バビル 「この部屋を含めた本体部分がです、古い遺跡や石壁はそのまま残していくことになります」
正太郎 「驚いたな、引越しができるのか・・でもどうやって?」
バビル 「金田さん、ギャロンを覚えているでしょう?あれと同じ移動法ですよ」
正太郎 「そうか、パーツごとに分かれて移動するわけか」
バビル 「ええ、コンピューターは100年以上前から移動の準備に着手していたんですよ」
五十嵐 「そんなに昔から?」
バビル 「人類の科学文明の発展の度合いから予測して遠からず移動を余儀なくされるという判断をしていたんです」
五十嵐 「そうか・・」
バビル 「また新しい新天地でバベルの塔は神秘の存在であり続けます」
正太郎 「なるほど、この搭の所在地が知られてしまったというのに君にあまり緊迫感がないのを不思議に思っていたんだが、そういうことだったんだな」
バビル 「はい」
五十嵐 「それでこれから何処へ・・おっとこれは聞いてはいかんな」
バビル 「五十嵐さん、今後僕の方から一方的にメッセージを送ることはあっても世界のどの国ともバベルの塔は交渉を持つことはありません、これはよく伝えておいてください」
五十嵐 「うむ、わかった、だがバビル、これは私の提言として聞いて欲しいが・・」
バビル 「ええ、」
五十嵐 「交渉などというような大袈裟なものではなく私と君のように安全保障に関わる責任者とは「顔見知り」になっておくことが大切だと思うのだ、こっそり訪ねて行って直接話してみてはどうかね?特に安保理の理事国の担当者と・・」
バビル 「なるほど・・顔見知りですか」
五十嵐 「うむ、見たこともない相手を信じろというのは土台無理な話だからね、直接会って君の考えをぶつけてみるのも悪くないと思うのだ」
バビル 「わかりました、考えておきましょう」
五十嵐 「そうしてくれ、お互い面と向かって話をすれば気心は通じ合えるものだと私は信じとるんだ」
正太郎 「僕もそう思うよ、たとえ立場上相容れない関係になったとしてもお互いの心情は理解し合えるものだ、顔見知りから友人になれる可能性もあるし・・・」
バビル 「ええ、」
五十嵐 「さて・・これで一応私の役目は終わったな、帰ったら信じてもらえるかどうかはともかく君の考えを語って聞かせるとしよう、それとバベルの塔を敵に回したらどれだけヤバイかという脅しもかけておくよ、まあ特に脚色などせんでも核を保有しておるという情報だけで充分効果はあると思うがな・・」
バビル 「その辺は五十嵐さんにお任せします」
五十嵐 「うん、ところでバビル、君はこんなところに一人でいて淋しくはないのか?」
バビル 「ええ、正直言ってけっこうこたえます、ですから時折ブラッと旅に出かけたりもするんですが行きずりの旅人を演じるのに最近はむなしさを感じてきています、ありのままの僕を受け入れてくれるような、そんな場所が欲しいなと・・・」
五十嵐 「ならば日本へ・・ワシのところに遊びに来い」
バビル 「いいんですか?」
五十嵐 「いいとも、遠慮などすることはない、ワシは何一つ君に恩返しをさせてもらってないんだ、立場だの宿命だのと堅苦しいことは考えずにフラリとやって来い、日本はこれから冬だ、一緒に鍋でもつつかんか?副局長や伊賀野も呼んで・・」
バビル 「鍋物か・・そういえば最近食べてないな、こんなところにいると季節感がないもんだから・・」
正太郎 「なんか楽しそうですね、よかったら僕も仲間に入れてもらえます?」
五十嵐 「そりゃ大歓迎だよ、にぎやかな方がいい、そうだろうバビル?」
バビル 「はい・・じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな?」
五十嵐 「うむ、元気な姿でワシらの前に現れるのを待っとるぞ」
バビル 「はい、五十嵐さんもお元気で・・」
正太郎 「イタズラもあまり度が過ぎんようにな」
バビル 「はい・・あのう、金田さん、最後にひとつお願いがあるんですが・・」
正太郎 「何かな?」
バビル 「一度鉄人を操縦してみたかったんです、お願いできますか?」
正太郎 「そんなことか、ああ、お安いご用だ」
バビル 「ありがとうございます」
正太郎 「ファンは大事にしないとな・・」
正太郎の指導の元、バビルが鉄人を操縦し、搭の上空を旋回させている、
正太郎 「上手いじゃないか、なかなか筋がいいぞ」
バビル 「やっと子供の頃からの夢が叶いましたよ」
正太郎 「これからも鉄人ファンでいてくれよ」
バビル 「もちろんですよ、ああ・・何だか鉄人を帰したくなくなっちゃったなあ・・」
正太郎 「おいおい、勘弁してくれよ」
バビル 「ハハハ・・・」
正太郎の声 「バビル2世と別れた五日後、五十嵐さんからバベルの塔が瓦礫だけを残して消えてしまったことと砂あらしもそれ以来ピッタリと止んでしまったという報告を受けた」
アメリカ合衆国 ワシントン 国防総省をあとにして帰路についているCIA長官ブラント、
後部席で書類に見入っていたが、ふと窓の外を見ると車が見知らぬ淋しい道を走っていることに気づく、
ブラント 「チャーリー、どうした?道が違うぞ」
チャーリー 「・・・・・・・・・」
ブラント 「おい、チャーリー、いったい何処を走ってるんだ?」
チャーリー 「この道でいいんです、一度あなたとじっくり話をしたいと思いましてね」
ブラント 「話?おい、チャーリー、どうしたっていうんだ?」
チャーリー 「この辺でいいでしょう」
(林の中の細いわき道に入って車をとめる)
チャーリー 「ブラント長官、本物のチャーリーさんは自宅でお休みになってます」
ブラント 「な、何だって?・・それじゃあお前は誰だ?」
(チャーリーの顔が変形し、バビルの顔になる)
ブラント 「あああ・・!」
バビル 「驚かせて申しわけない、でも長官なら僕の顔をご存知なんじゃありませんか?」
ブラント 「君は・・バビル!・・バビル2世か!」
バビル 「ええ、初めまして、バビル2世です」
ブラント 「いや、驚いたな、本物に会えるとは・・」
バビル 「一度あなたとも顔見知りになっておいた方がいいとさる方にアドバイスを頂きましてね」
ブラント 「そうかね・・」
バビル 「あなたとじっくり話をしてみたいと思いまして・・」
ブラント 「・・話かね」
バビル 「ご迷惑だったかな?」
ブラント 「いや、そんなことはない、君への対応は重大な問題だからな」
バビル 「ならばお話しましょう、長官」
正太郎日誌 鉄人、バベルの塔へ (完)
