敷島 「博士のいくつかの功績が認められて仮釈放も検討されていると伺いました」
ファイア 「この企画を通したことが大きく働いたようじゃがね、ただ決してそれが目的でこの話を持ち出したわけではない、純粋に科学者としての目で見てのことじゃ、敷島さん、あなたも科学者として鉄人という素晴らしいロボットを作り上げたことに当然誇りをお持ちでしょう?」
敷島 「はい、自分で言うのも何ですが、苦労した甲斐があったと思っております」
ファイア 「さよう、その達成感が科学者としての自分に自信と誇りを与えてくれる、ワシもそうじゃった、ファイア2世、3世を完成させた時の喜びは今も忘れられん、間違った使い方をしてしもうたがこれだけは自信を持って言える、ファイア2世も3世も決して鉄人にひけを取るようなロボットではなかったと・・断じて負け惜しみで言うておるのではない、厳然とした事実じゃ」
正太郎 「それは・・本当にそう思います」
ファイア 「その事実がワシを支えてくれたんじゃ、何年かの歳月を経て恨みを乗り越えた時、ワシはようやく鉄人を科学者としての純粋な目で見ることができるようになった、そしてワシなりに関わってみたいと思った、単にお詫びという意味だけでなくワシなら鉄人の性能を数段向上させられるという自信もあった、自惚れではないつもりじゃが・・敷島さん」
敷島 「はい、」
ファイア 「すでに原案はお渡ししてあるが・・どう評価されたかな?」
敷島 「あのシステムを鉄人に転用できれば今よりはるかに高度な自動操縦が可能になります、実は私も同じ課題に取り組んできましたができませんでした、博士の原案に目を通した時、何かこう、目からウロコが落ちた思いです、もっと正直に申しますと科学者としていささか嫉妬すら感じたほどです」
ファイア 「フフフ、あなたにそうまで言われると光栄を通り越してくすぐったいわい」
敷島 「厳然たる事実ですよ」
ファイア 「ありがとう、はは、こういう形であんた達に仕返しする分には誰からも非難は浴びんね」
敷島 「はあ・・(苦笑)」
ファイア 「ワシも自信があったんでこの企画を政府に通したところ、この国はあんた方と鉄人に恩義があるんでな、積極的に動いてくれたよ」
正太郎 「パガオニア大使自ら研究所に出向いて頂きました」
ファイア 「そうかね」
正太郎 「外務省からも特によろしくと・・」
ファイア 「うん、」
敷島 「政府間の思惑など関係なく素晴らしい企画ですよ」
ファイア 「うむ、さて本題に入るとするか、これがワシの考案したシステムの詳細図じゃ、目を通してくだされ」
敷島 「拝見します(しばらく図面に見入って頷いたり首をかしげたりをくり返す) うん・・うん・・これは?・・・そうか、」
ファイア 「どうじゃな?」
敷島 「はい、ええと・・(自分のカバンからファイルを取り出し) これが現在の鉄人の駆動システムなのですが・・」
ファイア 「ほう・・」(顔を近づけ見入る)
敷島 「この図面を見る限りではここと・・ここと・・それからここの部分はすぐにでも転用が可能です」
ファイア 「うむ、じゃがこの集積回路は・・」
敷島 「はい、明らかに容量不足です、バッテリーの方は大丈夫だと思いますが、」
ファイア 「ふむ、リチウム電池を使っておるんじゃな・・」
敷島 「はい、しかしこの制御装置はかなり手を入れませんと・・」
難しい専門用語が二人の間で飛び交い、正太郎はついていけなくなり、しだいに手持ち無沙汰になってきた、アンダーソンがその様子に気づき・・
アンダーソン 「あの、よろしければ金田さんにアカデミー内をご案内して差し上げようと思うのですが?」
敷島 「ああ、うん、そうだね、まだだいぶかかりそうだから正太郎君、お願いするといい」
正太郎 「はい、それではよろしくお願いします」
(一礼しアンダーソンと二人で部屋を出て廊下を歩く)
正太郎 「アンダーソンさん、助かりました、声をかけて頂かなかったらあと二時間くらいああしていないといけませんでしたよ(笑)」
アンダーソン 「ハハハ、科学者同士の話って本当に長引くんだよね、要点だけ話してりゃあそうでもないのに何かを開発した時の苦労話やら参考文献の話やら、次はこんなこともやってみたい・・あんなことも試してみたいとかさ・・」
正太郎 「はは・・それ、すごくよくわかります」
アンダーソン 「じゃあ敷島さんも?」
正太郎 「ご多分に漏れずというやつで・・」
アンダーソン 「僕はそんなレベルにはまだまだだな・・」 (つづく)
