうな?」
ベラネード 「確かにそうです」
ゴルドー 「聞けばファイア2世に3世、それにモンスターまで所有しておられるとか?」
ベラネード 「よくご存知ですな」
ゴルドー 「商売柄あなたのことは事前に調べさせて頂きました、しかも凄いのはレプリカではなくすべて本物だそうですな?」
ベラネード 「開発先から権利ごと買い取ったのです、完全に自分の物にならないと気が済まない、少しこだわり過ぎかと思わないでもないが・・」
ゴルドー 「フフフ、それがマニアというものですよ、このVL2号はスノー国崩壊の時に特許などという権利は空中分解してしまってますからあなたが正式に所有者だと申請すれば法的に何ら問題はありません」
ベラネード 「なるほど」
ダグラス 「それでゴルドーさん、このロボットをいかほどでお譲り頂けるのですか?」
ゴルドー 「このVL2号の方はプレミアもついて250万ドルといったところです」
ベラネード 「VL2号の方は?・・・他にも何かお持ちなのですか?」
ゴルドー 「はい、こちらの方がメインと呼べるかもしれません、技術主任のパーカーさん・・でしたな?」
パーカー 「はい、」
ゴルドー 「あなたならきっとおわかりになると思います、これをご覧下さい」
ゴルドーから手渡された数枚の図面に見入っていたパーカーであったが・・・
パーカー 「・・・これは」
ダグラス 「何なんだパーカー?」
パーカー 「いや・・ちょっと、ちょっと待ってください」
(もう一度丹念に図面を見直している、パーカーの目つきが険しくなる)
ベラネード 「パーカー、何なんだその図面は?」
パーカー 「これは日本の牧村博士が開発したというロボットの電子頭脳の図面です」
ダグラス 「電子頭脳?・・つまりあのロビーの電子頭脳か!」
パーカー 「そうです」
ダグラス 「しかしあの研究は博士によって封印されたはずだ、なのになぜその図面が?」
ゴルドー 「牧村博士の助手に助川という男がいました、欲深い奴でロビーに銀行強盗などをさせ最後はそれが元で自分も命を落としたという愚かな男です」
ベラネード 「うむ、その話は聞いたことがある」
ゴルドー 「その助川がロビーの完成前にある機関に金欲しさから売り渡していたのです、ただ抜け目のない奴でこの図面は完全ではありません、参考資料の域を出ておりません、後で値段を吊り上げようという計算だったのでしょう」
ベラネード 「なるほど」
ゴルドー 「ところが取引が成立する前にあんなことになってしまった、それからこの資料は不完全なものとして裏のルートに長く留め置かれたままになっていました、普通このような不完全な状態では大した売り物にはなりません、だが相手がロボット工学では世界最高レベルのベラネードロボット産業となると話は違ってくる、そうではありませんかな?」
(パーカーはずっと一心不乱に図面を見続けている)
ベラネード 「どうなんだパーカー?」
パーカー 「社長、これは買いですよ」
ベラネード 「そうか、買いか?」
パーカー 「私も一時考えるロボットの研究をした時期がありましたが暗礁に乗り上げたまま棚上げになっていました、ですがこの図面を見てひらめくものを感じます」
ベラネード 「うむ、MITきっての秀才の君がそう言うなら・・」
ダグラス 「だがその図面から核心部分を導き出せたとしてウチが盗んだことになりはしないのか?」
パーカー 「いいえ、たとえ原理は同じでも出来上がったシステムを少し違う形にしてやればそれは単なる偶然だと言い張れば済むことです、それに牧村博士は特許申請などしていないんですから法的に何も問題はありませんよ」
ダグラス 「そうか、」
ベラネード 「ゴルドーさん、この図面とVL2号の両方で?」
ゴルドー 「はい、400万ドルの値打ちはあろうかと思います」
ベラネード 「ふむ・・400万か」
ダグラス 「社長、この時期にそこまでの資金はとても・・」
ベラネード 「ダグラス、私のマイアミの別荘とクルーザー、それに持ち株の一部を処分してくれ」
ダグラス 「よろしいのですか?」
ベラネード 「かまわんよ、この電子頭脳システムを我が社独占で商品化できれば何倍にもなって返ってくるんだからな」
ダグラス 「なるほど、わかりました、ではそのようにさせて頂きます」
ゴルドー 「商談成立と思ってよろしいですかな?」
ベラネード 「はい、ゴルドーさん、あなたをお招きした甲斐がありました」(しっかりと握手を交わす)
十日後、VL2号の組み立てキットと電子頭脳の図面一式がベラネードロボット産業へ秘密裏に届けられた、
届いたと同時にVL2号はわずか2時間足らずで組み立てられた、
ベラネード 「1時間と43分か・・工場の設備を使えたこともあるがやはり早いな」
ダグラス 「これがVL2号ですか・・見事なものですなあ」
ベラネード 「パワー、そしてスピード、何を取っても申し分ない、私が欲しかったギルバートにひけを取らんロボットだ、私の収集品の中ではピカイチだな・・」
ダグラス 「さようですな」
ベラネード 「ところでパーカー、電子頭脳の核心部分の解明にはどれくらいかかりそうなんだ?」
パーカー 「二週間ほどいただけますか?それまでには何とか格好をつけるつもりです」
ベラネード 「そうか・・パーカー、もし解明が上手くいってロビーと同等の電子頭脳を作ることができるならその頭脳をこのVL2号に搭載できないか?」
パーカー 「VL2号に電子頭脳をですか?」
ベラネード 「そうだ、それができればこいつは物を考える世界最強のロボットということになる」
パーカー 「物を考える世界最強のロボット・・面白そうですね」
ベラネード 「うむ、考えただけでワクワクする」
パーカー 「充分に可能だと思います、やってみましょう」
ベラネード 「期待しておるぞ」
東京 敷島研究所オフィス
敷島 「正太郎君、今年も世界ロボット博の出品要請が正式に届いたよ」
正太郎 「今年は確かサンフランシスコでしたよね?」
敷島 「うん、ベラネードのお膝元だよ、日程は9月の十日から五日間、国際展示場で開かれるそうだから予定しておいてくれ」
正太郎 「はい、今年はどんなのが見られますかねえ?」
敷島 「ドイツのシュタイナー博士の海洋ロボットなんか前評判が高いがね、何しろベラネードのお膝元だから注目を集めようとやっきになってるだろうな」
正太郎 「あそこの社長、ジョンさんでしたっけ?かなりのロボットマニアでしたね?」
敷島 「うん・・しかし鉄人を譲ってくれと言われた時は驚いたねえ」
正太郎 「そうそう、最初は冗談で言ってるのかと思ったらマジでしたもんねえ(笑)」
敷島 「かなりの野心家でワンマン社長だ、そんな彼が何を見せてくれるのか楽しみだよ」
サンフランシスコ ベラネードロボット産業 開発室
ベラネード 「・・・どうしたパーカー?その姿は」
(一週間近く研究室に篭りきりで不精ヒゲを伸ばし髪はボサボサ、作業服は汚れ放題である)
パーカー 「ここに篭りっきりでこいつ(図面)と格闘してましたからね、・・でも社長、やっとねじ伏せてやりましたよ」
ベラネード 「じゃあ・・解明できたのか!電子頭脳の仕組みが?」
パーカー 「ええ、これを見てください」
(そこには電子部品が雑然と組み合わされた「機械のかたまり」としか判別できないものがあった)
ベラネード 「この・・機械のかたまりが電子頭脳なのか?」
パーカー 「取りあえず全部有り合わせでこしらえたんです、後でパッケージとかは考えますよ、でも機能は揃ってます、この小型カメラとスピーカーがこいつの目と口というわけです」
ベラネード 「ほう・・」
パーカー 「おい、シーザー、この人がベラネード社長だ、挨拶しろ」
スピーカーから声 『初メマシテ、ベラネードサン、僕ハシーザートイイマス」
ベラネード 「く・・口をきいたぞ!」
パーカー 「当たり前ですよ、ロビーの兄弟なんですよコイツは・・」
ベラネード 「そうか・・そうだな・・でもシーザーというのは?」
パーカー 「ハハ・・私が名付けました」
ベラネード 「ふむ、シーザーか・・知能はどれくらいなんだ?」
パーカー 「まる三日かけてようやく小学校の低学年ってとこですかね、でもデーターの許容範囲はまだ設けていませんしサイズに制限がなければいくらでも入力できますよ」
ベラネード 「そうか、いやよくやったぞパーカー、やはりお前は天才だ!」
パーカー 「ふんぞり返りたいところですがね、でもこの図面の助けがなかったらとてもできやしませんでしたよ」
ベラネード 「それにしたって並の人間にできることじゃない、お前だからできたんだ」
パーカー 「ハハ・・じゃあ遠慮なくふんぞり返らせてもらいます」
ベラネード 「ついに・・ついにベラネードロボット産業は『考えるロボット』を手に入れることができた、ロボット博までにはまだ充分に間がある、それまでに完全なものに仕上げて会場で華々しい発表を飾るんだ、世界の目は我が社に釘付けになることは間違いない」
パーカー 「社長、この電子頭脳をVL2号に搭載して出品するおつもりですか?」
ベラネード 「そうさ、VL2号だけだったらさすがはベラネードさん、よく入手できたものですねと感心されて終わりだ、だが考えるロボットに変身したVL2号ならそのインパクトは申し分ない、パーカー、もっともっといろんなことを覚えさせろ、大人並みの知能を持った電子頭脳にな」
パーカー 「わかりました、雑多な知識は私が入力しておきますが性格というか、物の考え方は社長ご自身で教育なさったらいかがです?」
ベラネード 「私がか?」
パーカー 「ええ、所有者であるあなたとシーザーの意志は統一しておくべきでしょう、あなたの理念を教え込むべきかと思いますよ」
ベラネード 「そうだな、うむ、わかった、任せろ」
パーカー 「さて・・じゃあシーザー、今日からもっといろんなことを教えてやるからな」
シーザー 『ハイ、ワカリマシタ』 (つづく)
