「地上げをやらせていた「賀伊亜ピカ国土開発(株)」の社長で、暴力団「黒鞘組」組長・川凪 柔
も逮捕したよ」
「そうですか」
大塚署長の執務室で、署長さんと正太郎くんが今回の事件について話し合っていた。
「それと、代議士の 腹賀 黒井蔵。 「黒鞘組」からかなりの金を受け取って、便宜をはかってやっ
ていたそうだ。
まだ未確定の鉄道計画を川凪にもらしたのもこの 腹賀 だし、計画決定にそうとう強引に動いてい
たということだ」
「へええ」
「他にも表沙汰に出来ない事でいろいろ「黒鞘組」の力を利用していたようだ、まったく!代議士の
くせに、とんでもない奴じゃ! ま、逮捕・起訴も時間の問題だな」
不機嫌そうに話した大塚署長だが、何を思い出したのか笑い顔になり、
「しかし、あの二人、ふっふっふ」
サブと鉄五郎の二人である。 V-3号 を鉄人と戦わせ、騒ぎの隙に逃げ出すつもりでいたのだが、
頼みの V-3号 は 鉄人28号 に一撃で倒されてしまい、無抵抗で現行犯逮捕されていた。
「真っ青になっておったわい、よほど鉄人の強さに恐れ入ったのだろう、わっはっはっは」
「そういえば、V-3号に家を壊されたおばあさんはどうなりました?」
「ああ、心配ない。すっかり元気になって、病院の食事がまずいと文句を言って看護婦を困らせてい
るそうだ。
実は、別の場所に住んでいる息子夫婦がおってな、母親を心配してこれまでにも何度も同居を申し
入れているのを、断って頑固に一人暮らしを続けていたのだそうだ。今度のこともあって、退院し
たら一緒に住むことにしたそうだ」
そう言いながら壁掛け時計で時間を確認した署長さん、少しあわて気味に、
「それじゃあ正太郎くん、わしはこれから寄る所があって・・・」
「おばあさんのお見舞いに行くんでしょう?僕も行きますよ」
「え!? なぜ、それを」
「昨日、おばさん(大塚署長夫人・大塚加代子さん(美人))が、お使い物の ”どら屋の羊羹”を
用意しているのを見かけたので多分そうじゃないかと思っていたんです」
「しかし、正太郎くん、忙しいんじゃろう?」
心配そうに尋ねる署長さん、忙しい正太郎くんに遠慮して一人で行くつもりだったらしい、
「大丈夫ですよ」
にっこり笑って答える少年探偵、
「そ、そうか! じゃあ一緒に行こうか!」
「ええ、お供します」
少年探偵・金田正太郎、大塚署長・署長さん、親子ほども歳の離れた二人だが、良いコンビだった。
* * * * * * * * * *
執務室を出て外に向かう大塚署長と、お見舞いの ”どら屋の羊羹” を持って並んで歩く金田正太郎、
・・・それが、次の 「どら屋の羊羹」 事件へと繫がって行くことを、この時の二人は知る由も無か
った・・・
(「夜の鉄影」・完)
