198X年 バラビア共和国 建国20周年を祝う記念行事が盛大に行われている、祈念パレードに国王軍の精鋭と最後尾にオープンカーに乗った正太郎(33)、そのすぐ後ろを鉄人が歩いている、沿道を埋めた観衆がしきりに歓声を上げている、
正太郎の声 「20年前、鉄人の活躍もあって革命を成功させ、新国王となったギドはバラビア共和国を建国し国連に加盟、以来優れた政治手腕と開かれた外交政策も相まってGNPを順調に伸ばしてきた、国民の信頼も厚く名君の誉れも高い、10周年の時も鉄人と共に招待を受け今回が二度目の参加だ、全開同様お祭り気分で過ごせると思っていたが思いもよらない展開が待ち受けていた」
正太郎、沿道の観衆に精一杯手を振っている、王宮広場のセレモニー、国王ギドがつめかけた民衆に熱く語りかけている、歓喜の声が沸き起こるバラビア国歌が流れ民衆が共に歌う、記念行事が夕暮れまで延々と続く・・・
同日の夜、バラビア王宮迎賓館 接見の間
正太郎、日本国家保安局局長の五十嵐、国王ギドが円卓を囲み座っている、テーブルの上に数枚の写真、砂あらしの砂漠に建っている古い遺跡が写し出されている、その中の一枚に見入っている正太郎・・・
正太郎 「これが・・バベルの塔?」
五十嵐 「そうだ」
正太郎 「いや、しかしそりゃ、おとぎ話といか・・伝説の」
五十嵐 「伝説などではないんだ、これがそうなんだよ」
正太郎 「なぜ・・そうだと言い切れるんです?」
五十嵐 「一度行ったことがあるんだよ」
正太郎 「あなたがですか?」
五十嵐 「ああ、私と副局長の二人でね」
正太郎 「それがこの国の領土内にあると?」
五十嵐 「うん、この写真からそれが証明されたんだ」
正太郎 「証明された?・・待ってください、行ってきたんじゃないんですか?」
五十嵐 「うん・・正確に言うと連れていかれたんだがね」
正太郎 「連れていかれた?」
五十嵐 「ロプロスの・・ああ、まあそれは後で説明するがとにかくこの搭が実在しこの国の中にあることは事実なんだ」
正太郎 「しかしこんな重大な遺跡があることがなぜわからなかったんです?」
ギド 「それはこれが(見捨てられた土地)にあったからなんだよ」
正太郎 「見捨てられた?」
ギド 「一年中のほとんどが砂あらしという砂漠地帯なのだ、住む者はもちろん近づく者さえいない、命の片鱗も感じさせない広大な死の世界だ、利用価値もないし迷い込んだ者は生きて帰れぬという噂も古くからあったいわくつきの土地なのだよ」
正太郎 「そんな場所なのにどうしてこの写真が?」
ギド 「それは国王軍の軍用機がその土地に墜落したことがきっかけになった、空から捜索するにも砂あらしで視界が効かない、そこで昔取った杵柄だがギドロボットをその地域に偵察に派遣したのだ、だが最初のギドは途中で連絡を絶ってしまった、故障したのか攻撃されたのかはっきりしない、そこで次のギドは用心深く砂の中を潜って進ませた、このギドはかなり奥まで侵入し、音波探知機で周囲を捜索して写真を本部に転送してきた、その数枚の写真の中にこれが含まれていたんだ」
正太郎 「これが・・」(再び写真を見入る)
五十嵐 「この搭について君に知っておいて欲しいことがある、かなり突拍子もない話だが紛れもない事実なのだ・・実は・・」
(五十嵐がバベルの塔とバビル2世が誕生した経緯、その能力、ヨミとの度重なる死闘について語り始める・・およそ30分が経過した頃)
正太郎 「(頭を背もたれに当て) 頭がどうにかなりそうだ・・」
五十嵐 「無理もない、だが重ねて言うがすべて事実なのだ」
正太郎 「僕にはちょっとついていけない世界だな」
ギド 「私も最初この搭を見た時、何か歴史上の貴重な発見をしたと興奮したものだ、この発見を国連に問い合わせたところなんと安保理が真っ先に関与してきてこの発見を外部に漏らすなというのだ、どういうことか訳がわからなかったが日本から五十嵐さんが来て初めて真相を聞かされた、正直身震いがした、自国の領土内にそんなとんでもないものがあろうなどとは夢にも思わなかった」
正太郎 「F市の大惨事は大規模な細菌汚染だとばかり思っていましたが・・」
五十嵐 「表面上はそうなっておる、あらゆる努力をして情報操作や隠蔽工作をしたんだ」
正太郎 「それで・・そのバビル2世という男は今どうしているんですか?」
五十嵐 「それがわからんのだ、最後に連絡があったのは2年前、顔を合わせたのはもう5年前だ、以前は新聞に広告を出せば彼の方から連絡があった、だが一年以上いくら呼びかけても何の連絡もないんだ」
正太郎 「彼に何か用でもあるんですか?」
五十嵐 「用というより・・世界は彼の持つ「力」を無視できないんだよ、世界の軍事バランスを揺るがすほどの存在なのだ」
正太郎 「つまり世界は彼を恐れていると?」
五十嵐 「そうだ、確かに彼は今まで我々の味方だった、それはヨミという共通の敵がいたからだ、共に力を合わせて戦った、だがヨミがいなくなった今、バビル2世が何を思い何をしようとしているのか世界はとうてい無関心ではいられんのだよ」
正太郎 「ヨミに代わって世界を支配しようとするのではないかと?」
五十嵐 「その気になれば決して不可能ではないのだ」
正太郎 「・・・・・・・・」
五十嵐 「始末の悪いことにバベルの塔は「国家」ではない、だから通常の外交交渉など望むべくもない、力だけが異常に突出した存在なんだ、だから世界、とくに大国は彼への対応をどうすべきかと苦慮しておる」
正太郎 「仮想敵国・・もしくはそれに近い存在になっているんですか?」
五十嵐 「世界をヨミの脅威から救ってくれた恩人なのだが、喉元過ぎれば何とやらでね・・人間の性とは悲しいもんだよ」
正太郎 「五十嵐さんは彼のことをどう思っているんですか?」
五十嵐 「純粋ないい若者だと思っている、彼に邪悪な欲望などないと信じているがね」
正太郎 「ずいぶん高く評価してるんですね」
五十嵐 「彼には危ないところを何度も助けられてるしねえ、私個人としてはその恩義を人一倍強く感じている、また彼が我々と同じ日本人であるというのもそう思わせる理由のひとつだ」
正太郎 「他に彼に会ったことのある人間はいるんですか?」
五十嵐 「聞いておらんがおそらく私と副局長くらいだろう、彼は立場上表面に顔を出すことを嫌うからね、先週官邸に呼び出されてバベルの塔発見の知らせを受けた、そこで国連から日本政府を通じて私に特命が下ったというわけだ」
正太郎 「何をしろというんですか?」
五十嵐 「バビル2世に接触して彼の意思を問うこと、彼が世界に対し今後何を思い、どう関わっていくつもりかを問いただせとね・・」
正太郎 「そうですか、他にコネクションがない以上妥当な人選でしょうね」
五十嵐 「うむ、」
正太郎 「でもそれならこうして搭の所在地がわかった以上、あなたが現地に行くなりして連絡をつけたらいいことでしょう、何故こんな重大な秘密を僕に打ち明けたんです」
五十嵐 「それなんだがね、特命を受けるまでもなく私もその後彼がどうしているのかと気になってずっと広告を出し続けていたんだ、それこそ世界中の新聞に広告を出した、彼がそれに気づかない筈がない、気づいていながら無視し続けている、少なくとも彼の意志は私と会うことを拒んでいると思っていい、のこのこ出かけて行って果たして会ってくれるだろうかと不安なのだ、だが不安でも行くしかない、私にはその責任もあるし・・だが不安は会ってくれるかどうかということもあるが、あの搭に近づくことは危険なことなのだ、あの搭は近づく者を排除しようとする・・・」
正太郎 「・・・・・・・・・」
五十嵐 「そうかと言って軍隊を引き連れて行ったりしたら彼を刺激することになりかねないし、また勝ち目もない、彼に敵意を感じさせることなく私が、そして日本という国が彼に接触したいという意志をどうやって効果的に伝えるか、あらゆる情報を集めて考えた、そして最後にたどり着いたわずかな希望が鉄人なんだ」
正太郎 「なぜ・・それが鉄人なんです?」 (つづく)
