バビル 「そうやって・・つまるところは戦争の抑止が目的なんです、国家間のエゴや民族紛争が果てしのない泥沼の戦いに発展していく、ヨミはこの「国家」という概念を壊そうとしていました、その点においては僕も賛成です、国家という概念が無くならない限り
戦争の芽は摘み取ることができない、時間はかかっても人類は「世界政府」の樹立を目指すべきです」
正太郎 「何やらスケールのデカい話になってきたな」
五十嵐 「他の者がそれを口にしても絵空事に聞こえるだけなんだろうが・・」
バビル 「それを達成するためにはどんな利害にも関係のない純粋で強大な「力」が不可欠です、この地球上においてその役割が担えるのはこのバベルの塔をおいて他にないと断言できます」
正太郎 「どんな利害にも関係のない純粋な力か・・」
バビル 「歴史上前例のない抑止力であると自負していますよ」
五十嵐 「そんな話を聞かされると何か国連の方が小ずるくて小さな存在に思えてしまうな・・」
正太郎 「その純粋で強大な力とやらについて聞きたいんだが・・」
バビル 「ええ、」
正太郎 「君の三つのしもべは拝見させてもらったが他にもこの搭には抑止力となるような「力」がいろいろとあるのかな?」
バビル 「全てをお話できませんが従来の抑止力という発想でいえばやはり核兵器が挙げられます」
五十嵐 「では・・この搭にも核兵器が!」
バビル 「今の人類でも持っているレベルのものがこの搭にないわけがありません、特殊な製法でプルトニウムの精度を高めてあります、その破壊力は地球の生態系を破壊するには充分な量です」
正太郎 「なんてこった・・」
五十嵐 「確かに強大な抑止力だ、それを君一人の判断でいつでも使用できるんだと思うとゾッとするような話だな」
正太郎 「こうなると今後大きな紛争が勃発しそうになった時、世界はバベルの塔の反応を意識せざるを得なくなる」
バビル 「それこそが僕の目的なんです、しかもバベルの塔はいずれの国とも交渉を持つことはありません、ただ国家間の戦闘は認めない、このメッセージだけを送り続けます」
正太郎 「まさにノーベル平和賞ものだが君は表面に名前も顔も一切出さず人々から感謝や賞賛を浴びることがないという、そんな境遇に満足できるのか?」
バビル 「・・本来、僕やこの搭の存在は今の時代にそぐわないと思うんです」
正太郎 「うん、」
バビル 「お互い共存してやっていくのが望ましいんですが僕が表面に出てしまってはそれは不可能でしょう、国家ではない力は排除されてしまいますからねえ」
正太郎 「だから平和の礎になろうと?」
バビル 「はい、ただ自己犠牲の精神だけで言ってるんじゃありませんよ、それにそんなことでもやっていないと退屈で死んじゃいますよ(笑)」
正太郎 「君は・・本当にすごい奴だなあ」
バビル 「フフフ・・」
正太郎 「うん?」
バビル 「僕のヒーローだった正太郎さんから直接ほめてもらえるなんて光栄です」
正太郎 「いやあ、俺なんかとはスケールが違う」
五十嵐 「ワシも君を信じるよ、私の場合は君に危ないところを助けられたという恩義もあって多分にナニワ節だが信じると決めたら信じる、こいつは私の哲学だ、だが国連はそうもいかんだろうな」
バビル 「そうですね」
五十嵐 「帰って何と説明したらいいか・・」
バビル 「五十嵐さん、僕に何か具体的な要求をするよう指示されているんですか?」
五十嵐 「いや、そういう要求をしないことを条件にこの役目を引き受けたんだ、ただ君と腹を割って話をしたかった、しかしいくら君の考えを語って聞かせても今の世界の枠組みでは君への脅威はいささかも無くならないだろうな、今回の私の役目はいわば「橋渡し」といったところだね、いずれ何らかの形で要求を出してくるだろう」
バビル 「当然武装解除を求めてくるでしょうね」
五十嵐 「だろうね・・さて、どうしたものかな」
バビル 「バベルの塔は誰にとっても神秘の存在であるべきです、あそこに行けばあるというものであってはなりません」
五十嵐 「・・・言っとる意味がよくわからんが?」
バビル 「実はこの搭の本体部分は移動ができるんです」
五十嵐 「なんと!この搭が動くというのか?」 (つづく)
