由比敬介のブログ
ポータブル・オーディオ
ポータブル・オーディオ

ポータブル・オーディオ

 ポータブル・オーディオと言えば、かつてのウォークマンがカセットを代表していたように、i-Podが現在では主流のような勢いだ。
 i-Podは、5GB、20GB程度のハードディスクプレイヤーで売れたわけだが、先日i-Pod Shuffle というメモリタイプの安価なヴァージョンを出したせいで、そちらが売れているらしい。尤も現在店頭ではどこも売り切れだと言うことだが。
 i-Podは、4GBタイプで3万円程度、20GBが4万円、60GBだと7万円する。
 i-Pod Shuffle は512MBが1万円、1GBだと1万7千円。
 単純に最も高い60GBタイプで計算すると、1GBあたり、千円ちょっとの勘定になる。メモリタイプは17倍の単価という計算だ。
 Creativeという会社から出ている60GBタイプは5万円くらいなので、20倍くらいということになる。
 ただ、メモリタイプはこれまで128MBとか256MBのタイプが多く、1GBというと、それの4倍から8倍の容量を確保されているわけで、1GBタイプの中では、i-Pod Shuffleは安価な方だ。
 しかし、これまでも1GBタイプがなかったわけではないのに、 i-Pod Shuffle のせいで、ハードディスクタイプからメモリタイプに主流が移行すると言ったような記事を読むと、日本人のブランド志向というのは、決してヴィトンやグッチばかりではないのだな、というのを実感する。
 パソコンにおけるMacintoshの神話みたいなものは、一時期崩壊しかけたような感もあったが、かつてWindowsがまだ3.1とか95だった頃は、グラフィックと言えばMacというのが普通だった。いまだにクリエイティブな仕事を手がけるデザイナーの多くがMacを使っているのも事実だし、多くの印刷業者がMac+Adobeというフォーマットを基本にしているのも現実だ。
 Adobeのソフトは、RGBではなく、CMYKという印刷屋で使う4色分解が基本の用だが、モニタを最初の出力先とするPCの現場であれば、RGBの方が理にかなっていると思うのだが。
 まあ、それはいいとして、このi-Pod Shuffle が、拡大化するポータブルオーディオの容量を縮小化に(現実的にはそう単純な物ではないと思うが、市場原理というのは恐ろしいもので)転じてしまうとしたら、寂しいことだ。
 かつてカセットテープの最長のものは120分だった。MDは最近のロングプレイになるまでは74分という、CDに単純に合わせたような中途半端な録音時間だった。
 CDの収録時間が、カラヤンの第九によっているという話は有名だが、本当にカラヤンがそう言ったかどうかは別にして、もしそんな基準で作ったとしたら、奇妙な話だ。技術的な問題であればまた別だが。
 MP3というフォーマットが確立され、デジタルオーディオの主流になりえたのは、一時期のダウンロードサイトの乱立による。著作権者やその保護団体は目の敵にしていたこれらのサイトがなければ、今のMP3はなかっただろう。これはあたかも、ビデオテープの普及にAV(アダルトの方だ)と裏ビデオが多大な貢献をしたのと似ている。
 MP3はCDの音楽を約10分の1に圧縮し、単純に言えば、CD1枚にCD10枚分を収録できる形式だ。パソコンで使う単位に直せば、MP31分当たり1MBを必要とする。つまり、パソコンの容量拡大も、このMP3普及の大きな推進役だったと言うことだ。
 ほんの数年前まで、GB(ギガバイト)という単位は、目にすることもほとんど無かった。10年前であれば、パソコンの記録装置は数百MBのフロッピーしかなかったのだから。
 それが、数百MBのハードディスクの次には簡単に4GBくらいに増え、今ではハードディスクプレイヤーでさえ、600GBなんていうハードディスクを搭載している。
 1分1MBと言うことは、1GBで約1,000分、つまり、めいっぱい収録されたCDが13枚半録音できるということだ。現状最も大きい60GBのハードディスク型ポータブル・プレイヤーであれば、800枚以上のCDが収録できる。現実にはCDの多くは50分前後の収録が多いし、昔のレコードをCD化したものだと、30分くらいのも少なくはない。そう考えると、場合によっては、1500枚のCDが収録できることになる。
 もちろんこれでも十分でないという人もいるかも知れないが、問題は1500枚のCDをMP3にしてハードディスクに入れる作業の方だろう。相当な手間だ。
 そう考えると、10枚程度のCDを収録できれば十分だと考える人が多くいてもうなずける。メモリタイプの方が、恐らくハードディスクタイプよりも、より振動に強そうだという予測も立つ。サイズも小さい。今後は携帯への組み込みもどんどん進むだろう。
 音楽はダウンロードで購入するケースも増えていくだろう。「物として形がないと」というようなリサーチ結果が出ていて、CDやDVDといったパッケージメディアはそれほど減らないなんて言っているのは、おそらくは世代間の単純な格差だ。
 ジャケットも、歌詞も、ライナーも、あらゆる物がダウンロードでき、パソコンとポータブルな部分との使い分けが簡単にできるような世代の若者には、パッケージなんて無用の長物である時代がすぐそこにあると思う。
 むしろ紙に印刷しない分、動きや、リアルタイムの歌詞対訳など、様々な有用な利用方法が出てくるに違いない。場合によってはクラシックなどの場合、楽譜のダウンロードや、関連情報も多岐多様なサイトとの連携が取られるようになるだろう。
 本だって、ダウンロードで手にはいるようになるだろうし、様々な意味で、メディアの観念は10年20年のスパンで、辞書の意味が書き換えられていくに違いない。
 ポータブルオーディオの持つ可能性というのは、一つに音楽に限らず、様々な情報とメディアのツールとして(電話なども含めて)、極めて重要な物になっていくはずなのだ。

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