「超音速ロケット爆弾(ミサイル)が「V2号」、その次の兵器だから 「V-3号」 なんすよね」
少し得意そうに鉄五郎が話しかけるのへ、
「違うよ」
「へ?」
「元々の 「V3号」 ってのは、100 km 以上も先を砲撃できる超遠距離砲のことだ」
「へええ! でも、じゃあ、何でこのロボットの名前は 「V-3号」 っていうんですかい?」
「さあな」
鉄五郎に答えながら方向レバーをゆっくりと押し込む、
ロロロロロロ・・・
低いうなり声の様な機械音を上げて V-3号 が歩き始めた。あまり大きな音をたてないように速
度を調節する。
ロボット V-3号。
両眼は視覚センサー。 つまり受光器なので、眼それ自体が発光するということは無い。
電磁波センサー、超音波センサーを装備し、この V-3号 には付いていないが、別体の、羽虫のよ
うな形をした自走式小型センサーユニットを併用することで、かなり複雑な作戦行動も可能となる。
装甲は、表面を超高硬質鋼で覆ったG-合金複合ハニカム。全身は微妙な曲面によって形成され、砲
撃を受けても、表面の超高硬質鋼が貫通を阻み、Rに沿って砲弾を流してダメージを軽減させる工夫
が凝らされ、また、仮に射角0で着弾を受けても、良く耐えるだけの頑丈さを備えていた。
操縦器に屈みこむようにして V-3号 を操縦するサブを、羨ましそうに眺めていた鉄五郎、我慢で
きなくなったように、
「あ、兄貴、ちょっと、その、ちょっとでいいから俺にも操縦させて下さいよぉー!」
「ああ、そのうちな」
あっさりと答えられ、玩具を貸してもらえなかった子供のような顔をしてサブの操縦を見つめる。
V-3号は 100メートルほど先にある、目標の家に向かってゆっくり近づいて行く。
「うん?何だ?」
ふいにサブが言葉を発した。
目標の家の脇に木が立っている。
その木の両脇から、何か棒のような物が持ち上がって行く、棒は中ほどで折れ曲がり、”く”の字を
形づくって停止した。そして、
バッ、グワァオオオオー!
夜の町に咆哮が轟いた。 (ちょっと、ご近所迷惑だった)
内蔵する膨大なエネルギーの剰余が、青白い放電となって全身に迸る。
「うわぁ!」
「て!てててて、」
放電の光によって、立ち木だと思っていた”それ”の姿が闇に浮かび上がった。
「て、鉄人28号!」
ぱっ、ぱっ、ぱっ、
「う、」
とつぜん照らされた強い光に、サブと鉄五郎は眼が眩んだ。
いつの間にか、3台のパトカーが二人を取り囲んでいた、三方から発せられるパトカーの前照灯のハ
イビームの明かりで、二人の姿は煌々と照らし出されていた。
「警察だ、もう逃げられんぞ、おとなしくしろっ」
懐かしくも若々しい富田耕…、もとへ、大塚署長の声が響き渡る。
「兄貴!」
「ちっ!」
眩しい光に目をそばめながら、必死に周囲を見回す、が、さすがに逃げ出せる隙はない、
「おい! V-3号 で鉄人に喧嘩ぁ仕掛ける! 騒ぎになったら車に飛び乗って逃げるぞ!」
「わ、わかった!」
ぐい! それまで絞っていた V-3号 の出力を目いっぱいに上げる、戦闘モードに切り替えて叩きつ
けるようにレバーを押し込んだ。
ブロロロロロロン!
V-3号 が吼えた。
ガン、ガン、ガン、
それまでのゆっくりした歩行から、出せる最大限のスピードで、敵=鉄人28号目がけて走り出す。
・・・・・・
V-3号のために言うと、この V-3号 の機体は、さんざん使い回しされ、痛めつけられた機体だ
った。
はっきり言えばほとんどスクラップに近いもので、だからこそナチス同盟も、日本での仕事の下請け
に使った たかが暴力団組織に、あっさりと譲り渡したのだった。
とはいえ、荷物の運搬や地上げの脅し程度に使うなら何の支障もなかった、だが、今度は相手が悪過
ぎた、
無敵のロボット・鉄人28号。
そして、それを操縦する少年探偵・金田正太郎。
「来たな」
少年探偵・金田正太郎は、脇に抱えていた操縦器を構えなおした。
ド、ド、ド、ド、
鋼鉄のロボットが一直線に突進してくる様は、さすがに迫力のある光景だった、が、金田正太郎は動
揺も見せずに落ち着き払って待ち受ける。
「しょ、正太郎くん!」
思わず大塚署長の口から言葉が漏れた、V-3号 は鉄人のすぐそばに迫っている!このまま V-3号
の体当たりを受けるつもりなのか!
金田正太郎の指が操縦器の上で動いた。素早い無駄のない動きで操縦器のスイッチを操作する。
鉄人の足がやや後方に下がる、胴体をひねるように半身になり、同時に腕が肘から曲がって後ろに掻
い込まれる、一瞬の間の後、反対方向へ回る胴体の勢いに乗せて、曲げられた腕が突き出される、
ぶおおおん!
空気を切る鋭い音ではない、突き出される鋼鉄の拳によって押しのけられた空気が、腕に沿って後方
に流れる、その流れが追いつかずに、周りの空気と摩擦を起こして発せられた音だった。
グワガッ、キーーーン!
正太郎くんを除くその場に居た全員が、すでに遅いにも関わらず、あわてて両耳を押さえ込んだ。そ
れは音というより衝撃波に近かった。
さすがに顔をしかめながらも、金田正太郎は V-3号 の姿をしっかりと捉えていた。鉄人にも次に
備えたファイティングポーズをとらせる、しかし、その必要は無かった。
V-3号の胴体の真中あたり、人間でいえばみぞおちあたりの装甲が、無残にひしゃげていた、
ガガ、ガリガリガリ、
V-3号の内部から軋るような異音が流れ、そして、全てが停止した、
